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星野リゾート、2026年に横浜/草津/奈良/広島/蔵王で開業。キャンセル料は最大30%に引き下げ、星野佳路氏「予約リスクを大幅軽減するための決断」
2025年10月22日 18:48
- 2026年4月27日 開館
星野リゾートは10月22日、「星野リゾート オンラインプレス発表会 2025秋」を開催し、2026年にかけて続々開業する新規施設についてプレゼンした。また、代表の星野佳路氏が新たに導入する独自の宿泊予約システム「FleBOL(フレボル)」やインバウンド需要を踏まえた2026年の観光業界動向について語った。
今後の開業施設
・LUCY尾瀬鳩待(2025年9月1日開業)
・リゾナーレ下関(2025年12月11日開業)
・OMO5横浜馬車道(2026年1月15日開業)
・OMO7横浜(2026年4月21日開業)
・奈良監獄ミュージアム(2026年4月27日開館)
・星のや奈良監獄(2026年6月開業)
・界 草津(2026年6月7日開業)
・界 宮島(2026年夏開業)
・界 蔵王(2026年秋開業)
まず、観光産業全体の動向について、「日経平均株価は毎日のように高値をつけ、皆さんもそろそろ感じているかもしれませんが、これってかつて私たちが体験したことのあるバブルなのではないか」と星野氏。しかし、経済が好調に見えるなかで、観光産業を取り巻く環境も大きく変わりつつあるという。
前回のバブルのとき星野リゾートはまだ軽井沢に1軒だったが、今は73軒あり、たくさんの開業案件を抱えている。「『お前が一番バブルじゃないか』と私自身も感じることはある」が、それでも開業を続けている理由は「所有と開発を離れ、“運営”に特化する戦略で成長してきた」から。開発から運営までを一貫して行なうのではなく、リスクの高い土地取得や開発段階はファンドに委ね、開業後の運営に専念することで安定的な成長を実現してきた。
「一旦運営が順調に利益を生み出すと、そこからは星野リゾート・リートのような長期投資家に買い取ってもらうことで、投資家と一緒に長期的な戦略で歩める」と語り、「バブルかもしれないし、違うかもしれないが、リスクを最小限にしながらこの波を乗り切ることが大事」と強調した。
続いてインバウンドの現状に言及。コロナ禍以降、観光需要が急回復しているように見えるが、実はその前から成長の兆しはあり、そしてその成長スピードが鈍化していると指摘。観光庁の統計によると、現在のインバウンド消費額は8.1兆円。国内旅行の25兆円と合わせて、観光産業は34兆円規模に達し、日本経済を支える柱となっている。
しかし、星野氏は「デジタル赤字の多くを観光収入が相殺している」としながらも、「私たちの予測では2025年の訪日外国人は4200~4300万人で収束するのではないか。成長スピードは落ちてきており、そろそろフラットアウトしていく(平らになる)」と分析。
「国は6000万人を目指しているが、私の感覚では4000万前後になる可能性がある。同じ島国であるイギリスも4000万前後でフラットアウトしている」と述べ、日本もブームで終わらせず持続可能な観光構造を築く必要があると訴えた。
また、「落ち始めるきっかけは大体、顧客満足度の低下なんです。満足度が下がり始めてから3~5年後に実数が落ち始める」と指摘。これはプロダクト・ライフサイクル理論と呼ばれ、証明されている傾向。
混雑するスキー場や空港、宿泊税の上昇など、いろんなネガティブな情報も出始めているなか、「日本は一旦、インバウンドの満足度をしっかり確保できる状態にしてから、次の高みを目指さなくてはいけない」と述べた。
発表の中心となったのが、10月23日に運用を開始する自社開発の新予約システム「FleBOL(フレボル)」。星野リゾートが「旅をもっと楽しくするためのシステム」と位置付け、16年前から構想してきた。これまでホテル業界では「1泊2食付き」が基本だったが、フレボルは宿泊、食事、アクティビティを自由に組み合わせられるようにしたもので、「スマホ1つで移動、宿泊、食事まで、ショッピングを楽しむように自分らしくコーディネイトできる」という。
システムの開発には18億円を投資しており、「採算が合うかは分からないが、私はここにキャリアをかけるぐらいの覚悟はある」と星野氏。予約後の人数変更、広さや露天風呂付きといった客室タイプ変更、延泊などをオンライン上で自由に行なえるようにしたことで、ホテル業界が長年踏み出せなかった“当たり前の自由”を実現していく。まずは全国のすべての「界」と山岳リゾート「LUCY」から導入を始め、2026~2027年には全施設での展開を目指す。
これに伴いキャンセル規定も見直し、従来100%だったキャンセル料を最大30%に引き下げる。「予約リスクを大幅に軽減するための決断」とし、「お客さまの立場からすれば、100%のキャンセル料は大きな不安。私たちは顧客のリスクを下げ、予約しやすくする方向に踏み切る」と述べた。
また、今後のOTA(オンライン旅行代理店)との関係にも言及し、「OTAを排除するために自社予約率を高めてきたわけではなく、フェアで対等なパートナーシップを組むため」と説明。
「ある宿泊施設がすべてのOTAと契約して、すべてのOTAの環境上で自社の宿泊施設を最適化することは非常に難しく、労力がかかること。各OTAにとっては同じ商品を単にリストしてるだけなので、宿泊施設ごとにコミットする理由がない」という。たとえば温泉旅館ブランド「界」は、旅行予約サイト「じゃらん」と国内で独占契約を結んでおり、他のOTAには掲載していない。「同じ目標を持って一緒に取り組むことができている」と説明した。
近年、予約トラブルが多発した海外OTA「Agoda(アゴダ)」についても、「転売ルートはすでにアゴダ側でカットしてくれた。今は問題のある予約はほとんどなくなった」と明かし、「素早く対応してくれたアゴダの担当者には感謝している。アゴダに限らず、今後も我々と一緒に取り組もうとするエージェントとは、互いにとってプラスになる関係を築きたい」との旨を語った。













































