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神奈中は一挙に6路線。「免許維持路線」バス廃止が相次ぐ2025年春
2025年3月31日 13:00
「1日1本」「週1本」「年1本」など、利用しづらいバス路線は、俗に「免許維持路線」と呼ばれる。
いったん廃止してしまうと、復活する際に「関連省庁からの再認可」「自治体・警察との折衝、周辺住民への説明」という時間と手間が生じるため、利用実績が今一つでも、最低限の体制で運行を維持している……とも言われるが、バス会社が理由を公表していない場合も多く、本当に免許維持が目的かは不明だ。
そんな免許維持路線バスも、近年は廃止が相次いでいる。特に、神奈川中央交通(神奈中バス)は2025年3月をもって、以下6系統のバス路線を一挙に廃止した。
2025年3月28日最終運行
桜84系統: 聖蹟桜ヶ丘駅~南大沢駅~相模原駅北口
(京王バスと共同運行、神奈中は1日3往復)
90系統: 中山駅北口~さつきが丘~青葉台駅
(平日2往復)
町82系統: つきみ野駅~町谷原~町田バスセンター・町田ターミナル前
(1日2往復)
町73系統: 青葉台駅~田奈駅~町田ターミナル前・町田バスセンター
(平日片道1本)
2025年3月29日最終運行
淵24系統: 淵野辺駅北口~図師~登戸駅
(土曜1往復)
2025年3月30日最終運行
南01系統: 南町田グランベリーパーク駅~東名横浜町田インター~若葉台中央
(休日1往復)
一斉廃止と聞くと一大事に聞こえるが、実際にはあわせて10往復にも満たない。免許維持路線と呼ばれて久しいこれらの路線は、なぜ存続してきたのか?
ラッシュのなかを1時間! ゆったり免許維持路線(淵24系統)
JR横浜線 淵野辺駅~JR南武線 小田急本線 登戸駅間を結ぶ「淵24」は、相模原市・町田市・川崎市麻生区・川崎市多摩区を1時間かけて移動する。途中で通る「津久井道」「芝溝街道」などの道路は混雑が激しく、週1往復の運行は、復路の登戸駅発が遅れることもある。
もともとは小田急バスと共同運行であったものの、昭和40年代の時点で「小田急3往復、神奈中3往復」という極小の運行であったようだ。
各ルートでちょくちょく小田急バスと競合しているうえに、登戸駅~鶴川駅間は小田急小田原線と並走しており、廃止はやむを得ないだろう。なお途中の小田急線 生田駅近辺では、小田急バスの免許維持路線「向ヶ丘遊園駅~生田折返場」(土曜のみ1便運行)を終了するため、生田駅前(北口)バス停は「2本の週1運行・免許維持路線が同日に廃止」というめずらしい事態が起きる。
2社共同運行が2社とも撤退!(桜84系統)
聖蹟桜ヶ丘駅間から相模原駅北口まで、鉄道のスキマを縫うように走っていた「桜84」も廃止となる。このバス路線は、午前中が京王バス運行で3往復、午後が神奈中で3往復を運行、なんとかそれなりの運転本数を保ってきた。
聖蹟桜ヶ丘駅から乗車すると、川崎街道からすぐ野猿街道に入り、南下して「尾根幹」(南多摩尾根幹線道路)に入る……と思いきや南側に抜け、八王子市の端にある「霊園」「ペットメモリアルパーク南多摩」近辺をかすめ、境川を越えて相模原駅へ。多摩市・八王子市・町田市・相模原市を1時間かけて横断する、乗りごたえがある免許維持路線バスであった。
なお、霊園が密集するエリアの「坂上」バス停廃止により、墓参りの際は淵65・上中村バス停から少し歩く必要がある。道中はそれなりの坂道が続くため、高齢の方には不便になってしまうのが気がかりだ。
分割・存続した「かつての長大路線バス」。(90系統、町73系統、町82系統)
中山駅北口~青葉台駅間の「90系統」と、青葉台駅~田奈駅~町田バスセンター間の「町73系統」は、2016年まで運行していた「町71系統」(中山駅北口~青葉台駅~町田バスセンター)の分割によって誕生した。
