旅レポ

マウイ島の恵みが詰まったフルーティなチョコレートを味わう! ラハイナのカカオ農園ツアー

 マウイ島体験第2弾はカカオ農園ツアー。実はハワイ州はアメリカで唯一カカオを栽培できる地域。そのカカオはハワイらしくフルーティな味わいで、ハワイ産チョコレートのファンも多い。オアフ島にもいくつかカカオ農園があるが、もう一歩足を伸ばしてマウイ島に行くと、この地ならではのカカオの味と景色を楽しめるカカオ農園がある。

「マウイ・クイア・エステイト・チョコレート」が位置するのは、マウイ島西部にあるラハイナ。19世紀に捕鯨産業で栄えたハワイ王朝の古都で、ハワイの歴史が色濃く残る街だった。ところが2023年8月、大規模な山火事によって歴史ある建造物や住宅など2200棟余りが焼失した。

ラハイナの街を見下ろす山の裾野に、犠牲者を悼み祈りを捧げる場所がある

 現在は瓦礫の撤去が完了し、限定的であるが街のなかと海岸線へのアクセスも再開され、一歩ずつ復興の道を歩んでいる。

犠牲者の数と同じ数の十字架があり、レイが手向けられている

 そんなラハイナの街を見渡す丘陵地帯にあるカカオ農園が「マウイ・クイア・エステイト・チョコレート」だ。かつてはサトウキビ農園だった一帯にカカオを栽培し、チョコレートを製造して販売する「Farm to Bar(農園からチョコレートバーまで)」を掲げている。幸いなことに山火事による大きな被害はなく、カカオツアーを以前と変わらず催行している。

カカオ農園ツアーはバンに乗り込んで農園へ行く

「カカオファームツアー&チョコレートテイスティング」は、カカオがたわわに実る農園で、その栽培から収穫、チョコレート原料となるまでの過程を見学し、チョコレートのテイスティングで締めくくるとあって、非常に人気が高い。マウイ島で育ったカカオで作るチョコレートの味は、レーズン、チェリー、ベリー系で、この農園のカカオ100%の「Maui Grown」は国際カカオ・オブ・エクセレンス・アワードで金賞を受賞した。

国際的にもクオリティの高さを認められているマウイ・クイア・エステイト・チョコレート

 ツアーは90分で、直営ショップ前に集合してスタート。裏に駐車場があるのでレンタカーを停められる。ショップが入る建物は2020年にオープンし、1階はガラス越しに製造工程を見られるチョコレート工場が併設され、2階には太平洋を望むパビリオンとカフェがある。このチョコレート工場も農園も太陽光発電など自家発電によって再生可能エネルギーでまかなわれているという。サステナブルも彼らのテーマの一つになっている。

マウイ・クイア・エステイト・チョコレートの白い建物内が集合場所
直営ショップ前で全員が顔合わせをしてカカオ農園ツアーがスタート!

 集合後、すぐにツアー用のバンへ。乗り込む前に植物の種子やウイルスなどをカカオ農園に持ち込まないように、靴の裏についた土や泥を落とし、靴底を消毒する。農園を歩くため、つま先がカバーされた靴を履こう。

植物の種子やウイルスなどを農園に持ち込むのを防ぐため、1人ずつ靴底を消毒してからバンに乗る

 山の中腹にあるカカオ農園まではクルマで10分弱。その間、車内で早速ガイドが始まる。この土地は「クイア」と呼ばれるアフプアア。「アフプアア」とは古代ハワイの土地区画を指す。ここがカカオ農園となったのは2013年。現オーナーでCEOの生物物理学者ガナーズ・ヴァルキルス博士がこの20エーカーの農地を借りてカカオの植え付けをしたのだという。

 彼はサトウキビ農園閉園後の乾いた休閑地を、山頂からの水を活用してカカオ農園とすることによって緑をよみがえらせた。さらに、農園を経済的にも持続可能にするため、品質の高いチョコレートを製造して販売することを決意。2019年にはコミュニティ貢献という彼の強い意志のもと、「農園からチョコレートバーまで」を掲げて、ハワイのアグリツーリズム、農業に対する意識・教育を高めることを目的にツアーを開始した。その純利益100%をマウイ島の慈善団体やNPOに寄付しているのだそう。

バンでの移動中、ラハイナの乾いた土地、山、海を見ながらガイドを聞く

 農園に到着。20エーカー余りの土地には約8000本のカカオが栽培されているという。持続可能なアグロフォレストリーという農法で、カカオの木だけでなく、防風や日除け、害虫駆除のためにニームなどの木々が植えられているのだとか。

害虫駆除、風除け、日除け、カカオ豆の発酵に使うバナナの葉などもすべてこの農園で栽培し、持続可能な農法を実践している

 カカオの木々の間を歩きながらカカオ観察。枝だけでなく木の幹にも花が咲き、それが実となってゴロゴロとぶら下がっていた。その色は、赤やオレンジ、黄色など。5~6か月で手のひらより大きなサイズになるのだそう。気温や降水量などの条件が揃った地域でしか生育しないカカオ。育った環境によって味わいも違うとのこと。

