旅レポ

全席ユニバーサルAC電源装備のJ-AIR新型機「エンブラエル 190型機」で充電遊覧飛行

普通席でも電源&本革装備、クラスJは2+1の贅沢配置

2016年5月9日 実施

2016年5月10日 就航

J-AIR新型機「エンブラエル 190型機」。5月9日、伊丹空港を離発着する形で遊覧飛行が行なわれた

 J-AIR(ジェイエア)は5月9日、翌10日に定期便に就航する最新鋭機「エンブラエル 190型機(E190型機)」のお披露目式を開催した。お披露目式は、別途記事「J-AIR、全席ACコンセント装備の新鋭機「エンブラエル 190型機」のお披露目式」としてお届けしているが、本記事ではお披露目式のあとに行なわれた遊覧飛行での模様をお届けする。

 この遊覧飛行はお披露目式の招待客を中心に実施され、ルートは伊丹空港(大阪国際空港)を離陸し、神戸方面へ飛行。その後、鳥取へ向けて北上し、鳥取手前で3時方向に変針。京都府亀岡、奈良県生駒を経由して、伊丹空港へと戻るもの。便名は新型機E190にちなんでJAL1190便と名付けられ、飛行経路は、TIGER TOZAN TRE G597 YME V55 ROKKO KAMEO OTABE ABENO IKOMAと紹介されていた。

 J-AIRが導入したE190型機は、リージョナルジェットと呼ばれる小型機でありながら、+1000円で乗ることができるひとクラス上のシートとして人気の「クラスJ」を装備。さらにその配置も2+1(を5列)とすることで、ゆったりとした空間と、とくにシングルシートにおいては高いパーソナルスペースを確保している。窓際の“ぼっち席”となる1A~5Aの5席は、一人旅を満喫したい、仕事に没頭したい人にとって人気の座席になることだろう。

伊丹空港に展示されたE190型機のシート。普通席、クラスJ、いずれも本革仕様

 普通席は2+2の配置ながら、31インチ(約79cm)のシートピッチを確保し(ちなみにクラスJは、約18cm長い38インチ[約97cm])、シート表皮もクラスJと同じく本革仕様。JALの最新国内線仕様であるSKY NEXTと同様の落ち着いた色使いながら、シート背面のステッチが少なく、より柔らかい雰囲気を醸し出している。

 このJ-AIRのE190型機で特筆すべきなのが、全席にユニバーサルAC電源を装備していること。クラスJは1席に1つ、普通席は2席で1つ装備しており、国内線仕様機としては極めて充実した電源環境になる。一般的に国内線は飛行時間が短いため電源を装備しない機材がほとんどだったが、これは極めて豪華な仕様と言える。

E190型機のクラスJ。リージョナルジェットでは初装備のシート
JALの国内線では初装備となる全席ユニバーサルAC電源。クラスJでは1席あたり1つ装備されている
こちらは普通席。普通席も本革仕様
普通席は2席で1つ。2口や3口ソケットを持っていれば、隣の人に迷惑をかけず電源をシェアできる。110V60Hzであることが読み取れる
E190型機のモデルプレーンも展示
就航路線をアピール
こちらはシートの紹介

 スマートフォンを安心して(機内モードで)使いたい、PCで仕事をしたいといった現代的な要望に応える仕様となっており、年度内に導入されるというWi-Fi経由のエンタテイメントコンテンツもバッテリの残りを気にせず楽しめるのは間違いない。E190型機は、伊丹~鹿児島線、伊丹~仙台線、伊丹~福岡線に順次投入されていくが、全席アクセス可能なユニバーサルAC電源は競合交通機関となる新幹線と比べて、とくにビジネス利用において大きなアドバンテージになるだろう。

実際の機内におけるクラスJ。こちらは2席側
非常にパーソナル感の高い1席シートのクラスJ。必ず窓があり、ひとりぼっちで座っても楽しい“ぼっち席”
窓側にユニバーサルAC電源を装備

ユニバーサルAC電源を遊覧飛行で体験

 9日の遊覧飛行で記者に割り当てられた席は、34のK。つまり普通席の右側窓際最後列。晴れていれば瀬戸内海の美しい島々や、日本海、そして大阪平野などの景観を楽しめる飛行経路だったと思うが、あいにく天候は本格的な雨。離陸後すぐに雲の中に入り、雲を抜けても雲海が見えるだけというもので、景色は着陸直前に生駒山地と大阪平野を望むことができたのみだった。

