旅レポ

圧倒的透明度で何度潜っても飽きないマリアナの海。日本から一番近い海外南国リゾート「サイパン」の魅力を改めて

リピーターが今改めて伝えたいサイパンの魅力

 成田からのフライトは直行便で3時間半。ハワイより約4時間、お隣のグアムより15分それぞれ短い。サイパンは、国外の南国リゾートとしては日本から最も近い島だ。

 ただ、近年は国内航空会社の運休や直行便の休止(一時的で済んだものの)、コロナ禍や円安などもあって、日本との距離が少々空いてしまった感があるが、海、特にダイビングを趣味とする人たちにとって、サイパンの海は相変わらずの楽園である。

日本からの直行便とサイパン・グアム独自の入国手続き

 2025年7月現在、日本からの直行便はユナイテッド航空が運航しており、スケジュールは以下の週3往復。このほか、羽田発グアム経由便も運航している(こちらは23時35分発の毎日運航、グアム乗り継ぎで8時50分サイパン着)。

ユナイテッド航空の成田~サイパン線(2025年5月1日~10月12日)

UA825便: 成田(21時05分)発~サイパン(翌01時35分)着、火・木・日曜運航
UA824便: サイパン(07時10分)発~成田(09時55分)着、月・水・金曜運航

サイパン行き直行便は成田発の深夜便(写真は帰国便のもの)。機材はボーイング 737-800型機で、ビジネス16席(2-2配列)、エコノミー150席(3-3配列、うちエコノミープラスが42席)。
サイパン行きの便は夕食、帰国便は軽食を提供する。今回の夕食はカツカレーのプレートだった

 直行便利用の場合、到着が深夜になるため空港からホテルへの移動手段の確保が必須。現在は空港からの乗り合い送迎バスなどは常駐しておらず、客待ちタクシーはまずいないので、出発前にホテルなどに依頼して交通手段を手配しておこう(ホテルの送迎車やタクシーなど。タクシーは現金払いのみ、1人20~30ドル必要)。

この日の便はほぼ満席だったこともあり、到着直後の空港の出入り口は送迎サービスの出迎えなども多く、深夜にしては人が多かった。乗客にはサイパン現地在住者やアメリカ国内の旅行者もかなりいたが、サイパン現地在住の人に聞いたところ、グアム~サイパン間の国内線の料金が高騰していることも影響しているらしい

 アメリカ合衆国に属するサイパンだが、正式名称「北マリアナ諸島自治連邦区(Commonwealth of the Northern Mariana Islands、CNMI)」とあるように、いわゆる“州”ではなく“コモンウェルス”という行政区分で、入国に必要な手続きにも独自のルールが設けられている。

 サイパンへの入国要件としては、パスポートのほか、アメリカ本国と同じくアメリカ合衆国ビザもしくはビザ免除プラグラム「ESTA」のいずれか、もしくはグアムおよびサイパン限定の電子渡航認証プログラム「Guam-CNMI ETA」のいずれかが必須だ(以前利用されていた紙の入国書類は2024年11月末で廃止)。事前申請・承認が必要なので、来島の際は忘れずに手続きを行なっておこう。

アメリカ、国土安全保障省公式Webサイト内「Guam-CNMI ETA」(日本語版あり)。申請は無料で、認証は2年間有効。米国ビザかESTAを持っていれば不要。画面はPC版のものだが、スマートフォンでも利用可能

 このGuam-CNMI ETAだが、申請内容はおおむね簡易版ESTAと言ってよいだろう。有効期間はESTAと同じく2年間で、申請にかかる費用は無料だが、滞在期間はESTAの半分の最大45日(日本国籍の場合)、というのが大きな違い。

 手続きは日本語表記で進められ(回答自体は英語で入力)、旅行者のパスポート、旅行者の各種連絡先情報、自撮り写真などを手続きのなかで求められる。Guam-CNMI ETAの申請ページによると、申請書の完成までの推定所要時間は23分、手続きが承認されるまでには5日程度かかるとのことだ(今回実際に申請してみたところ1時間とかからず承認されたが、早めの用意がオススメ)。

