旅レポ
「ユーレイルパス」で欧州を鉄道で巡る旅(その4)
まさかの列車事故! チェコのスパリゾート「マリアンスケー・ラーズニェ」にたどり着けるか?
2016年5月31日 21:39
欧州28カ国の鉄道などを自由に乗り降りできるユーレイルパスを利用して、JATA(日本旅行業協会)が選定した「ヨーロッパの美しい村30選」のうち6カ所を巡る旅の第4回。今回はハンガリーのショプロンからいったんオーストリアのウィーナー・ノイシュタットに戻り、そこからチェコの首都プラハへ。さらにもう一度乗り継いでマリアンスケー・ラーズニェに向かう。乗り換え回数こそ少ないが、全行程は9時間以上、計1000km近くの大移動ともなれば、前回夜行列車の遅延や減便に遭遇したように、トラブルが起きないはずがない。
列車事故でトンネルが塞がれた!?
この日は朝から夕方まで、日中の大部分を列車による移動に費やす。朝7時46分ショプロン発の私鉄に乗り、40分ほどでウィーナー・ノイシュタットに着いたあとは、前日にも乗車したレイルジェット(前日はオーストリア国鉄だったが、この日はチェコ国鉄)で4時間半かけてチェコ・プラハへ。プラハからは日本でいう快速列車に乗って3時間、ようやく目的地のマリアンスケー・ラーズニェに到着する……はずだった。
プラハまでは順調に移動でき、待ち構えていたチェコ国鉄のスタッフやキャビンアテンダントから熱烈な歓迎を受けていたところで、現在地のプラハ本駅から数百メートルも離れていないすぐ近くで列車の脱線事故が発生したとの一報。幸いにも乗客のいない列車で、駅の目の前にあるトンネルの壁に激突した単独事故だったものの、これから乗り換えようとしている列車の路線が一部塞がれる形になり、予定していた列車が入線できず、乗ることができなくなってしまった。
こういった事故はよくあるもの……というわけでは決してなく、チェコ国鉄のスタッフによれば「年に1回あるかないか」とのこと。まさにたまたま、偶然、我々がチェコに到着するという見事なタイミングで発生したトラブルだったようだ。
が、このままでは目的地にたどり着けない。我々の心配をよそに、終始笑顔のキャビンアテンダントに導かれるまま別の各駅停車に乗って1つ目のプラハ=スミホフ駅で降りると、そこにはもともとプラハ本駅で乗る予定だった列車が。どうやらこの列車もプラハ本駅にたどり着けなかったため、手前のスミホフ駅で待機していたと思われる。
無事本来の列車に乗ることができ、大きな遅れもなく3時間でマリアンスケー・ラーズニェに到着。ヨーロッパの鉄道の旅は滞りなく、すべてが順調にいく、というわけにはいかないかもしれないが、線路が続いている限りなんとかなる、と思わせてくれる出来事だった。
8つのホテルビル群で多彩なスパ、トリートメントを堪能できる(筆者はできず)
4つ目の美しい村、マリアンスケー・ラーズニェは、プラハの西、ドイツとの国境近くにある温泉保養地として知られる地域。修道僧カール・カスパー・ライテンベルガーが温泉を発見し、その後ヨセフ・ネール博士が温泉の効能を明らかにした。街としては200年の歴史があり、温泉発見以後多くの湯治客が訪れ、ゲーテ、ショパン、カフカ、英国王エドワード7世といった著名人も好んだとされている。冬は雪が積もり、スキーやクロスカントリーなども楽しめるという。
豪壮なホテル、住宅が取り囲むように林立し、ドイツ、イギリス、フランスなど、各地の代表的な建築様式が混在しているのも面白い。黄色い壁の建物が多く見られるのは、周囲の自然(緑)とのコンビネーションの美しさを狙ったもの。見栄えよく配置された花壇や庭園は、ワツラフ・スカルニクという庭師がデザインし、ライテンベルガーとネール博士とともに、街を発展させた最大の功労者として名を残している。
マリアンスケー・ラーズニェのなかで最も大きなホテルリゾートの1つが、「Marienbad(聖母マリアの温泉)」。計8つのビルがあり、それぞれが連絡口や地下通路ですべてつながっている。屋外に出ることなく移動して、各温泉棟のユニークなスパやマッサージなどのトリートメントを受けることが可能だ。大きなローマ風呂、天然のミネラルが豊富に含まれた湯に浸かるミネラルバス、バブルによるマッサージバス、温水プールほか、バリエーション豊かな施設とプログラムが用意されている。
ローマ風呂やマッサージバス、ミネラルバスなどは事前に予約が必要な場合があるが、ほかのローマ風呂や温水プールは自由に入浴できる。1日中バスローブのまま、温泉棟を行き来してあらゆるスパを体験してみるのもいいだろう。ただ、一連のビルの端から端まではおよそ700メートルあり、起伏のある土地に建っているため連絡通路も建物によって1階や地下4階だったりして上り下りが激しく、まるで迷路。離れたビルまで行くときは、素直に服を着た状態で屋外を行き来した方が早そうだ。
ユーレイルパスを使った鉄道の旅も半分を過ぎた。次回はマリアンスケー・ラーズニェからチェコ西端の街ヘプ、そこから北のドイツ・ライプツィヒへ。さらに北上してベルリンで一泊のあと、早朝に出発して西のマクデブルクで乗り換え、魔女伝説が残る「クヴェドリンブルク」を訪ねる。