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ジブリパーク、工事現場詳細レポ! 宮崎監督「見えない場所にいっぱいおもしろいがある。どう辿り着くか探してみて」
2022年2月1日 13:14
- 2022年11月1日 オープン予定
愛知県は、11月1日オープン予定の「ジブリパーク」の工事現場を公開した。現場では、スタジオジブリの宮崎吾朗監督が「青春の丘エリア」「ジブリの大倉庫エリア」の2施設の一部を直接紹介した。
また、新情報として映画「となりのトトロ」の「サツキとメイの家」を中心としたエリアに「どんどこ堂」と呼ばれる木製遊具が誕生することも発表。前回の速報に続き、本記事ではより詳細な情報をお届けする(関連記事「ジブリパーク工事現場を宮崎吾朗監督が案内。ラピュタやハウルの空想科学要素も取り入れたエリアを見てきた!」)。
既存の公園施設を活用しながら、隙間をジブリが埋めていくイメージと宮崎監督
発表会では、スタジオジブリの宮崎吾朗監督とジブリパークプロデューサーの岡村徹也氏がパークの理念を紹介。荒地であった同エリアが人間の手によって「愛知青少年公園」になり、「愛・地球博」やさらなる公園整備を経て、緑豊かな場所へと変貌してきた土地の歴史を踏まえていると解説。
宮崎監督は「土地に対して記憶を持ち、現在公園を使っている方々にとって、僕らがここに来ることで記憶を壊したり、公園事業自体ができなくなるのは筋違い。だから、おジャマにならないように。プランとして公園の未使用地や使われなくなった場所など隙間をジブリが埋めていくイメージ。モリコロパークにジブリパークが追記される感じがよいと思った」と話す。
また、愛知県とのタッグについては、「スタジオジブリとしてこの先・将来どうするか。長らく映画を制作してきたので、これを将来へ手渡していきたい、ちゃんと残していきたいという思いがある。ただ映画は時代とともにあるものだから、放っておくと忘れられてしまう。だからこそ忘れてほしくないから“何かを作りたい”というのがあった」とスタジオジブリ側の考えも披露した。
愛知県とのパーク整備事業以前にも、テーマパークに関してはほかからの誘いがあったという。ただ「人工的なファンタジーの提案に違和感を感じていた」と本音も。「ジブリ作品はファンタジーなのか? 確かにファンタジー的側面はあるが、かなりの部分で現実世界・社会を舞台にしている。例えば『耳をすませば』ならば聖蹟桜ヶ丘を作るのか? 『平成狸合戦ぽんぽこ』ゾーンならば開発中の多摩ニュータウンを作るのか? と、そういうことじゃない。それはナンセンスだなと。ならば、皆さんや僕がイメージするテーマパークとはまた違う形のパークがいいんじゃないか。そういうタイミングでいただいたのが今回の話だった」という。
これまでも、2005年の「愛・地球博」での「サツキとメイの家」の建設や、万博開催10周年記念として2015年に同公園で開催された「ジブリの大博覧会」など、愛知県とスタジオジブリとの関わりは深い。この2つの縁も大きく、実際に「愛・地球博」の理念の延長上に「ジブリパーク」はあるという。
なお、今回の整備では、建設における地元の職人の採用から愛知県産木材や焼き物の使用、さらに監督いわく「愛知県産の何かよいものを使ってのオリジナル商品も検討中」と、“ものづくり王国”愛知県や地元とのつながりを積極的に取り入れ、今後も継続していくとのことだ。
工事現場へ出発! 映画から飛び出した“本物”の「地球屋」が目の前に!
