旅レポ

香港エクスプレスで行く香港&ベトナム・ダナンへの2度美味しい旅(その3)

日本との架け橋、世界遺産の街ホイアンへ

ダナン市の南に位置するホイアンはトゥボン川の周辺に広がる港町。古い街並みの歴史保存地区は1999年から世界文化遺産に

「香港エクスプレスで行く香港&ベトナム・ダナンへの2度美味しい旅」では、その1で香港エクスプレスについて、その2でダナンの魅力を紹介したが、その3ではダナンと合わせて巡りたい世界遺産の街、ホイアンのレポートをお届けする。この旅は、香港エクスプレスが企画したプレスツアーで4月11日から15日にかけて、ダナンを中心にホイアン、香港をまわるよくばりなコースだ。

 11日に香港経由でダナン国際空港に到着し、1泊してから2日目の夜にホイアンへ移動。ダナンは近年、新たなリゾート地として注目され、日本やヨーロッパからの観光客を集めているが、約30km南下した先に、ベトナムで最高級クラスのリゾートホテル、「ザ ナム ハイ」が待っていた。

 ザ ナム ハイの敷地は35ヘクタールもあり、東京ドーム7個半分に匹敵する。それでいてヴィラタイプの客室100室に留めているので、部屋の広さはもちろん、プライベートプールやビーチの空間を贅沢に使える作りになっている。

パーティールームのようなリビングと別棟に寝室兼リビングルームのヴィラがある。ウイスキーなどもフリー
リビングの外には、各ヴィラ専用のプライベートプールとビーチが広がる。まさに楽園

 夜遅くに到着したので体を休めてから、翌朝の朝食へ。敷地の中央にある、メーンプールの脇にあるレストランへ向かった。オーダー式だが、種類豊富なビュッフェも併用でき、朝食から充実している。スタッフにつたない英語でメニューの内容を聞いていると、笑顔で日本語メニューを持ってきてくれ、そのホスピタリティにも感激した。

空と海とメーンプールが溶け込む絶景。冬場は各プールが温水になる
フレッシュハーブが香るフォーとビュッフェの組み合わせ。紅茶もポットでサービス
池のほとりにある本格スパも各ヴィラが独立していてゆったり。カップル施術も人気

 広大なラグジュアリーな空間だけでなく、一つ一つの施設のサービスが整い、5つ星ホテルのなかでも高い評価を得ていることに納得する。

パソコンやプリンタが使えるビジネスセンターや託児所、スポーツジム、テニスコートやハーブ園も広々

ホイアンの歴史保存地区、旧市街地へ向かう

 1999年にユネスコの世界文化遺産に登録された旧市街地は、ホイアンの1800年代頃の街並みが残されている。ダナンからは車で40分程度。長距離バスが出ているので移動しやすい。この日も日本語の話せるガイドのハイさんに案内いただきながら、見てまわる。

 この辺りは、16世紀までチャンパ王国として栄えていたが中南部へ移り始めると、フエ王朝が政権を握り、ホイアンが外国との貿易の窓口となった。朱印船貿易が盛んになり、日本人街や中国人街もでき、華僑として残っている人も多い。建物にも中国の歴史が色濃く残り、日本の文化の面影が見られるところもある。

 日本とは江戸幕府の鎖国により交易がなくなり、オランダとの関係も途絶え、ホイアンの港町は静かになり、港の中心がダナンへ移っていった経緯がある。その歴史を踏まえて街並みを巡ると、アジアの文化が融合されていることに気付き、面白みが増すだろう。

1日3回、車の通行止めの時間帯がある。無料Wi-Fiも入り観光しやすい環境

 世界遺産の観光スポットとあって、多くのツアーが組まれている。我々プレスツアー一行は「レッドブリッジレストラン&クッキングスクール」が主催する、観光ツアーに参加した。

 トラケ有機ハーブ園を巡ってから、ホイアン市場で食材を購入し、トゥボン川をボートで移動してレストランへ。

ベトナム料理に欠かせない香草をガイドが説明。有機ハーブ園の休憩所もヤシの木で作られていた
市場のまわりは袈裟をかぶり天秤を担ぐ、ベトナムらしい光景が広がる。ボートは観光だけでなく大事な交通手段

 レストランのクッキングスクールでは、ベトナム料理を4品作り、ホイアンの食文化をたっぷり味わう(参加費はクラスの内容により55米ドルから、約6000円)。

 地元の人たちに交じって買い物をした食材でベトナム料理を作ると、現地の生活感がより伝わり、リゾートと違った趣を楽しめた。料理、食事中は缶のアルコールやソフトドリンクをフリーでいただけ、料理のボリュームもあるのでお得だ。

