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JAL、熊本県の小学生を対象にした体験飛行企画「明日のつばさ」開催
次世代育成プログラム「空育」の一環で航空教室と体験飛行
2017年5月6日 07:00
- 2017年4月30日 実施
JAL(日本航空)は、平成28年熊本地震の復興支援活動の一環として、次世代育成プログラム「空育」を熊本県の小学生を対象として開催した。多岐に渡る航空業務について知ってもらうことや学習教科に「地理」がある高学年向けに、体験飛行を通じて上空から地元の様子を知ってもらうことを主眼とした内容となった。「明日のつばさ」と名付けられた特別教室の様子をレポートしていこう。
「明日のつばさ」は、熊本県内在住の小学校5~6年生を対象として行なわれた。航空教室と体験飛行の2本立てとなっており、正午を過ぎた12時30分頃から、熊本空港の搭乗フロア脇には申し込みの列ができた。今回の特別教室に参加するのは熊本県教育庁の呼びかけによって各地から参加した53名の小学生たち。見送りの家族とともに空港に到着。受付後は子供たちのみの参加となり、終了予定時刻の17時30分に到着ゲートに両親が迎えにくることになっていた。
団体用の部屋に集合した小学生向けに、航空教室からスタート。講師は、今回の体験飛行を担当する J-AIR(ジェイエア)機長の服部岳氏。このあとの体験飛行の操縦を担当するわけではなく、あくまで航空教室の講師として登場したが、コックピットから飛行機の状態や現在地を知らせる役割として同乗した。
航空教室は、JALグループが1日に世界で運航している便数や、保有機材の種類、パイロットの資格取得から旅客機ができるまでの動画など、充実の内容となっていた。スタッフのブリーフィングの様子や機長の役割など、事細かく説明があった。子供たちも熱心に聴き入り、クイズでは積極的に手を挙げる姿が見られた。
グランドに降り間近に見る飛行機の大きさにビックリ
航空教室が終了し体験飛行に使用される機材が到着するまでの間、子供たちは搭乗口付近からグランドで動きまわるスタッフを見学。その後、チャーター機が到着し搭乗前に地上から航空機を見学した。
子供たちは誘導路を行き来する、他の航空会社の航空機にも手を振り、空の仕事の忙しさを記録しようとカメラを向けていた。一通り見学が終了し、搭乗口に戻り機内への案内がはじまるまで休憩。
子供たちに(空港保安エリアの)地上に降りた感想を聞いてみると、「エンジンが動いてないのにほかの装置の音が大きくてビックリした」「ほかの航空会社のパイロットも手を振り返してくれてうれしかった」など、その貴重さが伝わっていたようだ。
機材の準備が完了し、いよいよ機内へ。今回は2つのルート候補が用意され、当日は空港を飛び立ったあとに西へ向かい、天草を経由して南下。鹿児島空港あたりから折り返して北上、というルートが設定された。機内には、熊本出身のCA(客室乗務員)がスタンバイしており、安全運航についての説明といった通常どおりの業務を披露した。コックピットには機長と副機長、さらに服部機長が座り実況を担当。15時27分、JAL4920便は地上に残ったJAL職員に見送られて25滑走路より離陸した。
天草~霧島連山~九重連山を経由し熊本市上空を旋回
子供たちを乗せたJAL4920便は、そのまま西進し熊本市内上空を通って八代海方面へ。5分ほどで眼下には天草諸島が見えてきた。それと同時にシートベルトサインが消え、ドリンクサービスを開始。そこから鹿児島方面に南下し、桜島(靄によってほとんど確認できず)や霧島連山を見学して北上。途中、機内アナウンス体験があり、学校名と名前を元気よく発表。
北上を続けていた機体は、大分県境にまで差し掛かっており、九重連山の雄大な山肌を確認できた。そのまま阿蘇方面に進み、阿蘇くまもと空港に戻っていく進路だったが、もう一度市内に戻り熊本城近辺を見学する旨を管制塔に打診しているとのアナウンスがあった。程なくして許可が出たとのことで、25滑走路に進入してローパスし上昇。再度、熊本市内方面に進んだ。
実況を続けていた服部機長より「今の滑走路ギリギリの高さを飛ぶ技術は、パイロット歴40年を誇る土屋機長だからできる技です。ギリギリでタイヤが接地しないようにするのはとても難しいんですよ」と説明があった。熊本空港の展望デッキでその様子を見ていた児童の保護者から質問が出たが、「お家の人には、失敗したわけではなく高度なサービスです、と伝えてくださいね」と、笑いを誘うフォローもあった。
再び熊本市内に戻ってきたJAL4920便は、熊本港の上空を旋回し、金峰山、JR熊本駅の上を通過しつつ熊本城の見えるポイントに。左右の席から見えるように一度金峰山方面に戻り、熊本城に再アプローチ。上空500mほどの高さから天守閣や二の丸広場を見学した。
すべてのルートを通り、熊本空港にもどってきたJAL4920便は、16時47分に25滑走路に着陸した。
集合写真を搭乗記念証に貼り付けるサービス
熊本空港に戻ってきた一団は、最初の会議室に入りアンケートに感想を記入。そしてサプライズプレゼントとして、搭乗記念証に搭乗前の集合写真が貼られている、というサービスもあった。服部機長が体験飛行前に「飛行機の仕事に興味がある人~?」と子供たちに問いかけていたが、戻ってきて改めて質問をすると、多くの子供たちが手を挙げた。
各地で子供向けの航空教室を開催してきたJALグループだが、今回のような体験飛行ははじめての試みだという。平成28年熊本地震から1年が経過し改めて上空から我が町の様子を見てみよう、という学びの場を提供する意味合いもあった。こうして多岐にわたる“飛行機の仕事”を知り、自分の町を上空から眺めるという充実した一日を過ごせた。
JAL側としては「あくまで社会科見学の場として機会を設けており、必ずしも航空業界を目指してもらうのが目的ではない」とのこと。しかし将来、この日の体験が記憶に残り「飛行機に関わる仕事がしてみたい」と、業界を希望する子供たちが現れる可能性はあるだろう。