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成田空港、A滑走路の発着時間「1時間延長」で地元と合意。「今日は本当に重要な第一歩を歩むことができた」と夏目社長

10月からの冬ダイヤで23時から0時へ延長。LCCなどが関心

2019年2月4日 開催

成田国際空港株式会社 代表取締役社長 夏目誠氏

 国土交通省、千葉県、空港周辺9市町(成田市、富里市、香取市、山武市、栄町、神崎町、多古町、芝山町 、横芝光町)、NAA(成田国際空港)は2月4日、「成田空港に関する四者協議会」を芝山町役場で開催した。

 2018年年3月13日に行なった四者協議会ではA滑走路の夜間飛行制限延長、「C滑走路」の新設など、成田空港のさらなる機能強化について合意しているが、その取り組み状況を確認し、A滑走路の夜間飛行制限を従来の「6時~23時」から「6時~0時」へと1時間延長する変更時期を、2019年冬ダイヤ(10月27日)からとすることをあらためて確認した。

 2018年12月に開催した前回の四者協議会では騒音対策、環境対策について国交省やNAAから「具体的な対策が見えてこなかった」とする地元からの意見で会の同意が得られていなかったが、今回の協議会で地元を含めての実質的な合意に至った。成田空港の発着時間が延長されるのは開港40年以上のなかで初となる。

協議会として夜間飛行制限の変更実施時期を2019年冬ダイヤからすることに同意

成田市 市長 小泉一成氏

 四者協議会のあとに開いた記者会見で、地元を代表した成田市 市長の小泉一成氏が協議会で取り交わされた内容を説明した。

 主な内容は、12月の協議会で結論を持ち越したA滑走路の夜間飛行制限変更の実施時期について、国、空港会社から地域の意見を踏まえた検討結果を聞き、関係市町から意見を聞いたというもの。会議では、国、空港会社からはあらためて2019年冬ダイヤからの制限変更の必要性について説明があり、合わせて空港周辺市町の航空機騒音の現状について理解し、今まで以上に騒音防止対策、地域振興策に取り組むとともに、いっそう努力していきたいとの発言があった。

 9市町としては、2020年東京オリンピック・パラリンピックを万全の態勢で迎えたいという成田空港機能強化への考えを理解するとともに、2018年3月の四者協議会で合意した空港周辺住民の生活環境の保全について、四者がスピード感を持って取り組んでいくことをあらためて確認。国、空港会社にはさらなる騒音対策の充実について検討を行なっていくことを要望したうえで、協議会として夜間飛行制限の変更実施時期を2019年冬ダイヤからすることに同意したとのこと。

芝山町役場で「成田空港に関する四者協議会」を開催。協議会のあとに記者会見を開いた

協議会結果概要

国土交通省

落下物対策について
「落下物対策総合パッケージ」を講評し、航空会社にハード・ソフト一体となった対策を義務付ける落下物防止対策基準について1月15日から順次実施。

成田財特法の改正について
新たに成田用水事業について改築を対象事業に加えるとともに、法律の有効期限を10年間延長する法案を今通常国会へ提出予定。

千葉県

騒特法(特定空港周辺航空機騒音対策特別措置法)の変更手続きについて
騒特法に基づく基本方針の見直しについて、2018年12月18日に変更済み。今後、都市計画変更の手続きを進める。

成田空港周辺の地域づくりについて
成田空港周辺の地域づくりのための「(仮称)実施プラン」の策定に向け、実務者会議などを開催。

成田国際空港株式会社

同意書の取得状況
航空法の変更許可申請に必要な地権者からの同意書に関し、空港拡張予定地の約8割の土地について見通しが立ちつつある状況。

環境影響評価の手続きの状況について
2018年11月までに準備書手続きが終了し、現在、評価書の作成を進めている。

内窓設置工事の取り組み・既存防音工事の充実
2018年10月1日から、A滑走路の防止地区における内窓設置工事などを開始。

落下物被害救済支援制度の創設
落下物被害者を支援するために、見舞金や立替金の支払いなどを行なう制度を2018年4月1日に創設。

四者確認事項

A滑走路の夜間飛行制限変更の実施時期について
国、空港会社から東京オリンピック・パラリンピックを万全な態勢で受け入れるためなど、あらためてその必要性について説明があり、四者で2019年冬ダイヤからの実施について確認した。

今日は本当に重要な第一歩を歩むことができた

成田国際空港株式会社 代表取締役社長 夏目誠氏

 NAA 代表取締役社長の夏目誠氏は、「今日は本当に重要な第一歩を歩むことができた」と地元関係者らにまず感謝を述べた。

 そして2019年冬ダイヤから円滑に実施するためには、空港アクセス関係、CIQ関係、空港内店舗、保守点検の整備を進め、貴重な時間延長を航空会社とともに最大限有効活用していくことに努力していきたいと、決意を語った。

