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日本旅行業協会と国交省、インフラツーリズム実現に向け「関東地方整備局モニターツアー」

旅行会社の担当者と関東近郊大規模道路工事現場を視察。近日ツアーを企画

2016年12月15日 実施

東京港トンネル工事での国道357号東行き側現場を見学。この先でシールドマシンが掘削している

 JATA(日本旅行業協会)の関東事務局は、国土交通省 関東地方整備局と協力して、道路工事見学を旅行ツアーとして組み込む、いわゆるインフラツーリズムを実現させるための準備として、旅行会社から代表参加者を募り「関東地方整備局モニターツアー」と称して視察ツアーを実施した。当日は、首都圏の比較的大規模な道路工事現場を巡り、最後に実際にツアーとして実施する際にどのように見せたらよいかや問題点なども話し合われた。

 今回見学できたのは、外環道(東京外かく環状道路)の三郷南IC(インターチェンジ)~高谷JCT(ジャンクション)間(千葉県区間)、東京港トンネル工事(東行き)、外環道の関越自動車道~中央自動車道~東名高速道路シールドトンネル工事の東名JCT(仮称)と、3カ所。このモニターツアーに同行した様子をレポートする。なお、詳しい工事内容に関しては、さらに別記事で続報する予定だ。

東京外かく環状道路の千葉県区間(三郷南IC~高谷JCT)

 まずはJR松戸駅に集合し、バスに乗り込む。目指すはすぐ近くの外環松戸相談所。ここは、2004年7月に開所した、外環道の千葉県区間となる三郷南IC~高谷JCT間の概要、進捗状況告知や工事に関する相談窓口として使われているインフォメーション施設。

 工事場所に隣接していて、平日昼間の開設時間には誰でも自由に訪問できる。内部には、工事区間の完成予想模型や概要のパネルなどが置かれている。ここで外環道千葉県区間の事業概要について説明があった。

外環松戸相談所

所在地:千葉県松戸市中矢切589-15
開所日:月~金曜、毎月第2日曜(年末年始、祝祭日は休み)
開所時間:9時~17時(12時~13時は休み)

朝、JR松戸駅に集合。ショートタイプの観光バスに乗り込む
バスで目指すのは、外環松戸相談所。工事現場に隣接している
外環松戸相談所内には工事区間の完成予想模型や概要のパネルなどが展示されている
外環道千葉県区間の完成予想模型
完成予想模型では今回見学するのはこの場所あたりになる
首都高湾岸線や東関東自動車道、国道357号に接続する高谷JCTは複雑な作り
足下には外環道の完成予想マップが貼られていた
トイレは、このように要所で立ち寄る事務所に用意される
工事現場に立ち入るにはヘルメットは必須。要所の事務所で借りることとなる
外環松戸相談所がある交差点での高谷方面を見た工事状況。地下部分に高速道路が通り地上部は一般道の交差点
同じ交差点の国道6号とつながる三郷方向。矢切富士見公園が見える
側道の周囲は工事用の遮音壁が並ぶ

 まずは、外環松戸相談所のすぐ近くの矢切富士見公園に向かい見学。この公園はトンネルの道路上にあり、見晴らしのよい丘の上から、高架となる高速道路の外環葛飾大橋を見下ろすことができる。その外環葛飾大橋の上にも移動する。外環葛飾大橋では、少し離れた国道6号と平行して走るJR常磐線と交差する場所で見学した。

 そのあとは、先に見学した矢切富士見公園の下を通る矢切トンネル内に入り、トンネル内では松戸IC付近を見学。ここは半地下構造になっていて、外光を効果的に取り入れる堀割スリット構造と呼ばれる、均等に並ぶスリットが美しい。また、道路標識を間近に見る展示も考えられていて、大きな道路標識も見ることができた。

外環葛飾大橋~矢切富士見公園~松戸ICの工事現場付近

高速道路と横を走る一般道の上に完成予定の矢切富士見公園
矢切富士見公園から三郷方向に伸びる高架部分。公園の下を道路が通っていることが分かる。先で交差しているのは国道6号とJR常磐線
矢切富士見公園はとても見晴らしがよい。この方角は名前のとおり条件がよければ富士山が見える
先に見えた高架部分の見学に向かう。国道6号から見た高架部分。この高架に向かっている
すでに外環道は、この6号で接続する部分まで供用されている。東京方面に向かって左に入る
外環に接続する標識が出ている。ここはこのあとグルッと反対方向にまわると外環と三郷方面だが、右が工事現場の入口(ここから一般車両は入れない)
高架部分が近くに見えてきた
こちらが先に見学した矢切富士見公園。下が矢切トンネルになっている
遠ざかってから見た矢切富士見公園と矢切トンネル。中央2つが高速車線
段差があるので慎重に高架部分へ進入する
高架からの眺めはとてもよい。都心方面を見ると東京スカイツリーが見える
バスから降りて高架となる外環葛飾大橋を見学。舗装はまだされていない
降りたのはちょうどJR常磐線と交わる部分。左を走るのは国道6号
矢切富士見公園方面を見ている。想定するツアーでは公園からここまで歩くことにも対応できるとのことなので期待したい
地下部分の見学に向かう。矢切富士見公園下の矢切トンネルに入っていく
周辺住民に考慮し、工事車両はすべてトンネル内を通行。そのため車両で渋滞気味。交通整理は重要
松戸IC付近を見学。スリット状の明かり取りが特徴的
スリットは車の高さ程度の壁がある
大きさを体感できるように、近い場所で道路標識を見学。床に置かれているが、実際には見やすいようパネル展示される
ここで外環道千葉県区間の見学が終わるので、ヘルメットを回収

