荒木麻美のパリ生活

猛暑のパリを出てモンブランのふもとで避暑(前編)

山岳鉄道に乗ってトレッキング三昧、合間に湖でほっと一息

 今年はパリも暑かったです! 例年であれば夏のパリは人が少なく快適なので、私はパリに残っているのが好きです。でも今年はこの暑さに参ってしまい、モンブランのふもとにある街の1つ、サン=ジェルヴェ=レ=バン(Saint-Gervais-les-Bains)に7月下旬から8月頭にかけて、夫と避暑に出かけました。

 私たちが宿泊したのはブロンヴィル=シュル=メール(関連記事「シルバー世代と旅するフランス・ノルマンディー地方(前編) 小さな海沿いの街・ブロンヴィル=シュル=メールを中心に過ごした1週間」)同様、フランスのエンタテイメント組合に所属する人用の施設ですが、サン=ジェルヴェ=レ=バンにはホテルはもちろん、こうしたキッチン付き宿泊施設もたくさんあるようです。

 サン=ジェルヴェ=レ=バンには2週間滞在しました。毎日いろいろなところを訪ねましたが、そのなかから特に気に入ったところを、2回に分けてご紹介したいと思います。

サン=ジェルヴェ=レ=バンで宿泊したホテル

モンブランを望むサン=ジェルヴェ=レ=バンへ

 私たちはクルマで行きましたが、サン=ジェルヴェ=レ=バンには電車やバスでもわりと行きやすいです。

 電車やバスを使っていく場合、最寄り駅はサン=ジェルヴェ=レ=バン - ル・ファイエ(Saint-Gervais les Bains - Le Fayet)となります。そこからは1日2便しかありませんが、Facilibusという無料のシャトルバスかタクシーを使って街の中心地に向かいます。

Facilibus

Webサイト:Facilibus(英文)

 サン=ジェルヴェ=レ=バンを含めたモンブラン周辺を移動するには、Montenbusというバスが便利そうです。普通のバスと違い、事前に登録をして予約をすれば、行きたいところに連れていってくれるシステムです。

Montenbus

Webサイト:Montenbus(仏語)

 サン=ジェルヴェ=レ=バンの街は歴史のある建物を残しつつ、適度なリノベーションを加えて住みやすそうというのが第一印象で、すぐに気に入りました。

街の中心にある広場には大型のクッションが置かれており、ここでくつろぐ人が多くいました
無料のヨガ教室や教会でのコンサートなどもありました
街の中心とその付近には歴史ある建物や橋などが残されています。これらを歩いて巡る約1時間のコースがあるのですが、街の中心にある観光案内所でマップを配っています

初心者から上級者まで充実のトレッキングコース

 サン=ジェルヴェ=レ=バンとその周辺はトレッキングコースの宝庫です。私たちが行ってよかったトレッキングコースを、私の体感難易度(最大3)と合わせてご紹介したいと思います。

ディオザ渓谷(Gorges de la Diosaz)

難易度:0.5
所要時間:約1時間
Webサイト:Gorges de la Diosaz(英文)

 入場料金は大人6.5ユーロ(約845円、1ユーロ=約130円換算)。入り口から出口まで、往復で1時間くらいです。

 歩道が細いので、人が多いところではお互いに道を譲り合いながら行かないといけませんが、道そのものはとても歩きやすいです。お年寄りから小さな子供を連れた人も多かったです。靴もスニーカーで十分。残念なことに、最後の滝から先は2015年に歩道が壊れてしまって行けませんが、美しい滝を十分に堪能しました。

ディオザ渓谷(Gorges de la Diosaz)

メール・ド・グラース(Mer de Glace)

難易度:1.5
所要時間:約5時間

 フランス最大の氷河。シャモニー駅から行きだけモンタンヴェール鉄道に乗って登りました。片道26.50ユーロ(約3445円)で、往復だと32.50ユーロ(約4225円)です。

モンタンヴェール鉄道の駅に向かう途中にあるロープウェイ乗り場。このロープウェイ乗り場から標高3842mのエギーユ・デュ・ミディ(Aiguille du Midi)まで行くことができます。モンブランを一番間近から見られるので大人気の観光コースです。私は高度の変化に敏感なのと、エギーユ・デュ・ミディ周辺を歩けるのはアルピニストのみと聞いたので、今回は行きませんでした

 20分くらい電車に揺られていると、あっという間に氷河近くの駅に到着です。ここにはレストランやカフェ、お土産屋さんなどがあり、近代的でとても清潔。ここの展望台からメール・ド・グラースを望め、併設されたレストランではメール・ド・グラースを眺めながらご飯も食べられます。

 展望台からメール・ド・グラースに作られた氷穴までは片道約1時間かけて下りました。氷穴の中に入ると一気にひんやりとしていて最高です。

展望台から階段まではロープウェイを使って一気に下りることもできます。階段から氷穴までは徒歩のみ

 正直なところ、展望台から見た夏のメール・ド・グラースは砂が多くてあまり美しいとは思いませんでした。でも人の手によって彫られたとはいえ、氷穴の中はとても美しかったです。

 ちなみにメール・ド・グラースの氷の厚さは200mから400mあり、1年間で90mから130m下っているとか。氷は1905年からの100年間で120m薄くなり、1830年時と比べると長さは2.5kmも短くなりました。2017年時点では氷穴までの階段の数は約480段でしたが、毎年少なくとも15段を足しているそうです。

 さて、氷穴で涼をとったところで再び展望台に戻ります。展望台からまた電車に乗って下ってもいいのですが、私たちはシャモニー駅まで約2時間半のトレッキングです。道が整備されていないところがときどきあるので、トレッキングシューズは必須です。