 また、通関に際して提出が必要な税関申告書もフル電子化されており、これも事前にCNMI税関サイトで申告しておく必要がある(5日前から受付)。通関の際にQRコードの提示が必須で、紙の書類での申請は受け付けていない。記載する内容は旧来の税関申告書と大差はないが、たびたび来島する人は“フリークエントフライヤー”としてアカウントを作って各種情報を保存しておくことができるので、リピーターの手間はかなり軽減されたのではないだろうか。

CNMIの税関サイト(日本語版あり)。都度記載が必要なゲストアクセス、アカウント登録して繰り返し使えるフリークエントフライヤーの2つが利用できる。こちらもスマートフォンから申告可能

 事前手続きはいずれも完全デジタル・全員必須(税関申告は1世帯1申請)。トラベル Watchをご覧になっている方なら問題はないだろうが、「どうもデジタル機器は……」という人やそういう家族・友人が渡航するというときには、出発前の準備にご注意を。

サイパン国際空港
上空から見たサイパン島。島の東部エリアが見える(中央のビーチ、ゴルフ場は観光で行くことはあるが、奥の居住エリアに行くことはほとんどない)

サイパンは何と言っても海! 何度潜っても飽きないスキューバダイビングの魅力

 冒頭でも触れたが、サイパン観光の最大の魅力は“海”だ。サンゴ礁に囲まれた島であり、白い砂のビーチや圧倒的な透明度を誇る海が多くの宿泊地からきわめて近い位置に広がり、海水浴、ダイビング、ジェットスキーやパラセーリング、沿岸でのシュノーケリングなどといったマリンアクティビティが楽しめる。

 そんななかでも、サイパンの海をより満喫するのなら、やはりダイビングが一番だろう。スキューバダイビング天国のサイパンだが、最近はスキンダイビングを楽しむ人も増加中だ(特に韓国で大人気とのこと)。

ダイビングボートに乗船して沖合いから見たサイパン島。今回は運わるく曇りがちではあったが、それでもやはり海の透明度は抜群。水中に黒っぽく見えているのは水底にあるサンゴの根

 サイパンは文字どおり“常夏”で、年間を通して平均気温は30℃周辺、水温は20℃台後半で安定している。北半球なので日本における冬の時期は多少気温や水温は下がるが、それよりも北風が強く吹いたり日本方面の寒波の影響が遠くおよんで海が荒れたりすることの方がダイビング的には影響する。スキューバダイビングの場合、基本的には一年中ウェットスーツ(人によっては水着+ラッシュなどの軽装も)でOKだ。

 サイパンでのスキューバダイビングは、ビーチからエントリーする魅力的なダイビングポイントもいくつもあるが、最近はボートダイビングが多い印象。ボートの場合、移動時間は近場なら10分~20分程度、島の北部やお隣のテニアン島沖に遠征する場合は30分~60分程度。海は比較的穏やかなことが多いが、乾季(12月~6月くらい)は北風が強く吹くこともあるため、北方面にはあまり遠征しなくなる。

今回は島の西部沖合いを中心にボートダイビングに参加。群生するサンゴ、そこに集まる南洋の魚、そして多くのカメがのんびり暮らす、初心者にも潜りやすいエリアだ。ボートでの移動時間も5~10分程度と短いので、船酔いが心配な人にも安心。群れなすマダラトビエイも見どころなのだが、今回はいずれのポイントでも不発。自然や生き物が相手なのでそういうこともある

 スキューバダイビングで欠かせないのが現地でのガイドサービスを提供してくれるダイビングショップ。サイパンには日本人経営のショップが現在約10件営業しており、言葉の心配なしで安全にダイビングが楽しめる。島内情報にももちろん詳しいので、ダイビングのガイドだけではなく観光や飲食の最新情報も聞いてみよう。

今回のダイビングでお世話になったショップ

AQUA GATE SAIPAN
AQUA DEL REY
SAIPAN MAKE SURE

 サイパンでのダイビングの1日のスケジュールは、朝7時台にホテルでピックアップしてもらって船着き場に移動。準備をしてからボートで2本ダイビングを楽しみ、お昼前ごろに帰島。その後、午後も潜る場合は、昼食をはさんでボートやビーチに出発して1~2本、というのがスタンダード。直行便で到着した日は夜がかなり遅いので、ダイビング初日は午後スタート、という対応もしてもらえる。

