旅レポ

「ユーレイルパス」で欧州を鉄道で巡る旅(番外編)

レイルジェットの食堂車で出会ったボリューム満点のチェコ料理「クネドリーキ」

 ヨーロッパ28カ国の鉄道などを自由に乗り降りできるユーレイルパスを利用して、日本旅行業協会(JATA)が選定した「ヨーロッパの美しい村30選」のうち6つを巡る旅。「その1」のチヴィタ・ディ・バーニョレージョ(イタリア)から「その6」のヒンデローペン(オランダ)まで、計約4000kmにおよぶその中身についてはすでにお伝えしたとおり。今回は番外編として、レイルジェットの食堂車で注文したチェコ料理を紹介したい。

チェコ伝統料理のクネドリーキと、あっさりアスパラのスープ

 日本国内ではめっきり見かけることの少なくなった、車窓からの風景を眺めながら食事がとれる食堂車だが、ヨーロッパの鉄道ではまだ多く残っている。とはいっても、純粋な食堂車自体はやはり減少傾向にあり、簡易な調理設備と、立って飲食できるだけのカウンターからなる、軽食しか扱わない「バー車両」とするパターンも増えてきているようだ。

 そんななかでも、競合他社(他国)と差別化を図るべく、鉄道サービスの充実に取り組んでいるのがチェコ鉄道。例えば、国境をまたいで走行する最高時速230kmの特急列車「レイルジェット」は、オーストリア連邦鉄道とチェコ鉄道が運用しており、食堂車もしくはバー車両を備えている。いつでも空腹を満たすことができ、長時間の鉄道旅でも快適に過ごせるこのレイルジェット、筆者が乗車したうちオーストリア鉄道が運用していた列車にはサンドイッチなどの軽食を販売するバー車両しかなく、一方のチェコ鉄道ではきちんとした固定席の食堂車になっていた。

オーストリア連邦鉄道のレイルジェット
軽食のみのバー車両となっていた
こちらはチェコ鉄道のレイルジェット
座って食べられる食堂車がある

 そんなチェコ鉄道の食堂車で出会ったのが、チェコの地元料理であるクネドリーキ。クネドリーキはパンの一種ではあるが、焼くのではなく茹でて作られるため、もちもちした独特の食感が特徴だ。食堂車で注文したのは、メニューの英語を直訳すると「骨なし鶏肉のパプリカソース和えと、ボヘミア風(チェコ伝統)のハーブ味のゆで団子」。この「ボヘミア風……ゆで団子」というのがクネドリーキのことだ。

冊子になったメニューのほかに、テーブルに固定されたメニューもある
注文した料理(2人分)

 幅30cmはあろうかという大皿の上に、クネドリーキが5枚と、大きめの鶏肉が1つ、たっぷりのパプリカソースに浸かった状態で運ばれてきた。プレーンなクネドリーキだと味がシンプルすぎるところがあるが、ここではハーブが練り込まれているものだったため、少し香りが強めで味わい深い。

筆者が注文したクネドリーキ

 クネドリーキは柔らかく、どちらかというと手で持つよりナイフで1口サイズに切り分け、フォークでいただいたほうがよい。パプリカソースにもしっかり絡めやすく、クネドリーキのほんのりした甘みとパプリカソースの酸味とが混じり合って、食が進む。最初は5枚ものクネドリーキにひるんだが、味付けが濃すぎなかったおかげか、意外にもすんなりすべてお腹に収まった。

 もう1つ注文した「アスパラのスープ、サワークリーム仕立て」は、溶け込みそうなくらいに柔らかく煮込まれたアスパラと、塩味が効いたさらさらのクリームスープの取り合わせ。真っ白いモツァレラチーズのようなサワークリームがアクセントになっている。アスパラには青臭さや苦みはなく、うっすら野菜の甘みを感じながらほとんど咀嚼せずとも口の中で溶けていった。

アスパラのスープ

 食堂車といっても本格的な厨房があるわけではなく、おそらくあらかじめ調理済みのものを素材ごとに温め直して提供していると思われるが、それでも列車の中で温かく、ボリュームがあって、おいしいと思える食事をとれるのはうれしい限り。ヨーロッパでレイルジェットに乗ったなら、ぜひとも食堂車を探して注文してみることをおすすめする。

日沼諭史