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マカオ観光局、2017年は「食」と「エンタテイメント」にフォーカス

2016年1月~9月の日本人訪問は前年から増加

2016年11月28日 実施

 マカオ観光局は11月28日、2016年の状況と、2017年の取り組みなどを説明するメディアセミナーを実施した。2016年の日本からマカオへの訪問者数は、1月~9月の実績で21万4782万人と前年同期比で4.4%増。2015年は通期で28万2217人と前年比5.9%減であったことから、2016年は盛り返す見込みだ。

 2016年の取り組みとしては、2月に札幌の雪まつりにマカオ観光局が出展したほか、3月に福岡空港からマカオ航空による直行便が就航。この就航に伴って、九州地方で旅行会社向けセミナーを行なうなど誘客活動を開始していたが、平成28年度熊本地震の発生で中止。大阪や東京へのプロモーションへ切り替え、旅行会社とのコラボレーション企画などを実施したという。

 メディアを使ったプロモーションとしては、「ふなっしーのマカオエンタメ3番勝負」や、テレビでの女子旅訴求などを実施。異業種とのコラボレーション企画として、食器メーカーのノリタケと組んでのプロモーションなども展開した。

2015年は減少した日本からマカオへの訪問客数だが、2016年度は回復
食器メーカーのノリタケなど異業種とのコラボも展開

 また、2016年はマカオに大型ホテルが2棟建設された。

 一つは8月にコタイ地区に開業した「Wynn Palace(ウィン・パレス)」で、1700室を持つ5つ星ホテル。マカオ半島にあるWynn Macau(ウィン・マカオ)の4倍規模の噴水ショーや、ホテル内を周遊するゴンドラ「スカイキャブ」などが見どころ。スカイキャブはマカオでも珍しい屋外型のエンタテイメントとして注目だという。

 館内は、Wynnグループ創業者のスティーブ・ウィン氏の夫人が花好きであることにちなみ、フローラルデザイナーのプレストン・ベイリー氏がデザインした花の彫刻が施されたメリーゴーランドや、ジェフ・クーンズ氏が作成した世界で5つしかないステンレス彫刻のチューリップなどが飾られる。

 ホテルの部屋は4種類の色調があり、好きな色をリクエストすることも可能。スタンダードルームで68m2の広さがあり、この部屋面積はマカオのホテルのなかでも広い部類に入るとのことだ。

 このほか、プライベートプール付きのガーデンヴィラや、Palaceの名のとおり王宮にいるかのような雰囲気で過ごせる最上階28階のペントハウスなども備える。

8月に開業した「Wynn Palace(ウィン・パレス)」

 二つ目は9月にオープンした「The Parisian Macao(ザ・パリジャン・マカオ)」で、同じくコタイ地区にオープン。3000室規模の大型ホテルとなる。ザ・パリジャン・マカオは、同じくコタイ地区に3000室規模のホテルを有するサンズの系列で、同系列のベネチアンもほぼ隣接する位置に建っている。

 シンボルとなるのは、高さ160m、本物の1/2スケールのエッフェル塔。毎晩ライトアップショーが行なわれ、このライトアップを楽しめる部屋があるほか、エッフェル塔の写真を飾った部屋もある。このエッフェル塔は展望台になっており、内部には中華料理屋さんも入庫。金網があるところではおなじみの南京錠も売店で販売されているそうだ。

 2段ベッドが置かれたファミリールームや、子供向けメリーゴーラウンドなどファミリー層に向けた施設も充実しているとのことだ。

9月に開業した「The Parisian Macao(ザ・パリジャン・マカオ)」

 このほか、2017年以降もマカオは「ホテルの開業ラッシュ」とのことで、いくつかの開業予定ホテルの情報が紹介された。

 コタイの南部にあるコロアン地区に開業する「The 13」は、2017年第2四半期開業予定。ルイ13世をイメージした客室は、噴水を持つ部屋や1泊1000万円を超える部屋があるなど超が付くラグジュアリーなホテル。送迎用にロールスロイスを30台一挙に購入したことでも話題になっているという。

