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離島や山小屋などがauのエリアに、KDDIがStarlink基地局の運用をスタート

2022年12月1日~

Starlink基地局の電波発射セレモニーを行なう高橋誠氏(左)とJonathan Hofeller氏(右)

 KDDIは12月1日、静岡県熱海市初島でスペースX(Space Exploration Technologies)の衛星通信サービス「Starlink」をau通信網のバックホール回線として使用した基地局の運用をスタートした。

 同社では、Starlinkの通信サービスを法人・自治体向けに提供する「Starlink Business」を発表しているが、同事業が小さなスポットでWi-Fiや有線LANを利用できるようにするのに対し、今回の取り組みは、auの携帯電話網を構成する1つの基地局として稼働させようというものとなる。

 一般的な基地局ではバックホール回線に光ファイバーが使用されるが、離島や山間部など、光ファイバーの敷設が難しい場所もある。同社では、無線エントランスや静止軌道衛星を使い、こうした場所で基地局を運用してきたが、新たに低軌道(高度550km)上を飛ぶStarlinkの衛星を活用する手段が加わる。同社によれば、静止軌道衛星と比べ地表からの距離が近いため、大幅な低遅延と高速伝送を実現できるという。

イーロン・マスク氏が経営するスペースXの衛星通信サービス「Starlink」を活用

 同社では、今回のStarlink基地局ソリューションを「Satellite Mobile Link」と名付け、「Starlink Business」とあわせ、希望する法人や自治体向けに月額制で提供していく。

「すずめの戸締まり」とのコラボCM内にさり気なくStarlink基地局が登場

 初島に設置されたのは、その第1弾となり、12月1日の正午過ぎに同社 代表取締役社長の高橋誠氏とSpaceXのVice President of Starlink Commercial SalesであるJonathan Hofeller氏が基地局のスイッチをONにするセレモニーが行なわれた。

 セレモニーでは、基地局の稼働前は圏外だったiPhoneを一旦フライトモードに切り替え、フライトモードをオフにすると、4Gという表記とともに電波感度良好なアンテナピクトが現われる様子が披露された。

セレモニー前
セレモニー後

 高橋氏はセレモニー直前の挨拶において、同社が支援する映画「すずめの戸締まり」とのコラボCM内に実はStarlink基地局がチラッと映っていることを明らかにするとともに、改めて同社が掲げる「日本のどこにいても、つながらないがなくなるように。」という目標達成に取り組んでいく意向を示した。

「すずめの戸締まり」とのコラボCM内にさり気なく登場していたStarlink基地局

 Starlink基地局の稼働後には、高橋氏の前にiPhoneが立てられ、「すずめの戸締まり」で主人公・岩戸鈴芽の声を担当する原菜乃華とテレビ電話でやり取りする様子や、新海誠監督からの祝福のビデオメッセージが披露された。

原菜乃華とテレビ電話で会話する高橋氏
新海誠監督からはビデオメッセージが寄せられた

観光地や登山者が多い山などのエリア化を推進

 ちなみに、初島全域はこれまでもauのエリアだとされてきたが、本州から見て島の裏側となるごく一部では、島の山陰となるため電波が不安定な状況となっていた。

 KDDIでは、7月より富士急グループのピカが運営するリゾート施設「PICA初島」で、最新テクノロジーを用いてこれまでに無いグランピング体験を実現する取り組みを行なってきたが、PICA初島の入浴施設「島の湯」付近が、ちょうどこの電波が不安定な場所に位置しており、最初にカバーされることになった。

PICA初島のほとんどのエリアは島の高台にあるため、以前から快適に通信できていた
グランピングが楽しめるコテージが並ぶアイランドヴィラ
レストランがあるアジアンガーデン
島の裏側にある「島の湯」付近だけ通信が不安定だった

 高橋氏は、セレモニーの中で、離島のほか、山小屋や山間部など、全国1200か所以上でStarlinkを使った基地局の運用していくことを明らかにした。

 KDDI 事業創造本部 LX基盤推進部長の泉川晴紀氏によれば、1200か所のすべてが今回のように新規に基地局を設置するわけではなく、無線エントランスや静止軌道衛星を使ってきた基地局をStarlinkに切り替えるものも、この数字に含んでいるとのこと。

KDDI 事業創造本部 LX基盤推進部長の泉川晴紀氏

 泉川氏は、1200か所への導入のスケジュール感については「なるべく早く展開していきたい」と述べるに留まったが、「お客さまがお使いになられるところを中心にスケジュールを考えている。観光地や登山者が多い山などを考えている」としており、auだったら快適に通信でき、写真や動画をいち早くシェアできるという場所が増えていくのかもしれない。

「PICA初島」での取り組みを説明するKDDI マーケティング統括本部 マーケティング企画部 マーケティング企画2グループリーダーの長井栄子氏
モーニングサービスのジェラートを届けるスマートドローン
PICA初島内の複数箇所に手軽に高画質で記念撮影が行なえる「マチカメ」が設置されている
マチカメは、撮影スポットの切り株にICタグ付きのリストバンドをかざすことで起動できる
「流星ハンモック」での撮影
「空と海とブランコ」での撮影
撮影イメージ。チェックアウトする際に各所で撮影した写真を元に作られた動画がプレゼントされる
バーベキュー用のグリルなどが使える宿泊用コテージ「アイランドヴィラ テラス」
最大6名での利用が可能
一般家屋同様のお風呂やトイレが付いている
さらにリッチな体験ができる「アイランドヴィラ プレミア」
簡素な作りの「アジアンリゾートヴィラ」(バス・トイレなし)
アスレチックでアクティブに楽しめる「初島アドベンチャーSARUTOBI」
熱海から眺めた初島の全景
空室・料金チェック