調味料や麺の生地、出汁を取るところも自分たちの手で作る
エビのバナナ皮蒸しやモチっとツルっとした自家製麺も不揃いなのはご愛敬。本場の味わいに

 夜はダナンに戻り、2日間お世話になるホテル「ジ オーシャン ヴィラ」へ。これまでのホテルとは違い、1軒屋のコンドミニアム型のホテルだ。別荘として購入し、長期滞在や貸し出ししている人も多いという。

 1階に家族(グループ)で使うダイニングルームがあり、テラスにはミニプールもある。2階は各自のベッドルームで、それぞれにバス、シャワールーム、洗面台がある。調理用具などもすべて揃っているので自炊できるが、ビーチ前のレストランでいただく朝食は付いているので安心を。

レンジや調理器具、大型冷蔵庫、洗濯機、アイロンなどの家庭用品が揃っている

 ダナンのリゾート地のなかでは格安で、LCCの香港エクスプレスを使いすべて低価格でまとめたい人には特にお勧めだ。2部屋タイプのヴィラを借りる場合、850万ドン(約4万0380円、1円=210ドン換算)で、大人2名+子供1名の2家族で借りる場合、大人4名で割ると1名あたり1万円程度ですむ。プール付きヴィラの価格で考えるとお手頃だ。子供(12才以下)は朝食無料のサービスも。

 ヴィラの前はビーチとゴルフ場になっていて、ゴルフ場にもヴィラから直接カートで移動できるのでゴルファーからも人気だ。

プライベートプール付き。ビーチフロント部屋は値段が上がるが、ダナンリゾート地の中では最安値クラス
レストランはビュッフェ形式。目の前にメーンプールとビーチが広がる

 この日はホイアンの歴史や文化を学びながら観光をする。まずはレロイ通りにある、テーラー軒工房の「タンロイ」へ。ホイアンの名産の一つにシルクがあり、オーダーメイドのアオザイや洋服を注文する人も多い。

 タンロイでは、縫製までのすべての工程を職人が行なっていて、ここではカイコの幼虫の状態から、養蚕から製糸、織りなどの作業を追って見学することができる。ガイドはベトナム語、英語、日本語の担当がいて、流暢な日本語で作業の工程を説明してくれた。

カイコの繭から取った糸を紡いでいる。細かい刺繍も手作業。刺繍とは思えない巧みな技

 ほかにホイアン伝統の民芸品でもあるランタン職人や切り絵職人の細かな作業を間近で見られ、ちょっとした社会科見学のようであった。

 続いて、歴史保存地区のスポットを1つずつ見てまわる。この古い街並みは「人が暮らす世界遺産」として注目を浴びたが、観光地化された後は生活する人が徐々に減り、家屋を改装した洋服店や民芸品、飲食店などの店が並ぶようになった。商店化、観光地化されたことで街は潤い、古い街並みの景観が維持されているのも事実だ。日本でいうと岐阜県の白川郷や、世界遺産ではないが埼玉県の川越のようなイメージというと分かりやすいだろうか。

 歴史保存地区には、チケットが必要な名所が21カ所あり、観光案内所で5枚綴りのチケットを販売している。5枚1セットで12万ドン(約570円)。バラ売りはしていないので、事前にインターネットなどで調べスポットを決めておくとスムーズだろう。

数カ所にチケット売り場がある。パスなしのフリーWi-Fiがあるので名所を調べるのを便利

 最初に訪れたのは、チャンフー通りにある「福建会館」。先ほど触れたように華僑も多く、ホイアンには広肇、福建、中華、瓊府、潮州の華人五会館があり、その中でも大きく華やかなのが、福建省出身者が集まるのが福建会館だ。「金山寺」という寺としても知られる。

祭壇には港町ホイアンの航海安全を守る天后聖母などが祀られている。子宝に恵まれる寺院としても有名

 天井から吊るされている立体的な蚊取り線香のようなものは、日本でいう絵馬の役目をするもので、お金を納めて授かり札に願いごとを書いて火をつけると天に願いが届くといわれている。

 次に向かったのはホイアン歴史文化博物館。かつて寺院だった建物を改装して博物館として残している。こちらはチケット不要の無料で入れるスポットだ。

 この地区で発掘された出土品が展示されていた。近くの湾で沈没してしまった朱印船から引き上げた遺産も残されている。出土品には有田焼や備前焼など日本由来のものも多くあり、200年前の交易の話が急に身近なものに感じられる。日本人観光客は、その歴史に興味を引かれるだろう。

江戸時代の通貨や日本語の書簡、日本の皿なども残る。ベトナム人には有田焼が人気だとか

 この地は古くから日本との親交があり、親日家が多いとガイドのハイさんもいう。ホイアンの歴史保存地区には、ホイアン唯一の日本食堂がある。市場の近くにある、その名も「侍食堂」。オーナーの宮川さんはホイアンに旅行で訪れ魅了され、移住し6年前に店をオープン。日本人がこのエリアで店を出すには容易なことではないが、現地の人の協力を得て開店にこぎづけたそうだ。

