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浜松町駅と竹芝エリアを結ぶ歩行者デッキが首都高上空を横断。7日深夜に橋桁を一括架設
2020年完成予定。東急不動産と鹿島建設による竹芝地区開発の一環
2018年7月8日 14:11
- 2018年7月7日~8日 実施
東急不動産と鹿島建設は、JR/東京モノレール 浜松町駅~ゆりかもめ(東京臨海新交通臨海線)竹芝駅~竹芝埠頭を結ぶペデストリアンデッキ(歩行者デッキ)を整備している。このうち、首都高(首都高速道路)をまたぐ全長約22.3mの一括架設工事が7月7日深夜から翌8日未明にかけて行なわれた。
この歩行者デッキは、東急不動産と鹿島建設のジョイントベンチャーであるアルベログランデが主体となって進めているプロジェクト「(仮称)竹芝地区開発計画」の一環として整備されるもの。東京都港区海岸1丁目の都有地を対象とした、東京都都市整備局が進める都有地活用事業「都市再生ステップアップ・プロジェクト(竹芝地区)」を両社JVが事業化。2015年3月には国家戦略特区の特定事業(都市計画法等の特例)に認定されている。
プロジェクトは、東京都港区海岸1丁目の都有地を約70年間の定期借地し、業務棟(A街区)と住宅棟(B街区)からなる全体延べ床面積約20万m2の国際ビジネス拠点を創出するというもの。2016年5月に業務棟(A街区)、2018年4月に住宅棟(B街区)の建設に着手している。
業務棟は、都有設備である都立産業貿易センターと一体整備されるもので、地下2階、地上40階、地上約208mで2020年5月の竣工を目指して工事が進められている。6階以上はオフィスが中心となり、1階から5階にはイベントホールや都立産業貿易センターが入るほか、飲食店などの商業エリアを設ける。屋外部分には水と緑のステップテラスを設置する。
住宅棟は、業務棟よりも海側に建設されており、地上18階、約60mのビルとなる。賃貸を中心にサービスアパートメントやシェアハウス、子育て支援施設などの設置を計画している。
このプロジェクトのコンセプトの一つとして掲げられているのが、「デジタル×コンテンツによる国際ビジネス拠点を創出」という点で、デジタル×コンテンツ分野の拠点を形成し、コンテンツ産業や先端技術産業を支援、育成する目的で2015年4月にCiP(Contents innovation Program)協議会を設立。会員企業として50社強が参画している。
さらに、「エリアマネジメント活動によるウォーターフロントの再生」を掲げ、海や竹芝埠頭、旧芝離宮恩賜庭園などの公共空間を活用して、地域のにぎわいを作る活動を進める。すえでに、毎年夏に竹芝夏フェスとしてビアガーデンを実施(2018年で4回目)しているほか、2018年5月には旧芝離宮恩賜庭園の夜に再オープンして地域の人に食事を提供するなどのイベントを実施している。
地元の人たちが作った竹芝地区まちづくり協議会と連携。エリアマネジメント活動と、デジタル×コンテンツの最先端実証実験を融合して、竹芝ならではの街作りを展開していくとしている。
このプロジェクトの一環として整備されるのが、浜松町、竹芝駅、竹芝埠頭を結ぶ、約500mのバリアフリー歩行者デッキである。竹芝地区の利便性、にぎわい、歩行者ネットワークの強化を図る目的で設置され、「周辺エリア活性化の架け橋」にする。この間の人の往来は1日約3万人と試算されており、竹芝エリアでイベントなどがある場合はさらに多くの人の往来が見込まれるとしている。