幹と枝の区別なく直接カカオの実がなっている
1本の木に1つずつ水やりシステムが設置されている

 次は農園を奥へと進み、収穫後にチョコレートの原料となるまでのプロセスを解説。カカオの殻はかぼちゃのように厚くて固く、なかには綿に覆われたカカオ豆(種子)がびっしりと詰まっていた。一つの実に30~50粒のカカオ豆が入っているという。豆を取り出したあとの殻は土に戻してコンポストにしている。

農園の奥へ入ってさらに詳しい解説を聞く
カカオの固い殻のなかにカカオ豆が詰まっている

 取り出したカカオ豆は、穴を空けた木箱に入れ、農園で育ったバナナの皮をかぶせて発酵させる。

チョコレート原料になるまでの工程を現物を見ながら学ぶ
形も大きさもアーモンドのようなカカオ豆

 発酵後に乾燥させた状態のカカオ豆がガラス容器に入って回ってきた。なかを覗くとアーモンドのようだった。次の工程はカカオ豆を焙煎して細かく砕いたもので、スーパーフードとしても知られるカカオニブ。この状態になるとチョコレートらしい香りを感じることができた。そしてカカオニブをローストして磨りつぶしてカカオマスに。さらに圧縮してココアバターにして、チョコレートの原料となっていく。

バナナの皮を被せて発酵させ、乾燥させたカカオ豆
カカオ豆を焙煎して細かく砕いたカカオニブ
カカオニブをすりつぶした状態のカカオマス
この部分は種皮や胚芽でチョコレート製造には使わない

 原料になるまでの工程をマスターしたら、最後はお待ちかねの試食タイム。チョコレートツリーハウスへ上がる。

木々の合間からチョコレートツリーハウスが現われた。この上で試食を満喫!
チョコレートが順番に配られ、丁寧な解説を聞きながら味わうことができる

 風が心地よいツリーハウスからは、青い海の向こうに、右手にはモロカイ島、左手にラナイ島を望む、マウイ島ならではの絶景が広がっていた。

カカオの木々の先には海、右にモロカイ島、左にラナイ島が見える

 席に座って、一つずつ解説を聞きながら全部で9種類を味わった。2022年にこの農園で収穫したダークチョコレートやダークミルクチョコレート、エクアドル産やウガンダ産カカオのチョコレートなどを食べ比べると、フルーティだったり、シャープだったり、色や香り、舌触りも違い、それぞれのカカオに個性があることを実感した。

 トロピカルな味が口いっぱいに広がるマウイ産マンゴーやマウイ産グアバフレーバーのダークチョコレート、甘酸っぱくてさわやかな柑橘系カラマンシーダークチョコレートもマウイの自然の恵みを感じさせた。マウイモカというピーベリーのように小さな豆が特徴のマウイ産コーヒーを使ったカプチーノフレーバーのミルクチョコレートも格別! ……というように、それぞれが感想を口にしながら好みの味を見つけていた。

このカカオからチョコレートができるまでの工程を頭のなかで復習……!
スクエアチョコレート1個あたりに使うカカオ豆は3粒ほどだという

 甘い余韻に浸りながら農園を後にして直営ショップへ戻り、ツアーは終了となる。お土産に記念となるエコバッグのプレゼントも!

最後にお土産でもらえる布製のエコバッグ(表)
雑誌が入るサイズと形で日常に使いやすい(裏)

 実際に農園を歩き、カカオの生育環境やチョコレートの原料となるまでの工程を見たあとは、チョコレートに対する意識も変わる。参加者たちは早速チョコレートを購入していた。地域へ100%還元しているこのツアーに参加することが、ラハイナの復興にもつながると思うと温かな気持ちとなり、よい思い出になるだろう。

貴重なギフトやお土産になる。持ち運びは18℃以下が望ましい
環境に優しくこの地を愛する人による明るく楽しいガイド

カカオファームツアー&チョコレートテイスティング

マウイ・クイア・エステイト・チョコレート

所在地: 78 Ulupono St, Ste 1 Lahaina, Maui
営業時間(店&カフェ): 9時~16時40分
ツアー実施時間: 毎日9時~14時30分(最終開始時刻)
所要時間: 90分
ツアー料金:
大人(13歳以上)95ドル
子供(3歳~12歳まで)75ドル ※3歳未満不可
支払い方法: クレジットカード、Google Pay
料金に含まれるもの:
カカオ農園のガイド付きツアー
カカオの栽培技術に関する洞察
9ピースのテイスティング
キャンセル費: 24時間前までは全額返金
Webサイト: カカオファームツアー&チョコレートテイスティング
※2025年6月時点ではツアーは英語のみ。チョコレートの製造工程を見学できるファクトリーツアーなども実施している

大澤陽子

ハワイで発行している生活情報誌「ライトハウスハワイ」編集長。日本ではラジオアナウンサー、ライターとエディターとして活動。2012年にハワイへ移住。新聞やハワイのガイド本などの編集に携わる。ハワイのビーチとビールをこよなく愛している。