工事現場の見学では、宮崎吾朗監督自らが現場を案内。まず訪れたのは、11月1日に公開する「青春の丘エリア」(約0.8ha)。
映画「耳をすませば」に登場する「地球屋」「ロータリー広場」、さらに映画「猫の恩返し」の「猫の事務所」を整備する。現在「地球屋」は7割ほどできあがっており、今後左官職人により映画同様の外観に仕上げられていくとのこと。
宮崎監督は「外見だけではなく、内装も劇中を完全再現すべく鋭意製作中。主人公の雫ちゃんが感動する“カラクリ時計”を原寸かつ映画同様のカラクリで動くように作っている。また、アンティークの家具なども。建物は反対側から見ると3階建てで、フロアを入り階段を下るとバイオリン工房があったり、こちらも劇中そのままに再現。聖蹟桜ヶ丘のバイオリン職人さんにお力添えをいただきながらバイオリンも……」と説明。映画ファンにはたまらない情報が飛び出した。
続いては同じく「青春の丘エリア」の「エレベーター棟」へ。こちらは映画「ハウルの動く城」をはじめ、ジブリ作品によくモチーフとして使われる19世紀末の空想科学的要素を含んだスチームパンクな外観が特徴。メインゲートとしての機能も持っている。宮崎監督は「既存の施設の外観を改装中。パークの1つのシンボルとなればいいなと考えている」と話す。
「ジブリの大倉庫エリア」は不思議な建物が並ぶ、楽しいごちゃまぜ空間&保管庫
大芝生広場を抜けて2つめの「ジブリの大倉庫エリア」(約0.8ha)へ。こちらは2018年に営業が終了した温水プール施設を再利用している。倉庫らしさと懐かしさの混在する和洋折衷感満載の建築空間をイメージし、屋内ならではの全天候型エリアとなる。室内に入った瞬間にふわっと木材のよい香りがし、工事中ながらワクワクした。
このエリアには、映画「天空の城ラピュタ」の全長6mの空飛ぶ船から、廃墟となったラピュタの庭園、映画「借りぐらしのアリエッティ」の主人公のアリエッティとその家族が暮らす家や、小人目線で見た植物の茂る庭などもできあがる予定。
また、子供たちだけが入れる映画「となりのトトロ」の世界で遊べる部屋なども。さらに、常設・企画・映像展示室を併設。ジブリの造形物などを保管する大倉庫としての役割も担う場所となる。
宮崎監督は「ジブリの大倉庫エリア」を「大きな造形物をはじめ、スタジオジブリの保有する絵画などを保管するなど、とても重要な機能がある。ここにはジブリの宝物からガラクタまでいろいろごちゃ混ぜに入れるので、ちょっと怪しげな部分も感じてもらえたら」と解説。
建物の造形に関しては「ジブリ作品も現実から影響を受けてできあがっていることが多く、頑張ってオリジナリティを目指すよりも、僕らが影響受けて興味深いと思ったもの引用とコラージュで作っていく方がおもしろいと考えている。看板建築風であったり、タイルを使ったり、反対側はまったく違う作りだったり……。全部同じトーンではなくジブリ作品のなかでも固いのやわらかいのがあるわけで、そこを表現している」と造形のユニークさに関しても話してくれた。
また、温室のような環境を活用した植栽についても言及。宮崎監督は、信州大学農学部森林工学科卒業後に建設コンサルタントとして公園緑地や都市緑化などの計画、設計に従事していた経歴を持つが、今回植栽探しのために八丈島までリサーチに行ったとのこと。「両サイドとフロア上の部分、さらにコンクリで囲った部分に土を入れ、亜熱帯系の植物を植えます。九州や沖縄から調達予定」という。
なお、前述の「エレベーター棟」も含め、既存の建物を壊すのではなくあるものを活用し、リノベーションの発想を重要視しているのが「ジブリパーク」の特徴。環境へのダメージを減らしゴミも出さないように配慮しつつしっかり生まれ変わらせるのが、スタジオジブリのパーク事業の大事なポイントだという。
宮崎監督は「壁のかまぼこ型の空調タワーもそのまま残したり、既存の更衣室をリノベーションし展示室として利用したり。あるものをどう活かしながら作るかが大事。天井の貼り直しやガラスは性能のいいものに交換しましたが、フレームなどはそのまま」とのこと。
現場見学のラストには「本当はね、ここからまったく見えない場所にいっぱいおもしろいところがある。“さぁ、ここからそこまでどうやっていけばいいんでしょうか!”と来た方に探してもらう形。ロボット兵やアリエッティの庭も、ここからは見えない場所。どうやって辿り着くかはご自分で探して!」と茶目っ気たっぷりに締めてくれた。