 同じ島の周辺エリアではあるものの、地形や風景、生物は非常にバラエティに富んでいる。砂地や岩場、サンゴ礁、ダイナミックなドロップオフや洞窟、さらには沈船や戦跡などがあり、アオウミガメやタイマイ、マダラトビエイなどの比較的大型の海洋生物から南洋のカラフルな小型の魚の群れにも出会える。1回のダイビング旅行でさまざまな海の景色を堪能できるのがサイパンでのダイビングの魅力の一つだろう。私自身、過去何回もサイパンを訪れているが、いつ行っても、何度行っても“飽きる”ということがない。

世界的に有名なダイビングポイント「グロット」。島の北端をさらに進んだ先、島の北東部に位置する。ゲートの先は崖になっており、海へのエントリー場所は100段以上の階段を下った崖下にある(ゲート脇の展望台から周囲を見ることもできるが、崖下にあるエントリー場所はほとんど見えない)。奥に見える海には洞窟を抜けると出られる
天井の抜けた洞窟状のスポットで、エントリー場所の岩場は内陸側にできた天然のプールになっている。洞窟内のプールは海水浴やシュノーケリングでも楽しめるので、天候・海況がよい日は多くの観光客や地元民が訪れる。水中からエントリー/エグジット場所の岩場方向を見ると差し込む光とグロットを楽しむ人々の様子が美しい
天然のプールの先には、外海につながる複数のトンネルがある。スキューバダイビングでは、このトンネルを抜けた先のルートを巡る
崖沿いに沿って進んでいく。トンネル手前の天然プール内よりも魚影が濃い
晴天であればもっと光のカーテンが差し込んで見事な景色になるが、曇天でも見ごたえは十分

 海外でのアウトドアレジャーということで、安全が気になるという人もいるかもしれないが、日系ショップが万全の態勢でガイドしてくれる安心感があり、未経験または初心者でも楽しめるダイビングポイントも多い。また、この10年で環境が著しく変化したということもなく、いい意味で「変わらず美しいマリアナの海」であり続けている。しばらくサイパンはごぶさただなというベテラン勢の皆さんも、ぜひ再訪してみてはいかがだろうか。

ガラパン地区を中心にのんびり過ごすサイパン

 さて、サイパンの“陸上”での過ごし方について、簡単に紹介しておこう。

 サイパンはそれほど大きな島ではなく、南北23km、東西10km。観光客が主に滞在するのは島の西岸で、空港は島の南端に近い位置にある。宿泊や商業の中心は「ガラパン」という地区で、島西側の中央部に位置する。大型のビーチリゾートホテルが複数あるほか、小~中規模のホテルも内陸側に点在し、公立学校やスーパーマーケットなどもあるため、観光客や地元の買い物客で人が比較的多いエリアだ。

島の西側を南北に走るビーチロードのガラパン付近。道路の反対側に見えているのは公立学校
ガラパン地区の北端には、太平洋戦争/第二次世界大戦の終戦50年を記念して建設された広大な公園「アメリカンメモリアルパーク」がある

 かつては、現在の「クラウンプラザリゾートサイパン」(2022年開業、旧フィエスタリゾート&スパサイパン)や「マリアナ ビーチ リゾート」(2025年開業、旧ハイアットリージェンシーサイパン)が軒を連ねるエリアが、いわゆるガラパンの中心地かつ“繁華街”だった。現在はだいぶ静かになってしまっているが、老舗のレストランや居酒屋(文字どおり日本風の居酒屋)は引き続き営業中だ。

ガラパン中心部のパセオデマリアナス。以前は遊歩道になっていたが、現在は車道になった。道はきれいになったものの、コロナ禍からの再開発を経て、なかなか人通りが回復しないのが現状
右端に看板が見えているが、ABCストアはガラパン地区に2店舗、パセオデマリアナスとグランヴィリオリゾートサイパンの隣にある
サイパンローカルの土産物/スーパーマーケット、アイラブサイパン。土産物や食品、衣類、日用雑貨、イートインなどいろいろ揃っている