 同じく2017年第2四半期に開業予定の「MGM・コタイ」は、マカオ半島にあるMGMマカオと同系列。ホテル内に劇場などを備える予定とのこと。

 2017年内に開業予定の「The 5h Tower」は、日本でもおなじみの故ザハ・ハディド氏がデザインしたホテルで、シティ・オブ・ドリームス内に開業予定。

 また、翌2018年に開業する予定の「グランド・リスボア・パレス」には、シャネルなどのデザイナーを務めたカール・ラガーフェルド氏が手がけるホテル、ヴェルサーチで知られるパラッツォ・ヴェルサーチ氏が手がけるホテル、そしてリスボア系列のホテルと3棟のホテルが入居する大型IR(統合型リゾート)になる見込みだ。

コロアン地区に開業する超ラグジュアリーホテル「The 13」
送迎用にロールスロイスを30台購入
2017年第2四半期にコタイ地区に開業予定の「MGM・コタイ」
2017年内に開業予定の故ザハ・ハディド氏がデザインしたホテル「The 5th Tower」
カール・ラガーフェルド氏、パラッツォ・ヴェルサーチ氏が手がけるホテルも入る「グランド・リスボア・パレス」。2018年開業予定

港珠澳大橋は2017年末完成、2018年開通へ

開通予定が延期されていた港珠澳大橋は、2018年開通見込みへ

 交通インフラの面では、開通が待たれていた香港と中国・珠海市、マカオを結ぶ全長36kmの海上橋「港珠澳大橋」の状況について説明があり、2017年末に完成し、2018年に開通する見込みであることが示された。この橋が完成すれば、香港国際空港とマカオとをクルマで約30分を結べるようになる。

マカオ観光局 日本代表 榊原史博氏

 このマカオへのアクセスについて、メディアセミナーのあとに行なわれた懇親会でスピーチした、マカオ観光局 日本代表の榊原史博氏は「3月に福岡からの直行便ができ、成田、関空、福岡の3空港体制ができたが、2015年の数字ではマカオへ飛行機で行った人は10%に過ぎない。福岡線の就航などで10月は18%となっているが、年間では15%程度となる見込み」と、飛行機利用でのアクセスが少ないことを課題に挙げる。

 この理由は、インバウンドの需要が高く、日本市場への座席供給の割り当てが少ないことにある。榊原氏は「短距離のデスティネーションとしては致命的な弱点」と指摘。日本からの渡航者は回復傾向にあるのは先述のとおりで、直行便の座席の確保ができないことが、ますます“致命的な弱点”としてのしかかっている状況だ。

 一方で、マカオへのアクセスとして主流なのが香港を経由して、ジェット船のフェリーを利用する方法だが、このフェリーは以前は45分の所要時間だったものが、香港とマカオの間にイルカの生息地があり、生態系を壊さないために迂回ならびにスピード減を余儀なくされた結果、現在は70分かかる状況だという。

 こうしたことが重なり、羽田発便を利用した場合の香港での待ち時間は、キャセイパシフィック航空便で約3時間、JAL(日本航空)便で約3時間半、ANA(全日本空輸)便で約4時間となっている。直行便は午後発、乗り継ぎ便は乗り継ぎ時間待ちが発生することにより、マカオに到着するのは夕方遅くであったり、深夜になったりすることになり、例えば2泊3日という短距離デスティネーションの一般的な旅程を組むと、1日目の遅い時間にマカオに着き、2日目に観光、3日目は早い時間に帰国の途に就くことなり、「魅力を体験できない。バラエティに富んだ遊びもできない」(榊原氏)という状況となる。

 こうした状況を打開する意味でも港珠澳大橋の開通には期待がかかるが、橋自体はほぼ完成しており、現在は路面の敷設作業が進められている状況。ただ、例えばマカオは現状でも交通渋滞が発生しており、橋完成後に流入量が増えても耐えるだけの都市整備が進められている。こうした、全体のインフラ整備の完了を待って開通する見込みとのことだ。

