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阿蘇市とANA総研、包括連携協定を締結。「温泉」と「食」を楽しむウォーキングイベントを開催

阿蘇内牧温泉は5月20日、天草下田温泉は5月27日開催。ANAが協賛

2017年4月21日 締結

「包括連携協定」を締結し、握手する株式会社ANA総合研究所 代表取締役社長 岡田晃氏(左)と、熊本県阿蘇市長 佐藤義興氏(右)

 ANA(全日本空輸)とANA総合研究所は4月21日、平成28年熊本地震からの復興を支援する「ONSEN・ガストロノミーウォーキングイベント」への協賛を発表、熊本県阿蘇市と「包括連携協定」を締結した。

「ONSEN・ガストロノミーツーリズム推進機構」(以下、機構)は、日本の観光資源である「温泉(ONSEN)」を核とし、温泉地がもつ「食」と「文化」を、「ウォーキング」などを通じて体感する「ONSEN・ガストロノミーツーリズム」事業を展開するため、2016年10月3日に設立された一般社団法人。

 機構が主催する阿蘇内牧温泉でのウォーキングイベントが5月20日に、機構が特別協力する天草下田温泉でのウォーキングイベントが5月27日に開催されることになり、そのイベント概要の発表と共に、熊本県阿蘇市とANA総合研究所による包括連携協定の締結が、東京・赤坂にあるANAインターコンチネンタルホテル東京で実施された。

東京・赤坂にあるANAインターコンチネンタルホテル東京でウォーキングイベントの発表と、包括連携協定の締結が行なわれた
発表会ではANAグループによる平成28年熊本地震からの復興を支援する活動「こころの湯」などが紹介された

熊本県阿蘇市とANA総合研究所が地域活性化のための連携協定を締結

 発表会ではまず熊本県阿蘇市市長の佐藤義興氏と、ANA総合研究所 代表取締役社長の岡田晃氏によって、協定書へのサインが行なわれ、両者による包括連携協定が結ばれた。

 協定書のタイトルは「地域活性化のための連携協定書」で、両者は地域経済の活性化など、さまざまな地域課題に対応した協働事業を実施することにより、阿蘇市の活性化を図るとしている。その一環として、「熊本地震復興支援 ONSEN・ガストロノミーウォーキング IN 阿蘇内牧温泉」が開催される。

佐藤義興市長と岡田晃氏によって協定書へのサインが行なわれた

阿蘇市にとってすばらしい日になった

締結を終えて挨拶する佐藤義興市長

 締結を終えた佐藤義興市長がマイクを持ち、熊本地震から1年が経過し、その間多くのボランティアや支援者に支えらえてきたこと、地域が復興に向けて今もがんばっていることなどを語り、「阿蘇市にとってすばらしい日になりました」と挨拶。

「地震によって何もかもが奪われてしまったが、一方で新しい絆が生まれました。前向きに取り組んでいこうという連携の証にもなった今日の協定かと思います。さらに一歩一歩、確実に、力強く前を向いて歩んでいきたいと思っております。今日は関係各位の皆さん方のお取り計らいによって協定が結ばれたことに、重ねて御礼申し上げます」と話した。

ANAグループのリソース全部を使って取り組んでいきたい

この契約を機にますます阿蘇市の復興と発展が進んでほしいと話す岡田晃氏

 続いて岡田晃氏は参列者、関係者への感謝を述べたあと、2006年に株式会社になったANA総合研究所は、日本各地の地域活性化を図り、都市圏や海外からの人の流入を促す活動をしており、現在14地域で、16人のスタッフが活動を行なっていると紹介。

 阿蘇市とは2011年から3年間地域活性化活動を行なったこと、阿蘇市のマークを付けたご当地プレーンを運航したこと、都市圏での物産展に参加してもらったことなどがあり、熊本地震を受けて、何か協力できることはないかと話し合った結果、ウォーキングイベントの開催と協定締結につながったと、経緯を説明した。

「この締結を契機に、ますます阿蘇市さまが復興し、発展することを祈念しております。ANAグループのリソース全部を使って取り組んでいきたいと思います」と挨拶を終えた。

ガストロノミーツーリズムは世界の「大きな潮流」

ウォーキングイベントのイメージ映像
一般社団法人ONSEN・ガストロノミーツーリズム推進機構理事長 見並陽一氏

 ウォーキングイベントのイメージ映像が流れたあと、機構の理事長を務める見並陽一氏が登壇した。

「ONSEN・ガストロノミーツーリズム推進機構」という名称に、「温泉」を英訳した「hot spring」や「スパ(SPA)」、「クアハウス(kurhaus)」といった言葉を使わずに、アルファベット表記の「ONSEN」を用いたのは、「日本の温泉が世界に通用する観光資源だと思い、あえて」であると説明。