 日用品や土産物などの買い物はガラパン地区を南北に走る幹線道路沿いにある大きな店舗が便利。ハワイやグアムでもおなじみのABCストア、サイパンローカルのアイラブサイパンなどがランドマークとしても分かりやすい。DFSグループの大型免税店もあったのだが現在営業していない(円安の現在、海外旅行でのショッピング自体がそもそも今一つだが)。

 なお、サイパンでの宿泊地としては、ガラパン地区以外に、北方面の大型リゾートホテル、南方面にはウォーターパークやゴルフ場併設のホテルもある。ガラパンまでの移動が手間だが、ホテルステイ重視、ホテル内または送迎付きアクティビティを楽しむならこちらもありだ。

今回も宿泊したグランヴィリオリゾートサイパン。サイパンに残る数少ない日系大型リゾートホテル。ルートイングループのホテルなので日本から赴任しているスタッフも

 今回のサイパン滞在では、ガラパンにある「グランヴィリオリゾートサイパン」に宿泊した。3つの建物からなる大型リゾートホテルだが、現在は19階建ての高層タイプ「タガタワー」がオープン中だ。全室オーシャンビューのゆったりした客室で、階層や広さの違いで、スタンダード、スーペリア、デラックス、オーシャンデラックス、スイートが設けられている。いずれも2ベッドとソファが常設で、インナーバルコニーを持つ(デラックスとスタンダードの一部客室はアウターバルコニー)。バストイレ別、シャワーブースありと、使い勝手もよい。

ホテルは3棟。メイン棟の北側にある高層ビルは、左がクリスタルタワー、右がタガタワー。今回はタガタワーに宿泊した。展望レストランはクリスタルタワーの最上階にある

 サイパンの大型リゾートホテル全般に共通する特徴だが、基本的に立地が島の西海岸に集中しているため、オーシャンビューの客室はいずれも天気に恵まれれば素晴らしい夕日を望める。今回は残念ながら曇天だったものの、それでも西向きの広い窓から望む雄大な海の景色は素晴らしい。

ホテルのエントランス。フロントと2つのタワーは右手奥方向。このまま正面に進むと、ホテルのプール、その向こうには白砂の海岸「マイクロビーチ」が広がっている
タガタワーへの通路。右手に進むとクリスタルタワー上階に行くエレベーターがある
タガタワー11階のスタンダードルームに宿泊した。インナーバルコニーのあるゆったりとした客室だ
滞在中、完璧な晴天!となることが少なかった今回だが、それでもタガタワーの客室から見る海のある景色は絶品

 グランヴィリオリゾートサイパンでの滞在が楽しいポイントは、実に典型的なリゾートホテルでありながら、敷地を接する買い物スポットが、よくある“土産物屋兼飲食雑貨店”ではなく、島内最大級のローカルスーパーマーケットを含む商業施設「ジョーテン・ハファダイ・ショッピング・センター」であるところだ。買い物客の多くは現地の方々で、土産物やバカンス用品ももちろん売ってはいるが、大容量のものを含む、食材、飲食品、日用品、雑貨、医薬品などが商品のメイン。ちょっとアメリカを感じられる買い物スポットで、見ているだけでも楽しい。

グランヴィリオリゾートサイパンのすぐ隣にあるジョーテン・ハファダイ・ショッピング・センター。ジョーテンは地元のスーパーマーケットチェーンでガラパンのほか、島内各地に複数展開する。ショッピングセンター内にはこのほか、アパレルショップなどがある

 ドルベースでの物価は、アメリカ本土から遠く離れた離島ということもあり、もともと若干割高ではあった。近年はご多分に漏れず物価高傾向で、為替レートも考慮すると少々割高感がある。とはいえ、ハワイのようにちょっとびっくりするくらいに高いということまではなく、例えば食事の場合、朝食や昼食は10ドル前後から、夕食は20ドル程度から、といったところ(もちろんお店による。高いところは高い)。ちなみに、飲食店も比較的夜が早く、20時半~21時くらいでラストオーダーになるお店が多いようだ。

