旅レポ
瀬戸内をアートな観光列車で楽しむ! 岡山発「La Malle de Bois」の停車駅を散策してみた!
2022年5月21日 08:00
岡山といえばフルーツ王国! そんな岡山にて岡山デスティネーションキャンペーンの実施が先日発表された。フルーツが実るベストシーズン7月から9月にかけてJRグループ6社と地方自治体ならびに観光事業者が一体となり約6年ぶりに開催。
大型観光キャンペーンの開催を前に、一足早く新幹線で岡山へ。備前焼に刀剣、海の恵みからアートまで、話題の観光列車「La Malle de Bois(ラ・マル・ド・ボァ)」が停車する各駅を散策。岡山楽しみ尽くすヒントを探しに、話題のスポットを訪れてみた。
岡山駅で「La Malle de Bois」に乗車。まずは刀剣の里で真剣を眺めてきた
今回体験したのはアートな観光列車「La Malle de Bois」。岡山駅から宇野・尾道・日生・琴平の4方向に向かい瀬戸内を旅するのにぴったりの列車。今回は“岡山駅~日生駅”を約1時間弱で結ぶ「ラ・マル 備前長船」を利用。岡山DC期間中は運行本数を拡大し、2022年は6月・9月の土日に運行する。出発が9時41分、余裕を持って岡山に前泊して乗るのがお勧めだ。また、宿泊先が岡山市内ならば「岡山・倉敷てぶらで観光サービス」(500円)で13時30までに預ければ、17時までに荷物を配達してくれるので、同駅の「ねこのてステーション」で預けておくのも便利。
早速朝イチで駅に到着。始発駅の岡山駅5番のりばでは「La Malle de Bois」での旅を上げるスペシャルデコレーションがお出迎え。出発前には「八点鐘」が鳴り、駅職員によるお見送りなどイベント感も満載だ。
今回乗車した「La Malle de Bois」はアート観光列車の名のとおり、車体全体にラッピングがされ窓枠はトランクのようなデザインが特徴。旅にまつわる言葉や絵柄をデザインし、瀬戸内の自然をバックに走る姿の美しさが評判だ。内装は木材を活用し、フローリングデッキとリクライニング、カウンター席で落ち着いた雰囲気に。角文平作「旅の道具の旅」や蓮沼昌宏作「連絡船の物語」などのアート作品がさりげなく飾られ、自由に読める書籍を揃えるなど贅沢な空間が広がる。
出発後、最初に降り立ったのは「長船駅」。“備前長船”の名のとおり、刀剣の名産地で土地の名前が付けられるほど。鮮やかな刃文が特徴の備前刀は国宝の4割を占めるほどの一大ブランドで、よく切れる刀といえば“備前長船”と言われる。ここで必ず訪れておきたいのが「備前おさふね刀剣の里 備前長船刀剣博物館」だ。
移動は、長船駅と博物館をスムーズに往復できる「備前おさふね刀剣タクシー」(2100円)がベスト。「備前長船刀剣博物館」は国宝「太刀 無銘一文字(山鳥毛)」を所蔵しており、2022年8月11日より特別展「岡山の名刀展 -長船地域を中心に-」(仮称)で公開予定。刀剣ファンは見逃せない展示となること間違いなしだ。また、初心者向けに刀剣基本のきから鑑賞のHOW TOまで分かりやすく解説された展示も特徴で、知識を増やしより充実した刀剣ライフのためにぜひ訪れておきたい場所と言える。
なお、同館では「初歩の刀剣講座 刀剣鑑賞作法」もグループ向けに開催。今回は装剣金工師片山恒氏が講師としてレクチャー。一礼をし、静かに刀剣を持ち上げたら、姿・長さ・反り、そして彫刻・厚みを静かに観察。地鉄や刃文を堪能し、再び静かに置いて一礼と一連の動作を見せてくれた。同館ではほかにも五寸釘を叩いた素材でペーパーナイフを製作したり、彫金体験などのアクティビティも実施している。
