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大阪・伊丹空港がグランドオープン。買い物や食事を楽しめる物販/飲食店が並ぶウォークスルー型商業エリア新設
2020年8月5日 18:56
- 2020年8月5日 グランドオープン
関西エアポートは8月5日、約50年ぶりとなる大規模リニューアルを終えた伊丹空港(大阪国際空港)をグランドオープンした。同日、同社 代表取締役社長 CEO 山谷佳之氏らがテープカットセレモニーを行なった。
同社は2015年2月から伊丹空港のリニューアルに着手し、2018年4月に中央エリアと屋上エリアを先行オープン。その後も順次、リニューアルを進めてきた。リニューアル内容の詳細については後述する。
伊丹空港のグランドオープンにあたり山谷氏は、2016年4月1日に新関西国際空港株式会社から運営を引き継ぎ、最初の大きなプロジェクトであり、各社が知恵を寄せ合って「プレミアム関西」の言葉を生み出し、「関西らしさを残し上質な空間を提供する」との目標でプロジェクトを進めたことを説明。
その実現のために「お客さまが利用する空港をストレスなく、より安全に、より清潔に過ごせるターミナルになるよう工夫している」と空港機能を強化したこと。「空港はワクワク、ウキウキする、華やかな場所でなければならない。それが空港の一つの大きな魅力であり、近隣の皆さまにお越しいただいたときに楽しんでいただけるよう仕掛けを作ってきた」と紹介。
さらにソフト面においても、「2年前にオープンした中央エリアを含めて多くのお店に出店いただき、以前から伊丹空港で営業しているお店、空港利用者、近隣の皆さまと交わることで新たな価値を提供できないか工夫していただいた。(グランドオープンの)今日が終わりではなく、今後、関西エアポートも、全体として新しい価値を提供することができないか考え続けたい」と話した。
関西エアポートからは専務執行役員 最高技術責任者 マチュー・ブティティ氏もあいさつし、「新型コロナウイルスという危機に直面しているが、国内線需要は戻りつつある。この伊丹空港のグランドオープンが、関西経済、需要回復のシンボルとなれば」と述べた。
来賓としてあいさつした、大阪国際空港周辺都市対策協議会 会長で伊丹市長の藤原保幸氏は、伊丹市で生まれ育った飛行機好きで、国内外の空港を見てきたなかで「伊丹のビルは歴史を重ねてきたといえば聞こえはよいが、若干古びてきた。最先端の空港は、本当にワクワクするような楽しい空間で、飛行機の利用者は効率的に乗り降りできる空港ビルになっていると内心思っていたなかでのリニューアルだった」と話し、空港を運営しながらの改修工事の苦労に対して、関係者をねぎらった。
また、伊丹市が市制80周年を迎えることに触れ、「伊丹市の誕生以来、空港とともに生きてきた街。環境問題などの紆余曲折があったが、現在は周辺自治体と空港共生都市宣言をしており、課題がないとは言わないが、未来に向けて空港とともに発展していく、ともに生きていくと考えている」とし、リニューアルオープンに対し「大きな課題となっている地域経済、社会の活性化にもつながるのではないか。グランドを契機に、空港周辺自治体もともに発展していきたい」と話した。
このほか、「清酒発祥の地」を標榜する伊丹市と神戸市、尼崎市、西宮市、芦屋市が共同で申請した、清酒文化のストーリー「『伊丹諸伯』と『灘の生一本』下り酒が生んだ銘醸地、伊丹と灘五郷」が文化庁の日本遺産に認定されたことに触れ、「新型コロナウイルス感染症の状況なので控えているが今後、キャンペーンを行なっていく。しかるべき段階で空港も活用しながら誘客できれば、ますます空港と地域との相乗効果が出てくるのでないか」とアピールした。
続いて、新関西国際空港 代表取締役社長 千代幹也氏があいさつ。「伊丹空港は若いころから利用していたが、時代が移り変わるに従って、みんなが空港に対して期待している、望んでいる姿からかけ離れていくようで歯がゆい思いをしていた。2年前の中央エリアのオープンで皆さんも感じられたのではないかと思うが、本当に変わったと心から思った。一番印象的だったのは、地元の方々がご家族、子供連れで遊びに来られるのを目の当たりにして感銘を受けた」と話し、「コロナ禍で厳しい出発だが、伊丹空港が地域発展、関西発展の核として、ますます発展していくことを祈念したい」と述べた。
最後に、国土交通省 大阪航空局 大阪空港事務所長 河合良則氏があいさつし、「ターミナル内は工事現場という様子だったが、進展に伴い、導線が変わったり、リニューアルが終わった部分が姿を見せたりして、変化していくさまを楽しみにしていた」と述べ、出発エリアのリニューアルにより、国交省が推進する「ファストトラベル(FAST TRAVEL)」が進展していることを評価。加えて、「航空保安業務を提供している航空局の職員としては、お客さまの多い活気のある空港で業務を行なうのは張りがある。そのためにも新型コロナウイルス感染症が早期に終息し、お客さまが安心して旅行を楽しめる日が一日も早く訪れることを願うばかり」と話した。