 意外と言えば意外なのが、グランヴィリオリゾートサイパンのレストランやカフェが比較的リーズナブルでボリュームも満点だった点。高層階にある「ドルフィン」は、島内ホテルのレストランとしては唯一だという展望レストランなので、好天の夕方は見事な夕陽を見ながら食事を楽しめるので、さらにプラスポイントだ。ガラパン地区のレストランはほとんどが街中にあって海が望めない店舗がほとんどなので、それだけでも行く価値アリ。

展望レストラン「ドルフィン」にて。ちょっと早めのディナーにすれば見事な日没が……というつもりだったが、天候に若干恵まれず。それでもオーシャンビューの高層階での食事は心地よい
土曜のディナータイムはビュッフェ営業。カルフォルニアロール系の寿司など、バラエティ豊かなメニューが楽しめる(1人25ドル)
ドルフィンのランチメニュー。和食や弁当なども並ぶ。ホテル外の飲食店と比べても特に高いということもないのがありがたい

 なおホテル内には展望レストランのほか、朝営業のカフェラウンジ「アイリ」、サンデーブランチ営業のレストラン・バー「トロピカーナ」、ホテル専用プール脇にあるレストラン・バー「プールサイドバー」がある。

アイリでいただいたサンドイッチとコーヒー(11ドル)。軽く済ますつもりだったが、トースト3枚分の具たっぷりなホットサンドだった。サイパンの食事はボリューミー
プールの脇にある「プールサイドバー」(営業前)。撮影に立ち寄ったときはタイミングわるく土砂降りに……。この先にビーチがある
グランヴィリオリゾートサイパン、クラウンプラザリゾートサイパン、マリアナ ビーチ リゾートの目の前、南北1kmほどの白い砂浜が「マイクロビーチ」。一部歩きにくいところはあるものの、一応徒歩で進めるため、グランヴィリオからアメリカンメモリアルパークまでは海岸沿いにずっと散歩できる
マイクロビーチから北方向の沖合いには、観光スポットの一つマニャガハ島が見える
マイクロビーチ沖~マニャガハ島はマリンアクティビティのスポットになっていて、パラセーリングをよく見かける。上空から見るサイパンの風景はかなり爽快
今回の滞在では麺類を食べる機会がなぜか多かった。こちらはガラパン中心地にあるアメリカンピザ&グリルのマリナーラパスタ ミートボール付き(18ドル)。ハンバーグのようなボリュームのミートボールが乗っていてボリューム満点
こちらはダイビング中のランチで連れて行ってもらったAB Wild Bill's Bar&Grill。店名だけ聞くといかにもアメリカンな感じでハンバーガーがオススメらしいのだが、タイ料理も充実していて、このときはパッタイ(エビを選ぶと13.75ドル)をいただいた。こちらのお店もなかなかのボリューム

ローカルにも人気の「HIMAWARIホテル」に行ってみよう!

 そしてサイパン、特にガラパン地区に滞在するのであればマストなスポットが「HIMAWARIホテル」だ。シーサイドの大型ホテルが中心のサイパンだが、HIMAWARIホテルは海岸沿いを走るビーチロードの交差点から徒歩で5分~7分ほど内陸に入ったところにある中規模ホテル。1階がスーパーマーケットとレストランになっており、宿泊客以外にも便利なスポットだ。オーナー社長は現地在住の日本の方で、島内では数少なくなった日系ホテルだ。

HIMAWARIホテル(写真左は2019年時点のもの。現在はエントランス周辺の様子が若干変わっている)。写真右はホテルとスーパーマーケットの入口で、レストランの入り口は手前にある

 立地的にも「リゾート感あふれる」とはならないが、比較的リーズナブルな料金、ウィークリー/マンスリーなどの長期プランがあったり、大型リゾートホテルにはあまりない“ダイビング機材の洗い場”があったりと、リピーター、特にダイバーに人気で、かくいう私も過去に何回も宿泊したことがある。

 ローカルにも大人気のスーパーマーケットとレストランがとにかく便利。ダイビング旅行の場合、ダイビングに出発する時間は大抵7時台なので、ホテルの朝食は間に合わないことがほとんど。HIMAWARIホテルは、スーパーマーケットが朝6時半ごろからオープン。建物内に厨房やベーカリーがあり、焼き立てのパンや作り立てのスープ(味噌汁やクラムチャウダーなど)が朝イチから提供されているため、朝の準備がとても便利だ。

