旅レポ
一生に一度は見たいサンセットと星空観測ツアー。感動が心に刻まれるハワイ州マウイ島体験
2025年6月20日 06:00
ハワイ諸島8島のなかでも、多様性に富んだ「マウイ島」。ホノルルから飛行機で約35分。二つの島がつながりひょうたん形になったこの島は、ハワイ州で2番目の大きさを誇る。
ハワイ王朝時代の首都がある一方、ラグジュアリーなリゾートエリアやフォトジェニックな街も点在し、空港ではターミナルとレンタカーエリアを結ぶトラムを走らせるなど他島に先立って近代化を進めてきた。それゆえに、島のあちこちでマウイクオリティを誇る多彩な魅力に触れることができる。
初めてマウイ島を訪れるなら、まずどこへ行くのがよいか? 「行かないと後悔する!」と言われるのは、ハレアカラ山だろう。
「渓谷の島」というニックネームを持つマウイ島は、壮大な自然が魅せる独特の表情がある。それをダイレクトに感じられるのがこの山にほかならない。自信を持ってそう言えるのは、「ハレアカラ サンセット&スターゲイジングツアー『星降る夜空』の体験ツアー」に参加してみたから。一緒に参加した人が何度も「もう思い残すことはない!」と口にしたこのツアーをご案内しよう。
マウイ島の東に位置するハレアカラ。「太陽の家」とハワイ語で名付けられたこの山の標高は3055mで、国立公園に指定されている。山頂から臨むサンライズとサンセットが有名だが、自然保護のため、深夜3時~朝7時までは山へのアクセス数が限られていて、事前予約が必須となる。
今回参加したのは、マウイオールスターズが主催するサンセットツアー。国立公園から認可を受けた4社のうちの一つで、名物ガイド&星空案内人の山内良和さんは約20年間、無事故無違反でこのツアーを実施してきた。
マウイ島は米本土からの直行便が多数あるため、圧倒的に本土からの観光客が多いなか、100%日本語のツアーはかなり貴重で、特に7時間余りにおよぶこのツアーを日本語で理解できるのは非常にありがたい。
まずは16時の出発を前に、空港近くのカフルイの街にあるハワイ唯一の「クリスピー・クリーム・ドーナツ」ショップで集合する。敷地内に広い駐車場が完備され、ツアーから戻るまでレンタカーを停めておくことができる。
山内さんいわく、空腹を防ぐことで高山病になりにくくなるという。店内の席で揚げたてのふわふわドーナツを食べながら、ツアー参加者らとあいさつをした。
お腹を満たし、トイレも済ませていよいよ出発。この日の参加者は6名。高山病対策やトイレ休憩も含め、標高約1000m、2100mでの休憩を経て、3055mの山頂へと向かう。
出発してまもなく立ち寄るところは、ハワイ発祥のスーパーマーケット「フードランド」。ここで、山頂付近での夕食を調達する。山内さんのイチ押しはポケ。魚介類の刺身をぶつ切りにしてしょうゆやごま油などで漬け込んだハワイのローカルフードだ。
マウイ島のこの店舗で買うべきポケの種類を教えてくれて、参加者たちは迷わず「それを!」。リクエストに応え、山内さんが量り売りのポケを全員分オーダーしてくれた。
シークレットスパイシーアヒ(マグロ)、オイスターアヒ、ガーリックシュリンプポケ、ホタテポケ、そして付け合わせのマストオーダーは鮮やかな緑色の海藻サラダとのこと。このスーパーでついでに、手頃な値段のクッキーなどのお土産や、飲料などを買うこともできる。
ここから本格的に山道となり、牛が横切るのどかな山道をゆっくりと上がっていく。道中、山内さんは、マウイ島の主要な街のこと、観光名所や名産、人口、気候、治安、滞在中に役立つ裏技など、全般的なガイドをしてくれた。1組の夫婦が「10年前にテレビでこのツアーを知って以来、お金を貯めて時間を作り、念願の参加となった」と打ち明け、山内さんが照れるなど、終始和やかな車内だった。
標高約1000mにあるクラロッジへ到着。マウイの街並みと海岸線が眼下に広がるレストランや宿泊施設も併設するマーケットプレイスで、地元でも人気のマウイオニオンドレッシング、クラコーヒー、イチゴジャム、オーガニック蜂蜜、マウイ産ワインなどを扱っている。ここで買い物とトイレ休憩。やや空気がひんやりしているのを感じるはず。
次は、標高2100mにあるハレアカラ国立公園の入り口を通って入園。料金所の隣にある「ハレアカラ」のサインの前で記念撮影を!
