旅レポ

観光列車「La Malle de Bois」「etSETOra」に乗ってみた! 岡山~広島の移動で鉄旅を満喫

観光列車「etSETOra」。復路も10月2日より呉線ルートとなり、海を見ながらの移動できる

 DISCOVER WEST連携協議会が、岡山・広島の魅力を報道向けに紹介する2泊3日のツアーを実施。滞在2日目は“移動を楽しむ”をコンセプトに岡山と広島を結ぶ観光列車の旅をしてきた。

 滞在先では美術館を貸切にした早朝ツアーなど、旅をより充実させるオプションで土地の文化を肌で感じるアクティビティを体験した。

「大原美術館」で早朝ツアー。無人の美術館でじっくりと作品と向き合える

 岡山・倉敷滞在2日目は、早朝から大原美術館が実施する「大原美術館モーニングツアー」(2500円)に参加。美術館開館前の約1時間を利用して、無人の館内を特別解説員の話を聞きながら巡ることができる人気アクティビティだ。見どころから美術館にまつわる小ネタに収集エピソードまで、初めて知る情報満載で、アート好きに限らず誰もが楽しめる内容だ。

早朝の倉敷川を歩きながら美術館まで進む
「大原美術館」に到着

 大原美術館は実業家・大原孫三郎が画家・児島虎次郎記念館として1930年に開館した、日本初の西洋美術を紹介する私立美術館。児島虎次郎はヨーロッパでの制作活動とともに大原孫三郎の同意のもとで作品の買い付けを現地で行ない、それが同美術館の基礎コレクションとなっている。現在収蔵数は約3000点。

 ツアー参加者は、美術館正門前へ7時50分に集合し、とびきり静かな館内へ。特別解説員・岡崎氏が本館1階展示室エントランス正面に飾られた児島虎次郎の「和服を着たベルギーの少女」を紹介。画家とパトロン、そして友人だった児島虎次郎と大原孫三郎との関係を紐解きつつ、一般に作品見せることで日本の芸術発展へつなげるための購入であったことを説明した。

 もちろん、絵画の見方についても教えてくれる。同作なら背景は薄塗りで縦の筆の動きのみ、着物部分は粘度の高い絵具を塗りつけるようにしているなど、近い距離で観られる美術館ならではの楽しみ方も伝授してくれた。また、モネ「睡蓮」は直接作家自身から買い付けたエピソードも披露。当時の現代美術と呼ばれていた作品を児島虎次郎は多く手に入れ、その意志は今も続いているという。

特別解説員・岡崎氏が「和服を着たベルギーの少女」と同館の歴史を紹介
ルノワール「泉による女」をはじめ、美術史で習った著名な作家たちの作品がずらりと並ぶ
モネと直接交渉し購入した「睡蓮」。遠くから眺めると水面に映った雲や木々も見え空間の広さを感じる

 館内には展示室が大小7つあるが、そのなかでも別区画になっているのが、スペインを代表とする画家エル・グレコの「受胎告知」。見どころは、聖母マリアと大天使ガブリエルの位置関係。通常右側上位の考え方で描かれるが、本作品では聖母マリアが逆位置に。また、大天使ガブリエルの足が地上に着いておらず躍動感ある「受胎告知」は、当時は前衛的だったという。なお、エル・グレコの傑作が眺められるのは東京・上野「国立西洋美術館」の1点と大原美術館の1点のみだ。

1600年ごろに描かれたエル・グレコ作「受胎告知」

 モーニングツアーでは、収蔵されている日本の画家や現代美術についても言及する。また、同館は「基本的にはその時代その時代の現代アートを買い集め、それが90年以上蓄積された現代アートの美術館」であるとの説明も。「古い作品も収蔵しているが、来館したときに一番新しい現代アートと出会える」という。

 モーニングツアーは毎週日曜に開催。開催日の3日前までにWeb予約ができるのでぜひ利用を(冬期はお休み、春に再開予定)。なお、分館「新児島館(仮称)」も現在暫定開館中。こちらでは特別展示ヤノベケンジ「サン・シスター(リバース)」などが間近で鑑賞できる。

「新児島館(仮称)」正式オープン時には児島虎次郎が収集した古代オリエントなどの古美術が展示される予定
「新児島館(仮称)」暫定開館特別展示・ヤノベケンジ作「サン・シスター(リバース)」
鑑賞中、突如覚醒し立ち上がることもある

朝食は画家モネのレシピを使ったボリュームメニューでモネの食生活を追体験

 朝イチの美術鑑賞のあとは、おまちかねの朝食タイム。この日は2021年10月末まで実施されていた「大原美術館プレミアムモーニングツアー」(7100円)で提供していた「モネが愛したモーニングセット(モネの朝食)」が味わえた。

 会場は美術館のお隣&宿泊した「倉敷国際ホテル」。実業家・大原孫三郎の息子が開業したホテルならではのアートと食のコラボ。朝食はしっかりしたコースで、「岡山産・桃と倉敷・連島ごぼうのスムージー」から始まり、前菜「鴨のパテ・倉敷“藤原ファーム”の洋野菜サラダを添えて」、スープ「ポタージュフォンタンジュ」。