 なお、海外ではめずらしい実に日本的な「弁当」も毎日販売している。値段的にも手ごろなので、テイクアウトしてホテルで食べようということならこっちもオススメだ。

朝から熱い味噌汁が飲めるHIMAWARIのスーパーマーケット
日本でも売っている日用雑貨が非常に充実している
日本式の弁当、丼物がすごく充実しているのも特徴。お値段も手ごろだ。ベーカリーも併設なので、それこそ1日2食、3食とここで済ませるのも余裕。朝が早いダイバーの味方だ

 スーパーマーケットでは、飲食品のほか、日用雑貨、さらには日本の百円ショップで売っているアイテムも大量に販売している(これもローカルに大人気)。忘れ物をしてしまったとき、ちょっとだけ消耗品が欲しいときなどにチェックするといいだろう。

 また、併設のレストランのメニューは日本の和洋中レストラン的なラインアップで、寿司、麺類、丼モノなどがズラリと並び、居酒屋メニューも豊富でローカルや観光客にも人気。ガラパン地区には日系の居酒屋も数軒あるのだが、「ガッツリ和風の“食事”がしたいなぁ」と思ったら訪れてみよう。

同じ建物にあるHIMAWARIのレストラン。ランチタイムのラストオーダー直前だったためすんなり着席できたが、現地の人にも人気のお店なので昼、夜ともにかなり混みあう
あまり海外で和食が恋しくならない私だが、香りにつられてチャーハンを注文。紅ショウガが添えられていたが、どうやらサイパンの人は紅ショウガが好きらしい

島内の便利な移動手段、路線バスに乗ってみた!

 サイパンは基本的に車社会で公共交通機関は未発達だった。以前はホテルやショッピングセンターなどを循環する観光客向けの乗り合いバスもあったものの、今は運行が途絶えている。そのため、島内での行き来(特に南北の長距離移動)が少々不便になっていたが、2025年7月現在、低価格で利用できる公共交通サービス「Transit CNMI」による定期路線バスが運行中だ。

島の西側を南北に走る「Transit CNMI」の定期路線バス。14時くらいに乗ってみたが半端な時間帯だったため車内にはかなり余裕があった

 主に地域在住者に向けたサービスで、観光客に大々的にアピールはしていないものの、1回片道2ドルで気軽に乗車できる(現金のみ、おつりの用意がないので注意)。現在のルートは、ガラパンを始点に、

  • 島の西海岸沿いを南北に走るビーチロードを経由して島南部にある北マリアナ大学にいたる“南方面ルート”
  • リゾートホテルとしては島最北に位置するケンジントンホテルまでを往復する“北方面ルート”

の2ルートがある。

Transit CNMIのバス停。ルートは南方面循環と北方面循環の2つ。始発はいずれもガラパン中心部、ビーチロードのパセオデマリアナス出入り口付近

 地元の方が多数利用するため、住宅地やローカルマーケットに停留所が設けられているところが多いが、南方面だと、ガラパン地区のグランヴィリオリゾートサイパン、島中南部のサイパンワールドリゾート、南部のパシフィック・アイランド・クラブ・サイパン(PICサイパン)、島最南端にあるゴルフリゾートのコーラル・オーシャン・リゾート、北方面では、アクアリゾートクラブサイパンと終点のケンジントンホテルといった大型リゾートホテルの付近にも停留所があるので、観光客の島内移動(主に、ガラパンから離れたエリアに宿泊している人がガラパンと行き来したいとき)に便利だ。

Transit CNMIの路線バスのWebサイト。停留所ごとの詳細なダイヤは掲示されていないが、ライブストリーミングで現在のバスの運行状況(走行位置のリアルタイム情報)が配信されている

 停留所の情報や運行状況は、Webサイトおよびライブストリーミングで確認できる。運行時間は平日が6時30分~20時30分(明確な運行ダイヤがあるのではなく、3台体制で)。