国立公園事務所に立ち寄ってトイレ休憩。この先からは森林限界に入り、高木が生育できない高度となるため、景色が変わっていく。これ以降に現われるのは、銀色に輝く葉先が花のように広がる銀剣草。世界でも限られた地域のみに生息する希少な植物という。
そして気温がグンと下がる標高2700mへ。目の前に広がるのは赤土のクレーター。アポロ月探査のリハーサル場所で、本当に月面にいるかような錯覚を起こす景色があった。その広さは山手線が丸々入るほど。さらに先にはハワイ島のマウナケア山頂を見ることができた。山頂と同じ高さに見える薄い青色の帯は「地球の影」だそう。
陽が傾くころ、ついに標高3055mの山頂に到着。防寒のためのジャケットと手袋を借りられるので、しっかり着込んで雲の上の世界へ降り立とう。澄んだ空気と雲海に音が吸い込まれるような静寂の空間で、360度のパノラマビューを見渡すことができる。空気が薄いので、ゆっくり歩き、決して走らないように気をつけよう。
展望小屋では風をしのぐことができ、各方向の山々についての案内板が置かれている。小屋の前で「標高3055m」のサインとともに記念撮影を忘れずに。雲海を望む高地での1枚は一生の思い出になるはず。
ここからマジックアワーのクライマックスへ。太陽が雲へゆっくりと沈みゆく様子を見られるのはこの標高だからこそ。運がよければ、太陽が沈む瞬間に緑に光るグリーンフラッシュを見られるかもしれない。この日の日の入りは19時9分。太陽を見送ったあと、雲の上のオレンジ色がより一層濃くなり、空のグラデーションが刻々と変化していく時間帯が最も美しいタイミングだという。
太陽の恩恵を受けたあとは、星空観測へ。山内さんのとっておきの場所へクルマで移動する。そこで暖を取りながら車内で夕食タイム。温かいお茶を淹れてもらい、ご飯にポケを乗せてポケボウルに。大自然の美味しい空気に包まれて味わうローカルフードは格別の味となる。
外はすっかり漆黒の世界に。食事のあとはいよいよ星空観測。車を降りるとき、山内さんは「まだ見上げないでくださいね!」という。足元だけを明かりで照らし、用意してあったイスに座り、膝掛けをかける。「はい、どうぞ!」の合図で空を見上げたとき、全員が言葉を失った。右も左も後ろも、全方位に星が瞬いていた。宇宙のなかに地球があって、そのほんの小さな地点に自分がいることを実感した。
こぼれ落ちそうな満点の星に囲まれて、星空観測が始まる。レーザーポインターを使いながら、星座を追い、星の温度や距離、特性などの解説を聞いては大型GPS望遠鏡と天文専門双眼鏡を順番に覗き、発見と感動の連続の時間となった。
この日は新月だったため星を見るのに好条件で、あえてこのタイミングに合わせたという参加者もいた。天の川、流れ星、人工衛星も数えきれないほど見えた。そして、ラッキーだったことに5月末のこの時期、1年のうち3週間しか見られないという南十字星を肉眼で見ることができた。
そんななかで全員が喜んだのが、山内さんによるスマホでの星空撮影の設定方法の伝授。スマホの設定を変えることで、それぞれが星空の撮影に成功した。さらに、自分が南十字星を指しているように見える写真を、山内さんが一人ずつ撮影してくれた。
その後、山内さんは「ここで寝転んで見よう」と。全員で並んで寝転び、太陽光が残した地面の温もりを感じるなか、「静かでしょう? 地球の地軸の音が聞こえるんですよ」と山内さん。無音の空間で星空に見入っていると、山内さんは自身がこの星空がきっかけで人生が変わった話を始めた。
気付けば、つい先ほど低い位置に見ていた蠍座の位置が空高くに上っていた。1時間くらい経っているという。誰もが星空を満喫したタイミングで、クルマに乗り込んで山を下った。
車中で参加者は「一生に一度は見ておくべきものを見ることができた」と言い、「日本語ですべて理解できたからよかった」「大事な人にも見せたい」などと感想を述べていた。7時間を超える間、感動をともに味わった参加者たちはすっかり打ち解け、最後は全員で手を振り合いながらホテルへと帰っていった。時間は23時近くになっていた。
サンライズとサンセット、どちらも魅力的なハレアカラ。山内さんによると、日本人は日の出への思い入れが強いが、山道には道路照明がないため、早朝に暗闇を運転するのは容易ではないうえ、夕景から夜景までを堪能できるので、断然サンセットに行くべきだという。1年で一番お勧めの季節を聞くと、気温的にも夏がいいとのことだった。ということは、夏の新月のタイミングで行けば、素晴らしい星空が待っている。
「ハレアカラの神秘的な大自然と宇宙のパワーは、人生の喜びを見出すきっかけを与えてくれる」という山内さん。「太陽の家」に行くために、旅のデスティネーションをマウイを目的にしてはどうだろう。
ハレアカラ サンセット&スターゲイジングツアー「星降る夜空」の体験ツアー
ツアー料金:
大人(12歳以上)235ドル
子供(5~11歳)175ドル
支払い方法: クレジットカード(Visa/Mastercard/JCB/アメックス)
最少催行人数: 大人2名以上
・18歳以下のみの参加は不可、4歳以下は参加不可
・夕食代、ガイドへのチップは含まない
※チップは気持ちでわたすため決まりはないが料金の10%~が一般的
料金に含まれるもの:
送迎(ホテルによって送迎なしの場合もあるため要確認)
クリスピー・クリーム・ドーナツ
日本語ガイド
温かいお茶・ボトルウォーター
ダウンジャケット、手袋、ひざ掛け
消費税
キャンセル費:
参加日の1営業日前の現地時間0時以降は100%
服装:
上着はウィンドブレーカー、フリース、長袖シャツなどを用意
ジーンズなど長ズボンで暖かく動きやすいもの
スニーカーなど歩きやすい靴(サンダル・ヒールは危険)
※ツアーに含まれる防寒着以外に暖かい服装を。冬の山頂は0℃近くになる場合も
Webサイト: マウイオールスターズ
※情報は2025年5月末時点のものです。ツアー内容は季節や天候によって変わります