旅レポ

食事・文化・寄港地を満喫、“動くリゾートホテル”ダイヤモンド・プリンセスの旅(その5)

全部楽しみたい! 船内の楽しみ方やサービスを一挙紹介、そして横浜港へ到着

いよいよダイヤモンド・プリンセスの旅もラスト、早朝の横浜港に到着した

 クルーズといえば1週間~10日間などという旅程もあり、旅行としては長期間の部類に入る。しかし、ダイヤモンド・プリンセスの船内には、それでも使いこなせないほどサービスや施設が豊富にある。ここでは、船内で行なわれるさまざまな無料イベントや、ツアー料金に含まれる食事を中心に、船の中での楽しみをまとめてご紹介する。

フロントからランドリーまで無数にある船内の共用施設やサービス

 その1で紹介したメインの館内施設のほかにも船内にはあらゆる共用施設やサービスがある。どこに何があり、どんなサービスがあるか把握するだけでも数日かかるだろう。

 ホテルでいうフロントやATM、図書室・インターネットカフェなどの共用施設、ショップなどは、3層吹き抜けのアトリウム周辺に集められている。層を間違えてもすぐ見渡せるので、待ち合わせに便利な場所だ。ちなみに館内での連絡は部屋間の内線電話や、手紙、後述するスマホアプリのメッセージが利用できる。

3層吹き抜けのアトリウム。参加型で大勢が集まるイベントはここで行なわれる
各種手続きを行なうゲストサービス・デスク
船内に設置されたATM
船内各所に配置されていた内線電話
ほかの部屋に手紙も出せる
図書室
インターネット・カフェ
有料のコーヒーや軽食があるロビーバー

 また、クルーズ中は、船内ではさまざまなイベントが行なわれる。船内新聞に開催するホールの会場が書かれており、大型イベントは「エクスプローラーズ・ラウンジ」や「ホイールハウス・バー」がよく使われる。

各種イベントが行なわれるエクスプローラーズ・ラウンジ
プロの演奏や教室が行なわれていたホイールハウス・バー

 船内全体は高級感ある作り。階段まわりも広々していて、アート作品の展示や写真のサービスも多い。船内で高級カメラのライカが販売されていて驚いた。その場でプリントできるインスタントカメラの「チェキ」本体や、双眼鏡などの販売もあった。

絵画が並ぶアート・ギャラリー。航海中にオークションで販売される
館内は高級感があり、装飾には日本画も多い
ライカショップではカメラの販売も
寄港地や船内でスタッフに撮影される写真の販売
データはダイヤモンド・プリンセス型のUSBメモリーに入って渡される

 また、その1で紹介したジムのほか、屋内・屋外のプール、屋上でパターゴルフができるスペースなどスポーツ関連の施設も数多い。船旅といっても船内が広すぎて意外に歩くこともあり、意識すれば運動不足になることはなさそうだ。

屋上にあるミニゴルフ
屋外プール、天気がよいと本当に気持ちがよい空間になる
プールサイドはデッキチェアと食事もできるテーブルがある
屋内プール。天井は開閉式
こちらもプールサイドにデッキチェアとテーブルあり

 船内のプール近くにはたいていバーがあり、夕方から夜にかけてはとても雰囲気がよい。船内新聞をよく読むと、「本日のカクテル」があったり、時間帯によって割引になったりとさまざまなサービスがある。

パノラマがすばらしい船尾のプール
バーも併設され、夜は抜群の雰囲気
寄港地ごとに変化する景色がすばらしい

 自分で衣類を洗濯したいときは、客室の集中するフロアにあるランドリーで簡単に洗濯できる。寄港地のほとんどが国内なので、服が足りなければ買い足しも簡単にできるのだが、長い航海中に自由に洗濯できる設備が整っているのは安心できる。

客室が集中するフロアに何カ所かあるランドリー
自分で洗剤を購入して洗濯・乾燥できる

館内で利用必須のスマホアプリとホームページ

 船内ではWi-Fi接続で館内専用の「プリンセス@シー」と呼ばれる公式Webサイトのサービスを使える。このサービスでは各施設の場所、イベントスケジュール、船内会計、登録したメンバー同士のメッセージのやりとりが利用可能だ。スマホのアプリもあるので、船内で連絡を取るにはこれが便利だ。