 訪日外国人4000万人という国の大きな目標達成に貢献するとともに、空港間競争がますます激しくなっていく状況(関連記事「羽田空港の飛行経路見直し、日米合意」)において、成田空港の利便性をさらに向上し、それをアピールしていきたいとした。

地元からは「苦渋の判断」「やむをえない」の声

 記者会見の最後に設けられた質疑応答では、成田空港機能強化案で夜間飛行制限時間が延長されるA滑走路に接する成田市、芝山町、山武市、横芝光町の首長に対し、今日の協議会を経ての心境が尋ねられた。

千葉県「航空機騒音対策基本方針」資料から。成田空港南側のA滑走路に成田市、芝山町、山武市、横芝光町が接している

 質問に対し成田市の小泉市長は、「今日は国、空港会社から環境対策、地域振興策を推進するためのいっそうの協力が確認されたことで、騒音地域、とりわけ空港南側地域の不安が払拭され、多くの住民の皆さんのご理解が得られるのではと受けとめております」と、芝山町 町長の相川勝重氏は「東京オリンピック・パラリンピックを万全の態勢で迎えたい、インバウンドをしっかり受け入れ、空港間競争に勝ち抜くんだというお話を聞きました。それは大事なことです。そして同じように大事なことは、地域の方々が『空港があってよかったね』と生活や環境、交流についてよかったと思えるような空港であり続けてほしいという思いであります」と、山武市 市長の松下浩明氏は、「9市町の一つとして空港とともに地域をしっかりと支えていかなければならないということで『苦渋の判断』という言葉を使わせていただきましたが、まさにそのとおりだと思います。昨日も地域の皆さま方にこの判断を説明差し上げてまいりました。今後も空港発展するために一緒にがんばっていきたいと思います」と答えた。

 インフルエンザで欠席した横芝光町 町長 佐藤晴彦氏の代理として出席した企画財政課 空港・地域振興室 室長の平山貴之氏は、佐藤町長のメッセージを代読。「2月20日の協議会では反対という立場でした。その後、国、県、NAAからそれぞれ空港南部の地域振興を積極的に考えてくださっていると感じ、1月28日の町議会では東京オリンピック・パラリンピックの受け入れ準備であるとか、2018年3月の四者協議会での合意の範囲内の問題であることなどを総合的に勘案して、夜間飛行制限時間の緩和は『やむをえない』という考え方を議会に伝えて、一部反対はありましたが、大勢の了解を得たということで、容認するという結論に至りました」と述べた。

芝山町 町長 相川勝重氏
山武市 市長 松下浩明氏
横芝光町 町長 佐藤晴彦氏の代理、企画財政課 空港・地域振興室 室長 平山貴之氏

皆さま方と意思疎通を明確にしながら進めてまいりたい

 機能強化を推進する国に対しては、2019年冬ダイヤでの実現に急ぐ進め方などを問う質問が続いた。国土交通省 航空局 首都圏空港課 課長の鍬本浩司氏は、「大変な重たい判断を各首長さまにいただいた。国交省としても、難しい状況のなかで提案させていただいたということはあります。できる限り関係する皆さま方と意思疎通を明確にしながら進めてまいりたいと思います」と答えた。

 千葉県 総合企画部 部長の今泉光幸氏は、「地元として大変地域振興に期待が高いことは認識しています。2018年3月に『基本プラン』として立案しましたが、これを具体化するための『実施プラン』を作っていかなければなりません。そのなかで地域の皆さんがどういったことを求めているのか、それは実際に実現できるのかということについて、もっと具体的な議論を進めていかなければならないと思っています。

 成田空港にC滑走路ができると、新しい空港が1つできるぐらいの経済効果があると認識しています。それを受けとめるだけの地域となるように、我々もそこは市町村の皆さまとしっかりと話をしながらやっていかなければならないと思っています。対策が遅いというご批判については、今できることについては具体的なことはハード面、ソフト面でやっているつもりです。企業誘致、雇用の拡大などについてはすでに取り組んでいるところもあります。ただ、ハードの整備はそう簡単にはできないこともご理解いただきたいと思います」と述べた。

国土交通省 航空局 首都圏空港課 課長 鍬本浩司氏
千葉県 総合企画部 部長 今泉光幸氏

LCCや貨物航空会社から23時台の延長時間帯をぜひ活用したいという声をいただいている

 23時から0時へと延長される1時間についてNAAの夏目社長は、「航空会社に時間延長を有効に活用していただきたいと思っていますので、これから強力に働きかけていきたいと思っております。具体的なダイヤや便数は、スケジュール開始の半年ぐらい前にならないと揃わないので言明できないが、1日を通じて機材稼働率の向上を図りたいLCC(格安航空会社)、できるだけ集荷時間を延ばしたい貨物航空会社からは、23時台の延長時間帯をぜひ活用したいという声をいただいており、23時台のニーズは高いと考えております」と答えた。また、会見後の囲み取材では、航空会社から「現在過密になっているダイヤを緩やかにできる契機でもあるという声もいただいている」とも答えている。