ニュース
ANA、熊本県大津町・益城町で「ANA航空教室」を開催
熊本地震の避難所や幼稚園でグループ社員が特別授業
2016年7月19日 07:00
- 2016年7月13日~14日 開催
ANA(全日本空輸)は、平成28年熊本地震からの復興、九州エリアの活性化を支援する「でかけよう九州」プロジェクトを立ち上げ、現地でもさまざまな活動を行なっているが、その一環として、避難所の入所者や幼稚園・小学校を対象とした「ANA航空教室」を開催した。7月13日は本田技研工業 熊本製作所の敷地内に設けられた避難所で、7月14日は益城町にある「あじさい幼稚園」で行なわれた航空教室の模様をお届けする。
7月13日は大津町の「こころの湯」が併設されている避難所で開催
ANA側の「少しでも避難者の心の癒やしになれば」という思いのもと、今回の特別授業が決定し、社内でボランティア希望者を募ったとのことだが、締め切りを早めなければならないほど応募が殺到したとのこと。熊本県をはじめ、九州にゆかりのあるスタッフが選出された。
以前、本誌でも紹介した「こころの湯」がある大津町、本田技研工業 熊本製作所の敷地内にて、特別授業の初日が開催された。入所しているのは南阿蘇村から避難してきている村民だが、常駐しているANAスタッフとも、すっかり意気投合している様子が見てとれる。
19時を少し過ぎた頃、会場として設営された2階のトレーニングルームに参加者が集合し、「ANA航空教室」がスタートした。
熊本空港を飛び立ったANA2016便が、無事リオデジャネイロに降り立ち、航空教室は終了した。最後に、ANAスタッフを代表して、ANA空港センター 空港業務サポート部 業務推進チームリーダーの梶木晴史氏が挨拶した。なお、梶木氏は「こころの湯」をはじめとする現地での支援活動の責任者でもある。
「東日本大震災をきっかけとし、南三陸で、この『こころの湯』という活動を始めました。こうした非常事態に、『がんばってください』という言葉は非常に無責任だと感じます。ですので、こうしてお風呂に入っていただき、少しでも心を癒やしていただきたい、心で繋がりたいという願いで『こころの湯』という名称になっています。南三陸では人手不足ということもあり、間伐が進んでいないということで、『こころの森』と銘打った協力をさせていただいております。今日は杉の間伐材を使ったうちわを持ってきましたので、使っていただきたいと思います。これから先も皆さんと前を向いていきたいと思います。皆さま、今日はありがとうございました」と挨拶した。
教室終了後、CA(客室乗務員)の1人として参加した“ゆん”さんは、「皆さんの笑顔にこちらが元気をいただきました。ANAが少しでも皆さんのお力になれるよう活動していきたいと思います」とコメント。また、副操縦士の“しんちゃん”さんは、「ここにくることができて、本当にうれしいです。熊本空港を離発着する飛行機はちょうどこの近辺を通過するのですが、上空から見えるブルーシートの多さに、先の長さを感じました。しかし、皆さんの笑顔が見ることができましたので、お互いが継続して、活気を取り戻すために頑張りたいと思います」と話してくれた。
園児のパワーに圧倒され、紙飛行機競争も白熱したあじさい保育幼稚園での授業
一夜明けて、今日の航空教室は、益城町にあるあじさい幼稚園。昨日キャプテン役を務めた“スギちゃん”は、乗務があるとのことで、司会役であった“ごるご”氏がキャプテン役も兼務した。スクリーンに映し出すスライドの内容も、園児たちへの配慮で平仮名表記に。
この日は、パイロット、CA、整備士が自分の役割を園児たちに説明し、クイズを楽しんだ。事前に園児たちが作成したANAの紙飛行機で飛距離を競う。最後に、ANA側から幼稚園へ玩具の贈呈があり、園児たちより航空教室のお礼として、世界の国旗パネルで国名と首都を読み上げを披露、最後の1枚は「ANA!」と、ANAスタッフにはうれしいサービスもあった。
今回の航空教室は九州にゆかりのあるスタッフが参加
今回の参加スタッフは、社内のイントラネットにてボランティアの募集があったとのことだが、設定された締め切りスケジュールを前倒しするほどの応募があったとのこと。今回は全員が羽田空港勤務だが、熊本をはじめとする九州出身者も数名参加していたので、感想を伺った。
副操縦士のしんちゃんさん
「私は福岡県出身なのですが、こちらに親族が多くおります。飛行機から見てもブルーシートが目立ちます。なにかできないかという思いがあり、今回の特別授業に手を挙げさせていただきました。昨日今日と避難所の方々や園児の笑顔が見られて安心しました。園児たちはエネルギッシュで、逆に元気をもらえました。紙飛行機を一緒に飛ばせてよかったです」。
整備士のこーしさん
「地震発生時は、停電が発生していたので連絡もままならず、駆けつけることもできずに、はがゆい思いをしました。航空路線が復帰してから熊本に帰り、ボランティア活動をしました。今回の授業に参加できて、子どもたちの顔が見られてよかったです」。
整備士のくまモンさん
「地震が起こってからのニュース速報などで、自分が生まれ育った街が被害を受けている様子を見て、なにかできないか、と思っていました。先の長い話になると思いますが、今回このような機会があり、少しでも貢献できればと参加しました。私の地元は高橋というエリアなのですが、古い建築物は被害を受けています。そちらも個人的に支援していきたいと思います」。
CAのゆんさん
「私たちが、元気を提供する側として来たのですが、逆に避難所の方々や園児たちにパワーをもらいました。これから、地元の方々と熊本を、さらに盛り上げていきたいという気持ちになりました。ニュースには映らないような場所の壊れている建物を見ると、まだまだ時間はかかると感じましたので、これからもこうした活動には参加したいと思います」。
2日間にわたる「ANA航空教室」の模様を紹介してきたが、幅広い年齢層に向けて、空の旅を支える多くの仕事を知ってもらう機会となった。2003年よりはじまった「ANA航空教室」は、主に小学校など児童・生徒を対象にしたプログラムだが、避難生活を送る高齢者、また甚大な被害を受けた益城町の幼稚園に向けて、少しでも「空の旅」を通じてリラックスできる時間を提供できれば、というANAの想いがあり実現した。
ANAは、平成28年熊本地震においてさまざまな復興支援活動を行なっているが、こうした送客業務以外での活動で、地元と連携している様子を強く感じた。今回の教室で講義を行なったスタッフは業務ではなく、ボランティアでの参加であり、多くの参加希望が寄せられたという。なにより、現地に担当者が滞在し、被災者の声を聞いているところがANAならではの企業姿勢であり、今後も息の長い支援が期待される。