 ただし、外部のインターネット接続を行なう場合は通信衛星での接続になるため有料で、インターネット接続が1分87セント(約90円)。100分69ドル(約7180円)などパッケージ料金もある。電話での通話は船内の電話で1分5ドル(約520円)。なお、料金はすべて2016年9月の乗船時で、変動するほか、乗船中も一時的にセール料金が設定される場合もあった。

 電話やLINEで連絡を取る生活に慣れすぎて、ダイヤモンド・プリンセスの行程中、唯一不便だと思うのはこのインターネット接続が有料なことだったが、プリンセス@シーで仲間内の連絡は取れたのと、寄港地はほとんどが国内、下船中は当然のことながら電話もネットもいつもどおりなのでそれほど影響はなかった。

館内のWi-FiでPCから見たダイヤモンド・プリンセスのページ
今日のイベント予定が参照できスケジュール登録もできる
船内のレストランの場所を確認するときにも便利
船内で使った金額の詳細をチェックできる
船内用Wi-Fiで専用スマホアプリも使える
登録したメンバー同士で、メッセンジャーを使ったやりとりができる

デッキからの眺めはクルーズ旅のハイライトのひとつ

 今回のクルーズで、入港・出港のタイミングの多くは上層部にある屋外プール周辺に広がるデッキエリアで過ごした。早朝に入港、夕方に出港ということが多く、多くの港の美しい眺めや風景の移り変わりをこのデッキで堪能できた。

 朝5時台に朝日を見に来る人や、早朝の入港でも必ず見守る人がいて、この朝日・夕日、入港・出港のタイミングは、クルーズ旅のハイライトなのだと感じた。

 確かに、デッキから見える光景が日替わりで変わっていく経験はとても独特で、まるで観光地が向こうからやってきているような不思議な感覚になった。これを自室でも見られる、バルコニー付きの部屋が人気なのもよく分かる。

早朝のデッキで朝日を待つ人々
海上で見る朝日や夕日は雄大そのもの
八代に入港した際の天候は快晴。天気がよいと本当に気持ちがよい
前々日は八代だったデッキからの光景が、今日は横浜なのが不思議に感じた

盛りだくさんのアクティビティ

 毎日配布される船内新聞を見ると、朝から夜まで船内はアクティビティだらけだ。あらゆるダンス教室、趣味や言語などのカルチャー系の教室、船内見学会、みんなで盛り上がる競技会など種類も豊富。興味の持てるものがたくさん見つかりそうだ。

 競技会で面白かったのは、自作のボートで競う「ザ・ボート競技会」や、アトリウムの上から自作の装置に入れた生卵を落として、割れずに無事着地させられるか競う「エッグドロップ・チャレンジ」など。事前にエントリーしてクルーズ中に装置を自作するようだ。

「ザ・ボート競技会」缶ジュースを乗せた自作の船で、屋外プールを競争する
「エッグドロップ・チャレンジ」を見事成功された和田さん

 カルチャー教室は、日本語教室や、浴衣の体験、ウクレレ教室、フラの教室など。クルーズ中に何回か教室が開かれ、最終日にアトリウムで発表会を行なう。みなさん短期間でかなりうまく演奏できたり踊れるようになったりしていて驚いた。

基礎の日本語教室。挨拶や買い物など実用的な会話を学ぶ
乗船客がボランティアで浴衣の着付けをする国際交流イベント
ウクレレ教室
カーニバルダンス教室
インド・ボリウッド・ダンス教室
最終日に行なわれた「世界のお祭り発表会」。乗客によるフラダンスやウクレレ、よさこい、サンバなどが披露された

 大人数が着席できるプリンセス・シアターでは、昼間はスタッフによるクッキングショーなどが開催されることも。夜には連日、見応えあるショーが行なわれる。連日満員なので、少し余裕を持って席に着きたい。アルコールなど飲み物を持ち込んで、飲みながらゆったり鑑賞できる。

「クッキングショー」総料理長による料理ショー。調理室ツアーつき
見応えあるプロダクションショー「ブラボー」
本格的なオペラやミュージカルが披露された
社交ダンスチャンピオンによるミニショー
アトリウムで行なわれたバルーンドロップパーティ。踊る人であふれかえる
カウントダウンで大量の風船が舞い落ちる。数分で割られて消えた

