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成田空港が開催ホスト空港。世界の空港関係者が集まる「第13回ACIアジア太平洋地域総会2018」開幕レポート
NECのデジタル技術による空港混雑緩和・安全向上の基調講演など
2018年4月24日 21:54
- 2018年4月23日~25日 開催
NAA(成田国際空港)は、ホスト空港として「第13回ACIアジア太平洋地域総会、会議及び展示会」を4月23日から25日まで開催している。
会場は東京ベイ幕張ホール(千葉県千葉市)で、基調講演、パネルディスカッション、空港・航空・観光関連事業者による展示会などを実施し、ACIアジア太平洋地域の空港・航空関係者を中心に約500名が参加する。
4月23日はレセプションのほか限定的なコンテンツが多く、4月24日は本格的なイベントスタートとして主催者らによる「オープニングアドレス」、NEC(日本電気) 代表取締役 執行役員社長 兼 CEOの新野隆氏による「基調講演」などが行なわれたのでレポートする。
2020年の成田空港はロボットが「おもてなし」
ACI(Airports Council International:国際空港評議会)は、世界の空港や空港ビルの管理者・所有者を会員とする国際機関。ACI全体のほかに、アジア太平洋、北米、欧州、中南米、アフリカの5つの地域別でも活動しており、日本が属するアジア太平洋地域は48の国と地域、500以上の空港によって構成される。ACIアジア太平洋地域総会は、2017年の第12回はカタール・ドーハで行なわれ、2018年の第13回は、開港40周年を迎えるNAAがホスト空港を務めている。
オープニングアドレスの冒頭には、2020年の成田空港という設定でロボットを使った空港の道案内など「おもてなし」のデモンストレーションが行なわれ、続いてホスト空港・NAAを代表して代表取締役社長の夏目誠氏が登壇した。
夏目氏は、「成田国際空港」としてこの総会のコンテンツを4つのコンセプトを持って参加者に向けて展開していくと紹介。1つ目は「デジタル技術をはじめとした最先端技術」。冒頭のロボットを使ったデモンストレーションのように、利用客の利便性や快適性の向上、また日本の労働力不足を補うために、今後多くの分野で導入していく最先端技術に参加者は触れる。
2つ目は「東京オリンピック・パラリンピック」。2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックに向けて、「日本の表玄関」として受け入れ体制の充実、強化を図っていく姿を見せる。世界各国からのアスリート、関係者、観客が安全・安心でストレスなく空港を利用でき、観戦や観光に集中できるよう、関係者とともに受け入れ体制を整えてく。
3つ目は「日本の観光」。日本政府は観光先進国の実現を目指し、2020年までに訪日外国人旅行者を4000万人、2030年までに6000万人の目標を掲げている。訪日ビザの免除・緩和などの後押しもあり、近年の訪日外国人旅行者の伸びはめざましく、2017年は約2870万人で前年約2割増となっている。
成田空港でもこの旺盛な観光需要に対応するため、旅客ターミナル内にインバウンド向けビジターサービスセンターを設けるとともに、トランジットツアーや観光地への直通バスの充実などを図っている。訪日外国人旅行者向けに成田空港とつながる日本の観光地へのアクセス、観光情報を提供するWebサイトを4月に新規開設しており、こういった日本の観光へ寄与する姿を共有する。
4つ目は「成田空港」そのもの。総会の各会議セッションでの議論を、航空需要旺盛なアジア地域の空港の一員として、成田空港の強みや役割、今後の方向性などを共有するとともに、参加者と航空・空港産業の議論を展開したいと希望を語った。
そして、「社会のグローバル化が進み、人や物の移動が活発化する中、特にアジア地域での伸びが顕著です。各機関がリリースしている世界の航空需要予測によれば、アジア地域は年約5%強の強い伸びとなっています。アジア地域の各空港において機能拡張が進みますが、成田空港でも地域の理解を得て、現在の年間30万回の発着枠を50万回にするさらなる機能強化が決まりました。皆さまとダイレクトな意見公開を行ない航空・空港産業の発展に役立てていくことができたら幸いです」と述べて、開会のあいさつを締めくくった。
成田空港の年間発着回数30万回から50万回への増加などを評価
ACIアジア太平洋地域の議長であり、チャンギエアポートグループCEOのSeow Hiang Lee氏は、世界の交通量の成長を維持するためにも空港機能の強化は必要なことであり、3月に決まった成田空港の第3滑走路建設、第2滑走路延長、そして年間発着回数の30万回から50万回への増加といった方針を高く評価した。アジア太平洋地域の各空港でも新ターミナル、滑走路の話題が多く活況である一方、先日のサウスウエスト航空機事故もあり、ACIとして関係者と連携して安全の維持・向上に努めていきたいと語った。
また、ACIでは空港経営の自立支援も行なっており、空港の機能拡張を進めるためにも経済的に持続可能なシステム、空港それぞれの状況に最適な資金回収モデルが必要であり、空港経営の透明性を高めつつ、航空会社や関係者とコミュニケーションをとり、空港が地域とともに発展していけるようサポートしていくと話し、あいさつを終えた。
デジタルテクノロジーで空港業務に貢献
基調講演ではNEC(日本電気) 代表取締役 執行役員社長 兼 CEOの新野隆氏が、空港業務に貢献できる最新技術を紹介した。
2030年には約85億人になると推定される世界の人口において、旅行者数も2015年の11億8000万人から、2030年には約1.5倍の18億人になるといわれている。増加する旅行者への対策として、ターミナルや滑走路の新設、従業員の増強以外に、NECが持つデジタルテクノロジーも「Fast&Smooth」「Safety&Security」「Hospitality」の3つの分野で活躍の場があるという。
Fast&Smooth
空港に到着してから飛行機に搭乗するまで、乗っている飛行機が空港に着陸してから空港を出るまでの時間は、大幅に短縮することができる。
空港で1回パスポート・チケット情報と顔認証や生体認証をリンクさせることで、チェックイン、入出国審査、税関、ボーディングなどでの煩わしい作業から解放される可能性があるという。
米ワシントン・ダレス国際空港などでは顔認証を使った出国管理の実証実験を行なっており、顔認証でのチケットレスの搭乗も視野に入ってきている。こうしたシステムが普及すれば、安全・安心を維持しつつ「Fast&Smooth」を実現できる。
Safety&Security
空港利用者が増える一方、広い空港を人の目だけで監視することは難しい。監視カメラとAIによって、利用客の振る舞いを検知・分析して不審人物を感知、指令センターに通知するというシステムがあれば、スキルのあるスタッフを大量に雇用することなく、セキュリティを高めることができる。
アルゼンチン・ブエノスアイレスにあるチグレという地域ではクルマの盗難が重大な問題だったが、NECのこの技術が約1000台の監視カメラとともに導入されたことで、2008年と比較して2013年には約20%まで盗難事件が低下。一方でチグレの観光収入は3倍になったという事例を紹介した。
Hospitality
今では巨大なショッピングモールのようになっている空港では、商業施設として利用客一人一人に最適な提案、対応をするためにもテクノロジーが必要不可欠になってきている。
人が商品を購入したことは当然データとして収集できるが、購入するまでの間にどの商品と迷ったのか、何に関心を持ったのか、人の視線の動きを追跡して、「買わなかったけど興味を持ったもの」をデータ化してマーケティングに活用することができる。
インターネットの通販サイトを利用していて、サイドにお勧め商品が表示されるようなアプローチが実店舗でもデジタルサイネージなどを通じて行なえる未来が近付いている。これらの技術が空港のキャパシティや人手不足を補う可能性があることをアピールして、基調講演を終えた。