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NEXCO東日本、凍結防止剤最適自動散布システムの導入報告

外環道の工事進捗や、SA/PA売上高など報告、10月定例記者会見

2016年10月26日 実施

東日本高速道路株式会社 代表取締役社長 廣瀨博氏

 NEXCO東日本(東日本高速道路)は10月26日、2016年度6回目となる定例記者会見を実施。9月の営業概要や、冬期シーズンの雪氷対策についての説明と凍結防止剤最適自動散布システムの導入報告があった。

路面状態を判断して、凍結防止剤の散布を最小にする技術

 NEXCO東日本には、積雪寒冷地に長い区間の路線を持つが、冬季の安全な交通確保は最も重要な課題。年間降雪量1mを超える重雪氷区間が、管理する高速道路の約6割の2200kmにもおよんでいるため、雪氷対策はとても重要になる。

 北海道支社管内、道東のトマムIC(インターチェンジ)付近で、10月6日夜間から翌朝にかけ初雪を観測し、路面凍結を防止する雪氷対策を実施。10月20日夜間には最大15cmの降雪もあり、除雪作業を実施した。昨シーズンは2015年10月13日に北海道支社管内で初雪を観測していて、2016年の今シーズンは1週間早い実施となった。

 会見では、この時期は突然の降雪があるため、スタッドレスタイヤへの交換や、タイヤチェーンを携行といった冬装備対策を、秋口から早めに心がけてほしいと説明があった。関東~南東北方面から北へ向かう下り線で起こりがちとのこと。

 また、雪氷対策では、新たな凍結防止剤最適自動散布技術の発表があった。このシステムは、「ISCOS(Intelligent Salting Control Optimization System、アイスコス)」と呼び、ブリヂストンが開発した路面状態システム「CAIS(Contact Area Information Sensing、カイズ)」を道路管理に活用するため、ネクスコ・エンジニアリング北海道と共同開発した世界初の技術。

 路面凍結を防ぐ目的で散布する塩化ナトリウムは道路構造物に対して影響があるため、最小限にする必要がある。散布量は熟練者が巡回し目視により判断しているが、この作業を自動制御するというもの。

 CAISは、タイヤ内部に加速度センサー、無線センサー、発電装置を装着し、路面状況から得られる振動波形をもとに、凍結や湿潤といった路面状況の判断ができる。乾燥アスファルトでは、タイヤの踏み込み(接地開始)と蹴り出し(接地終了)の接地端部が明確な波形となって検出されるが、凍結状態では接地部分で滑ったり、湿潤状態では踏み込み時に水膜に接したりするときの波形が検出され、判断が可能になる。このCAISから得られた路面判断データは、同時に区間もGPSで把握し、リアルタイムでサーバーに送信、データベース化される。これをもとに、100mごとの凍結防止剤の散布量が決められる。これらデータをもとに管制センターから、現場に凍結防止剤散布車へ積載量を指示、GPSから場所を100m単位で特定し散布する。ISCOSの開発費としては4600万円をかけている。

 2014年度に初めて札幌管理事務所に配備。2016年度、CAISを搭載した雪氷巡回車9台と凍結防止剤自動散布装置を搭載した散布車21台を導入している。3年後までには、北海道支社管内の全雪氷基地に順次拡大していく。

 2015年の実績で、凍結防止剤の使用量を10%削減できている。将来的にはこれを倍の20%削減まで進めることを目指している。凍結防止剤は全体で年間約16万トンを使用、北海道だけで約3万トンの使用がある。この削減で大きなコストダウン効果があるが、もっとも大きな効果としては、塩を使うことから道路構造物の腐食を最小限にとどめられることを挙げていた。凍結防止剤自体はさほど高価ではなく、その削減によるコスト減より構造物への被害を最小限にすることを重視しているとのこと。

 また、熟練者を必要としない体制構築が急務で、導入により散布オペレータの作業負担を軽減できる。将来的に散布車への乗車を、ドライバーとオペレーターの2名から1名体勢にすることを視野に入れている。

