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NEXCO東日本、2017年度開通の東京外かく環状道路 三郷~市川の工事現場を公開

アスファルトプラントの火入れ式も開催

2016年11月9日 実施

 NEXCO東日本(東日本高速道路)は、東京外かく環状道路の三郷南IC(インターチェンジ)~市川IC間の現場を報道陣に公開した。東京外かく環状道路は首都圏結ぶ3環状のなかの一部であり、2017年度の開通に向けて国土交通省 関東地方整備局とNEXCO東日本が共同で工事を行なっているもの。現在の整備率は約74%となっている。

 今回、公開された箇所は都県境にある江戸川を渡る外環葛飾大橋、松戸市域にある地下構造物の状況、市川市域にある京葉道路・市川IC付近の工事状況、そしてメインが市川市域にあるアスファルトプラントで開催される「プラント稼動開始式典(火入れ式)」である。

 集合場所は千葉県松戸市中矢切589-15にある「外環・松戸相談所」 ここは近隣の住民を始め、一般向けに外かく環状道路 三郷南IC~高谷JCT(ジャックション、仮称)間の工事について紹介するためパネル展示など行なっている施設。誰でも見学できるところだ。

現場公開は千葉県松戸市中矢切589-15にある「外環・松戸相談所」が集合場所だった。一般向けにも公開されており、開所時間は9時から17時まで。開所日は月~金曜
外環・松戸相談所の内部。三郷~市川IC間の現場の模型や写真、資料も展示

 外環・松戸相談所でバスに乗車。プラント稼動開始式典に向かう前に東京都と千葉県の境、江戸川に掛かる外環葛飾大橋に立ち寄った。すでに橋の部分は完成していて、見学の時点では埼玉方面に高さ7mの遮音壁を施工している最中だった。それが終わると橋桁部分の工事は完了とのこと。あとは舗装を敷いたり道路の照明、標識などを付けたりすれば完成だ。

 現場の特徴は橋の両サイドに国道があることから、工事の影響が国道になるべく及ばないようにするためヤードで組み立てた橋桁をクレーンに吊って掛けていく「送り出し工法」を使っていること。また、通常はあとから付ける遮音壁の支柱も、送り出しの際に取り付ける方法を取った。

江戸川に掛かる外環葛飾大橋。遮音壁が見えるのが埼玉方面。なにもないのが地下に入っていく千葉方面
道路面はコンクリートの上にゴム状の防水コートを施して、その上に水が染みないアスファルトを敷き、さらに道路表面には排水性に優れた高機能舗装を敷く構造となる。それぞれのアスファルトの厚みは4cmずつ。道路に降った雨はアスファルト舗装の層の間を流して排水している
埼玉方面に見える遮音壁の高さは7m
遮音壁の下部は明るさや開放感がある強化ガラス。クルマの衝突などに対応するため鉄芯入りで、さらに落下防止のためワイヤーで支柱に留めてある
フェンスも同様に落下防止の対策が施してある。クルマで走っていると気がつきにくいが、こういった細かい部分にも安全対策が施されている

 この江戸川から東京湾岸道路につながる高谷JCT(仮称)までの12.1kmは、外環千葉県区間と呼ぶ。ここは高速道路の部分と一般国道である国道298号を同時に作っているのが特徴。高速道路部分はNEXCO東日本が有料道路事業として整備をしている区間なのでNEXCO東日本の管轄。地上部になる国道298号は国土交通省の管轄なのだが、外環道千葉県区間は高架橋ではなく地下構造になるので、地上になる国道298号を作るには、まず地下から作らなければならない。すると地下ができないことには地上が作れないので工期も長くなるし効率もよくない。

 そこでこの区間では縦割り的な地下と地上の分業ではなく、国土交通省が地上も地下も作る部分と、NEXCO東日本が地上も地下も作る部分に分け、連続的に工事をしていく方法を取っている。その整備区間の内訳は国土交通省が4km、NEXCO東日本が6kmとのこと。

 工事費についてはこのようにやり方が複雑なので、詳細な金額は取材時では算出前とのことだったが、参考として出されたのは高速道路区間と国道区間を合わせて1kmあたり960億円という。ただこのうち半分以上が用地取得費である

 さて、次の見学場所は地下区間、松戸IC千葉方面入り口から本線への合流部分だ。この区間は計画が作られた1969年当時、高速道路を高架橋で作る予定だったが、松戸周辺の土地利用や環境への意識の変化などによって1996年に変更があった。

 そこで高速道路は地下へ作り、国道は高速道路上の両脇に整備。さらに遮音壁、植樹帯、副道、歩道を設ける環境施設帯を作ることになったのだ。これによって当初40mほどの予定だった道路幅が、標準的な場所で60mとなったという。