同館は併設する「備前長船鍛刀場」や作業用工房「備前長船刀剣工房」も見どころ。現役の職人と直接話をしながら作業を眺めたり、疑問をぶつけてみたりと職人ならではの話を聞くことができる。刀匠・安藤祐介氏が実際に向鎚を持ち上げて見せてくれたりと、時間を忘れて制作工程を追うことも。なお、お土産屋では、刀名入りの羊羹やアクスタ、「御刀印」などが人気だそう。
備前焼の有名産地直結「伊部駅」下車でカフェブレイク&窯元を訪問
続いては備前焼の産地で日本6古窯の1つ伊部へ。「伊部駅」前には多くの窯元やギャラリーが店を構えているのだ。すぐに備前焼を見に行きたくなる気持ちを抑えてまずは伊部駅直結の軽食喫茶「UDO」で一休み。「フルーツショートケーキプレート」(1485円)とスペシャルティコーヒー「DARK グアテマラブレンド」をオーダー。ふわふわのスポンジケーキにはほどよい甘さの生クリームとジューシーなイチゴがたっぷり。備前焼の食器もノスタルジー感あふれ、ほっとできるひとときが過ごせた。
そのまま駅周辺を散策することにし、駅から徒歩約5分ほどの備前焼窯元「一陽窯」へ。登り窯を見学しながら、なぜ伊部が備前焼で栄えたのか(備蓄用の甕から始まり、戦国時代末の豊臣秀吉や千利久による茶の湯ブームとが牽引)などの歴史を学び、材料の土や大量の薪、職人の作業を間近で見学。約30分ほどのレクチャー受けたあとは、備前焼への興味がむくむくとわき、煙や熱で表情を変える作品たちが今まで以上に身近な存在に。
終点「日生」からクルーズへ。島々を眺めて、地元の美味しいを頬張ろう
いよいよ「ラ・マル 備前長船」の終点「日生駅」に到着。こちらはカキオコ発祥の地としても有名だ。日生牡蠣のベストシーズンは1~2月とのことで、訪問した日はすでにシーズンが終了していたが、冷凍牡蠣を使ってのカキオコは年中味わえるという。今回は駅の目の前にある日生駅前港から「NORINAHALLE(ノリナハーレ)」に乗船し約1時間の日生諸島クルーズを体験してみた。
「NORINAHALLE」は岡山出身で鉄道デザインの第一人者・水戸岡鋭治氏が監修した船で、室内座席はレザー張りでふかふかと座り心地がよく船内は落ち着いた雰囲気。オープンデッキの開放感も抜群で、潮風の心地よさについつい長居してしまう。「~しなはれ」という地元の方言をもじった船名も親しみやすい。
クルーズでは、備前日生大橋で本土とつながる鹿久居島や別荘が多い鴻島、みかんが美味しい頭島に遠くに小豆島と、ぽっかりと浮かぶ島々や牡蠣筏を眺めたりとのんびりと過ごせる。地元ガイドによる温かみのある解説も楽しい。
クルーズを終えたところでお待ちかねのランチタイム。備前市が運営し海洋教育の拠点として活動する「渚の交番 ひなせうみラボ」に併設するレストラン「キッチン星の」を訪れた。頭島の高台から眺める瀬戸内の海の美しさは格別。レストランでは地元の新鮮な魚介が味わえると地元民にも好評だ。味わったのは「鰆の藁焼き&日生鮮魚のお造りランチ」(1680円)。藁の香りが食欲をそそるめずらしい鰆のたたきと、この日はヒラメのお造りがセットに。シーズン最後の牡蠣を使ったフライや頭島産みかんなど、地元の美味しいがてんこ盛り!