 ISCOSの解説のなかで、NEXCO東日本 代表取締役社長 廣瀨博氏は、「基本的には北海道だけでなく全社展開していくことを考えています。雪氷対策技術にさらに磨きをかけ、世界で“雪氷対策のことならNEXCO東日本”と言われるようにしたいという意気込みでいます。日本は重氷雪地域で人口密度が高いという、世界でも類を見ない環境です。共同開発したブリヂストンとの兼ね合いがありますが、可能な限り冬季交通確保に活用してもらいたいと考えています。現在、オーストリアの高速道路会社ASFINAG(Autobahnen- und Schnellstrassen Finanzierungs Aktiengesellschaft)と技術交流をしています。ASFINAGの管理する高速道路は山岳地帯が多く、降雪地域もあります。またトンネルのNATM工法の開発でも知られていて、技術的にも交流の意義があります。世界でもう1社ほど、雪の研究で提携できる会社があればと考えています」と語った。

凍結防止剤最適自動散布システム「ISCOS」の概念図
CAISを搭載した雪氷巡回車で路面データを収集
タイヤ内部に加速度センサー、無線センサー、発電装置を装着
路面データ収集中の画面
凍結防止剤散布車
収集データから凍結防止剤の最適量を投入
凍結防止剤散布中の車内オペレーター
凍結防止剤散布のようす

9月は通行台数が増えるもののSA/PA売上高は減少

 2016年9月の通行台数は、1日平均の通行台数が前年比101.2%の292万3000台、料金収入(税含まず)は前年比と同額の690億700万円となった。この結果について同社は「通行台数はシルバーウィークの休日が前年の5連休から3連休に減ったことや天候不順により減少したが、圏央道の新規供用区間の影響により、全体としては増加になったものと考えている。通行台数は増加したが平均利用距離が減少し全体としては増減がなかった」との見方を示した。

 また、9月のSA(サービスエリア)/PA(パーキングエリア)の売上高は、前年を9.3%下回り、前年比90.7%の114億300万円。飲食商品販売は82億8000万円(前年比10.7%減少)、ガソリンスタンドは31億2000万円(同5.6%減少)。売上高減少の理由は、「飲食商品販売は、前年と比べ連続休暇日数が少なく、曜日配列や、管内広範囲に台風や天候の影響を受けたことで売上高が下回った。ガソリンスタンド部門では各油種とも単価が12円程度低下したため下回った」とされた。

冬季シーズン対策や、外環道 三郷南IC~高谷(仮称)JCT工事の進捗

東日本高速道路株式会社 取締役兼常務執行役員 管理事業本部長 遠藤元一氏

 NEXCO東日本 取締役兼常務執行役員 管理事業本部長 遠藤元一氏から「昨シーズンの1月末、新潟県の長岡地域を中心とした大雪で長時間の通行止めを余儀なくされ、ご迷惑をおかけしました。今シーズンは、現地の国道や一般道を管理する自治体等と相互に協力しながら、冬季の交通確保に向けて取り組んでいきます。首都圏におきましては、引き続き大雪対策に取り組んでいきますが、冬タイヤの装着など冬装備、安全運転などの協力が不可欠です。雪道キャンペーンを展開していきます。オリジナルキャラクターの雪道研究家“マンモシ博士”を使って、“万が一”、“もしかして”の事態に備えた心構えや対策などをPRしていきます」と冬季シーズンの対策説明があった。

 さらに、外環道(東京外かく環状道路)、三郷南IC~高谷(仮称)JCT(ジャンクション)間は、2017年度開通に向けて事業を進捗中であり、舗装工事の準備段階まできていることの報告もあった。

 このほか、打ち出していた「高速道路における逆走の発生状況と今後の対策」に対する実際の対策状況を、NEXCO東日本管内にある30カ所の対策実施箇所については、すべて対策実施済みとした。