付近の渋滞を起こさないため、工事用の車両は建設中の道路を通行する。写真の場所は松戸ICの入り口。左が本線で右が入路だ。函体(土木用語で箱状の建造物。ここでは道路と壁、天井のこと)の幅は約24mあるが、合流点は倍くらいの幅になる。ちなみに高さは約8mだ。ここでバスからいったん降車してこの区間の工法に付いての説明を受ける
工事の模様や工法を紹介するパネル。工事で出る堀削土は約560万m3で、これは東京ドーム約4.5杯分となる量。ここで出た土は他の道路事業の盛り土に使うこともあるし、東京湾の漁業に活用するため潮流整備の埋め戻しなどにも使う。この地区は大昔は海だったので、掘って出てくる土はもともと海中にあったものでもある
舗装やコンクリートに関して説明。コンクリートの土台部分は平らではなく水はけをよくするため少しの勾配が付いている
標識の文字はヒラギノゴシック書体を使用。高速道路の標識は一般道と区別するため緑色が使われる。この区間は地下を通るので地上の標識とはサイズも変更している。標識の材質はアルミだ

 外環千葉県区間には完全なトンネルだけでなく「堀割半地下構造」という上下線の中央上部が開いた構造も取り入れている。この構造のメリットは大きく2つあり、まず道路が地下になるのでクルマの走行音が外に漏れないこと。そして完全なトンネルを作ることと比べて費用が安く済むということ。また、これに加えて上が開いてるためトンネル内に外光が入り、照明などの維持管理費も縮減できる利点もある。

 構造面での特徴はトンネルに比べて柱が多いこと。これは地下の側面の壁から受ける土圧に対応するためのことだが、柱が連続するので明るい場所と暗い場所ができてしまう。すると通行するドライバーにはこれがチラつきのような感じになるので眩しさにより前方はちょっと見えにくくなる。そこで堀割の開口部に減光用のシートを被せて道路に入る光量を調整し、チラつきを防止しする施工も行なっていた。

 さて、地下を掘ると地下水の流れにあたることが多いのだが、外環の工事においてもそれはあった。そこで函体の両サイドには遮水壁を設けて水の浸入を防ぐ。さらに函体下部には水が上がってこないようなコンクリートを敷いている。それでも水が回ることも想定されるので、上がってきた水を汲み上げるための井戸も工事しているとのこと。

 地下水の流れは構造物を地中に入れて数年経つと落ち着いてくるというので、それまではこの井戸で湧いた水を処理する。11月9日に地下水が原因と思われる陥没事故があったが、外環道では水に対する対策は十分に行なっているという。

側面からの土圧を支えるため柱が多いのが構造の特徴。柱が多いことによる外光のチラつきを軽減するため、開口部に減光用のシートを設置中。バス内から撮った写真だが、その違いが分かるだろう
そのほかの装備など。通行量の多い道になるので走行時は車間が取りにくくなることが予想される。するとドライバーは先行車のリアを見ながら走ることになるため、車両後方を照らすプロビーム照明を採用している

 外環道の三郷JCTから高谷JCT(仮称)までの区間の舗装に使用するアスファルトは、膨大な量になる。それを外部のプラントから運び込んでいると周辺の交通渋滞が激しくなるため、市川北と高谷の2箇所に専用のアスファルトプラントを建設した。今回の取材ではそれらプラントの稼動開始式典に立ち会うことができた。

 プラントは2箇所あるが、式典は市川北で行なわれ、外環道がある自治体の関係者、工事関係者など約150名が参加している。式典は神事として行なわれるので、神職による祝詞の読み上げや代表者による玉串奉納などの儀によって構成。その項目内に代表者による炉への点火式が行なわれた。

外環道の工事で使用するアスファルトを作るために建設された、市川北のアスファルトプラントで火入れ式が開催された。ここのほかのもう1カ所、高谷にもアスファルトプラントはある
神事なので会場に入る前には手水を済ませる。出席者は約150名と盛大なものだ。神職による進行で式典は進んだ
火入れの儀では代表者が合図とともに点火スイッチを押す。炉に火が入る模様は別のモニターに映し出されていた
神事が終わったあとは関係者の挨拶が行なわれた。最初は施工主代表として東日本高速道路株式会社 関東支社の建設事業部部長である堀圭一氏が登壇
市川市の市長、大久保博氏
松戸市 市長の本郷谷健次氏
三郷市は副市長の冨田耕司氏が出席
葛飾区の副区長である久野清福氏
道路工業株式会社 代表取締役社長である中田隆博氏
これまで紹介した項目を振り返るスライド
堀割半地下構造の工法を解説したスライドも紹介された。費用的にはトンネルを掘るよりは安価だが、高架橋を作るよりは高いということ

 次に向かったのは、市川市域の2カ所のトンネル工事現場。最初は京成電鉄の菅野駅の真下部分で行なわれているトンネルで、ここで使われている工事の手法はルーフアンドカルバート工法というもの。

