旅レポ

三鷹の森ジブリ美術館で開幕した「未来少年コナン展」に行ってみた!コナンの顔つきは宮崎監督そのもの?!

思わず全26話を見返したくなる企画展示

2023年5月まで開催予定

展示はコナンとラナの出会いのシーンからスタート。大きなハナジロ(サメ)を水中で倒して軽々と持ち上げて走るコナンはやっぱり運動神経バツグン&力持ち!

 三鷹の森ジブリ美術館(東京都三鷹市下連雀1-1-83)で、5月28日から新企画展示「未来少年コナン展」がスタートしました。開催期間は2023年5月まで予定。前日に行なわれた報道向けの内覧会で一足先に鑑賞してきましたのでレポートします。

JR三鷹駅から玉川上水沿いを歩いていくと、ところどころで目にする案内看板
ゆっくり歩いて約15分、井の頭恩賜公園の西園内にあります

「未来少年コナン」はNHK総合で1978年4月~10月に放送されていたテレビアニメーションシリーズで、宮崎駿氏の初監督作品として知られています。今回は“漫画映画の魅力にせまる!”をテーマに、全26話の解説パネルや、劇中に登場する機械や乗り物などの模型を見ることができます。

 ちなみに、「テレビアニメ」という言葉がまだ一般的ではなかった当時は、本作のような子供向け番組は「漫画映画」や「テレビ漫画」などと呼ばれていました。展示の冒頭では、宮崎流の漫画映画として8つの特徴を挙げて紹介しています。

原作はアレグザンダー・ケイのSF小説「残された人びと」。当時37歳だった宮崎駿氏は原作を大幅に変えてもよいという条件で監督を引き受けたのだそう

 2つの展示室では全26話のストーリーを、各話の印象的なカットやセリフとともに紹介しています。動きがポイントの部分は、短い動画がモニターに流れているので「そうそう、このシーンいいよね!」と思わず立ち止まって2回3回と観たくなってしまいます。展示物は「のこされ島」からはじまり「バラクーダ号」、「インダストリア」、「ハイハーバー」とストーリーに沿って紹介。物語のワクワク&ドキドキする展開を追体験できます。

全26話のあらすじを1話ごとにパネルで紹介
ラナがテレパシーで会話できる鳥たちも展示
インダストリア三角塔の模型
のこされ島やバラクーダ号の模型も。作業ロボット「ロボノイド」は乗って操縦してみたいところですが残念ながら乗ることはできません
コナンがインダストリアからラナを連れ出す名シーンはユニークな立体展示で
コナンとラナのフィギュアも見ることができる

 制作にあたり、頭に浮かんだキャラクターやシーンを具体化するため宮崎監督が描いたというイメージボードやキャラクター設定も多数展示されており、それらパネル類の数は55枚にもおよびます。すべて見終わったあとは間違いなく全26話を見返したくなるはず!この日は映像展示室にて第1話(約30分)が上映されたのですが、のびのびとしたコナンの動きに改めて魅了されてしまいました。

じっくり鑑賞してほしいキャラクターやマシンの設定あれこれ
宮崎監督が描いたイメージボードも多数展示。三鷹の森ジブリ美術館の安西館長は「コナンの顔つきは宮崎監督そのもの」と語る
「コンテにすべての情熱を注いでいる感じでした」と当時のアニメーターに言わしめた宮崎監督の絵コンテ
レイアウトと実際のシーンを見比べてみる
水彩で描かれた数多くのイメージボードは必見
尊い原画!14枚連続で展示されている

当時の制作スタッフをゲストに迎えて座談会も

 内覧会の前には、三鷹の森ジブリ美術館の安西香月館長やアニメーター、制作進行役として作品に携わったスタッフ陣による座談会も行なわれました。

「丸2年間このような内覧会ができなかったのですが、ジブリ美術館は元気です」と挨拶した三鷹の森ジブリ美術館の館主・中島清文氏

 同時期の1970年代に作られた「アルプスの少女ハイジ」や「母をたずねて三千里」などの名作路線、そして「宇宙戦艦ヤマト」や「宇宙海賊キャプテンハーロック」などSF路線の名前を挙げつつ、そのなかで「未来少年コナン」はちょっと異質な作品だったと明かした制作陣。44年経った今だから話せる思い出やエピソードを笑いや冗談を交えながら語り、大いに盛り上がった座談会となりました。

44年前を懐かしみつつ、終始笑いが起きていた座談会
「子供のころに毎週ワクワクしながら観た『未来少年コナン』の展示を絶対やる!」と決めていたという三鷹の森ジブリ美術館の安西香月館長
「『未来少年コナン』はまっとうな漫画映画。今のアニメーションにはないエネルギッシュさがある」と語ったのはアニメーターとして本作に携わった友永和秀氏。「コナンがギガント翼上を走るのって新幹線の屋根の上を走っているようなもの。それを嘘にならないように風の抵抗などの表現を積み重ねることによって現実感を出す、そこに全力投球しました。できていないと宮崎さんにボロクソに言われるので(笑)」
「本作は仕事を覚える時期に出会った作品。この作品がなければ今の自分はない」と語っていたアニメーション監督の富沢信雄氏。「(宮崎さんは)絵コンテに全ての情熱を注いでいる感じでした」とも。本企画展に関しては「キャラ表があるので1番最初のコナンがどうだったか見てほしい。全然違うので」とのこと
制作進行を担当していた元テレコム・アニメーションフィルム代表取締役社長の竹内孝次氏は「走りやジャンプがいろいろなところに入っている。これこそがコナンの活劇。展示はよくできていますが、動かないのでつまらない(笑)レイアウトのなかに納まっている絵だから。皆さんには動くアニメーションの方もこの機会にぜひ観てほしい」という

 宮崎駿監督のエッセンスが詰まった「未来少年コナン」を、ぜひ今の子供たちに観てほしいと述べていた安西香月館長。子供時代に観たという世代にとっても、改めて作品を見返すよい機会になるのではないでしょうか。

 三鷹の森ジブリ美術館の入場チケットは日時指定の事前予約制。毎月10日に翌月入場分のチケットをローチケWEBで発売しています。

ゆきぴゅー

長野生まれの長野育ち。2001年に上京し、デジカメライター兼カメラマンのお弟子さんとして怒涛の日々を送るかたわら、絵日記でポンチ絵を描き始める。独立後はイラストレーターとライターを足して2で割った“イラストライター”として、雑誌やWeb連載のほか、企業広告などのイメージキャラクター制作なども手がける。