 乗り方は簡単で、停留所でバスの到着を待ち(乗りたいときは意思表示を、とのこと)、乗り込んだらドライバーに現金で乗車料金を支払うだけ。降りたいときは、窓に沿って張られている黄色い紐を引っ張ると、次の停留所で停車してくれる(日本の降車ボタンと役割は同じ)。いかにも不慣れそうな観光客だった私を見かねてか、乗車時にドライバーが「どこまで行きたいんだい?」と聞いてくれたので、目的地がある程度はっきりしていれば、スマホ片手に比較的簡単に利用できるだろう。

南方面行きに乗って(特に目的地もなく)延々と南に向かって乗ってみた。ビーチロードは西側に海が広がっているエリアが長いので、ドライブ気分で乗るのもちょっと楽しい。とはいえ、生活路線でもあるので途中から生活感高めのエリアにもなる

 なお、島の西側の居住エリアや商業エリアを南北に結ぶ、島民の生活路線としての意味合いが強いので、利用にはそのあたりの配慮もお忘れなく。また、空港や島内でも宿泊エリアから離れた観光地(東南部や南部のビーチ、バンザイクリフや禁断の島など)にはルートに含まれていないので、これらの場所に行く場合は別の交通手段を検討しよう。

降りたいときは窓付近に張ってあるロープを引いてベルを鳴らし、ドライバーに降車を伝える
停留所で待っていると北に戻るバスがやってきた。乗車の意思をアピールして止まってもらおう

 ガラパン地区に宿泊していると徒歩圏内で大抵の用事が済むし、ダイビングや宿泊地から離れた観光スポットに出かける場合は送迎がセットなので、観光客が交通の不便さを感じることは少ないと言えば少ない。とはいえ、ガラパンから離れた地区にも宿泊施設はあるので、そういったエリアとガラパン地区をつなぐ手軽な交通手段が増えたのはありがたいところ。機会があったら利用してみてはいかがだろうか。

今後のユナイテッド航空のサイパン線

 最後に、今後のサイパン直行便の運航スケジュールについて簡単にまとめておく。

 前半にもまとめたとおり、今は週3往復が就航しているが、10月14日~24日は以下のスケジュールに変更になることがユナイテッド航空で行くサイパンに掲載されている(曜日変更はなし)。

ユナイテッド航空の成田~サイパン線(2025年10月14日~24日)

UA825便: 成田(16時55分)発~サイパン(21時25分)着、火・木・日曜運航
UA824便: サイパン(12時55分)発~成田(15時30分)着、月・水・金曜運航

 夕方便になるため、比較的余裕を持って到着翌日に朝から活動できるのがダイバー的にはありがたい。また、帰国便も昼過ぎになっているので、最終日前日~最終日もゆとりがありそう。ただし、到着日のホテルへのチェックインは22時以降になると思われるので、到着直後に買い物や食事をするのはちょっと厳しい。

 また、8月5日時点で前述の特設ページには記載がまだないが、10月26日以降の航空券予約が始まっており、2026年3月27日までは以下のスケジュールで運航する(同じく曜日変更なし)。

ユナイテッド航空の成田~サイパン線(2025年10月26日~2026年3月27日)

UA825便: 成田(17時55分)発~サイパン(22時35分)着、火・木・日曜運航
UA824便: サイパン(13時15分)発~成田(16時00分)着、月・水・金曜運航

 3月29日以降も現状予約可能で、出発便は1時間前倒し、帰国便は30分前倒しになっている。“予約可能=路線存続”かどうかが確実とは言い切れないのが現状のサイパン直行便の不安なところではあるが、末永い路線の維持、さらにはこの現地でのゆとりがあるこのスケジュールでの運航を願うばかりだ。

ダイビングに興味がある人、ダイビングが好きな人ならぜひ行ってみてほしい“お手頃な楽園”

 かつてに比べるとにぎわいは減ってしまってはいるものの、その代わりと言っては何だが、静かでのんびり過ごせる南海の楽園、サイパン。マリンアクティビティ、なかでもダイビングをエンジョイするにはこれ以上ないほどの場所であることに変わりはなく、成田からわずか3時間半で日本国内にはない常夏の島にたどり着けるという“手軽さ”も魅力だ。

 ハワイともグアムとも違うゆったりとした島暮らし、抜群の海でダイビングに没頭するアクティブな休暇など、改めてかつての人気リゾート・サイパンの魅力を再確認してみてはいかがだろうか。

内田泰仁