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“日本より安全な”チェコの観光ポイントを政府観光局が紹介

「物語の国 チェコ 2016+」、6月22日旅行事業者向けに開催

2016年6月22日 開催

 チェコ政府観光局は6月22日、チェコ共和国大使館で旅行関連の事業者を対象にセミナー「物語の国 チェコ 2016+」を開催し、2016年および2017年以降に日本人向けの観光の要となるスポットを紹介した。国内の旅行代理店などがチェコへのツアープログラムを作成する際に参考とする情報だけに、それらが今後人気を集める観光スポットとなる可能性もある。2016年以降のチェコの“見どころ”はどういったものなのか、先取りしてみよう。

日本より“安全”なチェコ

 チェコ共和国は、プラハに首都を置く共和制国家。第一次世界大戦後の一時期および第二次世界大戦のあと、当時のソビエト連邦の強い影響下でチェコスロバキア共和国として共産主義体制を敷いてきたが、1989年から始まったビロード革命によって共産党体制が崩壊し、1993年にチェコスロバキアから独立した経緯をもつ。

 チェコを訪れる際の交通の要所となるのは、首都のプラハ。現在は日本とチェコの直行便は就航しておらず、欧州の近隣諸国でいったん乗り継いでプラハへ向かう形になる。例えば、同セミナーで合わせて紹介のあったLOTポーランド航空は、成田~ポーランド・ワルシャワ間に週3便を就航させている。ワルシャワ~プラハ間は1日3便利用可能で、成田からプラハまでの片道の飛行時間は計13時間ほど。なお、日本とチェコは8時間(サマータイム時は7時間)の時差がある。

チェコへの旅客数と、国内の見どころとなるスポット

 プラハからは列車、もしくはパッケージツアーなら貸切バスなどで移動するのが一般的。各地にユネスコに指定された世界遺産が12カ所、無形文化遺産が4つ、城郭が200カ所あるほか、自然保護地区や遊歩道、サイクリングロードが多数あり、歴史的な建造物や文化に触れられるだけでなく、豊かな自然を満喫できるのもチェコの魅力となっている。

 現在、欧州のほぼ全土でシリア難民の問題が持ち上がっているが、チェコは難民の移動ルートから外れた場所にあり、難民の影響はほとんどないとのこと。世界で6番目に安全な国とされ、9位の日本よりも治安面での心配は少ないとしている。

日本からプラハへの直行便はないが、地理的に他の欧州諸国にアクセスしやすい
チェコの治安は世界で6番目によいとされている。難民の移動ルートにチェコは含まれておらず、不安はないことをアピール

ワインセラー巡りとサイクリングが楽しめる「レドニツェ=ヴァルティツェ地区」

 2016年の注目の観光スポットとして紹介があったのは6カ所。そのうちの1つが、プラハから南東へおよそ253km離れた場所にある南モラヴィア地方の「レドニツェ=ヴァルティツェ地区」だ。チェコは大まかに西側のボヘミア地方と東側のモラヴィア地方に分かれており、チェコで2番目に大きな都市ブルノを含むモラヴィア地方の南部地域が南モラヴィア地方となる。レドニツェ=ヴァルティツェはブルノからさらに南に下ったところの一帯で、リヒテンシュタイン家によって開発された約300km2の広さの地区となっている。

 レドニツェ=ヴァルティツェ地区には2つの城郭が残されており、周辺は馬車や自転車での移動が便利。特に「ズイノモ」と「ミクロフ」という2つの街・地域はサイクリングしながら巡るのに適した風光明媚な土地で、ワインの名産地でもあるため、チェコではポピュラーな白ワインを、各地のワインセラーでテイスティングすることもできる。

 ブルノとレドニツェ=ヴァルティツェ地区はさほど離れていないこともあり、カフェタウンや世界遺産のトゥーゲントハット邸など、ブルノの人気スポットを観光しつつ、そこを拠点にレドニツェ=ヴァルティツェ地区へ足を伸ばしてみるのも面白そうだ。

「レドニツェ=ヴァルティツェ地区」(写真:チェコ政府観光局提供)

食と音楽の祭が開催される「リトミシュル」

 2つ目のスポットは「リトミシュル」。プラハからほぼ真東165kmのところにある都市で、「モルダウ」などで有名な作曲家ベドジフ(ベドルジハ)・スメタナの生地でもある。漆喰壁における伝統的な描画技法「スグラフィト(ズグラッフィート)」が施されたルネッサンス時代の城が見られるほか、バロック様式で建築された劇場も残されている。

 毎年5月には、チェコで最も有名な食の祭典が開かれ、地元の多彩な料理を味わうことができる。また、スメタナの生地であることに関係して毎年6~7月には音楽祭が催されるなど、チェコの伝統と文化に直接触れることのできる街となっている。