 レストランでも最終日にはイベントが。「ベイクド・アラスカ」というプリンセス・クルーズの名物イベントだ。暗くしたレストラン内を担当者全員でパレードしてまわるというもので、最初はクルーズで余った食材で作ったデザートだったそうだが、今では最終日の定番料理として知られている。昔、遊園地で食べたアイスのような、懐かしい味がする甘いデザートだった。

最後のディナーで行われるベイクド・アラスカのイベント
ホールとキッチンのスタッフ全員でデザートを持ってレストラン内をパレード
総料理長も挨拶
懐かしい味がする甘いデザート「ベイクド・アラスカ」

日替わりでメニューが変わる巨大ビュッフェ「ホライゾンコート」

 ホライゾンコートは朝5時から夜中の23時まで食事できる、使い勝手抜群のビュッフェレストラン。広々としているがそれでも朝や昼は混雑するので、ドアの外のプールサイドにもテーブルが用意されており、そこで食べることもできる。和食も豊富で、昼食にはそうめん、軽食にはラーメンなども用意されている。

朝はシリアル類が多数
パンは特に種類豊富。船内で焼かれたパンが並ぶ
アツアツで食べ応えのある料理ずらり
和食もあり、ご飯の釜がある
納豆とふりかけ類
焼き魚としてアジがある
ヨーグルトやフルーツ類もたっぷり
昼食時は麺類も豊富。そうめんもある
ホライゾンコートのドリンクコーナー
ビュッフェとはいえ、本格的なスイーツも並ぶ

 ホライゾンコートの夕食は、日替わりでメニューが変わる。この日は「キューバ料理の日」。ほかにも「イタリア料理の日」「ブラジル料理の日」「メキシカン料理の日」「モンゴル料理の日」などテーマはさまざまだった。今日のテーマは船内新聞で確認できる。

夕食時は定番 プラス その日のテーマ料理。この日は「キューバ料理の日」だった

 ホライゾンコートの外側、屋外ブールの側には、「アイスクリーム・バー」や、ハンバーガー専門の「トライデント・グリル」、ピザ専門の「プレーゴ」もある。昼食や軽食にぴったりで、天気のよいときにはアイスクリーム・バーに行列ができていた。

アイスクリーム・バー
トライデント・グリルのハンバーガーとプレーゴのピザ

部屋ごとに指定される5つのメインダイニング

 メインダイニングは、基本的に部屋ごとに使えるレストランと時間が決まっている。ファーストシーティングが17時30分から、セカンドシーティングが19時45分からで全席入れ替え。

 5つあるメインダイニングのうち、もっとも広いインターナショナル・ダイニングのみは、朝食とアフタヌーンティーも提供。朝食には和食も用意されている。

 このインターナショナル・ダイニングで行なわれるアフタヌーンティーは、毎日15時半から16時半まで利用できるのだが、雰囲気もよく、とても豪華で満足感が高い。この時間に船内にいるときはぜひ利用したい。

 ちなみに、ダイヤモンド・プリンセスでのクルーズではチップ制が導入されている。メインダイニングのウェイターや客室を清掃するルーム・スチュワードへのチップが、参加ひとりあたり1日12.95ドル(約1350円、ジュニア・スイート以上は13.95ドル、約1450円)が個人会計にチャージされる。最初聞いたときはやや高く感じたのだが、実際利用してみるとむしろ値段は適切で、毎回チップを計算して用意する煩わしさがない分とてもラクだった。

サンタフェ・ダイニング
パシフィックムーン・ダイニング
サボイ・ダイニング
ヴィヴァルディ・ダイニング
インターナショナル・ダイニング
インターナショナル・ダイニングの和朝食
メインダイニングディナーの例。メニューの追加は自由
アフタヌーンティーではセッティングの雰囲気もティールーム風に
ウェイターも正装
アフタヌーンティーらしいプチスイーツが楽しめる