国内線空港初のウォークスルー型商業施設を保安検査場通過後に整備
段階的にリニューアルが進められた伊丹空港のリニューアルでは、2019年10月から11月にかけて保安検査場のレイアウトを大きく変更。従来は南北出発ロビーに上り/下り各2基あったエスカレータが中央寄りのみになり、エスカレータを上がった2階すぐの位置に変更になった。
その保安検査場通過後から搭乗口が並ぶコンコースまでの区域に、国内線空港としては初めてとなるウォークスルー型商業エリアを整備。曲がりくねった通路によるエリア内の回遊性を促進している。
従来の伊丹空港は保安検査場通過後の店舗は空港内各所に点在していたが、南(ANA)側に17店舗、北(JAL)側に14店舗が集中的に出店。物販店は南側9店舗、北側6店舗、飲食店は南側8店舗、北側6店舗、その多くが新規出店となる。
また、保安検査場通過前の一般エリアにもお土産店が新たに設けられ、出発前の商業施設を大幅に拡充した格好となる。なお、出発エリアへの出店とはなるが、到着後に訪れることも可能だ。
グランドオープン初日は、搭乗客へのノベルティ配布も実施。オープンした各店では、伊丹空港限定品や、期間限定のオープニングセール、オープン記念品の販売などを行なっている。
南(ANA)側の商業エリア
南(ANA)側/保安検査場通過後の商業エリア出店店舗【17店舗】
じゃらんマルシェ: 物販(菓子・雑貨・旅行情報誌)
アンリ・シャルパンティエ: 物販(洋菓子)
中村藤吉本店: 物販(日本茶、菓子、実演販売)
浪芳庵: 物販(和菓子、実演販売)
ANA FESTA: 物販(土産)
カルビープラス: 物販(菓子、実演販売)
むぎとオリーブ: 飲食(ラーメン)
たこ家道頓堀くくる: 飲食(たこ焼・明石焼)
道頓堀 今井: 飲食(うどん、丼、土産)
鶴橋 白雲台: 飲食(コリアンダイニング)
寿司 魚がし日本一: 飲食(立喰い寿司)
堺 銀シャリ げこ亭: 飲食(和食)
スターバックス: 飲食(スペシャルティ コーヒーストア)
ViTO: 飲食(ジェラート)
いっぴんさん。: 物販(食品・雑貨等)
ANA FESTA: 物販(コンビニエンスストア)
豊岡鞄: 物販(バッグ、サイフ、小物)
北(JAL)側の商業エリア
北(JAL)側/保安検査場通過後の商業エリア出店店舗【14店舗】
旅・SORA: 物販(土産)
りくろーおじさんの店: 物販(洋菓子、カフェ)
喜八洲総本舗: 物販(和菓子、実演販売)
ITAMI Marché BLUE SKY: 物販(土産)
中川政七商店 分店 旅: 物販(土産、雑貨)
TABITUS+: 物販(旅行雑貨)
&COFFEE MAISON KAYSER: 飲食(カフェ)
大阪たこやき たこぼん: 飲食(たこ焼き)
どうとんぼり神座: 飲食(ラーメン)
美々卯 空味: 飲食(麺類・丼)
京出汁おいなり 釣狐: 飲食(和食、甘味)
天然本まぐろ ありそ鮨し: 飲食(寿司)
グラン・ブルー: 飲食(ラウンジ&バー)
SORADELI: 物販(食品、雑貨)
グランドオープンまでにリニューアルが進められた空港各所。保安検査場のスマートレーン化も完了
伊丹空港のリニューアルに関しては、冒頭でも触れたとおり2018年4月に中央エリアを先行オープン。それまで南北に分かれていた到着ロビーを中央に集約し、到着ロビーの商業施設拡充や公共交通機関へのアクセスを分かりやすくした。
その後、2019年には北立体駐車場を新築。大阪モノレール駅と北立体駐車場を結ぶ、滑走路をイメージしたデザインの連絡通路も2020年6月26日より利用できるようになった。
さらに、2019年10月には、以前は北(JAL)側の到着ロビーだった建屋を活用し、レンタカー会社5社がカウンターをならべるレンタカーステーションをオープン。目前のタクシー発着場だった場所もレンタカーステーションのスペースとして活用することで、ターミナルビルから直接レンタカー発着ができるようになっている。
そのレンタカーステーションの目の前には、新たに建屋を建設。これは長距離バス待合所として設置されたもので、8月1日からは同建屋内でレンタルバイク専門店「レンタル819」も営業を開始。3600円/4時間利用のコースから用意される。
保安検査場は検査の処理能力(速度)を高められるスマートレーン化を推進しており、トライアルとして一部先行導入をしていたが、南北保安検査場のすべてのレーンをスマートレーン化。トライアル時に導入された13.7mのレーンよりも長尺(15.7m)の新たなスマートレーンを増設している。加えて、ベビーカーなどがスムーズに通れる「ストレートレーン」を南北各1レーン用意している。
また、搭乗/降機時の導線となるコンコース上にはムービングウォークを増設。リニューアル前の2基から14基へと増設した。
こうして進められた一連のリニューアルにより、ANA、JALともに出発ロビーの機能や導線にも変化が生まれている。南北それぞれの出発ロビーについても別記事でお伝えする。