旅レポ

飛鳥から令和。日本はじまりの地・奈良で1400年の歴史を訪ねて明日香村と今井町へ

国宝や重要文化財が数多く残る橿原・明日香村周辺は歴史好きにはたまらない観光スポット

 JR東海(東海旅客鉄道)が奈良県をPRするキャンペーン「うまし うるわし 奈良」の注目スポットを訪ねるプレスツアーの前編では、橿原神宮を紹介した。

 後編では、飛鳥時代の史跡が多く残る明日香村周辺と江戸情緒が味わえる今井町をお伝えしよう。

日本最古の仏像がある飛鳥寺

 日本史の授業で習った聖徳太子や蘇我氏といった名前は、誰もが記憶しているはず。明日香村はその飛鳥時代(592年~710年)に都が置かれ、栄えてきた場所だ。現在は棚田や畑地など、のどかな風景が広がるなか、多くの史跡が点在している。そのなかでまず紹介したいのは「飛鳥寺」だ。

 飛鳥寺は588年に蘇我馬子が発願し、推古天皇によって8年の歳月をかけて建てられた日本最古の仏教寺院であるそうだ。そこに残されている本尊飛鳥大仏(釈迦如来坐像)は609年に作られた日本最古の仏像であり、重要文化財に指定されている。

 当時、銅15トンと黄金30kgを用いて作られた大仏は平安時代と鎌倉時代の大火事で全身を罹災し、その後修復が施されているが、当時と変わらず同じ場所に安置されている。その年月は1411年にもなり、「1400年も変わらずに今の場所にいらっしゃるので、およそ皆さんが座られている場所から推古天皇や聖徳太子が拝んでいたことでしょう」という住職の話を聞くと、悠久の歴史の流れを感じさせてくれる。

日本最古の仏像である飛鳥大仏。特徴的なシャープな顔立ちは、中国大陸や朝鮮半島からの影響が色濃く残されているからだとのこと
数度の大火でかなりの建屋が失われてしまったが、創建当時は現在の20倍の敷地を持ち、五重塔や3つの金堂などを持つ大寺院だった。屋根に瓦が使われたのもこちらの建物が初めてだったそうだ

明日香村の人気古民家カフェ「Cafeことだま」

 飛鳥寺の南方に広がる田んぼを抜けて行くと、風情のある町並みが残る岡地区がある。そのなかの市場筋と呼ばれた趣のある通りで営業しているのが「Cafeことだま」(奈良県高市郡明日香村岡1223)だ。

 築200年弱の元酒蔵であった松村邸を、オーナーである加藤夫妻が自らの手でリノベーションしてオープンした。加藤夫妻は生まれも育ちも違う場所であるが、お互いが明日香村に惚れ込んでいたことから移住を決意。現在は人気のこちらのカフェをスタッフとともに切り盛りしている。数量限定で予約が必要だが、明日香村で育った新鮮な野菜をメインに使った「ことだまランチ」がオススメ。

こちらの建屋が空くということで、2015年3月に移転。電気やガス工事以外は夫妻が自分たちで改装したそうだ
木の温もりに癒される店内
明日香村の新鮮な野菜をメインに、地場産のフードをふんだんに使った人気の「ことだまランチ」

万葉の世界を楽しめる「奈良県立万葉文化館」

「万葉集」を中心とした古代文化を学べるのがこちらの「奈良県立万葉文化館」(奈良県高市郡明日香村飛鳥10)。“令和”を考案した国文学者で、万葉集研究第一人者の中西進氏が名誉館長を務めることから、こちらも注目のスポットになっている。

 広々とした館内には、万葉集の世界やその当時の暮らしぶりが分かりやすく展示されているので歴史好きにはたまらない場所だ。また、こちらの建物は飛鳥池工房遺跡炉跡に建てられたものであり、復原展示された遺跡を間近で見学することもできる。当時はこちらの工房で「富本銭」が作られていたことが調査で分かっており、それまで日本最古の貨幣として考えられていた「和同開珎」よりも先に作られた貨幣があったことに歴史の奥深さを感じさせてくれる。

万葉文化を深く知ることができる県立の万葉文化館。名誉館長は“令和”の名付け親である中西進氏
その当時の暮らしぶりが人形で再現されており、歌とともに生活していたのが伝わってくる
日本最古の鋳造銭「富本銭」。貨幣としての価値があったかについては現在も研究が進められている

江戸情緒が色濃く残る「今井町」は注目のスポット

 飛鳥時代から今度は江戸時代へ。橿原市には江戸情緒が色濃く残る貴重な町並みが今なお保存されている。それが「今井町」(奈良県橿原市今井町)だ。東西に延びるJR桜井線、南北を行き交う近鉄橿原線が交わる南西に位置するこの地区は、1993年(平成5年)に「重要伝統的建造物群保存地区」の選定を受けている。エリア内には約500棟の伝統的建造物が存在しており、地区内の数としては日本一。また、文化財も多数残されており、国の重要文化財が9件、県指定文化財が3件、市指定文化財が5件と歴史的価値は高い。

 戦国時代に一向宗の布教を進めるために寺内町として作られ、その後は商人が多く集う町として江戸時代の末期まで栄えた今井町。その風情に魅力を感じ、こちらの建屋をリノベーションして新たに飲食店などを営む人も増えており、最近では人気になっている。

