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経産省とボーイング、航空機の技術協力で合意。自動車産業など新たな分野の日本企業にリーチ
ボーイングCTO「パートナーは日本以外にない」
2019年1月15日 18:28
- 2019年1月15日 実施
経済産業省とBoeing(ボーイング)は1月15日、航空機の技術協力に関する合意書に署名した。将来の航空機に必要となる技術分野について日本とBoeingの間の協力強化を目的としたもの。
この合意書により、軽量な蓄電池やモーターなどの電動化、高レートで低コストな複合材製造技術、製造の自動化技術などの分野において、経産省は日本企業の紹介や支援、Boeingは将来ビジョンの共有や技術の実用化に向けて取り組むことで関係強化を目指す。
署名式に臨んだ経済産業省の磯﨑仁彦副大臣は、「日本の航空機産業はボーイング 777型機や787型機など、国際共同開発への参加を通じて成長してきた。Boeingは我々の最大のパートナー」と同社と日本の航空機業界との関係を強調したうえで、「2017年に当時のBoeing会長のコナー氏と世耕(弘成)大臣が会談した際に、日本とBoeingの間でウィン・ウィンの関係強化を目指すことに合意した。本日署名する合意書はこうした協力強化の一環として、将来の航空機に必要となる技術分野において、Boeingと日本の協力を強化することを目的としたもの」と、合意書締結に至る背景を説明した。
そして、「合意に基づく協力により、Boeingとともに作る革新的な航空機を通じて、電動化技術など日本の先端技術が世界に貢献する日を楽しみにしている」とあいさつを結んだ。
Boeingを代表して隣席したCTOのグレッグ・ハイスロップ氏は、「心躍る新たな協力の機会をいただいた」と経産省への感謝を示し、「日本はBoeingにとって特別な国。米国外における航空分野のパートナーシップにおいては、日本は最大の国であり、私たちの協力関係は65年以上になる」とやはり日本とBoeingの関係の強さを強調。
日本の重工各社によりボーイング 787型機の構造体の約35%が日本製であることを紹介し、「次世代のワイドボディ機であるボーイング 777Xの生産も期待している」と話した。
そして、将来を見据えた取り組みとして、「新技術を活用することで、輸送分野、モビリティの方法、人や貨物を移動する方法が今後何十年にわたって大変革を遂げると思っている。Boeingの歴史のなかで、現在がもっともこれまでにないほど技術革新に投資している時代といっても過言ではない」と紹介。そうしたなかでの日本政府との技術協力の締結について、「航空業界の将来の形づくっていくうえでパートナーを探そうと思ったら日本以外にないと考えている」と期待を述べた。
また、BoeingのハイスロップCTOは「日本とBoeingの関係は数ある産業協力のなかでも成功しているものの一つ」とし、その成功体験が今回の合意にもつながっているとコメント。
重工各社などBoeingと民間企業との間での技術提携などはこれまでも結ばれてきたが、政府、経産省との技術協力に関する提携を結ぶ目的について、今回経産省と合意したことで、別のルートが開けたことになる。大企業ほどの多くのリソースを持っていない、我々が認識していない多くの企業との関係作りが円滑になるのでは」と期待を示した。
一方、経産省の製造産業局 航空機武器宇宙産業課の畑田氏は、「(日本の)航空機産業とBoeingは深い関係を築いているが、そのほかの産業セクタとのつながりのきっかけ作りに力になれる部分があるのではないかと考えている」とコメント。
この点についてはハイスロップ氏も「具体例としては自動車産業も例だと思う。電気自動車、自動運転というトレンドを考えると、技術のなかには航空業界に直接適用できる技術も存在するだろう」と、同様の認識を示している。
この合意書の署名式後には、Boeingと日本企業による将来技術協力に関するキックオフミーティングも行なわれたが、その場には電動化関連技術を持つGSユアサ、九州大学・産業技術総合研究所、多摩川精機、シンフォニア。複合材技術を持つ東レ、自動化技術を持つ三菱重工業、川崎重工業 SUBARUの各担当者が参加した。
キックオフミーティングにおいてハイスロップ氏は「日本がほかの国に比べて特に秀でているのは量ではなく質の点。Boeingでは30年以上にわたってサプライヤー・オブ・ザ・イヤー・アワードを提供してきたが、米国外では日本がダントツの1位で40%以上を占めている。パートナーシップは非常に強固なもので、今日ここに来られて心躍る思いをしている」とし、日本企業とのパートナーシップ拡大への期待を示した。