「モネの朝食」は2022年も実施する予定とのこと
前菜「鴨のパテ・倉敷“藤原ファーム”の洋野菜サラダを添えて」
スープ「ポタージュフォンタンジュ」

 メインに「晴れの国の”お日たま(卵)”を使ったリヨン風ポーチドエッグとボルドー風茸のソテー」に「ジェノバ風パン&スコーン プルーンジャムとともに」。そしてフルーツと時間をかけて朝を楽しむラインアップ。シェフによると美食家モネのレシピを再現し、まさに当時の食事となっているそう。しっかりとした味わいと、その豪華さに朝から驚くほど。鑑賞の余韻と食事を味わいながら贅沢なひとときが過ごせた。

メイン「晴れの国の”お日たま(卵)”を使ったリヨン風ポーチドエッグとボルドー風茸のソテー」
「ジェノバ風パン&スコーン プルーンジャムとともに」

岡山→尾道は観光列車「La Malle de Bois」に乗車。移動時間もスペシャルに!

 朝食後は岡山駅へ徒歩で向かい10時43分発のアートな観光列車「La Malle de Bois(ラ・マル・ド・ボァ)」(岡山~尾道区間の列車名は「ラ・マルしまなみ」)で尾道へと出発。「La Malle de Bois」は、列車の窓をカバンに見立て、旅にまつわる言葉や絵柄を白い車体にデザインした愛らしい車体が目印だ。

アートな観光列車「La Malle de Bois(ラ・マル・ド・ボァ)」で尾道へ出発
車内はレトロ。カウンター席はホテルのバーのような雰囲気
車掌が出発を鐘を鳴らしてお知らせ

 車内には、旅にまつわる現代アート作家の展示スペースや、ホテルクオリティのフローリングデッキと高級感も。さらに自転車置き場なども完備し、サイクリングが盛んな瀬戸内ならではの旅とコトを揃えている。

現代アートの展示スペース。角文平「旅の道具の旅」は車内にバージョン違い4点を展示
サイクルスペースを完備。車内合計最大20台程度まで持ち込めるという
記念乗車証にハンコを押すこともできる

 車内では、地元特産品とのコラボアイテムを販売。マスキングテープブームの火付け役・カモ井加工紙の「mtマスキングテープセット」(1100円)、尾道帆布を使ったEDGE OF LINE「帆布バッグ」(1万2990円)などが手に入る。特にお勧めは「旅するせとうちスイーツBOX」(1500円 ※要事前予約)。岡山発のフレッシュタルト専門店「STYLE」が手がけるプティタルトは県産食材を使った旬の味を車内限定で堪能できると人気。タルトの種類は「瀬戸内レモン豆乳たると」「早雲蜜芋モンブラン」「ピオーネたると」など季節によって変わる。

倉敷と言えば!なカモ井加工紙の「mtマスキングテープセット」
大きめサイズで荷物をしっかりと運べるEDGE OF LINE「帆布バッグ」
5種類の旬のフルーツや名産を使ったタルト味わえる「旅するせとうちスイーツBOX」

 倉敷から尾道までは約1時間、スイーツを頬張り車内のアートに触れているとあっという間に尾道に到着。駅到着前は尾道水道が目の前に広がり、キラキラと輝く水面にうっとり。到着時には駅で歓迎のバナーでお出迎えなど、うれしいサプライズも。

尾道駅到着前には進行方向左に尾道水道が広がる
列車到着時には歓迎のバナーでサプライズも!

 到着後すぐに向かったのは駅併設のレンタサイクル。ここでは大学生の発案で生まれたJR西日本オリジナル「SHIMANAMI LEMON BIKE」(3時間1000円、1日2000円)や「SHIMANAMI LEMON e-BIKE」(3時間3000円、1日4000円)を借りることができ、尾道周辺のサイクリングにぴったり。ほかの島との連絡船が行き交う港側に行ってみたり、気になるお店までちょい乗りしたり、使い方は自由。料金はヘルメット代と保険料込み。

「SHIMANAMI LEMON BIKE」を走らせて到着したのは「尾道国際ホテル」。ランチは尾道名物の穴子がメインの「尾道おひつ」(3000円)。穴子ひつまぶしに各種薬味を乗せて、お出汁でお茶漬け風にと自分好みにアレンジができるのがうれしい。

駅では学生の発案で実現した「SHIMANAMI LEMON BIKE」がレンタルできる
尾道は穴子が名物! 外せない穴子ひつまぶしがメインの「尾道おひつ」

尾道から広島へ! 最新観光列車「etSETOra」で海岸線を疾走

 尾道から広島へは10月2日に路線変更し呉線を復路でも採用した観光列車「etSETOra」に乗車。利用者からの要望で往復ともに海沿いを新たに走る形となり、さらに満足度もアップ。復路はバーカウンターもオープンするので、ジンベースのオリジナルカクテル「SETOUCHI BLOSSOM」(700円、ノンアルコール500円)片手に海を眺めたり、贅沢な時間が過ごせる。

