旅レポ

日本トランスオーシャン航空 ボーイング 737-800型機の宮古空港発初便に乗ってみた

2月10日の初便到着時には放水アーチで祝福

宮古空港に到着した日本トランスオーシャン航空のボーイング 737-800型機の到着初便を、放水アーチで祝福

 日本トランスオーシャン航空(JTA)は2月10日、かねてから予告していたとおり22年ぶりの新型機となるボーイング 737-800型機を正式に就航した。

 ちなみに同機は、2月6日から既存機材の整備に伴うシップチェンジにより急きょ営業運航を行なっていたので“初便”と言い切れなくなっている。ただ、正式に予定路線に投入したのは2月10日であることに変わりはなく、同社代表取締役社長の丸川潔氏からも、2月10日に那覇空港で行なわれた就航セレモニーで「公式にはこれが初便です」とのコメントがあったとのことで、本稿でも同日運航便に対して“初便”という表現を用いることにする。

 初日となる2月10日は那覇空港~福岡空港間を1往復したあと、那覇~宮古空港間を2往復、再び那覇~福岡間を1往復の計4往復/8便を運航。記者は同日、宮古発の初便となるJTA/NU560便(宮古13時15分発~那覇14時00分着)に搭乗してみた。

 那覇から宮古への到着便(JTA/NU559便)は定刻12時40分の到着予定だったが、この到着がやや遅れ、13時頃に滑走路に着陸。その後、ターミナルの待合室にはボーイング 737-800型機の就航を知らせるとともに、放水アーチが行なわれる旨のアナウンスが流れた。

 前週までの宮古島は曇りがちの天気が続いたそうだが、同日はやや雲があるものの青空に恵まれ、5番スポットに到着する真新しい機体と、同機を歓迎する放水アーチが青空に映えていた。

宮古空港
JTA560便に搭乗
搭乗ゲートに飾られていた折り紙飛行機
2月10日の正式就航日に、宮古空港に到着したボーイング 737-800型機
青空の下に描かれた美しいアーチをくぐってスポットへ

 宮古空港での同機は定刻では35分で折り返す。ボーイング 737-800型機到着を祝うムードから一転、地上では荷物の搬出入が早々に開始された。離島というには大きい印象がある宮古島ではあるが、陸路で物資を運べない点ではやはり“島”である。生鮮品などを中心に航空便が物流に果たす役割は大きい。

 その点で、ボーイング 737-800型機は、前後部2カ所の貨物室に、スライディングカーペットを装備して、効率よく荷物を搬出入できるようになっている(ボーイング 737-400型機は後部のみにスライディングカーペットを装備)。貨物室が大型化した新機材や、スライディングカーペットなどは、離島の人々の暮らしを支える装備という一面もある。

 那覇~宮古線のような搭乗率が高い路線はともかく、旅客の搭乗率があまり高くない離島路線に対しては国や自治体が補助金を出して路線を維持しているところがあるが、離島住民にとっての交通機関であると同時に、生活や産業に関わる物資を運ぶために欠かせないインフラだからこそである。観光で訪れる立場としても短時間で移動できる航空路線は便利なもの。離島へ旅をするときに、そんな一面も少し頭に思い浮かべてみると、空の旅が少し違ったものに感じられるかも知れない。

 さらに話を広げれば、2月6日からボーイング 737-800型機を急きょ運航したが、同機で代替した便は、同機がなければ運休となっていた可能性が高い。記者個人としても、宮古発初便に乗るぞと意気込んでいただけに少し残念に思う気持ちがあったことは否定しないが、生活を支える路線を運航しているという事情も考えると、飛ばせる飛行機がそこにあり、初便のセレモニーをよりも運航を優先したことは、乗客のためにも、就航地の人のためにも意味ある決断だったのではないかと思う。