町71系統は距離的な長さから定時運行が難しく、かつ町田~青葉台駅間が後払い、中山駅~青葉台駅間は東急バス・市営バスに合わせて前払いと、ややこしい問題も発生していた。こちらも早々に1日1往復化しており、「免許維持路線のまま2分割した」という、めずらしいバス路線だ。
中山駅~青葉台駅間は横浜市営バス・東急バスが高頻度で運行し、青葉台駅~町田間は、途中の長津田駅~町田駅間で「町77系統」がある。一応残していた「かつての長大路線バス」免許が役目を終えたと言えるだろう。
また町田市内と東急田園都市線 つきみ野駅を結ぶ「町82系統」も、つきみ野駅からさらに南下して小田急・相鉄の大和駅を結ぶ、南北移動の長大路線バス「町80系統」が短縮されて、町田市内~つきみの駅間だけが残ったものだ。
ただ、つきみの駅の1駅西側の「中央林間駅」、さらに大和駅には小田急江ノ島線が直通している。そこまでバスの需要はなく、町80の末期は運転本数も1日7往復程度であった。あとを引き継いだ町82もじりじりと減便、1日2往復まで減少したところで廃止を迎える。
別ルートへの市営バス延伸が運命を変えた?(南01系統)
おおよそ1.3万人が住む住宅街「横浜若葉台団地」(横浜市旭区)から都県境を越え、3kmほど西側にある東急田園都市線 南町田グランベリーパーク駅(東京都町田市)を結ぶ。今は「休日に1往復のみ」だが、もともとは都心への通勤を担うバス路線であったという。
昭和50年代に開発が進んだこの団地で、鉄道駅に向かうバスは、JR横浜線 十日市場駅行きの市営バスか、田園都市線 南町田駅(当時)の二択だった。都内への通勤はもちろん「南01系統」頼みで、それなりの運転本数もあったという。
しかし1981年ごろに、十日市場駅行きの市営バスが、田園都市線の全列車が停車する青葉台駅に延伸。若葉台から南町田経由で都内に向かうルートは遠回りということもあり、乗客が流出してしまった。
現在、若葉台中央~青葉台駅間は横浜市営バスの23・55・65系統、東急バス青23系統などが数分に1本は発車している。一方で南町田方面は距離としては近い(3km程度)ものの、都県境を越えることもあって存続の必要がなくなったのだろう。
西武バスでも「大正時代から100年走ったバス路線」が廃止へ
西武バスの「小手03系統」(八高線 箱根ヶ崎駅~西武池袋線 小手指駅)も、3月末(最終運行は3月29日)をもって姿を消す。末期は「土曜・小手指駅行きの片道1本のみ」であったこの路線の開業は、101年前(1924年)のことだという。
当時はまだ八高線が開業しておらず、鉄道がなかった宿場町・箱根ヶ崎を経由して所沢~箱根ヶ崎~青梅間を結ぶという、一大長距離路線バスであった。その後、西武池袋線が直通する区間が廃止となり、小手指駅~箱根ヶ崎駅のみに。このエリアの西武バスは、1996年の八高線の電化・改良で、早々に牙城を崩された感がある。
今回の小手03廃止で、狭山ヶ丘駅を含む15のバス停が廃止となり、狭山ヶ丘駅に乗り入れるのは所沢市「ところバス」だけとなる。なお西武バスは廃止理由を発表しており、「乗務員の人員不足、いわゆる2024年問題(自動車運転者の労働時間等の基準改正)への対応やお客さまのご利用状況等を鑑みて」とのことだ。
年1日「春分の日」のみ! 京都バスの免許維持路線も一挙に休止
全国各地の免許維持路線で、もっともバスの運行が少ないのは「年1本」。特に、春分の日に最大で11路線を運行していた京都バスが知られている。
そんな京都バスも、2025年の春分の日を前に「29系統」(国際会館駅前長谷八幡宮~岩倉村松)、「46系統」(烏丸北大路~北山駅前~深泥池~国際会館駅前)など、4系統が「3月1日から休止」、春分の日の運行は前年が最後となった。
京都は突然観光ブームが訪れることも多く、京都バスは「免許を維持するために運行している」と、めずらしく認めている方だ。しかし、春分の日路線の減少や、これまで小型車2台運行であった95系統が大型車1台に集約されるなど、年1日の運行体制もやや縮小気味だ。