搭乗口は23A。バスで搭乗する。右の男性は、ジェイエア株式会社 代表取締役社長 大貫哲也氏。乗客を乗せて初めて飛行できることがうれしそうだ
ウェルカムサインが掲示されていた
搭乗前のセレモニー。J-AIRは豊中市の梅花高等学校と、同市の「お茶処 吉田」の辻村シェフと豊中スカイスイーツプロジェクトを進めており、梅花高校のプロジェクトメンバーを遊覧飛行に招待
メンバーと辻村シェフで作り上げた記念スイーツ。同プロジェクトは機内でのスイーツ提供を見据えているという
16時半ごろから搭乗手続きが始まった
バスでE190型機まで向かう
バスをE190型機に横付けして機内へ。雨に濡れない工夫がされていた
機内へ入るとウェルカムサービス
記者の席は最後列。機内はほぼ満席
16時50分ごろプッシュバック開始
機長のアナウンスによると、重量41トン、燃料5.2トン。離陸速度は250km/hを予定とのこと。W2誘導路経由で32L滑走路から離陸した
E190型機離陸映像。悪天候ながら安定感のある離陸。機長の解説あり

 天気に文句を言っても始まらないので、このような天気の場合、IT系に従事している読者の多いWeb媒体として実証すべきは“本当にユニバーサルAC電源で充電できるのか?”だろう。飛行時間はわずか40分とされており、MacBook Airの11インチモデルを持ち込んでE190型機での充電に挑戦してみた。

 結論はと言うと、当たり前ながら問題なく充電はできた。ACアダプタ経由での充電、3口ソケット経由での充電ともにOKで、MacBook Airは充電状態になっていた。とくにこの普通席のように1つの電源を2席でシェアするという場面はビジネスシーンで多くあり、記者はいつも3口ソケットを持ち歩いている。また、ソケットを差し込むのが難しい場面もあるので短めの延長ケーブルも欠かせない。E190型機で供給されている電源は、AC110Vの60Hz。ソケット、延長ケーブルとも125V対応なので、まったく問題なく使用できるものだ。

34K席。最後列窓際とおこもり感の高い席。エンジン音も静かなもので、大型機の最後部と比べても遜色のない静かさ。もちろん離陸時はそれなりの音がする
テーブルを出した状態。テーブルも厚みがあるせいか、しっかりした感触
11インチのMacBook Airを置いてみた
こちらは開いてみたところ。余裕で作業ができる
充電ランプが無事点り、充電できていた。国内線の普通席では画期的な瞬間
ACアダプタをユニバーサルAC電源に取り付けた状態。この状態では、ユニバーサルAC電源を占有してしまう
そのため欠かさず持ち歩いているのが、3口ソケットと短めの延長ケーブル
このような形で使えば、隣の人と電源をシェアできる
乗り合わせた乗客にモデルになっていただいた。年度内に導入されるWi-Fiコンテンツも大画面で安心して楽しめる

 意外だったのは、普通席の乗り心地のよさ。JALのSKY NEXTで導入された最新シートにひけを取らないどころか、腰まわりのサポートがよく、ふんわり感がある。足下もシート形状の工夫によって広く感じられるものだった。

普通席を機内サービス中。頭上空間も広く、圧迫感がないのがうれしい
こちらは前方から普通席を望む
普通席に座っていた大貫社長に乗り心地を聞いたところ、「抜群だね」とのこと
こちらは、さらに乗り心地が抜群と思われるクラスJ席
クラスJの“ぼっち席”
クラスJシートの座り心地を招待客から聞く大貫社長

 そのほか、今回は天候の関係などでサービスはなかったものの、J-AIRのE190型機ではドリップ仕立てで美味しくなったJALの国内線コーヒー「JAL CAFE LINES」が楽しめる(エンブラエル 170型機も、今後順次導入)。普通席のクオリティの高さを考えると、クラスJの“ぼっち席”は、「電源もあって、美味しいコーヒーもあって、最高のビジネス空間になっているのでは?」とも思えるほど。E190型機はJALグループの機材として、国内線ファーストクラスに次ぐ移動空間を提供してくれる。

ドリップされた「JAL CAFE LINES」。遊覧飛行ではドリップデモのみ。営業飛行に期待
ということで、JALオリジナルのドリンク「スカイタイム」を頼んでみた
さっぱりした味わいが美味しかったです
電源を撮影するために下ばっかり撮っていて気がついたのが、このカーペット。カーペットも新デザインのものになっていた
天井まわりも。LEDの各座席独立読書灯、エアコン吹き出し口など。スピーカーも多数設置されており、個々の音量が絞られていたのが印象的
ラバトリー(洗面所)にも新しい工夫が
ラバトリーの天井にフックがあり、体の不自由な人の支えになる支持棒などを取り付けることができる

 17時過ぎに飛び立った遊覧飛行は、予定どおり40分程度で終了。雨が降り続く伊丹空港に着陸した。リージョナルジェット機というと、どうしても大型機よりも「設備が劣るのでは?」と思いがちだが、E190型機は最新機材だけあってプチ贅沢なプライベートジェット感覚を楽しめた。E190型機の就航区間を移動する機会がある際は、ぜひその利用を検討してみていただきたい。

40分はあっという間。着陸数分前にやっと景色を望むことができた。視程のよい箇所もあり、IKOMA辺りは幻想的な雰囲気だった

編集部:谷川 潔