「ガストロノミー(gastronomie)」とはその地域の文化と料理の関係性について考えることであり、「観光で訪れた人が心からその地域を理解し、愛する。そのベースには食文化があると思います」と話し、世界中で地域振興のためにガストロノミーを掲げる事例が増えていると紹介。欧州ではイタリアやスペインで成功を収めるなど、多くの地域でガストロノミーツーリズムが萌芽し、「大きな潮流」であると述べた。

 そこで、地域の風土、文化の結晶である「食」と「温泉」を結びつけて、「地域間交流を活発にして観光振興を図り、訪れた人には最高の保養を、地域には経済的な利益を含めた誇りと自信を生むような、そういうツーリズムをつくっていこうと思いました」と機構の設立の目的を話した。

 熊本は地震の被害からの復興途上にあり、「私たちができることはなにか。それは現地を訪れて、正しい熊本を、阿蘇を、天草を知ることだと思います。風化させてはいけないこと、風評被害に陥らないこと、そのためにも多くの人に熊本を訪れていただきたいと思っています」と、機構のウォーキングイベント第1弾、第2弾の地に熊本を選んだ理由を説明した。

 また、内牧温泉でのウォーキングイベントでは、参加費として1人2000円がかかるが、保険料など諸経費を除いた全額を、被災した阿蘇神社の再建に寄付することも合わせて紹介。「阿蘇は元気だ、天草は元気なんだということを、多くの方に知っていただいて、これをきっかけにして、熊本の観光促進、地域創生、地域が元気になっていくことの一助になればと思っています」と締めくくった。

ONSEN・ガストロノミーウォーキング IN 阿蘇内牧温泉

開催日: 2017年5月20日
スタート時刻: 9時~、10時~、11時~
スタート/ゴール地点: 阿蘇市役所内牧支所横芝生広場
距離: 約8km
参加費: 2000円
定員: 300名
ガストロノミーポイント(予定): [はな阿蘇美]サラダ、ピクルス(アスパラガス)、[福の神]阿蘇人 サイダー、ASOMILK、[YAMABOUSHI]郷土料理(田楽、お酒)、[西湯浦水辺公園]阿蘇大王、お酒、[花原川水辺公園(かばるん公園)]高菜おにぎり、だご汁、[芝生広場]あか牛、ワイン
景観ポイント: 内牧温泉街、阿蘇の外輪山の麓、田植え後の美しい田園風景
主催: ONSEN・ガストロノミーツーリズム推進機構
共催: 熊本県阿蘇市
特別協賛: ANA
TEL: 0967-22-3174
Webサイト: ONSEN・ガストロノミーウォーキング IN 阿蘇内牧温泉

「ONSEN・ガストロノミーウォーキング IN 阿蘇内牧温泉」を紹介するスライド

 5月に実施される2つのウォーキングイベントの概要がスライドと共に紹介された。「ONSEN・ガストロノミーウォーキング IN 阿蘇内牧温泉」は阿蘇温泉郷の1つである内牧温泉の温泉街を舞台に、新緑の阿蘇の風景や、旬の食材、足湯を楽しめるウォーキングイベント。

 料理を提供するガストロノミーポイントでは、阿蘇の地鶏である阿蘇大王の炭火焼、旬のアスパラガスの丸かじり、阿蘇人 サイダー、国際味覚審査機構の食品コンクールで三ツ星を受賞したASOMILK、炭火で野菜などを炙って食べる田楽や煮しめなどの郷土料理、地元婦人会が作るだご汁と高菜飯のおにぎりなどを用意。ゴール地点では、阿蘇のあか牛はブロックごと炭火焼し、ローストビーフ風にして、ワインとともに提供する予定だという。

「ONSEN・ガストロノミーウォーキング IN 阿蘇内牧温泉」のコース

 ここで再びマイクを手にした佐藤義興市長は、4月16日の本震のときに内牧温泉では泉源が途絶えたが、国からの補助予算を受けて採掘したところ新しい泉源が見つかったことを紹介し、「心を込めておもてなしをしっかり整えて、皆さまのお越しをお待ちしております。そして参加者の皆さまの元気をいただきながら、復興への新たな第一歩を踏み出していきたい、そんな大切な、大切な取り組みにしたいです」と思いを述べた。