観光列車「etSETOra」。外観は瀬戸内の海の青、海岸線から見える波の白をイメージ
1号は秋の宮島を思わせる暖かな赤の内装がポイント。床の柄は宮島の千畳閣をイメージ
2号車は瀬戸内の山々の新緑をイメージ。床は尾道の石畳を彷彿させる
復路のみバーカウンターがオープン
バーカウンター下には手が洗えるシンクも用意
座席にはアクリル板が設置され感染症対策もなされている

 最大の特徴は、まるで海の上を走っているかのようなダイナミックな情景。砂浜が見えるほどの距離に線路があるため、このまま海に入るのでは?と思うほどの迫力の景色が広がる。絶景ポイントが何度もあるのが同路線の強みで、見逃しても随時絶景ポイントを通過するので安心だ。また、お勧めの撮影スポットを通る際に減速も行なうなどの観光列車ならではの心遣いも。

撮影スポットでは減速など観光列車ならではのサービスもある
どのくらい近いかというと、砂浜と波が目の前まで迫るレベル

 ちなみに、乗車中のティーブレイクには「瀬戸の小箱~焼~」「瀬戸の小箱~チ~」(各2000円 ※要事前予約)がお勧め。「瀬戸の小箱~焼~」は1977年創業のドルセ洋菓子店によるプティタルト。柔らかなクリーム入りのタルトは「レモン・ティラミス・イチゴ」の全3種。「瀬戸の小箱~チ~」は「etSETOra」オリジナルチョコを含むクランブル&グレインショコラ合計8種とたっぷり。ぜひ仲間とシェアを。約3時間たっぷり撮影と景色&瀬戸内スイーツを楽しんだら、いよいよ広島に到着!

「瀬戸の小箱~焼~」には2個ずつ3種のフレーバー入り。シェアにぴったり
「瀬戸の小箱~チ~」も8種のチョコレートがイン。どれを食べるかで仲間と盛り上がろう
バーカウンターでは「島ごころレモンケーキ」(250円)や「だるまベリー」(540円)ほか選りすぐりの地元の美味しいが大集結
広島の地酒3種が飲み比べできる「地酒飲みくらべセット」(800円)と「牡蠣のオリーブオイル漬け」(500円)は鉄板
アテンダントとの記念撮影も楽しめる

駅直結! VIPフロア・ラウンジ新設「ホテルグランヴィア広島」にステイ

 2日目の宿泊はJR広島駅直結の「ホテルグランヴィア広島」。11月16日に新たにVIPフロアを新設、同時に最上階21階に「グランヴィアラウンジ」をオープンし、高価格帯宿泊者向けに新たなサービスをスタートさせた。

 ラウンジからは高層階ならではの眺望が楽しめ、ティータイムにはスイーツや軽食。バータイムには「桜尾ジン」「一代弥山スパークリング」ほか広島を代表する地酒が味わえる。朝食もVIPフロア専用となり、「広島産華味卵のオムレツ」「松坂ハムステーキ ホテルグランヴィア広島オリジナル サルシッチャ」など広島産素材を使った総料理長こだわりのプレート4種を用意。サラダやブレッド類はビュッフェスタイルで提供する。

アクセス抜群のJR広島駅直結の「ホテルグランヴィア広島」に宿泊
21階に新たにオープンしたVIPフロア向けの「グランヴィアラウンジ」
朝食の「アトランティックサーモンのグリル 広島レモンクリーミーソース」

 宿泊した客室はVIPフロア19階スーペリアフロアの「スーペリアセミダブル(18m 2 )」。米国シモンズ製のポケットコイルベッドに、マットレスパッド「エアウィーヴ」を採用。ピローも「エアウィーヴ」とベッドに乗った瞬間に寝落ちするほどの心地よさ。しっかり仕事ができるデスクからドリップ式コーヒー&お茶のサービス、ボトルのお水などを用意。

 バスアメニティも歯ブラシからシャワータオルをはじめ、POLAのカラハリシリーズのメイク落としから乳液と一式を用意。女性にもうれしいラインアップになっていた。

19階「スーペリアセミダブル」にはシモンズ製ベッドに「エアウィーヴ」を採用
デスクまわりにはテレビからポット、ミラーなどが集約している
ドリップ式コーヒーとお茶類、ペットボトル1本がサービスになっている
バスルームも広め。足が伸ばせるサイズのバスタブもありがたい
POLAのカラハリシリーズのお泊まりセット一式を常備
客室からの眺め。夜の広島駅の様子が見える

 なお、次回は広島で絶対に外せない定番観光スポットを訪問。「大和ミュージアム」から呉湾クルーズ、さらに牡蠣小屋や地酒、お好み焼きまで広島の美味しいを食べ尽くすプランを紹介する。

相川真由美

フリーライター/鉄鋼業やIT系やエンタメ関連の雑誌やWeb媒体の編集者を経て、フリーの記者として活動中。海外は一人旅がほとんど。趣味は世界のディズニーのパーク&リゾート巡り。最近は年間パスポート片手に日々舞浜通い。うなぎとチョコレートが好物で、旅の基本は“出されたものは全部食べる”。激辛とうがらしから謎の木の実まで挑戦するのがモットー。