旅レポ
「ユーレイルパス」で欧州を鉄道で巡る旅(その6)
2度目の夜行列車はシャワー付き。オランダ・ヒンデローペンで「塗り」体験
2016年6月5日 09:01
ヨーロッパ28カ国の鉄道などを自由に乗り降りできるユーレイルパスを利用して、日本旅行業協会(JATA)が選定した「ヨーロッパの美しい村30選」のうち6つを巡る旅。ついに最終目的地、オランダはヒンデローペンを残すのみとなった。ドイツ・ベルリンからこの旅2回目となる夜行列車を使い、計700km弱の移動となる。
夜行列車はほとんど遅れなし。インターシティを3つ乗り継ぎ、のどかな村へ
この日はドイツ・クヴェドリンブルクからいったんベルリン中央駅に戻り、23時44分発の夜行列車「CityNightLine(シティナイトライン)」でデュッセルドルフまで一気に移動する。今回の夜行列車では、途中の連結や切り離しがほとんどなかったためか、デュッセルドルフにはわずか5分の遅れのみで到着した。ドイツ人の勤勉さがなせる技なのだろうか。
デュッセルドルフからはインターシティに乗り換えて国境を越え、ライン川のほとりのオランダ・アーネムでまた別のインターシティに乗り、北上してズヴォレでさらにインターシティを乗り継ぐ。その先のレーワールデンからは普通列車でヒンデローペンへ。駅前で待ち構えていた蒸気機関車風の観光バスで15~20分、のどかな田園風景のなかをのんびり走り、集落に入った。
日本人愛好家も多いヒンデローペン塗りとは?
ヒンデローペンはオランダ北部のフリースランド州にある、人口わずか700人の村。1本の道路が敷設された大堤防のみで北海と隔てられた、広大な人造のアイセル湖(エイセル湖)を臨む位置にある。村のなかでは、アムステルダム市内にあるシンゲルのような細い運河が張り巡らされており、家の前に個人所有のものと思われるボートが多数係留されていることもあって、まるで水上都市(水上村?)のようでもある。あちこちにある運河をまたぐ跳ね橋も雰囲気たっぷり。
村で最も高い建物は、中心部にある教会の塔。遠くから見ると傾いているようで、ちょっと不思議なランドマークとなっている。1時間もあれば村のなかをひと通り歩き回ることができ、静かで慎ましやかな村の人々の生活の一端を見ることができるだろう。集落の外に広がる、牛や羊などが放牧された穏やかで牧歌的な風景のなか、気持ちのよい風に吹かれながら、水平線のかすむアイセル湖をずっと眺めていたい……そんな気分にさせてくれる場所だ。
ヒンデローペンでは、伝統工芸のヒンデローペン塗りが有名。アクリル絵の具を用い、シンメトリックなパターン柄になるよう一定のルールに従って花や鳥などが描かれたもので、ヒンデローペン塗りを施したオランダ木靴や家具などが作られている。
オランダ在住の日系企業の日本人駐在員の妻らがヒンデローペン塗りを日本に伝え、現在では日本国内でもこの独特の絵作りをたしなむ人が多いとされている。ただ、村内にはいくつかのヒンデローペン塗りの工房が存在するものの、後継者不足に悩まされているところが少なくないようだ。
8日間の移動距離は計約4000km。でもまだまだ行ける!?
初日のイタリア・チヴィタからオランダ・ヒンデローペンまで、列車の乗車区間としてはオルビエトからスキポール空港まで、トータルで約4000kmにも及ぶ行程を実質8日間で走り通した。タフなヨーロッパ縦断・横断旅行ではあったが、幸運なことに滞在期間中はほぼ常に好天に恵まれ(ドイツ~オランダの列車移動中に雷雨に遭遇したが濡れることはなかった)、ヨーロッパの「美しい村」をそのままの美しい姿で目に焼き付けることができた。
今回利用したユーレイルパスは、有効期間2カ月で10日間分乗車できるグローバルパス。今回の旅ではまだ8日間分しか消費していないため、あと2日間分の“余力”を残していることになる。もし有効期限内に再びヨーロッパを訪れることがあるなら、同じユーレイルパスの続きを使うというのもアリだ。
といっても、当然ながら通常の旅行であれば、ここまで乗り換えを急いで駆け足で観光する必要はない。じっくり時間をかけて移動し、それぞれの美しい村にのんびり滞在したりして、余裕のある日程でヨーロッパのさまざまな場所を巡るのがおすすめ。気軽に自転車を乗せられるヨーロッパの鉄道の利点も活かして、サイクリングしながらの観光にチャレンジするのも面白いかもしれない。