【イベントレポート】ファンボロー国際航空ショー2016

エンブラエル、5月に初飛行した「E190-E2」型機をアピール

JAL/J-AIRはE170型機のオプション1機をE190型機に切り替え

2016年7月11日~17日(現地時間)開催

 ブラジルの航空機メーカーであるエンブラエル(Embraer)は、「ファンボロー国際航空ショー(Farnborough International Airshow)2016」の会場に、2016年5月24日(ブラジル時間)に初飛行を果たしたエンブラエル E190-E2」型機を展示。プレスカンファレンスでは、その特徴や、本ショーでの契約状況などを発表した。

エンブラエルCEO パウロ・シルバ氏

 プレスカンファレンスには、この6月にCEOに就任したばかりのパウロ・シルバ(Paulo Cesar de Souza e Silva)氏も挨拶。ファンボロー国際航空ショーに新型機とともに来られたことを喜ぶとともに、E190-E2の初飛行の模様を紹介。5月24日に3時間20分の飛行を行ない、フルスピードのテスト、フラップやギアの昇降などのテストを無事に終えたことに改めて喜びの意を示した。

 Eシリーズの航空機出荷数などについては、2015年を過ぎた時点で累計で1700機を超える受注、1200機以上を出荷。70~130席級のジェット機としては受注ベースで52%のシェアを占めるという。加えて、出荷ベースのシェアではエンブラエルが60%に達していることを強調。まだ出荷していないメーカーもあるなか、カスタマーサービスが整っていることをアピールした。

 また、70~130席級の市場予測としては、2035年までの20年間で6兆4000億ドル規模の市場になると見ており、特にアジアは56%の1兆6900億ドルと大きな市場となっていることから、北米、欧州ともに重視していく姿勢を示した。

商用機部門の社長兼CEO ジョン・スラッテリー(John Slattery)氏
エンブラエル Eシリーズの受注ならびに出荷機数
世界中の航空会社が導入していることをアピール
受注シェアに対し、出荷ベースのシェアが高いことをポイントに挙げた
2015年~2016年に新規に契約した航空会社
2035年までの70~130席級ジェット機の市場予測

 エンブラエルの次世代リージョナルジェット機「E2」シリーズは、既存のEシリーズをベースに効率を高めたことが特徴。「E175-E2」「E190-E2」「E195-E2」の3モデルが予定されており、最適化を進めた結果、前モデルでウィングスパン(翼長)が異なることも紹介した。これは2016年2月に仕様変更を決断したという。

 E2シリーズの効率向上の一つとして、機体の軽量化が挙げられる。カンファレンスでは、ボンバルディアの130席級リージョナルジェット機「CS100」を引き合いに、両機はほぼ同じ重量でありながら、2クラスの客室仕様時にCS100が108席となるのに対して、E2-E195は120席と、席数が10%多いとした。

 このE2シリーズでは、MRJも採用したギアード・ターボファンエンジンを採用することで燃費効率を高めたことも大きな特徴となる。使用するエンジンはプラット&ホイットニーの「PW1715G」「PW1900G」シリーズで、従来型より16~24%の燃料効率改善が図れるという。また、同じくギアード・ターボファンエンジンを用いるボンバルディアのCSシリーズと比較しても、実際の運航時の燃料効率が高いという。

 このほか、メンテナンスコストの抑制についても言及。ボンバルディアのCSシリーズと比較して機体のメンテナンスコストが25%少ないとし、この理由の一つとして「36カ月」という期間の規定の有無により、10年間のメンテナンス回数を減らせることを挙げた。

エンブラエル E2シリーズの特徴
E175-E2、E190-E2、E195-E2の各機種で異なるウィングスパンとなる
機体の重量が軽く、競合機種と同じ重量ながら10%多い座席数を確保
従来機に対する燃料消費効率
競合機種に対して運航時の燃料効率が高いことをアピール
競合機種に対して機体のメンテナンスコストを25%を抑えられる
10年間で必要となるメンテナンス回数を削減できることを、メンテナンスコスト削減の一例として紹介
従来機と比べてもシートあたりのメンテナンスコストを抑える
従来機のパイロットは、短期間の訓練で型式ライセンスをE2シリーズへ移行できる
機内も従来機から刷新し、よりリラックスできる空間にしたという

 5月24日に初飛行した飛行試験機の1号機は、現在までに62時間、24回の飛行試験を続けているとスライドで紹介。ただし、今回のファンボロー国際航空ショー2016で展示するために、ブラジルからイギリスまで自力飛行している。サンパウロのサンノゼ・ドス・カンポス空港を出発し、2回のテクニカルランディングを経てイギリスに到着。スライドにはこの最後の飛行分が含まれておらず、カンファレンス時点では、5時間50分のこの飛行時間とフライト回数が足されると補足した。

 続いて飛行試験機の2号機も7月8日に初飛行。3号機は計器類など新たな装備を追加するなどしたうえで、1~2カ月後に初飛行を行なう計画であるという。

 初飛行の実施は前倒しであったというが、ほかのE2シリーズも含めて予算、スケジュールはすべて予定どおりとの説明。最初のE190-E2は2018年前半に納入予定としている。ただし、現時点で公開されていない最初の納入先がどの航空会社になるかについては、このカンファレンスでも公開されず、今年の終わりまでに航空会社名を発表すると述べるに留めた。

 E2シリーズは現在までに670機の受注(うち確定272機)があり、このファンボロー国際航空ショー2016では、新たな航空会社としてインドネシアのKalstar Aviation(E190-E2の5機確定、5機購入権)、イスラエルのArkia Israeli Airlines(E195-E2の6機確定、4機購入権)を発表。従来型についても、Nordic Aviation Capital(確定はE190-E1を4機、オプションでE175)、JAL(日本航空)/J-AIRがオプションとして契約していたE170の1機を、E190に変更して確定発注したことを発表した。

5月24日のファーストフライト後もテストが続けられている
ファンボロー国際航空ショー2016のために、2カ所を経由し、12時間40分のフライトで回航した
2号機も7月8日に初飛行
3号機は現在準備中で、1~2カ月後に初飛行の予定
3モデルのスケジュール。最初のE190-E2は2018年前半の納入を予定している
ファンボロー国際航空ショー2016での契約状況。JALは従来型ではあるがE170のオプション1機を、E190に切り替えて正式発注
エンブラエル E190-E2型機のフライトテスト機
垂直尾翼
右主翼
エンジン。プラット&ホイットニーのギアード・ターボファンエンジン「PW1900G」シリーズを採用する
エンジンを後方から見た様子
ギアのタイヤはノーズギアに2本、メインギアに4本(左右各2本)を使用
ノーズギア(写真左)とメインギア(写真右)のタイヤはいずれもミシュランの「AIR X」を採用
機内はモックアップで展示。前方の入り口には機内のライティングなどを制御するパネル
照明器具もメンテナンスのしやすさを重視した設計にしているという
シートの上側にあるオーバーヘッドコンパートメントは、人が出入りしやすいよう傾斜を付けた形状が特徴
モックアップではビジネスクラスを想定したシートも取り付けられている
機体後方のラバトリー