荒木麻美のパリ生活

40℃超えの日も。“熱波日”急増中のパリの夏

気候変動対策のために500のプロジェクトが進行中

 熱波の定義はパリの場合、日中の最低気温が31℃、夜間の最低気温が21℃の日となります。フランスに歴史的熱波があったのは2003年のこと。約1万5000人の死者が出ました。

 でも私はその年の秋に渡仏したので、ときどき暑い年はありましたが、湿度が低いためにひどくつらいというほどではなく、「パリの夏は快適!」と思ってきました。それが2018年の夏は2003年に次ぐ暑さとなり、慌てて山に避難をすることに(関連記事「熱波のパリを出てモンブランのふもとで避暑(前編)」)。

フランスの夏の平均気温と降水量(1959年から2018年まで、フランス気象局より)

 そして迎えた2019年。早くも6月24日から30日まで熱波が! パリでは最高気温が37℃くらいまで上がりました。フランスでは熱波注意報を4段階で出していますが、パリ市には「3」が出ていました。フランスの南部では4のところもあったようです。

 熱波が来そうというのは数日前から大きなニュースになっており、パリ市内でも熱波対策に関するポスターや電光掲示板での警告をあちらこちらで見ました。ポスターの内容は「食事をきちんととりましょう」「アルコールを控えましょう」「運動を避けましょう」「体と扇風機を濡らしましょう」「身近な人と連絡を取り合いましょう」、そして「日中はよろい戸を閉めましょう」というもの。

電光掲示板にはフランス語と英語で注意が出ていました
熱波対策を促すポスター

 私もパリに住み始めたときは分からなかったのですが、暑い日に少しでも風を入れようと窓を開けたらフランス人の夫に怒られました。明け方の涼しいうちに窓を開けて室温を下げたら、よろい戸やシャッター、なければ厚いカーテンで部屋に日光を入れず、冷気を外に逃さないことが大切なのだそうです。

 建物の壁が厚いからだと思いますが、薄明りの中で過ごさなくてはいけないものの、クーラーのない家がほとんどのパリでは、これが暑さをしのぐために一番なのです。

熱波が来ていた間、このようにほとんどの家がよろい戸やシャッターまたは厚いカーテンで日光を遮断していました
お見舞いに行った病院では、病室の窓に遮熱シートを張っていました

ちなみにどうしてクーラーがないかというと、室外機を取り付けるのはパリの景観を損ねるというのが主な理由だそうです。ホースから熱を外に出す方式のスポットクーラーならときどき見かけますが、使っている人によるとそれほど冷えないとのことでした。

ホースから熱を外に出す方式のスポットクーラー

 冷房に関して、パリの公共交通機関は冷房が完備されていません。熱波の日に冷房の入っていない公共交通機関に乗ると、体臭や香水などが混ざった臭いが車内に充満していることがあり、車内が混んでいるときはもう本当に最悪です!

 かといって普段利用しているVélib(関連記事「サービス開始10年目にリニューアルされたパリのレンタサイクルサービス『Velib』」)も熱波の中ではつらいので、多少遠回りになっても、下記の冷房が入っている公共交通機関を探して移動していました。

メトロ: 1、2、5、9、14番線
トラム: 1番線以外
バス: ほぼ全滅
パリとその周辺に行くRERとTransilien: 全体の約半分に冷房が入っているとフランス国鉄SNCFは言っているので、時間があるのなら入っている列車を待ちましょう。ただしRER DとEは冷房の入っている車両はゼロなのでいくら待っても無駄です!

熱波対策のため、駅構内はこのように電気を消して薄暗くしているところもありました

 パリ市としてはこのほかにもさまざまな熱波対策を打ち出しています。

・一部の公園を夜間も解放
・給水所の増設
・プールの営業時間の延長
・ホームレスの人に水筒を支給
・「fichier CHALEX」: 75歳以上の高齢者や障害者の事前登録制度。今回のように警報がレベル3になると、登録者には安否確認の電話や訪問が入る
・学校には熱波キットと扇風機の導入: フランスで200校以上が休校となり、熱波期間中に予定されていた中学修了認定試験も延期という事態に。

24時間、夜間も公園を解放していますよという案内と公園で涼む人々
夏の間、ヴィレット貯水池に設置されたプール。パリ・プラージュ(関連記事「1か月限定! パリ海岸で過ごす夏」)とともに現われます。6月の熱波期間はまだ準備中でしたがその後オープン。9月1日までは21時まで開いており、無料です。パリ市はヴィレット貯水池の水質に問題ないといっており大盛況ですが、私はここで泳ぐ気にはまったくなれません!