東京港トンネル工事現場視察

 次に向かったのは「東京港トンネル工事現場」。ここは首都高湾岸線の臨海副都心~大井間にある海底トンネル。首都高湾岸線ではお馴染みの海底トンネル区間だが、今回見学するのは並行する一般道路の国道357号の東行き側の東京港トンネル工事となる。すでに西行き側は3月26日に供用されている。工事現場に向かう際に、この西行き側を通過して完成後の参考として見せてくれた。

東京港トンネル工事

四つ木から首都高で首都高湾岸線を目指す
有明で一般道へ降りた
一般道の国道357号は湾岸線と平行している
東京港トンネルが見えてきた。西行きは3月26日に供用されている
東京港トンネル入口付近
東京港トンネルの内部。今回見学するのは、これの反対となる東行き区間
海底トンネルなので、出口に向かって緩やかに傾斜がついているのが見える
東京港トンネル工事現場の入口
現場事務所に到着。東京港トンネル排気塔がすぐ近くに見える場所
現場事務所では、ヘルメットとインカムが貸し出される
トンネル内は騒音が大きいので、見学中はインカムを装着して説明を聞く
トンネルへは徒歩で移動
土砂を運び出すトラックがひっきりなしに通過する
トンネル入口付近
トンネル内部。実際の見学時は、この状態である可能性が高い
トンネル内部でレクチャーを受ける
この先でシールドマシンが掘削している。今回の見学はここまで
トンネルのセグメントと呼ぶ部材を運ぶ特殊車両

外環道(関越~中央~東名)シールドトンネル工事

 最後に向かったのは、、外環道の大泉JCTから、中央自動車道と東名高速道路、これらほぼ全線を地下トンネルでつなげる予定となる東名JCT(仮称)。東名高速が環状8号を越える位置にある用賀出入口の近くになる。多くの部分で地下40m以上の深さの大深度地下トンネルを掘削する工事。そのため地上に見える工事は地下とつながる立坑が主となる。この大深度地下の利用では用地取得が不要で、用地取得は地上に出る部分だけになることがメリットだ。

 現在同じような工事現場は関越自動車道の大泉JCTにもあり、見学した東名JCT側と大泉JCT側の双方から掘削していき、ちょうど中間地点で貫通させる。そのため、見学ツアーは大泉JCTの現場でも対応可能とのことなので、どちらになるかはツアーの企画によると思われる。

 見学時にはちょうど、トンネルを掘削しながらセグメントと呼ばれるリングを組んでいくシールドマシンを立坑に降ろしたところで、まだトンネル掘削前の状態だった。見学時点には掘り進みセグメントが組まれ、東京港トンネルのような状態になっているはずだ。片側3車線道路を予定していて、トンネル断面は15.8mと東京港トンネルより大きなものになる。この大深度のトンネル内へ網で囲われた仮設エレベーターで向かうあたりも工事の迫力を感じられる見学となる。

外環道(関越~中央~東名)シールドトンネル工事の東名JCT付近

最後の見学場所の外環道シールドトンネル工事のある東名方面へと向かう
東名高速に隣接して工事現場がある
工事現場のすぐ横に大型バスも駐車可能な駐車場がある
ヘルメットを駐車場にて装着
ここでは反射ベストも装着する
東名高速下に工事概要などの解説を展示するインフォメーションセンターが用意される予定になっている
外環道(関越~中央~東名)シールドトンネル工事東名JCT側の現場全体。中央に地下に通じる大きな立坑がある
脇を東名高速が走る。二子玉川方面を見渡せる
現場には高台に見学用に仮設の見晴台が用意されていた
立坑を間近に見たところ。地下70mの深さがあり、ここからシールドマシンや土砂の運び出しをする
エレベーターで立坑を降りる。定員10名
このような仮設エレベーターに乗ったことのない人には貴重な体験。動作時はけっこうな衝撃がある
ゆっくりと降りていく。周囲の囲いは網だけなので迫力がある
ちょうどシールドマシンを降ろして組み上げたばかり。これはシールドマシンの背面から。実際の見学はセグメントが組まれたトンネル内になる予定

 視察の最後には、JATA 関東事務局の鈴木伸一氏が進行役となり、関東地方整備局と今回参加したメンバーとの間で意見交換会も実施された。

 関東地方整備局では、これまでこのようなインフラツアーを旅行会社から直接受け付けることはなかったが、今後は広域計画課が窓口となって対応していく。ただし、訪日外国人を今すぐに受け入れることは難しく、専門用語が分かる通訳をツアーに同行させるなど考える必要があるとのこと。

 これまでも開通道路で一般向けに募集をかけてウォーキングツアーといったイベントはよく行なわれていたので、これが特別な日のツアーとして組み込まれる可能性も考えられる。雨天時など悪天候への準備として、カッパの準備程度は問題ないそうで、台風など工事自体が中止になるケースがあることは、あらかじめ了承しておいてもらう必要があるといった確認があった。

 また、工事現場ならではの(たとえば海底から掘り出した土や石など)記念になるモノを配布したり、見学証明書のような記念品を考えてもいいという意見も出されていた。

 これらを踏まえ、今回視察した工事現場を各旅行会社がインフラツアーとして企画する予定となっている。

視察の最後に行なわれた意見交換会
今回のモニターツアー先導や見学意見交換会で進行役を務めたJATA 関東事務局 事務局長 鈴木伸一氏