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マカオやマニラでIR(統合型リゾート)を展開するメルコリゾーツ&エンターテインメントが日本法人設立
カジノ入退場のための生体認証ゲートを独自開発。一部をオープンソース化して政府・業界に提供
2017年11月30日 14:02
- 2017年11月30日 実施
マカオのIR(統合型リゾート)であるシティ・オブ・ドリームスなどを運営する香港メルコリゾーツ&エンターテインメントは11月30日、都内のホテルで記者発表会を行ない、同社の日本法人となる「メルコリゾーツ&エンターテインメントジャパン株式会社」の設立と、日本市場における戦略などを説明した。
IRの開発、運営を行なうメルコリゾーツ&エンターテインメントは、マカオのシティ・オブ・ドリームス、スタジオ・シティ(60%所有)、アルティラ・マカオ、モカ・クラブを運営するほか、フィリピンのマニラにおいてシティ・オブ・ドリームス マニラを運営する。シティ・オブ・ドリームスでは現在、故ザハ・ハディド氏が設計した新ホテル「モーフィアスタワー」を2018年開業に向けて建設中のほか、キプロス共和国でIRを開発する30年の権利を取得し、今後開発を進めていく予定となっている。
この日本法人となるメルコリゾーツ&エンターテインメントジャパン株式会社は同社の100%子会社として設立。社長には日本IBM、日本マイクロソフトなどIT、モバイルの分野でキャリアを積んだ白男川亜子氏が就任する。
記者発表会で登壇したメルコリゾーツ&エンターテインメント会長兼CEOのローレンス・ホー氏は、「30~40年変化することがなかった業界の変化を牽引したい。挑戦を続け、最高では満足せず、その上を目指すというのが考え方の根幹だ。コピーには価値を見出さず、高揚感や楽しいと思えるものを新たに作り出すこと。最高の質、エンタテイメント、楽しみを見出すことに焦点を絞っている」とIR開発に対しての思想を語る。
また、21世紀のIR企業にとっては重要なポイントとして6点を挙げた。
1つ目は比類ない建築と設計で、先述した故ザハ・ハディド氏設計のシティ・オブ・ドリームスの新ホテル「モーフィアスタワー」などを例に挙げ、高揚感を持て、建築様式を新たな高みに持っていけるものを設計することが重要とした。
2つ目はリゾートの重要な要素の一つでもある新しいエンタテイメントの提供で、7年前に3億ドルの投資をしてスタートしたシティ・オブ・ドリームスの有名なショー「ザ ・ハウス・オブ・ダンシング・ウォーター」などの例を紹介した。
3つ目はサービスの品質で、同社のIR施設が、これまでにさまざまな賞を受け、レストランもミシュランガイドで多数の星を獲得していることを誇った。質にこだわる日本市場は、同社のサービス品質に適した市場であるともしている。
4つ目はテクノロジの活用で、これによりシームレスなゲスト体験を提供。さらに、ゲーミング企業として初という生体認証ゲート「メルガード」を内部開発したことを紹介。同システムについては後述する。
5つ目はコラボレーションの実現で、過去において展開した各国でさまざまな企業とコラボレーションしたほか、重要なステークスホルダーである政府ともベストパートナーとして、国が観光業になにを求めるのかに応じた取り組みを進めるとした。
6つ目は“よりよい企業”であることで、マカオに甚大な被害をもたらした台風被害において復興の支援を行なうなど、CSR(社会的責任)活動に積極的に取り組んでいることを紹介。地域との関わることで企業のサステナビリティ(持続性)やCSRを追求しているという。
日本におけるIRについては、「日本でIRを展開することを許されたならば、伝統によって将来へのインスピレーションを与えたい。どのように継続的に、日本が最先端の技術の国であり続けられるかを考えている」とコメント。また、「IRが(その土地を)支配してはならず、環境に合ったものでなければならない。自然環境とIRが絶妙のバランスになるよう、日本的なものを入れつつ、未来的な観点を入れたい」としたほか、「マカオやマニラ(の同社のIR)は例になると思う。それを洗練させ、より充実させたものになる。日本を訪れる人は自然や文化を楽しんでいる。私たちはそのなかでバランスの一部になりたい」と話した。
そうした日本でのIR開発の考え方を示すものとして、同日「KIMONO ROBOTO」を披露することを発表。日本の伝統的織物技術を用いた13点の着物をロボットが着用して展示するというもので、これによって若い人たちへの日本の伝統の訴求や、将来へのインスピレーションをどのように与えるかを見せたいとする。この展示は12月1日~10日に表参道ヒルズ本館地下3階、スペースオーで行なわれる。
続いて登壇した日本法人社長の白男川亜子氏は、「史上最大の対日投資になり得るとワクワクし、チャレンジ精神をかき立てられた。初めてマカオを訪れたとき、彼(ローレンス・ホー氏)が10年足らずでマカオの観光シーンを一変させたと聞いて驚いた。そのリーダーシップと情熱に感動を覚えて、迷いなく引き受けた」と就任の理由を説明。
日本で展開するIRについては、「日本経済の活性化に有意義なことで、まさしく国を挙げて立ち上げようとしているプロジェクトに携わり、IRによって産業創成の役に立てれば」と話したほか、「現地企業との関係構築、インバウンドビジネスの拡大、安全安心なゲーミング環境の構築」に取り組む意向を示した。
このうち、「安全安心なゲーミング環境の構築」については、ホー氏も触れた生体認証ゲート「メルガード」を紹介。日本政府はIRの課題の一つにギャンブル依存症対策を掲げ、世界で最も厳しい入退場制限を目指すとしている。その具体策として独自開発しているもので、下記スライドにある5つのシステムで構成。ハードウェアはセルフサービスで入場税などを決済できるキオスク端末と、顔と指紋の二重生体認証を行なうゲートとなる。
IR関連法の成立までは具体的システムの構築はできないものの、いずれも同社オフィスではすでに導入済みという。また、いかなる規制や制約に対しても柔軟に対応できるよう改良を続けるとした。
同社は、このメルガードの「ファミリープロテクト」「パトロンブロックチェーン」のシステムを日本政府に無償提供するほか、オープンソース化して同業者やビジネスパートナーに提供する考えを示し、「国民の不安を取り除く、ギャンブル依存症対策に貢献できればと思っている」と話した。