ONSEN・ガストロノミーウォーキング IN 天草下田温泉

開催日: 2017年5月27日
スタート時刻: 11時~、11時30分~、12時~、13時~
スタート/ゴール地点: 下田温泉ふれあい館ぷらっと前
距離: 約5km
参加費: 大人3000円、小学生以下2000円
定員: 300名
ガストロノミーポイント(予定): [五足の靴文学遊歩道入口]蒸かしたて福連木まんじゅう、[ブルーガーデン]お刺身盛 with あまくさソルト、天草町新じゃがの天ぷら、あまくさ焼酎&リキュール、[下田漁港]ひおうぎ貝や地元ロザリオピークの炭火焼き、殻つきウニまたはアワビ、椿油ごはんまたは鯛めし、あまくさ焼酎&リキュール、ソフトドリンク、[温泉神社]天草産塩バニラアイス with オリーブオイル
景観ポイント: 五足の靴文学遊歩道の森林浴、ブルーガーデンや海岸沿いの遊歩道から望むオーシャンビュー、下田漁港、趣のある河川沿い
主催: 下田ONSEN振興会
特別協力: ONSEN・ガストロノミーツーリズム推進機構
協力: ANA
TEL: 0969-42-1111
Webサイト: ONSEN・ガストロノミーウォーキング IN 天草下田温泉

「ONSEN・ガストロノミーウォーキング IN 天草下田温泉」を紹介するスライド

 天草市もANA総合研究所とは2013年に協定を結んでおり、一連の地域活性化の施策の一環として、「ONSEN・ガストロノミーウォーキング IN 天草下田温泉」は開催される。開湯約700年の歴史がある天草下田温泉を舞台に天草西海岸から臨む絶景や、天草の旬の食材を楽しむウォーキングイベントとして、妙見浦に代表される天草の海岸景観や下田温泉街の街並み、森林浴、ブルーガーデンからのオーシャンビューなど森と海、どちらの景色も楽しめるコースを設定している。

 ガストロノミーポイントでは、カラフルな貝殻が特徴で甘みの強いひおうぎ貝やロザリオポークの炭火焼き、醤油や天草の天然塩で楽しむ旬の刺身盛り、殻つきウニまたはアワビ、椿油ごはん、天草特産の新じゃがはほくほくの天ぷらで提供する。

 地元で受け継がれている昔ながらの優しい味の手作りまんじゅうや、天草産の塩を使った塩バニラアイスなどのスイーツもお勧めとのこと。

九州とANAの縁の深さを語る

全日本空輸株式会社 代表取締役社長 平子裕志氏

 ここで阿蘇内牧温泉イベントの特別協賛企業であるANA 代表取締役社長の平子裕志氏が登壇し、挨拶をした。

 大分県別府市出身であることから、以前は「やまなみハイウェイ」を使い阿蘇に遊びに行ったことがあり、「阿蘇は外輪山が雄大で、当時の記憶を鮮明に思い出しているところです」と自己紹介。熊本空港が被災して一時閉鎖になった際には、地元の協力で早期に空港業務を再開できたことにあらためてお礼を述べた。

 また、益城町などで被災された人たちのために、空港で飛行機に積もった雪を溶かすための特殊車両「除雪作業車(エレファントミュー)」を現地に運びお湯を沸かし、ANAグループ33社から288名の有志がボランティアで現地に行き、お風呂を提供した「こころの湯」という活動を紹介。「現地の方々に非常に喜んでいただきまして、本当にやってよかったと思っています」と話した。

 また、ANAグループの整備士の新入社員197名が研修で阿蘇市にお世話になったことに触れ、さまざまな研修のなかで、地元小学校の再建準備を手伝った際、歓迎の場で佐藤義興市長が激励の歌を披露したことで、「一挙に私ども佐藤ファンになってしまいました」と市長の人柄、阿蘇市とANAの関係の深さを紹介した。

 最後に「5月のウォーキングイベントが阿蘇と天草の魅力を日本、そして世界の多くの方々に知っていただけるよい機会になれば、このうえない喜びでございます。ウォーキングイベントが盛大に行なわれ、成功することを祈念しております」と話し、挨拶を終えた。

一般社団法人ONSEN・ガストロノミーツーリズム推進機構 専務理事/株式会社ANA総合研究所 取締役会長 小川正人氏

 発表会の最後に設けられた質疑応答で「第3弾以降の予定は?」との質問に、ONSEN・ガストロノミーツーリズム推進機構 専務理事の小川正人氏は、機構設立後、40近い自治体からの問い合わせがあり、実行に向けた精査を行なっているところと回答。

 6月には秋田県大館市の大館温泉郷、7月には新潟県新潟市の岩室温泉、秋田県仙北市の乳頭温泉などでのウォーキングイベントの実施が決定していると紹介した。

【記事修正:2019年4月19日】初出時の誤字を修正いたしました。

ONSEN・ガストロノミーウォーキングイベントの実施予定
公益社団法人日本観光振興協会 理事長 久保成人氏

 また、協定締結の立会人として参列した機構の副会長であり、日観振(日本観光振興協会)理事長の久保成人氏は、「人の交流は、地域の活性化の基本だと思っております。温泉もガストロノミーもウォーキングもすべてキラーコンテンツでありますので、この3つが揃ったイベントを推進することで、日本の地域活性化に貢献していきたいと思っております」とコメントを述べ、発表会は終了した。