到着直後から貨物の搬出入作業が開始された
ジンベエジェットデザインのトーイングトラクター
こちらはさくらジンベエジェットのデザイン
ちなみに飛行機用のトーイングカーもさくらジンベエジェットデザイン
前部、後部それぞれの貨物室でベルトローダーを使用して荷物の搬出入を行なう
乗客のものと思われるスーツケースや商業貨物を区別しつつ、カートに積み込んで次々にターミナルへと運んでいた

 さて一方、搭乗が始まったターミナルのA2搭乗口では、就航を記念した横断幕が掲げられ、乗客には記念品が配布された。記念品も予告があったとおりで、トートバッグとボールペン、ネックストラップだ。さらにトートバッグを入れた袋には、JTA宮古空港所のスタッフによる手書きメッセージも添えられており、宮古島を訪れたよい思い出の品となりそうだ。

 その後、定刻より30分ほど遅れてプッシュバックを開始、14時頃に宮古空港を離陸。青い海に囲まれた宮古島を眼下に眺めながら那覇空港へと向かった。

搭乗ゲートでは横断幕での祝福
同日のボーイング 737-800型機搭乗客へ記念品が配布された
記念品。宮古空港発便は、JTA宮古空港所のスタッフによる手書きメッセージが入っていた
その宮古空港所スタッフに見送られて出発
滑走路22から飛び立ったJTA560便。上空を横切るようにして宮古島をあとにした

 機内については、「『JAL SKY NEXT』仕様を採用した日本トランスオーシャン航空のボーイング 737-800の機内」でもお伝えしているとおり、革張りシートのJAL SKY NEXT仕様を採用しており、クラスJには沖縄伝統工芸の「紅型(びんがた)」のヘッドカバーを使っている。オーバーヘッドコンパートメントは曲線的で広い空間を出しつつ、より大きな荷物も収納しやすい設計だ。

 機内に採用されたLEDはプログラムに応じてさまざまな色を表現するが、今回の便では、JTAが独自に採用した「エメラルドグリーン」が使われていた。宮古島のエメラルドグリーンの海を見たあとだったことあり、この機内が旅の続きのように思えてよかった。

 記者は今回、普通席後方寄りの普通席を利用したが、座っている感覚はJALのSKY NEXT機と同じで、革張りシートの心地よさと足元の広さにリラックスできる。

 このほかにも、同社の従来機であるボーイング 737-400型機との違いはさまざまなところで感じられるが、特に記しておきたいのは2点。1つは、安全の説明がビデオになっていたことだ。-400型機での運航便は、CA(客室乗務員)によるデモンストレーションが実施されるが、-800型機では機内モニターを装備することから、こちらを利用した説明となっている。

 もう1つは機内プログラムのガイドが別に用意されていること。-400型機の場合は機内誌の「Coralway」にプログラムが記載されているが、-800型機はビデオ上映を含む異なるプログラムになることから、別のリーフレットが用意されていた。ビデオプログラムは発着地別に2種類用意され、どちらも沖縄の情景を楽しめるものとなっていた。

JTAのボーイング 737-800型機の機内
普通席のシートは、JALのSKY NEXT仕様機そのもので、足元も広い
全席で参照できる機内モニターを装備しており、ビデオプログラムの上映も行なわれる。照明は常にエメラルドグリーンが使われていた
ボーイング 737-800型機の安全のしおり
従来機ではJTAの機内誌Coralwayで機内プログラムが案内されているが、ボーイング 737-800型機は別のリーフレットを備える
この日のJTA560便は、慶良間諸島の上空をかすめて、那覇空港の北側から、18滑走路へ着陸した

 宮古~那覇間はスケジュール上は45分間、地上走行も除くと空にいる時間は30分ちょっとという短い空の旅ではあるが、客室内でも沖縄の空気のようなものを感じられる真新しい飛行機に、こうした短距離路線で乗れるということが贅沢に思える時間だった。JALの予約サイトでは、予定されている使用機材の欄に、ボーイング 737-400型機での運航便は「734」、ボーイング 737-800型機の運航便は「73H」と記載されているので参考にしてほしい。

編集部:多和田新也