 このほか、日本の三菱重工業も参画しているマカオ内のライトレール(LRT)については、タイパ、コタイエリアは2017年中に完成予定。これらが完成することで、珠海まで伸びる中国の高速鉄道を加えて、珠海デルタをカバーする広域的な交通インフラが整うことになる。

港珠澳大橋とLRTが開業することで、中国側の高速鉄道と合わせて珠海デルタに広域交通インフラが整う

2017年は「食」「エンタメ」にフォーカス、ファミリー層への訴求も

 こうしたことを受け、マカオ観光局では2017年に「食(グルメ)」「エンタテイメント」の2つを主要なテーマにしてプロモーションを展開する。

「食(グルメ)」について、マカオでは中華料理のほか、大航海時代に伝わったポルトガル料理、そして大航海時代に伝えられたさまざまな食材とマカオの食材とを使って発展させたマカオ料理といった多彩な食文化がある。そのマカオ料理について、文化の多様性保護などを目的とした「ユネスコ創造都市ネットワーク」の「食文化」カテゴリへの登録を申請したという。

 このほか、11月に発表された2017年版のミシュランガイド 香港・マカオ版では、3つ星が2件、2つ星が5件、1つ星が12件選ばれたほか、マカオで増えてきているマンションの一室などを利用した小規模な「プライベート・キッチン」などを訴求していく意向だ。

2017年のマカオ観光プロモーションテーマの一つが「食」。マカオ料理を「ユネスコ創造都市ネットワーク」の食文化に登録するための申請を行なった
マカオ生まれのポルトガル人(の子孫)であるマカエンセの料理。そのレシピ本の日本語版が出版された
11月に発表された2017年版のミシュランガイド 香港・マカオ版で星を獲得したマカオの飲食店。日本料理も2店舗が星を獲得した
マカオで増えている「プライベート・キッチン」も訴求
プライベート・キッチンの例。日本円で4000~5000円で楽しめるお店から、1万数千円のコースまで、価格帯も料理もさまざま

「エンタテイメント」については、大型ホテル、大型IRの開業ラッシュでショーが充実。エンタテイメントプロダクトが急速に増えている。

 例えば、従来から人気があるシティ・オブ・ドリームズの「The House of Dancing Water」のほか、2015年に開業したスタジオシティのシンボルでも8の字観覧車「Golden Reel」、ディズニーキャラクターなどが登場するアクティビティなど、世代を超えて楽しめるものが増えた。これを受け、2017年はファミリー層への訴求もより強化していく。

大型ホテル、IRの開業ラッシュで、年齢層を問わず楽しめるエンタテイメント施設が充実。「アジアナンバーワンのエンタテイメントシティ・マカオ」を訴求
2017年の主要な国際イベント

 マカオ観光局 日本代表の榊原史博氏は、日本からの訪問客数について「底打ちで増加傾向」になっているとし、その理由として、中国関連への忌避感の減少や、円高による値頃感が出てきたことを挙げる。また、香港航空による日本の地方と香港国際空港を結ぶ路線の開設が相次いでいることも理由に挙げ、2017年は香港便就航都市を中心に地方市場の掘り起こしも図る考えだ。

 また、中国市場からの需要が減ったことも日本人のマカオ訪問にはプラスになっているとした。例えばホテル需要が減少したことで、有名ホテルが週末に予約できない状況が解消されてきているほか、宿泊料金も低下。これまで団体旅行ではマカオに1泊という旅程が多かったものが、最近では2泊という旅程が大半になっているという。

 先述の注力テーマについても言及し、マカオ政府のバックアップもあり、「カジノの街・マカオ」から「エンタテイメントの街・マカオ」のイメージが高まってきており、「マカオ特有の食や、アジアナンバーワンのエンタテイメントシティ・マカオを全面に打ち出していく」との考えを述べた。