旅レポ
観光列車「La Malle de Bois」「etSETOra」に乗ってみた! 岡山~広島の移動で鉄旅を満喫
2021年12月30日 08:00
DISCOVER WEST連携協議会が、岡山・広島の魅力を報道向けに紹介する2泊3日のツアーを実施。滞在2日目は“移動を楽しむ”をコンセプトに岡山と広島を結ぶ観光列車の旅をしてきた。
滞在先では美術館を貸切にした早朝ツアーなど、旅をより充実させるオプションで土地の文化を肌で感じるアクティビティを体験した。
「大原美術館」で早朝ツアー。無人の美術館でじっくりと作品と向き合える
岡山・倉敷滞在2日目は、早朝から大原美術館が実施する「大原美術館モーニングツアー」(2500円)に参加。美術館開館前の約1時間を利用して、無人の館内を特別解説員の話を聞きながら巡ることができる人気アクティビティだ。見どころから美術館にまつわる小ネタに収集エピソードまで、初めて知る情報満載で、アート好きに限らず誰もが楽しめる内容だ。
大原美術館は実業家・大原孫三郎が画家・児島虎次郎記念館として1930年に開館した、日本初の西洋美術を紹介する私立美術館。児島虎次郎はヨーロッパでの制作活動とともに大原孫三郎の同意のもとで作品の買い付けを現地で行ない、それが同美術館の基礎コレクションとなっている。現在収蔵数は約3000点。
ツアー参加者は、美術館正門前へ7時50分に集合し、とびきり静かな館内へ。特別解説員・岡崎氏が本館1階展示室エントランス正面に飾られた児島虎次郎の「和服を着たベルギーの少女」を紹介。画家とパトロン、そして友人だった児島虎次郎と大原孫三郎との関係を紐解きつつ、一般に作品見せることで日本の芸術発展へつなげるための購入であったことを説明した。
もちろん、絵画の見方についても教えてくれる。同作なら背景は薄塗りで縦の筆の動きのみ、着物部分は粘度の高い絵具を塗りつけるようにしているなど、近い距離で観られる美術館ならではの楽しみ方も伝授してくれた。また、モネ「睡蓮」は直接作家自身から買い付けたエピソードも披露。当時の現代美術と呼ばれていた作品を児島虎次郎は多く手に入れ、その意志は今も続いているという。
館内には展示室が大小7つあるが、そのなかでも別区画になっているのが、スペインを代表とする画家エル・グレコの「受胎告知」。見どころは、聖母マリアと大天使ガブリエルの位置関係。通常右側上位の考え方で描かれるが、本作品では聖母マリアが逆位置に。また、大天使ガブリエルの足が地上に着いておらず躍動感ある「受胎告知」は、当時は前衛的だったという。なお、エル・グレコの傑作が眺められるのは東京・上野「国立西洋美術館」の1点と大原美術館の1点のみだ。
モーニングツアーでは、収蔵されている日本の画家や現代美術についても言及する。また、同館は「基本的にはその時代その時代の現代アートを買い集め、それが90年以上蓄積された現代アートの美術館」であるとの説明も。「古い作品も収蔵しているが、来館したときに一番新しい現代アートと出会える」という。
モーニングツアーは毎週日曜に開催。開催日の3日前までにWeb予約ができるのでぜひ利用を(冬期はお休み、春に再開予定)。なお、分館「新児島館(仮称)」も現在暫定開館中。こちらでは特別展示ヤノベケンジ「サン・シスター(リバース)」などが間近で鑑賞できる。
朝食は画家モネのレシピを使ったボリュームメニューでモネの食生活を追体験
朝イチの美術鑑賞のあとは、おまちかねの朝食タイム。この日は2021年10月末まで実施されていた「大原美術館プレミアムモーニングツアー」(7100円)で提供していた「モネが愛したモーニングセット(モネの朝食)」が味わえた。
会場は美術館のお隣&宿泊した「倉敷国際ホテル」。実業家・大原孫三郎の息子が開業したホテルならではのアートと食のコラボ。朝食はしっかりしたコースで、「岡山産・桃と倉敷・連島ごぼうのスムージー」から始まり、前菜「鴨のパテ・倉敷“藤原ファーム”の洋野菜サラダを添えて」、スープ「ポタージュフォンタンジュ」。
メインに「晴れの国の”お日たま(卵)”を使ったリヨン風ポーチドエッグとボルドー風茸のソテー」に「ジェノバ風パン&スコーン プルーンジャムとともに」。そしてフルーツと時間をかけて朝を楽しむラインアップ。シェフによると美食家モネのレシピを再現し、まさに当時の食事となっているそう。しっかりとした味わいと、その豪華さに朝から驚くほど。鑑賞の余韻と食事を味わいながら贅沢なひとときが過ごせた。
岡山→尾道は観光列車「La Malle de Bois」に乗車。移動時間もスペシャルに!