 途中に休憩所となる山小屋があったのですが、軽食を食べられるほか、ビニール製の球体テントで宿泊も可能とのこと。こんな崖が目の前にあるテントでは、私は怖くてとても寝られないと思いましたが、怖くない人であれば、夜空を眺め、水の音を聞きながら眠るというのは素敵そうですね。1人1泊2食付きで70ユーロ(約9450円)です。

トレッキングの途中でこれから氷河に向かうモンタンヴェール鉄道に遭遇しました

モン・ダルボワ(Mont d’Arbois)からモン・ジョリ(Mont-Joly)

難易度:2
所要時間:約5時間半

 標高1840mのモン・ダルボワまでゴンドラリフトで登り、標高2525mのモン・ジョリに向かいます。冬はスキーの滑走コースになるのでしょう、緩やかな坂が延々と続きます。歩きやすい道なのですが、日陰もなく、私は飽きました!

 ただ、山頂までの最後の30分だけは急な岩を登っていかなくてはならず、一気に楽しくなります。ハァハァ言いながらたどり着いた山頂からは、周囲の山を見渡せる絶景が広がっており、疲れも吹き飛びました。

シャンペル(Champel)からコル・ド・ヴォザ(Col de Voza)

難易度:1
所要時間:約5時間

 シャンペルから標高1650mのコル・ド・ヴォザまでは、森のなかを通る道がほとんどで、途中に小さな村や、ヤギやロバなどの動物がおり、川を眺めながら進むので飽きません。多少の上り下りはありますが、歩きやすいコースです。

 目的地のコル・ド・ヴォザに着くと大きなホテルとモンブラントラムウェイの途中駅があります。周辺は草原が広がっており、気持ちのよいところです。

モンブラントラムウェイ(Tramway du Mont-Blanc:TMB)

難易度:1
Webサイト:モンブラントラムウェイ予約サイト(英文)

 サン=ジェルヴェ=レ=バン―ル・ファイエ駅から終点のニ・デーグル(Nid d'Aigle)駅までを1時間10分ほどでつなぐ登山鉄道です。混雑する時期にはオンラインで予約を取ることをお勧めします。往復で32.50ユーロ(約4225円)。好きなところで途中下車もできます。

 私たちは朝8時半の電車に乗り、終点まで一気に上がりました。約60年前の車体は趣がありますが、車内は木製の固い椅子で、腰を少々痛めていた私にはなかなか辛かったです。でも途中の景色は本当にすばらしいです。

 終点のニ・デーグルはロッククライミングまたはモンブランへの登頂ルートでもあります。私たちは本格的な登山の装備をした人たちとは別れ、ビオナッセイ氷河(Glacier de Bionnassay)の近くまで行きました。途中にカフェ・レストランもあります。道自体は平坦でスニーカーでも問題ありません。

 のんびりと駅までの往復を1時間くらいかけてしたあと、再度電車に乗って下ります。私たちはベルヴュー(Bellevue)駅で途中下車し、次のコル・ド・ヴォザ駅まで徒歩で下ってみました。30分ほどです。ここも整備されて歩きやすい道です。

 コル・ド・ヴォザ駅にあっという間に着いてしまったので、駅の周辺にある小山のまわりを1時間半ほどかけて歩きました。これまた平坦で歩きやすい道でした。

 このあと、コル・ド・ヴォザ駅から始発駅のサン=ジェルヴェ=レ=バン―ル・ファイエ駅に帰ってきました。注意したいのは、帰りの電車の予約を各駅の窓口でしておくこと。混んでいないときは「しなくてもいいよ」と言われますが、混んでいるときは番号札を渡されるので、これを乗車時に渡して乗ってください。

湖と塩素フリーのビオトープのプールで泳ぐ

 サン=ジェルヴェ=レ=バン周辺には湖も多数あり、ここはよかったなというところをご紹介します。

ヴェール湖(Lac Vert)

「Vert」は緑の意味なのですが、光が差すと湖面がまさに緑になります。澄んだ水をよく見ると、たくさんの魚が泳いでいます。湖は標高1266mにあるため、私には水が冷た過ぎて泳ぐ気になれませんでしたが、水辺でのんびりしながら近くの山々を眺めるのはすばらしい体験でした。

イレット湖(Lacs des Ilettes)

 湖は3つの湖で構成されているのですが、一部監視員のいるエリアもあるので、そこなら子供でも安心して遊べるでしょう。監視員のいるエリアにはカフェ・レストランや遊具もたくさんあります。

ビオトープ(Biotope)

Webサイト:コンブルーの予約サイト(仏語)

 湖ではないのですが、サン=ジェルヴェ=レ=バンからクルマで30分くらいのところにある街、コンブルー(Combloux)にビオトープという屋外プールがあります。

 2002年にできたこのプールの特徴は、水の浄化を植物が担っているところ。塩素などの化学物質は一切使っていません。プールからの周囲の眺めもすばらしいです。

 水の浄化の限度を超えないため、入場は1日700人までとなっていますので、オンラインでチケットを買っておくと安心です。私たちが行ったときも早々に満員になっていましたが、場内は混みあっておらず、のんびりできました。入場料は大人5ユーロ(約650円)です。日陰がないためパラソルを借りる場合はプラス5ユーロ(同)です。

荒木麻美

東京での出版社勤務などを経て、2003年よりパリ在住。2011年にNaturopathie(自然療法)の専門学校に入学、2015年に卒業。パリでNaturopathe(自然療法士)として働いています。Webサイトはhttp://mami.naturo.free.fr/