【イベントレポート】
【パリ航空ショー2017】FDA、エンブラエル 175最大6機の購入契約発表、パリ航空ショーで鈴木与平会長が挨拶
エンブラエルのE-JETシリーズは納入1300機超え、市場シェアの60%を確保
2017年6月21日 14:24
- 2017年6月19日~25日(現地時間) 開催
ブラジルの航空機メーカー、エンブラエル(Embraer)は6月20日(現地時間)、フランスで開催中のパリ航空ショー2017においてプレスカンファレンスを実施。開発を進める「エンブラエル E2-JET」ファミリーのアップデートや、受注契約の発表を行なった。
国内航空会社では、JAL(日本航空)/J-AIR(ジェイエア)がE190型機を1機確定契約したほか、現在11機のE170型機/E175型機を導入しているFDA(フジドリームエアラインズ)が確定3機、購入権3機の最大6機の契約を結んだことを発表。FDAからは会長の鈴木与平夫妻が臨席した。
カンファレンスではまず、エンブラエルの商業機部門は、最初の航空機であるERJ145型機が米国のコンチネンタル・エクスプレスに導入されてから20周年を迎えることを説明。最初のERJシリーズは現在も運用が続けられるほか、続いて投入した「E-JET」ファミリーは発注が1749機、納入済みが1317機と順調に販売を続けていることをアピールした。市場シェアでも70~130席クラスのセグメントでは61%に達し、60カ国/100社以上が運用している。
続いて、E-JETのエンジンをギアード・ターボファンエンジンに変えるなど効率を高めた「E2-JET」について紹介。エンブラエルの商業部門では、オペレータの経済性を支える戦略を「FLEETSMART」というブランドで訴求しており、各シリーズにブランド名を付けている。E2-JETは「Profit Hunter」と名付けられ、その名のとおり効率性と経済性の高さで、導入企業が利益を追求できることに焦点を当てたモデルであることをアピールしている。
E2-JETは、単通路(シングルアイル)のナローボディ機となるが、このクラスの航空機としては唯一、投入される3モデルそれぞれの主翼が異なることが特徴になっている。これも主翼の最適化により、最大の効率を得ることができ、それが利益に結びつくものであるとしている。
最初に市場に導入されるのは97~106席クラスの「E190-E2」型機で、現在飛行試験などが行なわれており、2018年前半の市場でのサービスインを予定。これに続くのが120~132席クラスの「E195-E2」で1年後の2019年のサービスインを予定している。もっとも小さな機体となる80~88席クラスの「E175-E2」は当初の予定より少し遅れ2021年のサービスインが予定されている。
フライトテストは現在、4機のE190-E2と、1機のE195-E2を使用。2017年後半にはE195-E2の2機目の飛行試験機が初飛行を予定しているという。E190-E2は現在までに100時間を超える飛行時間、3000時間近い地上試験を終え、55%のテストを完了した状態であるとした。
さらにプレスカンファレンスでは、E190-E2とE195-E2の仕様変更についても解説があった。
E190-E2は、高温や高地(つまり酸素密度が薄い)場所からの運用における航続距離を200海里(約370km)伸ばし、例えば米国コロラド州・デンバーからパナマまでの飛行が可能になる。また、滑走路が短い空港での運用時の航続距離を100海里(約182km)延長した。
E195-E2は航続距離を当初の2450海里(約4537km)から150海里伸ばした2600海里(約4815km)へと延長。最大離陸重量も6万700kgから6万1500kgへと向上させる。
今回のパリ航空ショーでは、5社から18機の確定発注、3社から33機のコミットメントを発表。カンファレンスでは各社の代表もしくは契約航空会社の地域を担当するエンブラエルスタッフにモデルプレーンを手渡すセレモニーが行なわれた。
3機の確定発注、3機の購入権の計6機の契約を結んだフジドリームエアラインズについては、「とてもカラフルな機体(のフリート)に新しい色が加わる」と紹介。この場に臨席したフジドリームエアラインズ 代表取締役会長の鈴木与平氏は、7年前に3機のE-JETで創業し、現在は11機を保有していること。この7年間は、エンブラエルのサポートでとてもよい成果を上げられていることへの感謝の言葉を述べた。
また、鈴木与平会長はカンファレンス終了後にも取材に応じ、今回発注分の確定3機は既存機の置き換えではなく追加導入であり「14機までは増やす」と説明。2018年春から、毎年夏ダイヤに合わせて毎年1機ずつの導入を予定しているという。
追加導入となる3機は、「現在の路線のロード(席数)を増やしたい。特に丘珠空港、静岡空港の路線で増やそうと考えている」と説明。「まずは現状のベース空港である県営名古屋空港、丘珠空港、静岡空港、松本空港の4空港でどう路線を増やすかが一番の関心。丘珠へ降りられたのは大きな財産だと思っている」と話した。
客室仕様については導入済み機から変更する予定はないという。ただし、「最近はチャーターで長時間のフライトがある。3時間のフライトで何も(エンタテイメント)がないのは申し訳ないので、Wi-Fiは必要なものだと思う。特にチャーターで使う飛行機にはできるだけ早く導入したい」と、早期の機内Wi-Fiサービス導入に意欲を示した。
同社は国内では唯一、エンブラエル機のみで運航している航空会社となるが、エンブラエル機のよさについて「ステディだ(安定している)と思う。チャレンジングな飛行機ではないと思うが、居住性もよくて、コックピットも無理がない。全体に安定度がとても高い。機体の信頼性も、実際に故障が非常に少ない。部品のサービスに対しても、我々が満足できるサービスを受けられる。貨物室一つとっても、台車などを使わずにハンドリングでき、扱いやすい」と紹介。
さらに、E170/E175よりも一回り大きな機体の導入について、「今は80席前後だが、これを90席前後に伸ばしていくのが我々の希望でもあるので、E190などに関心はある。そうしたときにコックピットが同じで、パイロットも『レギュレーションがなければ、そのままE2を飛ばせる』と話していた。短期間のトレーニングで、フライトシミュレータも同じものを使える。これは大きい」と、同社の機体選択でのエンブラエル機の利点を説明した。
一方、同じ90席クラスとなるMRJ 90については「日本人なので頑張っていただきたいと思う」としつつ、「我々は弱小の小さなエアラインなので、まずはANA(全日本空輸)さんとJAL(日本航空)さんが使われた、その実績を拝見させていただいてからと考えている。その頃にちょうど1号機のリプレースと時期が重なってくる」と、MRJ導入については現時点では肯定も否定もしなかった。