また提供時の器にもこだわりが。実は廃棄される牡蠣殻を粉末にして備前粘土に混ぜ込み再利用した備前焼なのだ。店舗1階のショップでは、同プレートや生産途中に壊れた陶器たちを使い制作した「ひなせうみラボマグカップ」(1980円)などSDGsを意識したアイテムが購入できる。さらに周辺の島々で収穫された絶品みかんも販売。地元の人が太鼓判を押すほどの美味しさなので1袋購入し旅のお供にしてみては!?
まだまだ停車駅散歩は続く!? 「瀬戸内国際芸術祭」の玄関口「宇野駅」にも行ってみた
4月14日よりスタートした「瀬戸内国際芸術祭2022 春会期」。アートの島「直島」へのアクセスに便利な宇野港が目の前の「宇野駅」には、会期に合わせ「ラ・マル せとうち」が運行。今回、「La Malle de Bois」停車駅の1つとして訪れてみた。駅舎自体が「JR宇野みなと線アートプロジェクト」として、現代アート作家エステル・ストッカー氏により装飾され、その美しさが際立っている。宇野みなと線の備前田井駅・八浜駅・常山駅も同様にアート化され、異なる駅装飾が施されているので巡ってみるのもおもしろい。
駅舎を出て港へと進むと、市民から廃材や瀬戸内海の漂流物を集め制作した淀川テクニック作「宇野のチヌ」、滑り台になっていて子供も楽しめる淀川テクニック作「宇野コチヌ」、巨大スクリューを軸に年々廃材が海底の遺物のように増殖する小沢敦志作「舟底の記憶(スクリュー)」など、海にまつわるものやゴミ問題を思わせるアートが並ぶ。港周辺に点在しており、新作も会期にあわせ公開されるのでぜひ散策がてら鑑賞してみよう。
ちなみに駅近の宿や温泉もあり、滞在にはうってつけの宇野駅周辺。散策で疲れた足を温泉で癒すのもよし、特に岡山DC期間中や芸術祭期間中の夏場は汗もかくのでお風呂でさっぱりしたいなら尚更。お勧めは、駅から徒歩約1分2021年7月にオープンしたばかりの「UNO HOTEL」と、隣接する「たまの湯」。
ナチュラルモダンな客室やホテル内装は、海や岡山デニムの青を基調とし、バルコニーからは宇野港を一望できる。ベッドルームに洗面台があり、アメニティはSDGsを意識したエコフレンドリーなものを採用。ルームウェアやスリッパはデニムカラーなど細かい部分までこだわりが満載。
併設するレストラン「瀬戸内レストラン BLUNO」では、岡山県産食材を使った絶品メニューを提供中。ディナーは「Soir」(5500円)と「Lumiere」(8800円)の2コース。訪れた日の「Soir」は「フィンガーフード:豚のリエット・揚げきびだんご・トリュフサブレ」のアミューズから始まり、前菜は「マグロ・タプナード・山菜」。メインは「岡山産・牛フィレ肉」に「瀬戸内産鯛・トリュフ・ヴァンブラン」。瀬戸内レストランだからこその魚料理をあとに持ってくるなどこだわりが光るコースだった。デザートもお花見として桜餅をイメージさせる春らしい1皿でにっこり。
なお、朝食はボリュームたっぷりの健康メニューを用意。紫きゃべつや赤パプリカ、瀬戸内レモンなど5種のドリンク&スムージに蒸し野菜の盛り合わせと、無人島(KUJIRA-JIMA)産ミカン&ブルーベリージャムに岡山ポタージュ。さらにUNOベネディクトと瀬戸内産食材をふんだんに使った絶品メニューが並ぶ。
「ラ・マル 備前長船」に乗車し、停車駅のお勧めスポットを巡った今回の旅。次回は、キッズやファミリーに人気の観光列車で瀬戸内海を横断。「四国アフターデスティネーションキャンペーン」に合わせて香川を訪れる際に一度は味わいたい&行きたい観光スポットを紹介する。