なお、今回見学がかなわなかったもう1つのエリア「どんどこ森エリア」(約1.8ha)には、高さ約5.2mの木製遊具「どんどこ堂」が誕生する。宮崎監督によると、ほぼできあがっている状態で、現場で見ると誰もが思わず笑ってしまう最高のビジュアルだとか。愛知県産の杉の丸太などを使用し造られており、対象年齢は小学校低学年。「サツキとメイの家」の裏山を登った頂上にあるとのことで、ぜひ散歩がてら訪れてほしいという。
実は宮崎駿監督案も!? 「ジブリパーク」にまつわる裏話を鈴木Pが披露
工事現場見学会前には、スタジオジブリが手がける愛知県観光PR動画「風になって、遊ぼう。」も初披露。愛知県知事の大村秀章氏とともに、スタジオジブリプロデューサーの鈴木敏夫氏が駆けつけ、秋のオープンに向けて、期待感あふれる時間となった。
1月27日に公開された観光PR動画は、愛知県内の15スポットを紹介。4分20秒弱で自然豊かな「旧豊橋鉄道田口線」から鳥居が連なる「三光稲荷神社」そして「国宝犬山城」に「オアシス21」。さらに「トヨタ博物館」「あいち航空ミュージアム」を経て、ラストには「サツキとメイの家」に到着する。涙腺を刺激するオーケストラが奏でる旋律とノスタルジー感あふれる映像が魅力的な作品だ。
スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーは、「僕らが実写を手がけるのは非常にめずらしい。手前味噌ですが結構いいじゃん!って思いましたね」とできあがりに大満足。
映像を手がけた中川龍太郎監督については「気に入ったのが1点。性格が宮崎駿にそっくり。あんまり深く考えずに、すぐに手を出す。なにか頼まれるとすぐにやっちゃう、おっちょこちょいな部分があるんです。宮崎駿もね、実はそういうとこがあるので、そういう精神はこの映像のなかにはいっているのではないかと」とユーモアたっぷりに紹介した。
さらに、2020年11月に宮崎駿監督とお忍びで公園を訪れた際の様子も披露。「宮崎駿は、人が何かやろうとしているときに、黙って見ていられないタイプなんです。息子であろうがそれは気になります。簡単にいうと一体何をやっているのかを監視に来たんですね。それで何か少しでも突っ込めることがあったら文句を言おうって。
で、当日雨の中を歩きながら宮崎が言い出したんです。『決めた! これは吾朗に任せる! 俺が口出すことじゃない!』って。言い切ったんです。めずらしいんです、すべてに口を出す人ですから」と明かし、さらに今回1年2か月ぶりに訪れ工事の進捗を目にした鈴木氏は「よかったですねぇ~! なんかよかったんですよ! ジブリ美術館の精神、生きてますね。ちゃんと、その発展系がなかにあったんですよ。僕は見ました。だからある種の手応えを感じたんです。この仕事は本当にやってよかったなと思いました」と笑顔に。
「宮崎駿はその後、吾朗に任せた!と言いつつ、ある日僕が彼のアトリエを訪ねたとき、何をやっていたかといいますとジブリパークの自分の案を内緒で考えていたんですよね。本当に性格がわるいんです。僕が行ったらパッと隠しましたけどね。一体何を彼が描いていたか、そしてどこまで完成しているかは分かりませんが、もしかしたら将来吾朗くんがそれを活かして何かをやるかもしれない。それを含めて、まったく分かりませんが……。まずは11月からの様子を見ていただけたら。ぜひ期待をしてください!」と後日談を披露し、パークを猛アピールした。
大村知事もジブリパークについて、「スタジオジブリとの縁を深めていくなかで、ジブリ作品を取り上げた永続的な施設を!ということで何度もお願いと提案をしてきました。世界観を忠実に再現した数多くの展示品やセットに囲まれ、来場者の皆さまには映画の主人公になったような気分でエリア内を楽しんでいただける施設となっております」と太鼓判を押した。
また、大村知事は「夢だけど夢じゃなかった」という映画「となりのトトロ」のセリフを引用しつつ、「ジブリパークは日本が誇るスタジオジブリ作品の世界観を表現した唯一無二の公園施設。子供から大人まで多くの方に来園していただき、将来長きにわたって愛され、後世に引き継がれる公園となることを望んでいます。コロナを乗り越え、この秋はジブリパークで皆さまを笑顔でいっぱいに! しっかりと準備を進めていきますので、ぜひ開園を楽しみにしていただけたら!」と話した。
チケットは完全予約制の日時指定を検討しており、夏ごろから販売を予定している。価格は、多くの人が訪れることができるよう比較的リーズナブルになるとのこと。最新情報は2月1日12時より公開される「ジブリパーク公式サイト」にて随時チェックを!
©2022 Studio Ghibli
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