ニュース

2044年までに北東アジアで1500強の新造機が必要。日本の航空3社が発注「737MAX」初号機は2026年納入目指す

ボーイング、民間航空機市場を説明

2025年12月11日 実施
ボーイング ジャパンが北東アジア地域における民間航空機市場について説明

 ボーイング ジャパンは12月11日、日本と北東アジア地域における民間航空市場について説明を行なった。登壇したのは民間航空機部門 マーケティング担当 副社長のダレン・ハルスト氏。

 まず全体の動きをみると、過去25年間で世界経済が倍増し、旅客輸送量は3倍に拡大している。旅客数が3倍に増えた一方、フリート規模(保有機材数)は2000年比で2倍に留まっているが、これは搭乗率の向上や航続性能の伸長、技術革新により航空各社が保有機材をより効率的に活用できるようになったことが要因であるといい、「世界の航空業界はパンデミック前の水準まで回復しただけでなく、2030年までには世界の航空トラフィックは2018年時点と比較しておよそ50%拡大する」と予測。

世界の民間航空旅客数は3倍、保有機材数は2倍に
パンデミック以降、航空産業の強い回復力を証明した

 日本市場では現在、訪日旅客数が過去25年間で4.3倍、訪日客の消費額が4倍となり、国際線便数は当時の2倍以上に増加している。「2030年代終盤までに年間6000万人以上のインバウンド旅客達成を後押しする成長軌道」であるという。特に東京は、太平洋横断の接続拠点として10年以上にわたり最大市場の地位を保ち、乗り継ぎ客数が過去10年で25%増えたとし、「10年前から今もなお太平洋を横断する乗り継ぎ客にとってナンバーワンの市場だ」と、世界の航空産業における日本市場の重要性を示した。

 また、日本のインバウンド成長は「アジアのほかの市場からの便数増加、特にシングルアイル機(単通路機)による運航便数の増加によって大きく支えられてる」とハルスト氏。日本の航空会社が運航する単通路機のフリートはこの20年間で3倍に増加し、平均飛行距離も25%以上伸びた。一方で、ワイドボディ市場では性能向上によって機材構成が大きく変わり、20年前に30%を占めていた747型機は姿を消し、現在は中型・小型の双発機がほぼ全体を占めるようになった。これによりワイドボディ機の平均飛行距離は30%以上伸長した。ハルスト氏はこうした変化を踏まえ、「航空会社はより効率的で航続距離の長い機材によって市場の広がりを実現してきた」と分析した。

2030年までに年間6000万人以上の訪日旅客数を達成見込み
東京は太平洋横断のハブ。過去10年で東京を経由する乗客数が25%増加した
日本の単通路機材数では過去20年で3倍
ワイドボディ機は中型・小型の双発機がほぼ全体を占めるように

 今後20年の見通しでは、北東アジア地域のGDPは年率1%強で成長し、旅客数は年率2.5%近く増加する見込みで、GDPの約2.5倍のスピードで旅客需要も伸びると予想。最も急速に拡大するのは北東アジアと東南アジア間の往復で、長距離市場や域内国内線は成熟市場ながら成長が続くという。この増加する航空需要に対応するため、「2044年までに1515機の新造機が必要」と説明。内訳は、単通路機(51%)とワイドボディ機(旅客42%と貨物6%)のほぼ半々で、単通路機770機、ワイドボディ旅客機640機、貨物機85機(旅客機改修型含む)としている。これに伴い、北東アジア地域では今後20年間でさらに13万4000人の人材(パイロット、整備技術士、客室乗務員など)が必要になる見込みという。

北東アジア地域の旅客数は年率2.4%での成長が予測される一方、機材数は今後20年間に年率1.6%での増加を見込む
北東アジア地域で増加する航空需要に対応するため、2044年までに1515機の新造機が必要

 製品別にみると、現在日本の航空会社は長距離路線の90%以上でボーイングのワイドボディ機(787型機や777型機など)を運航し、世界で2200機以上の受注数を誇る人気製品787ドリームライナーの成功にも大きく貢献したとハルスト氏。世界の787型機による運航便のうち4便に1便は日本発着で、現在運航されている787型機の10%を日本の航空会社が運航している。なかでもANAは世界で最も多くの787型機を運用。世界で派生型3種(787-8型機、787-9型機、787-10型機)すべてを運航する航空会社3社のうちの1社でもある。

 2025年受注・納入数においても787型機は、エアバス A350-900型機/330neoといった競合機材を上回る。部品遅れなどの要因から製造が追いつかず、2025年納入実績は4分の1に留まっているものの、航空機能性、乗務員の生産性、客室の快適性などの面で今後さらに787ファミリーを継続的に改良していき、「787が最高の機体であり続けるための努力をしていく」とした。

世界の787型機による運航便のうち4便に1便は日本発着で、現在運航されている787型機の10%を日本の航空会社が運航
2025年受注・納入数においても787型機は競合機材を上回る

 また、今年ANAとJALで日本での運航開始30周年を迎えた777型機についても、「北東アジア発の旅客を最も多く輸送する機材であり、引き続き日本の民間航空の成長において重要な役割を果たす」とした。また、今後未来を担うのが777型機を受け継ぐ次世代機「777X」。長距離路線で1便あたり最大426名の輸送能力を持ち、なかでも航空史上最大の双発ワイドボディ機である777-9型機は運航効率と乗客の快適性を両立する機種となっている。追加受注もあり、今後をけん引していく機種であるとした。

日本での運航開始30周年を迎えた777型機。北東アジア発の旅客を最も多く輸送する
運航効率と乗客の快適性を両立する次世代機777Xファミリーが今後をけん引

 単通路機では、今後「737MAX」の活躍が期待される。737MAXは最も稼働率の高い単通路機ファミリー(737-8型機、737-10型機など)で、737NGの系譜を受け継ぎつつ燃料消費量、排出量、騒音、運航コストといった面で優れ、従来機よりも平均後続距離が長い。(過去20年間で単通路機材数が3倍になった)日本市場にも適しており、すでに日本の航空会社3社(ANA、スカイマーク、JAL)が70機以上発注済みで、2026年中に初号機の受け渡しを目指している。

単通路機では「737MAX」に注目。ANA、スカイマーク、JALが70機以上発注済みで、2026年中に初号機の納入を目指している

 ハルスト氏は、日本の地理的位置が太平洋路線の接続において今後も重要な役割を果たすと強調。新興市場の需要を取り込みながら、日本発着・日本経由の旅客流動を押し上げることで、長期的な北東アジア地域の市場拡大が続くとの見通しを示した。