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大阪メトロの顔認証改札で大阪・関西万博へ行ってみた。“顔パス”で新大阪から夢洲へ、利用方法を解説

2025年4月 時点
顔認証改札サービスを利用して大阪・関西万博へ行ってみた

 Osaka Metro(大阪市高速電気軌道)は、ウォークスルー型顔認証改札サービスを3月25日から提供している。

 顔認証改札は、2025年大阪・関西万博に向けたキャッシュレス・チケットレス改札の取り組みの一環。これまでは実証実験に参加するOsaka Metroの社員や車椅子の利用者など、利用対象者が限定されていたが、このたび対象のデジタル乗車券を購入すれば誰でも使えるようになった。

「大阪・関西万博の会期はたった半年間だけど、開幕に向けて身近な街中でも“未来の技術”はたくさん生まれているはず。その情報をもっと伝えたいのに……」とひそかに思っていた大阪生まれの記者。

 ちょうど大阪・関西万博メディアデーへ参加する機会を得たので、開催日(4月9日)の前後含めた3日間、顔認証改札サービスのみで新大阪~梅田~本町~夢洲間を移動してみた。

本町駅に設置されている顔認証改札

顔認証改札サービスに対応している乗車券

 顔認証改札サービスを利用するには、事前にe METROアプリ(Android/iOS版)でデジタル乗車券を購入し、顔情報を登録する必要がある。

 対応しているデジタル乗車券は、Osaka Metro 26時間券・48時間券のみ(2025年4月時点)。乗車券の有効期間内であれば、ほぼ全駅(全134駅中130駅)で利用できる。

Osaka Metro 26時間券/48時間券

利用区間: Osaka Metro全線(いまざとライナーを除く)
価格:
[26時間券]大人1100円、子供550円
[48時間券]大人1800円、子供900円
※大阪・関西万博の入場チケット(一日券)とのセット販売あり

e METROで販売しているデジタル乗車券

 日帰りで新大阪~夢洲(430円)の往復のみだと、通常のきっぷ・ICカード・タッチ決済のほうがお得。1泊2日の場合、例えば新大阪~本町(240円)、本町~夢洲(380円)をそれぞれ往復すると、26時間券のほうがお得になる。

 会場へ向かう前に弁天町で手荷物を預けたり、前後の日に梅田やなんばで食事・買い物したりなど、2泊3日かつ何度も途中下車したい人は48時間券の利用を検討してほしい。

 大阪城天守閣や天王寺動物園など、大阪市内20か所以上の対象施設でデジタル乗車券を提示すると、割引サービスも受けられる。

 なお夢洲駅を利用せず、大阪メトロを何度も乗り降りしたい場合は、1日乗車券「エンジョイエコカード」(平日820円、土日祝620円)のほうが安くなる。

エンジョイエコカード(平日に撮影)

デジタル乗車券(26時間券/48時間券)の購入手順

 ここからはデジタル乗車券の購入から顔認証改札の通過まで、実際の利用手順を紹介する。

 まずはe METROアプリをダウンロードして、e METRO IDの会員登録を行なう。顔写真の登録はマイページから可能。無地の背景で顔が明るい写真を事前に用意するか、その場で撮影しよう。顔写真の登録を終えたら、乗車券の購入に使用するクレジットカード情報を登録する。

 続いて「MYチケ」→「チケット購入」→「鉄道」→「26時間券/48時間券」を選択し、先ほど登録したクレジットカードでデジタル乗車券を購入しよう。「利用開始」を押すまでは有効期限のカウントダウンが始まらないうえ、申し込みのキャンセル(払い戻し)もできる。前日や新幹線での移動中にあらかじめ乗車券を買っておくとスムーズに利用できるのでお勧めだ。

 最後に利用開始を押して、「顔認証の利用」設定に進もう。顔認証と利用する乗車券を紐付ける作業なので、設定完了するまでそれほど時間はかからない(顔写真の利用可否はマイページでの情報登録時に判定される)。今回は帰宅ラッシュ時間に手続きを行なったものの、「顔認証準備中」から「顔認証利用中」に変わるまで1分もかからなかった。