今回の工事は、その歩行者デッキのうち、首都高をまたぐ全長約22.3mの部分の架設となる。場所は都道316号 海岸通りにある芝商業高校前交差点の上部。海岸通りは首都高 都心環状線(C1)の下に並行しており、首都高の高架のさらに上部に歩行者デッキを設置することで、2つの道路をまとめてまたぐ格好となる。橋脚は約15mで、首都高が約8mの高架となっており、車両の高さ制限などはないという。
工事前に概要を説明した東急不動産 都市事業本部ビル事業部 グループリーダー 兼 竹芝エリアマネジメント 事務局長の田中敦典氏は、「地元の人の話を聞くなかで、(浜松町駅~竹芝エリアを徒歩で移動する際)海岸通りという大きな通りがあり、横断歩道の信号待ちが長く、にぎわい空間が分断されているとの話があった。歩行者デッキを整備することで浜松町と竹芝を一体的につないで街の活性化につなげたい」と説明する。
この歩行者デッキは業務棟の3階に直結し、浜松町駅側はJR東日本(東日本旅客鉄道)の整備により橋上化される浜松町駅北口の2階に接続する予定となっている。浜松町駅~業務棟までは約240m。歩行者デッキの有効幅員は6mで、天井にはガラスの屋根、側面にもガラスの暴風板を設ける。
これにより、天候の影響を受けずに、浜松町駅と竹芝エリアをほぼ水平に結ぶ徒歩ルートが生まれることになる。また、再開発された竹芝エリアにとっては、ゆりかもめの竹芝駅だけでなく、浜松町へ徒歩で移動し、浜松町から山手線を利用しての都内各地への移動、東京モノレールを利用しての羽田空港などへのネットワークが利用しやすくなるメリットもある。
浜松町駅~業務棟までの歩行者デッキは桁橋構造で、約15mの橋脚工事はほぼ完了。橋脚は街路樹の内側に設置し、六角形で上部を少しスリムにするなど、スタイリッシュで街の景観に溶け込むようなデザインにする。また、夜間は照明で浮かぶ上がるような雰囲気となり、田中氏は「東海道新幹線や山手線からも象徴的な構造物として映るのでは」と話す。さらに、側面をガラス板にしていることから、「レインボーブリッジや東京タワー、旧芝離宮恩賜庭園の景観を楽しめ、歩いて楽しい歩行者デッキになると思う」としている。
工事は550t吊りオールテレーンクレーンで、首都高をまたぐ約22.3m、約51トンの桁を吊り上げ、一括架設する。区画は浜松町駅側からP1、P2……と分けられ、首都高横断部分の浜松町側がP6、竹芝側がP7となっている。P6は首都高上にせり出しており、この架設は5月12日に首都高の車線規制を行なって実施。P7は首都高の規制は行なわずに設置された。
今回はその間を横断する工事となるため、7月7日22時に首都高の全面通行止めを開始。翌8日5時まで、約7時間にわたって通行止めして行なわれた。
設置予定の桁は、約1カ月前に部品が到着し、竹芝側の作業スペース組み立てを完了。クレーンは7月5日から本体の組み立てを開始し、工事日となる7月7日の夕方よりブームやカウンターウエイトの取り付け、調整や点検を実施していた。
22時過ぎごろには、設置予定の桁の仮吊り上げを開始。設置台に置かれていた部分のペイントなどが行なわれたあと、22時50分より本格的な架設作業が始まった。
吊り上げられたあと、クレーンが回転する方向に合わせ、桁もロープで引っ張って回転。設置位置に向けてゆっくりとクレーンを旋回し、所定の位置に設置した。吊り上げから設置までは30分弱。
その後はクレーンから桁を吊り下げた状態でボルトの締め付けや足場の工事を実施。日が変わって8日の1時10分ごろにクレーンの玉掛けも取り外され、自立した橋として架設が完了した。そのあともボルトの本締めや、クレーン本体の解体など作業は続けられる。
今回の工事は歩行者デッキのもっとも象徴的な部分といえるが、今後、2018年内に浜松町駅から今回工事部までの桁の設置が完了。路面や風防板、屋根の設置などを進め、2020年6月に開通する予定となっている。