今井町

JR東海とコラボしたドリンクが飲める「うのまち珈琲店 奈良店」

 個性的なカフェが顔を揃えるなか、2018年12月にオープンし、瞬く間に人気になったのが「うのまち珈琲店 奈良店」(奈良県橿原市今井町4-3-6)。

 もともとは地元である岡山県玉野市でお店を開いていたオーナーの小田さんが、今井町の町並みを気に入って始めたのがきっかけだ。ドリンクやパフェは見栄えが美しく、SNSでもよくアップされているのを見かける。店内にはさまざまなジャンルの書籍が1500冊ほど置いてあり、のんびりとした時間を楽しめる。

 そして、2019年11月30日まではJR東海の「うまし うるわし 奈良」キャンペーンの企画メニューとして、東海道新幹線とドクターイエローをイメージした2種類のタピオカドリンクが提供されている。オーダーするには、スマートフォンに新幹線予約が簡単にできるJR東海の「EXアプリ」がインストールされているのが条件となる。もちろん、その場でインストールして提示してもOKだ。

今井町の古民家カフェとして人気の「うのまち珈琲店 奈良店」
1500冊の本がある店内。本に挟む“しおり”には仕掛けがあり、裏面に自分の連絡先を書くことで、その本が好きな人とつながれる可能性も
SNSで写真が映えるように特注したオリジナルのグラス。しおりとカモメがシンボルマーク
美しい盛り付けで女性に大好評のスイーツ
JR東海とコラボした限定のタピオカドリンク。左はバタフライピーの青を使った「タピオカ新幹線」、右はゴールドパインを使った「タピオカドクターイエロー」

地元産の食材が楽しめるフレンチレストラン「Tama」

 8年前にオープンした「Tama」(奈良県橿原市今井町4-5-14)は、オーナーシェフである南部さんが腕を振るうフレンチレストラン。福井県出身の同氏は東京で修行し、新規に店をオープンするにあたり物件を探していたところ、こちらに出会ったそうだ。手探り状態で始めたものの、今では野菜は御所市の農家から、豚肉や鹿肉は五條市の生産者から仕入れ、奈良県の旬の素材を使った料理が人気になっている。

地元の食材を使ったフレンチが楽しめる「Tama」
写真はランチコース。メインの鹿肉は大塔町(現・五條市)産のもので、そのほかの食材も奈良県産をふんだんに使っている。ランチ、ディナーとも予約が必要

贈答品に喜ばれるお酒が人気の「河合酒造」

 江戸時代中期に創業した歴史のある造り酒屋が「河合酒造」(奈良県橿原市今井町1-7-8)。今でもこの一角で醸造しており、県内唯一の女性杜氏が仕込みをしている。代表銘柄である「出世男」は縁起物としても人気があり、店先には「國酒」と書かれた歴代総理大臣の色紙がズラリと並ぶ。母屋は重要文化財に指定されている。

重要文化財に指定されている「河合酒造」
その名もズバリ「出世男」がこちらの看板商品
歴代総理大臣の色紙が飾られた店内

今井町の守りの要を務めた「今西家住宅」

 町の周囲に濠を巡らせ、盗賊や大名などから僧侶や門徒を守るために武力を備えた今井町。その象徴とも言えるのが「今西家住宅」(奈良県橿原市今井町3-9-25)だ。今井町の西端に位置し、西から迫りくる敵を撃退するために濠側は城郭さながらの堅固なたたずまいが今なお残る。織田信長と戦った際も最後まで今井町を守り抜いた功績が認められ、信長より自治権を与えられた。

 もともとは河合氏を名乗っていたが、大坂夏の陣の際も今井町を無傷で守り、郡山城主である松平忠明から“今井の西を守った家”として「今西」を賜った歴史がある。内部は広く、裁判所の役割を担っていたので裁きを言い渡すお白洲も残されている。

今井町を守り続けた「今西家住宅」
入ってみるとビックリするほど広い屋内。太い木材を巧みに使った建屋を見るために建築関係の人もよく訪れるそうだ。見学(有料)は前日までに予約する必要がある

快慶が手掛けた国宝の菩薩が拝める「安倍文殊院」

 今回は奈良県の橿原市、明日香村周辺の見どころを伝えてきたが、最後に鎌倉時代の天才仏師である快慶の作品が保存されている「安倍文殊院」(奈良県桜井市阿部645)を紹介しよう。時代背景もあることから、国宝に指定されている仏像が京都と奈良に集中しているのはご存じかと思うが、そのなかでも奈良県はナンバーワン。こちらの本堂に安置されている4人の脇士を伴う「渡海文殊群像」も国宝だ。

 獅子に乗り、説法の旅に出かける姿を表わした文殊菩薩像は約7mの高さがあり、見る者を圧倒する。文殊様はもちろんのこと、4人の脇士もそれぞれが精巧に作られており、快慶の技量に驚かされる。また、知恵を授けてくれる文殊様のご利益にあやかろうと合格祈願でお参りするお寺としても有名であり、池に浮かぶ姿が美しい金閣浮御堂も見どころだ。

高さ7mの騎獅文殊菩薩像
春は桜の名所となる金閣浮御堂は、「七まいり」という魔除け・方位災難除けを祈願する願掛けの修行場

 今回は“日本のはじまり”を満喫できる橿原市周辺の旅スポットを紹介してきたが、JR東海ツアーズが販売するパッケージプランなどを利用するのも便利だ。そのなかでも(11月30日までだが)、土日や祝日に今回紹介した観光スポット5か所を巡る周遊バスプランが特にオススメ。JR京都駅かJR奈良駅から乗れて、1日楽しむことができる。

野村シンヤ

IT系出版社で雑誌や書籍編集に携わった後、現在はフリーのライター・エディターとして活動中。PCやスマートフォン、デジタルカメラを中心に雑誌やWeb媒体での執筆や編集を行なっている。気ままにバイク旅をしたいなと思う今日この頃。