「リトミシュル」

地ビールを学んで、飲める「プルゼニュ」

 3つ目のスポットは、プラハから西へ約95kmにある「プルゼニュ」。2015年に欧州文化都市の1つとして選ばれたプルゼニュは、1295年からビールの醸造が盛んな地域で、1842年にはチェコの地ビールとして有名な「ピルスナー」の生産が始まった。街の中心部にあるビール工場博物館では、数百年に渡る同地のビールの歴史や作り方を学ぶこともできる。

「プルゼニュ」(写真:チェコ政府観光局提供)

独特のチーズを味わう「オロモウツ」と、世界遺産の美しい庭園がある「クロムニェジーシュ」

 次は「オロモウツ」と「クロムニェジーシュ」。オロモウツはプラハから東へ280km、モラヴィア地方のほぼ中央に位置し、世界的な旅行ガイドブック「ロンリープラネット」で「人気の旅行先トップ10」の1つに選ばれた街だという。特に冬の時期は趣のある風景を堪能でき、クリスマスの時期には巨大なマーケットが開かれる。

 市街の歴史地区には世界遺産の「聖三位一体柱」が鎮座し、街中に点在する見事に装飾されたバロック様式の噴水も見どころ。名産品である「トヴァルーシュキ」という独特の香りをもつチーズもぜひ味わいたい。

 クロムニェジーシュはオロモウツのすぐ南に位置している。こちらも世界遺産に指定された庭園や、バロック様式の城があり、そこに展示された絵画などの芸術作品も鑑賞できる。モラヴィア地方では伝統の踊り「ヴェルブンク」や、鷹狩り、ヨーロッパらしいクリスマスの祝い方、そのほかガラス工芸、陶芸など独自の文化が息づいており、歴史的建造物や食以外にも楽しめるところは多い。

「オロモウツ」(写真:チェコ政府観光局提供)
「クロムニェジーシュ」

160以上の源泉があるスパリゾート「マリアンスケー・ラーズニェ」

 5つ目は「マリアンスケー・ラーズニェ」。こちらはすでに本誌でもレポートしているように、JATA(日本旅行業協会)が選定した「ヨーロッパの美しい村30選」の1つとして挙げられているチェコ有数のスパリゾートだ。

 プラハの西165km、ドイツとの国境近くにあり、街中および周辺に160以上の源泉が湧出し、数多くのホテル群が取り囲むように建ち並ぶ。かつて、ショパン、ゲーテ、カフカ、エジソン、英国王エドワード7世らが好んで訪れたとも伝わっており、多彩な種類のスパやリラクゼーションプログラムを満喫できる湯治場として、長く滞在する観光客の多いスポットとなっている。

「マリアンスケー・ラーズニェ」(写真:チェコ政府観光局提供)

クリスマスマーケットやオペラ、アイスホッケー観戦など、見どころ盛りだくさんの冬の「プラハ」

 最後の6つ目は冬季の首都プラハ。年末が迫ってくると5つの大広場などでクリスマスマーケットが開かれ、そこで買い物やホットワインを楽しめる。現地ではクリスマスマーケットとともにオペラを見に行く習慣もあるとのことで、2つの最も伝統ある市街のシアターで鑑賞することが可能。

 オペラは家族連れや恋人と行くのにぴったりだが、男性であまりオペラに興味がないという人はアイスホッケー観戦もお勧めしている。アイスホッケーはチェコの国技でもあり、ナショナルチームは過去20年間に世界選手権で6回優勝するほどの強豪だ。氷上の格闘技ともいわれるアイスホッケーの本場の迫力を体感できるだろう。

「プラハ」(写真:チェコ政府観光局提供)

2017年から2019年のチェコの見どころ

 2016年は以上の6つ、主に文化や自然、癒やしといったテーマでプッシュしているが、2017年以降はそれとはやや異なるテーマで展開する。2017年は、1621年頃からの古いバロック様式の建築、庭園、像など、各地にいまだ残る歴史的、芸術的建造物がテーマとなる。

 2018年はチェコスロバキア建国100周年であり、博覧会の開催が計画中。チェコスロバキア初代大統領であるトマーシュ・マサリクや、プラハ出身の作家フランツ・カフカをチェコのユニークな“ブランド”として、チェコの現代建築とともに押し出していく。そして2019年は、チェコ独立のきっかけとなった1989年のビロード革命から30周年ということで、「変化と未来への希望の物語」をテーマにプロモーションしていくようだ。

2017年はバロック様式にフォーカス
2018年はチェコスロバキア建国100周年
ビロード革命から30周年の2019年は、「変化と未来への希望の物語」がテーマ