 ここではカツ丼(13万ドン、約619円)をはじめ、生姜焼きや豚しゃぶなどの和食が味わえ、ヨーロッパ人などの長期滞在者らがベトナム料理以外のものを口にしたくなったときなどに利用するという。温厚で世話好きの宮川さんの人柄にお客が集まっている。

 開業時の話を聞いてみると、「当時は電気の普及もままならず計画停電があり、営業も生活も大変。40℃にもなる真夏の停電時は、ベトナム人は家族を乗せてバイクでひたすら走って涼んでいましたよ」などと地元ならではの話が聞け、楽しい時間だった。ホイアン初訪問の際は、侍食堂で宮川さんに旅のアドバイスを聞くのもよいだろう。

「侍」の暖簾が目印。取材のため、開店前に訪れた。和の小物や日本語の小説などが置かれている

 このエリアに来たのなら、ぜひ立ち寄りたいのがタンキ―の家(進記家)だ。漁師であった進記家が住んでいた家屋で約200年前に建てられている。

 この区域は世界遺産に登録されているが、最初に世界遺産の重要文化財に指定されたのがこの旧家だ。間口が狭いが奥に長く、途中に中庭があり、京都の町屋のような造りも興味深い。

 屋内を見てみると、日本式の梁や柱も取り入れられていて、中国様式とうまく溶け込んでいる。アジア文化が融合した造りやきめ細かな様式美に釘付けになった。

日本式の梁や柱には細かい彫刻が施されている
柱の文字をよく見ると鳥の組み合わせになっている

 最後に立ち寄ったスポットは歴史保存地区の中心にある遠来橋、通称“日本橋”だ。当時は川を挟んで日本人街と中華街に分かれており、1593年に日本人が橋を作って行き来が盛んになったといわれている。現在の橋は、1986年に修復されたものだ。申年に工事が始まり、戌年に工事が終わった。

 ベトナム紙幣の2000ドン札に日本橋が描かれていて、人気の観光スポットとなっている橋は木造で瓦屋根の付いた太鼓橋。中に入ってみると祠があり小さなお寺があった。ベトナムでは「橋寺」とも呼ばれているそうだ。世界各国の観光客が集まり、今の時代もホイアンと世界を結ぶ架け橋になっていることを感じられた。

通行無料だが、中の祠に入る場合は観光チケットが必要。世界中の観光客が集まっている
日本橋からの景色

 だんだんと夜の帳が下りてきた。店先にランタンが彩りを添え、夜のホイアンが幻想的に浮かび上がる。活気あふれる灼熱の昼と、艶やかな夜の雰囲気と両方の顔を楽しめる。

トュボン川は夕日に染まり、街の灯りを写し出し時間によって七変化する
ホイアンの夜を象徴するランタンはお土産としてもあちこちで売られている

 夕食は日本橋近くの「サクラレストラン」へ。川のほとりを見下ろす2階のテラスは特等席。揚げワンタンや、ホイアン名物といわれる「ホワイトローズ」などを注文。ハーブ園でも食用の花をいろいろ見たのでバラを使った料理かと思えば、えび入りワンタンであった。

 透明感のある米粉の薄皮にエビを包み、上品に並べた様子はまるで白いバラ。揚げニンニクが添えられ、香ばしい風味が増した。ヌクマムやチリソースに合い、おかずとしても酒のつまみにもなる一品に満足した。

サラダや小皿料理は9万9千ドン(約471円)から。料理の質が高く日本人観光客が集まる

 こうして、夜までたっぷりとホイアンの歴史保存地区を満喫した。

 翌日は、その1で紹介したようにダナン国際空港から香港エクスプレスで香港へ渡り、香港で飲茶とショッピングを楽しんでから帰国した。

 世界遺産地区のホイアンも近い、リゾート地ダナンは見どころ満載だった。香港でのショッピングと合わせると、1回の旅行の奥行きがグンと広がる。リゾート地でのんびり長期滞在する傾向のヨーロッパ人の楽しみ方とは違い、短期間でもいろいろ巡りたい人にお勧めできるコースだ。香港エクスプレスを活用し移動費を抑えながら、2カ国3都市を巡る旅は2度美味しく後味もよかった。

山口愛愛

横浜生まれ、横浜育ち。ナイヤガラの滝を遊覧、グランドキャニオンをセスナで飛行、モルディブでダイビング、ロンドンでパンクライブ鑑賞などミーハーかつアクティブな海外旅行を多数経験。全国の野球場で取材観戦しているうちに国内旅行にハマり、月に3度以上は取材を兼ねて旅行。スキーやダイビング、キャンプなどのアウトドア趣向の旅行も好む。