顔写真の登録
クレジットカード情報の登録
チケット購入
未使用の場合は手数料無料で払い戻しが可能
チケット利用開始
顔認証の利用設定は、チケット利用中のみ手続きを行なえる
「顔認証利用中」の表示になると、顔認証改札を利用できる

いよいよ顔認証改札を通過

 記者が利用した顔認証改札は、新大阪、梅田、本町、夢洲の4駅。本町や梅田では複数の改札口を利用したが、3〜4台と利用者の少ない改札口でも各1台は設置されていた。

 大阪・関西万博会場の最寄り駅・夢洲には自動改札機が16台あり、出口から2番目に遠い場所に顔認証改札がある。出口側からみて手前にある通常の改札機は混んでいたが、奥にある顔認証改札は利用者が少ないのもあってかなり空いていた。

夢洲駅の改札口は1か所のみ
顔認証以外の複数サービスに対応している改札機は少し並ぶことが多い(写真は梅田駅で撮影)
ついにお披露目!開業間近の夢洲駅に潜入!改札階編【Metro News #103】

 顔認証改札は一方通行で、通過中の人がいると反対側からは侵入できないよう「×(バツ)」のマークが表示される。実際に動いているところは確認できなかったが、通過できない場合(認証エラー)に閉まるゲートのような設備も見受けられる。

 認証用カメラは左右に設置されているが、認証状況を案内する画面は向かって右側のみ。通過前は「Welcome」、近づくと「お進みください」、通過中は「ありがとうございました」というメッセージと認証番号が表示される。

 利用期間中であれば、同じ駅でも何度でも出入り可能。接近~認証完了にかかる時間は想像していたよりも短く、早歩きでも立ち止まることなく通過できる。具体的には、交通系ICカードと比べるとわずかに遅く、Apple Watchやクレジットカードのタッチ決済よりはやや早い印象だった。

 それに改札の幅が広めなので、たくさん荷物を持っていても通りやすいのが便利。初日はホテルまでやや小さめのスーツケース(新幹線の荷物棚に収まるサイズ)を持っており、2日目の取材日はリュック+カメラバッグを背負っていたが、いずれもスムーズに通過できた。

 さらに3日目はメガネをかけていたものの、カメラをまっすぐ見ていたからか、認証完了までの時間は特に変わらなかったように思う。もし顔認証がうまくいかないときは、アプリからQRコードを提示して通過することもできる。

 何かをかざすことなく顔パスで利用できるので、夢洲駅で利用すると、万博会場(非日常)と地下鉄(日常)を行き来するための“どこでもドア”を使ったような、ちょっと特別な気分も味わえる。

通過中は一方通行になっている
認証用カメラは左右(計2か所)に設置されている
認証用カメラの撮影範囲
認証状況を案内する画面は進行方向の右側のみ
認証済みの画面

顔認証改札のメリット、今後に期待すること

 旅行者にとっては前述のとおり、荷物がたくさんあるときにスマホやICカードを取り出したり、かざしたりする必要がないのが最大のメリットだと感じた。利用履歴はアプリから確認できるほか、インボイス対応の領収書も宛名を指定して発行できるので、出張時にも便利。

 また顔認証改札では、カメラをまっすぐ見る必要がある。顔認証改札が普及することで、歩きスマホ防止にもわずかながら効果がありそうだ。

 ただし大阪エリアの在住者にとっては、どの駅でも“顔パス”で、いつも空いている改札機を通過できるというメリットはあるものの、デジタル乗車券がやや割高で、夢洲駅に行かない場合はほかの乗車方法を選ぶだろう。実際に4月8日~10日の2泊3日で、自分以外の利用者を目撃することはなかった。

 例えば、通勤・通学定期券やPiTaPaのポストペイ(後払い)機能・利用額割引と連動し、より金銭的なお得感があれば、利用者が一気に増えるかもしれない。

 いずれは事前に乗車券を購入することなく、顔情報に紐付けたICカードやクレジットカードで、いつでも・誰でも自由に乗り降りできるようになってほしい。

JR大阪駅・うめきた地下口改札に設置されている顔認証改札機。顔認証がエラーになった場合に備えて、ICカードリーダーを搭載している