荒木麻美のパリ生活
シルバー世代と旅するフランス・ノルマンディー地方(前編)
小さな海沿いの街・ブロンヴィル=シュル=メールを中心に過ごした1週間
2018年6月16日 00:00
以前にブルターニュ地方を紹介するイベント「貝殻祭り」について紹介しましたが(関連記事「『貝殻祭り』でブルターニュ地方のグルメを堪能」)、お祭りに行った際、久々に大好きなフランス北西部に行きたいなと思っていました。その後、6月に実母が10年ぶりくらいにフランスに遊びに来たのをよい機会と思い、義父母と一緒にノルマンディー地方に行ってきました。私を除くと平均年齢72歳。シルバー世代の体力に合わせ、ゆったりとした内容の旅行となりましたが、そんなノルマンディー旅行を今月と来月の2回に分けてご紹介したいと思います。
海辺の静かな街・ブロンヴィル=シュル=メールへ
ノルマンディー地方のブロンヴィル=シュル=メール(Blonville-sur-Mer)という街にあるアパートを借り、ここを中心に周辺を見てきました。パリからブロンヴィル=シュル=メールまではクルマで2時間半ほどです。電車でも3時間くらいで来られます。今回なぜ私たちがここに宿泊していたかというと、私の夫はフランスの映画業界にいるのですが、宿泊したアパートはフランスのエンタテイメント組合に所属する人なら特別価格で借りられるからです。
室内は少々古くなってきていますが、無料で貸してくれる自転車も含めて、足りないものはなにもないといっていいくらいに、とにかく設備や備品がなんでも揃っていますし、清掃も行き届いているので、これまでにも何度かここに泊まっています。今回は2家族なので2部屋借りたのですが、どちらもオーシャンビューでした。
日中の気温は20℃から25℃の間でちょうどよかったのですが、朝と晩は冷えますし、ノルマンディー地方は雨が多いので、寒さと雨よけ対策は必須です。私たちが滞在したときも半分は雨か曇りでした。でも終日土砂降りということはなかったので、天気を見ながら観光をし、太陽が出ているときはテラスに出て、アパートで作ったご飯を海を見ながら食べたり、目の前の浜辺を散歩したり、パリの喧騒と大気汚染から離れてとにかくのんびりと過ごしました。
ブロンヴィル=シュル=メールはとても小さな街です。小さな商店街とスーパーが1軒、レストランとカフェも数軒のみです。アパートの目の前にあるビーチもこぢんまりとしており、夏のバカンス時期に来たことはないのですが、周辺の有名なビーチに比べるとそれほど人が多くないようです。ノルマンディーは馬の飼育が盛んなのですが、朝と晩には近隣で育てている馬たちが散歩をする姿も見られます。
馬といえば、1時間40ユーロ(約5200円、1ユーロ=約130円換算)ほどで近くの乗馬クラブから借りられます。私も乗ったことがありますが、馬で散歩すると、浜辺の景色もまた違って見えました。小さい子供にはポニーもいますし、機会があればぜひどうぞ。
Centre Equestre de Blonville Sur Mer
Webサイト:Centre Equestre de Blonville Sur Mer(仏語)
さらに馬関連で、ドーヴィル国際馬事センター(Pôle International du Cheval de Deauville)という馬に関する複合施設も、ブロンヴィル=シュル=メールの近くにあります。ここでは騎手の養成や、馬関連の各種スポーツ、乗馬の訓練などを行なっているのですが、馬関連のイベントもひんぱんに行なわれています。私たちが見学に行った日は、4歳から6歳までの若い馬による競技が行なわれていました。
ドーヴィル国際馬事センター
Webサイト:ドーヴィル国際馬事センター(英語、仏語)
ブロンヴィル=シュル=メールの端まで行くと、隣街のヴィレ=シュル=メール(Villers-sur-mer)の間に「Le marais de Blonville-Villers」という湿地があります。
湿地全体のエリアは120ヘクタールもあり、池の周辺は草が高くうっそうと茂っています。訪ねた日は時間が遅かったこともあり、鳥のさえずりだけが聞えていました。道はよく整備されており、一番短くて30分、最長でも2時間くらいと、体力に合わせていくつもの散歩コースがあります。
湿地内には各所に遊具や、湿地に住む動物に関するクイズといった子供向けアクティビティがあります。湿地の入り口には自然科学に関する展示やプラネタリウムの入った建物(Paléospace l'Odyssée)に、レンタサイクルやレストランもありますから、家族で一緒に楽しめる場所です。
Le marais de Blonville-Villers
Paléospace l'Odyssée
Webサイト:Paléospace l'Odyssée(英語、仏語)
近隣の少し大きな街に散策と買い出しに
ブロンヴィル=シュル=メールから一番近くて大きな街はトルヴィル=シュル=メール(Trouville-sur-Mer)になります。クルマで15分ほどです。
まずは海から街を眺めてみようと小さな遊覧船へ。大人1人8ユーロ(約1040円)で、乗船時間は30分です。船長が有名人の別荘やカジノについて解説すると、有名人好きの義父母は身を乗り出して見ていました。
遊覧船の運航スケジュール
Webサイト:Horaires du GulfstreamII(仏語)
船のあとは、トゥック川沿いにある常設の魚市場へ。ウロコがキラキラとしていて、新鮮で美味しそう! 買って家に持って帰ることはもちろんできますが、ここでは食べたい魚介類を選べば、お皿に盛って併設したテーブルに持ってきてもくれます。ただここはレストランではないので、魚介類以外には飲み物しかなく、サラダやパンなどもありませんが、パンは近くのパン屋で買って持ち込むことが可能です。
魚市場
所在地:Boulevard Fernand Mourceaux, 14360 Trouville-sur-Mer
食後は海岸へ。浜辺にあるキャビンにも趣があります。
遊歩道には私も好きなレイモン・サヴィニャックの作品が掲げられています。サヴィニャックはこの地を愛し、2002年に亡くなるまでの晩年約20年間をトルヴィル=シュル=メールで過ごしました。トルヴィル=シュル=メールのロゴもサヴィニアックによるものです。
観光案内所の横には、サヴィニャックの小さな美術館もあります。私たちが行ったときはたまたま、アートディレクターの福田毅氏がサヴィニャックへのオマージュとして作成した作品たちの展示が行なわれていました。サヴィニャックの作品はもちろんですが、サヴィニャックっぽい、くすっとしてしまう福田氏の作品たちも、機会があればぜひ見てください。展示期間は2018年11月4日までです。
福田毅氏の展示会案内
Webサイト:福田毅氏の展示会案内(仏語)
あちらこちら散歩をして疲れたところで街中に戻り、お気に入りのサロン・ド・テ「デュポン(DUPONT)」へ。ここで一休みをしてこの日は帰路に着きました。
デュポン
所在地:134 bd Fernand Moureaux, 14360 Trouville-sur-Mer
TEL:+33(0)2 31 88 13 82
Webサイト:DUPONT(仏語)
トルヴィル=シュル=メールでは、毎週水曜日と日曜日に約50店舗の市場が出ます。場所は常設の魚市場と同じ通りで、時間は8時から13時まで。私たちも食材の買い出しに行きましたが、どれも新鮮で美味しかったです!
トルヴィル=シュル=メールの川を挟んだ向かいがドーヴィル(Deauville)です。ドーヴィルは映画「男と女」の舞台にもなった街なのですが、古くからある高級リゾート地。街には2つの競馬場があり、街の中心地には高級ブランドショップなどが立ち並んでいます。私たちは特に用事もなかったので今回は行きませんでしたが、上品な街並みを見てみるのもよいと思います。