シニアのご夫婦や家族2世代で参加する方が多い

 クルーズ中、いろいろな方に話を聞かせてもらったが、リピーターの多さに本当に驚いた。皆さんとても詳しくて、「○○のイベントがおすすめ」「○○のクルーズがよい」などいろいろな情報をもらった。話を聞いていると外国人同士でも同じように情報交換していて、クルーズの旅は、初めて会った人でも気軽に会話ができるこの雰囲気も魅力の一つのようだ。

 実際のクルーズのよさを聞くと、移動時間が無駄にならず、荷物が部屋に置いておけるので観光が身軽でよいという意見が多かった。寄港先でも、グループでタクシーを貸し切りにして短時間で効率よく見てまわったり、新幹線で短距離移動したり、現地発着でレンタカーを手配しておいたりという方もいて、寄港地がほぼ国内だけに使いこなしが本当にうまい方が多かった。

 また、家族の誰かが車いすでも楽しみやすいという点もよく聞かれた。船内がバリアフリーで、寄港地での下船・乗船の際も補助がある。疲れれば部屋で休んでいることもできるので、全員が行動を合わせなくても部分的に別行動しやすいという点もポイントなようだ。

 そして、飴やポストカードなど小さなプレゼントを持っている方が日本人・外国人問わずよくいて、知り合った人やスタッフに渡している姿をよく見た。船内で日本語が通じるのが便利という声もよく聞かれたのだが、日本人のシニアの方でも簡単な英語で積極的に外国人とのコミュニケーションを取っている方がとても多い。外国にいるような雰囲気なのに、観光地でよくあるスリや詐欺への緊張が必要ない。さらに同じクルーズに参加している仲間という安心感があるため、気軽に話しかけやすいのだと実感できた。

隣同士の2部屋を予約しご両親との2世代で参加されていた関根さん。世代が違ってもそれぞれ楽しめたとのこと
親子で参加されていた浦井さん。特に熊本が印象的で、熊本城の姿には心が痛んだという。チャリティ・ウォークにも参加されていた
6月に入院した際にテレビで見て、急きょクルーズに参加したという村野さん。息子さんが休暇を合わせてくれたそう
北陸から参加されていた金谷さん。クルーズの経験が豊富で、地元ではクルーズ客船のおもてなしボランティアもされているそう。記念にとポストカードをいただいた

横浜港へ帰港。クルーズ客船は大人のための動く大型テーマパーク!

 最終日の朝、横浜港の大さん橋に接岸。朝食を船内で食べて、指定された下船の順番をゆっくり待つ。長期間乗船していただけに荷物は大量だが、前日までに預けておけば下船後に大桟橋で荷物を受け取れる。乗船時も下船時も、そのまま自宅に宅配便でスーツケースを送ることも可能だ。

 巨大な大さん橋に接岸するダイヤモンド・プリンセスの船体は白がよく映えてとても美しい。桜木町駅までは無料のシャトルバスが待機していて、乗客がいっぱいになり次第すぐに発車してくれる。桜木町駅からは新横浜駅で新幹線に乗り換える人や、横浜駅で乗り換えて羽田や成田の空港に向かう人も多数いた。

桜木町駅までは無料のシャトルバスがある

 はじめての乗船だったが、クルーズ客船の雰囲気を知るには十分な内容だった。例えるとすれば初めて大型テーマパークに行ったときの衝撃に近い。入場料を払えば、中でゆったりもできるしアクティブにもできる。ショーやサービスが一流で、内部は安全。どの世代でも楽しめて、リピーターも多い。もっと早く知ればよかった、というあの感覚だ。

 定年退職してから記念に乗るもの……というイメージがいまだにあるクルーズ客船だが、実際は小さな子供連れで参加している若い家族も多くいた。値段もイメージとは違って利用しやすいプランもあって自分なりの参加ができる。次のクルーズはプライベートで家族で乗ろう! と、来年度分のパンフレットを熟読している。

大桟橋に接岸したダイヤモンド・プリンセス

赤池淳子

1973年東京都生まれ。IT系出版社を経て編集者兼フリーライターに。雑誌やWeb媒体での執筆・編集を行なっている。Watchシリーズでは西村敦子のペンネームでInternet Watchでのお得サイトの紹介や、家電 Watchでの製品レビュー等を執筆していた。現在は5歳男児の子育てに、仕事以上の忍耐力を試される日々を送る。