 パリ市役所の冷房の効いた部屋を解放するともあったので、そのうちの一つ、パリ10区の市役所を訪ねてみました。痛いほどの日差しのなかをやっとたどりついたのですが、「冷房が壊れちゃったのよね。いつ直るか分からないから、その辺の図書館とか教会へ行けばいいわよ!」とのこと。パリではこういうことはよくあるので、怒ってはいけません。ガッカリはしつつもどんな部屋かとのぞいてみたのですが、ちっとも涼しくない暗がりの中に人がいたので驚きました。

 今回の熱波期間、車両の汚染レベル表記を表す「Crit'Air」のレベル5段階中、0から2だけがパリ市内の通行を許可されました。熱波が終わっても、7月1日からはCrit’Airで4以上の車両が通行禁止となっています。今後、2022年からは禁止対象は3以上となり、2024年のパリ五輪の年には、ディーゼル車両の通行も禁止される計画となっています。

 こうして早くもやってきた熱波でしたが、7月末に再度やってきました。期間は7月23日から25日までの3日間。熱波注意報は今回も3、パリでは25日に最高気温42.6℃を記録しました。1873年に観測が始まって以来、パリで40℃を超えたのは1947年の一度きりだったのですが、今回はその記録を更新しました。

 私はパリで弓道をしているのですが(関連記事「パリで弓道! 公共の弓道場も完成してますます盛んに」)、7月の熱波がやってきていた24日と25日の2日間に、欧州特別審査の日が重なってしまいました。なんというタイミング!

 私は審査運営スタッフだったのですが、道場の温度計も40℃辺りをウロウロ。2日間を通して約400人の受審者がおり、運営側も含めて病人が出ないかがとても心配だったものの、何事もなく無事に終わって本当にほっとしました。

道場の温度計が40℃に!
控室で待つ受審者たちに、スタッフが水のスプレーをかけたりうちわであおいだりしていました

 フランス気象局の専門家によると、地球温暖化対策を緊急に進めないと、今後2050年までに、フランスの気温は2℃から4℃上がるとされています。また、これまで年に1回程度だった熱波日は、10回から25回になるそうです。

 2015年のCOP21(第21回気候変動枠組条約締約国会議)以来、フランスは環境対策「プラン・クリマ(Plan Climat)」という気候変動対策計画を作成し、パリ市の場合、2004年比で次のような目標を掲げています。詳しくはまた別の機会にご紹介したいと思いますが、パリでは現在、この目標を達成するために500以上のプロジェクトが進行中です。

2030年目標

・エネルギー消費を35%削減
・温室効果ガスを50%削減
・パリの二酸化炭素排出量を40%削減
・45%を再生可能エネルギーに

2050年目標

・エネルギー消費を50%削減
・温室効果ガスをゼロに
・パリの二酸化炭素排出量を80%削減
・100%を再生可能エネルギーに

 このコラムを書いているのは8月上旬ですが、熱波がまた来ないことを祈るばかりです。でももし来たら、今夏は避暑には行けないので、またクーラーのあるところに避難するか、窓を閉めて暗闇でじっとしていようと思っています!

我が家の猫もこの暑さには参り気味でした。それでも暑いからと畳んでいるじゅうたんにわざわざ乗っているのが謎です

荒木麻美

東京での出版社勤務などを経て、2003年よりパリ在住。2011年にNaturopathie(自然療法)の専門学校に入学、2015年に卒業。パリでNaturopathe(自然療法士)として働いています。Webサイトはhttp://mami.naturo.free.fr/