 ほかの部分で使われる堀割構造では、トンネルを通したい部分の真上から穴を掘って函体を埋めていくのだが、この場所は地上に駅があるのでそれができない。そこで駅横の両サイドを掘るのだ。まずは穴開けの際に横からの圧力を抑える土留壁を設けたあと、線路下の地盤に薬剤を注入。

 続いて縦穴を掘る作業スペースすべてを覆う防音ハウスを作ったあと、駅の両脇に進立坑と呼ぶ片方の縦穴と駅反対側の到達立坑と呼ぶ大きな縦穴を掘っていく。

 そしてここからが本番。発進立坑側の防音ハウス内でコンクリートのボックスカルバートという道路部分の函体を製作。この現場では4函体を作っている。そのボックスカルバートを地下に降ろし駅下に送り込むための発進台へ設置。

 そして函体の外縁に合う位置で箱型ルーフという防護材を横断面全長に配置したあと、ボックスカルバートを線路下へ牽引。その際にボックスカルバートと箱型ルーフが置き換わることで、鉄道の運行に影響を与えず直下に大きなトンネルを通しているのだ。

 この区間に使われたボックスカルバートは4連2層のもの。サイズは幅が約44m、高さが約18m、延長は約37mで、これは世界最大級のものとなる。写真では4つの穴しか見えていないが、下の段はすでに床の下に収まっていて、ここが高速道路区間。そして見えている部分は国道298号で、両脇が国道14号への連絡通路となっている。

京成電鉄の菅野駅下で行なわれているトンネル工事の現場。ボックスカルバートという函体を駅下に通していくやり方だが、これだけ大きな断面積のものは世界最大級とのこと
作業員の方の大きさと比較するとこの部分がいかに大きいものか分かる。ちなみにボックスカルバートは4連2層式なので、製作中の床下にも同サイズのものがある
大型のクレーンを使って内部で4つのボックスカルバートを作った
クレーンの標準合図表も掲示されていた
ルーフアンドカルバート工法というものを使っている。駅があるため道路の直下に穴が掘れない。そこで両サイドに縦穴を掘り、下でつなげてそこに函体を通すというもの
下が外環道で上が国道。幅が43.8m、高さ18.4m、延長37.4mもある巨大な構造物を地下に入れた現場だった
工事の音を外に漏らさないためまず巨大な防音ハウスから作った。そして大量のコンクリートを使うので専用のコンクリートプラントも建設。工事に使うコンクリートを一括して作るので品質は一定に保てる。これはトンネルの完成度を高めるためにも大きく貢献する

 現場公開最後の場所は、京葉道路とつながる部分のトンネル工事。ここは外環道に関する複数の工事が同時進行で行なわれているところだが、見学したのは京葉道路の千葉方面からのクルマが外環道・松戸方面に向かう際に通るAランプのトンネル。

 ここは直径が13.27mある泥圧式シールド堀進用機械を使うシールド工法によって作られているものだ。余談だがこの径は鎌倉の大仏の全高とほぼ同じということだった。

 ここで行なっているシールド工法とは、掘進機の後ろから同時に後続設備を積んだ車両を進ませていて、その設備でセグメントと呼ばれるコンクリートの壁材をトンネル内部に構築していくもの。セグメントで覆うトンネルの内径は約12mで、ここに2車線の道路が通るようになる。

プレゼンセンターの横にあった現地の模型。一見、よくある模型に見えるが裏面には地下の構造も作られていた。地下はかなりの複層になっているのがよく分かる。AランプとBランプの丸いチューブ状のものはシールド工法で作られていて、そのほかの四角い通路は地上から穴を掘ってボックス状のものを入れていく方法で作られている
泥圧式シールド堀進用機械には名前があり、この地域が田尻ということから「タジリー号」と命名されている
トンネルは9つのセグメントのピースを組み合わせて1周を作る。セグメントがはまっていない部分には仮の構造材が入れてあるが、セグメントを入れる際にはこれは取り外される。トンネル内部にセグメントを送るための線路を敷き、そこに電気式のトロッコを走らせている

 Aランプの掘進が始まったのが2016年5月、約半年で全長約510mのうち約440mまで進んでいるという状況だった。今回はトンネル内に入ることはできたが、掘進をしている先端部まで行くことができなかったのが残念だ。

 以上で東京外かく環状道路の三郷~高谷JCT(仮称)間の現場公開は終了。この区間は2017年度に開通予定だが、従来の開通部と合わせると走行距離がかなり伸びるので、開通した際は現状の一律料金ではなく距離ごとの料金設定になる予定だと説明があった。

京葉道路をまたぐ橋桁は、2017年2月に掛ける予定だという。この工事では京葉道路は一晩、通行止めにする