朝食後は岡山駅へ徒歩で向かい10時43分発のアートな観光列車「La Malle de Bois(ラ・マル・ド・ボァ)」(岡山~尾道区間の列車名は「ラ・マルしまなみ」)で尾道へと出発。「La Malle de Bois」は、列車の窓をカバンに見立て、旅にまつわる言葉や絵柄を白い車体にデザインした愛らしい車体が目印だ。
車内には、旅にまつわる現代アート作家の展示スペースや、ホテルクオリティのフローリングデッキと高級感も。さらに自転車置き場なども完備し、サイクリングが盛んな瀬戸内ならではの旅とコトを揃えている。
車内では、地元特産品とのコラボアイテムを販売。マスキングテープブームの火付け役・カモ井加工紙の「mtマスキングテープセット」(1100円)、尾道帆布を使ったEDGE OF LINE「帆布バッグ」(1万2990円)などが手に入る。特にお勧めは「旅するせとうちスイーツBOX」(1500円 ※要事前予約)。岡山発のフレッシュタルト専門店「STYLE」が手がけるプティタルトは県産食材を使った旬の味を車内限定で堪能できると人気。タルトの種類は「瀬戸内レモン豆乳たると」「早雲蜜芋モンブラン」「ピオーネたると」など季節によって変わる。
倉敷から尾道までは約1時間、スイーツを頬張り車内のアートに触れているとあっという間に尾道に到着。駅到着前は尾道水道が目の前に広がり、キラキラと輝く水面にうっとり。到着時には駅で歓迎のバナーでお出迎えなど、うれしいサプライズも。
到着後すぐに向かったのは駅併設のレンタサイクル。ここでは大学生の発案で生まれたJR西日本オリジナル「SHIMANAMI LEMON BIKE」(3時間1000円、1日2000円)や「SHIMANAMI LEMON e-BIKE」(3時間3000円、1日4000円)を借りることができ、尾道周辺のサイクリングにぴったり。ほかの島との連絡船が行き交う港側に行ってみたり、気になるお店までちょい乗りしたり、使い方は自由。料金はヘルメット代と保険料込み。
「SHIMANAMI LEMON BIKE」を走らせて到着したのは「尾道国際ホテル」。ランチは尾道名物の穴子がメインの「尾道おひつ」(3000円)。穴子ひつまぶしに各種薬味を乗せて、お出汁でお茶漬け風にと自分好みにアレンジができるのがうれしい。
尾道から広島へ! 最新観光列車「etSETOra」で海岸線を疾走
尾道から広島へは10月2日に路線変更し呉線を復路でも採用した観光列車「etSETOra」に乗車。利用者からの要望で往復ともに海沿いを新たに走る形となり、さらに満足度もアップ。復路はバーカウンターもオープンするので、ジンベースのオリジナルカクテル「SETOUCHI BLOSSOM」(700円、ノンアルコール500円)片手に海を眺めたり、贅沢な時間が過ごせる。
最大の特徴は、まるで海の上を走っているかのようなダイナミックな情景。砂浜が見えるほどの距離に線路があるため、このまま海に入るのでは?と思うほどの迫力の景色が広がる。絶景ポイントが何度もあるのが同路線の強みで、見逃しても随時絶景ポイントを通過するので安心だ。また、お勧めの撮影スポットを通る際に減速も行なうなどの観光列車ならではの心遣いも。
ちなみに、乗車中のティーブレイクには「瀬戸の小箱~焼~」「瀬戸の小箱~チ~」(各2000円 ※要事前予約)がお勧め。「瀬戸の小箱~焼~」は1977年創業のドルセ洋菓子店によるプティタルト。柔らかなクリーム入りのタルトは「レモン・ティラミス・イチゴ」の全3種。「瀬戸の小箱~チ~」は「etSETOra」オリジナルチョコを含むクランブル&グレインショコラ合計8種とたっぷり。ぜひ仲間とシェアを。約3時間たっぷり撮影と景色&瀬戸内スイーツを楽しんだら、いよいよ広島に到着!
駅直結! VIPフロア・ラウンジ新設「ホテルグランヴィア広島」にステイ
2日目の宿泊はJR広島駅直結の「ホテルグランヴィア広島」。11月16日に新たにVIPフロアを新設、同時に最上階21階に「グランヴィアラウンジ」をオープンし、高価格帯宿泊者向けに新たなサービスをスタートさせた。
ラウンジからは高層階ならではの眺望が楽しめ、ティータイムにはスイーツや軽食。バータイムには「桜尾ジン」「一代弥山スパークリング」ほか広島を代表する地酒が味わえる。朝食もVIPフロア専用となり、「広島産華味卵のオムレツ」「松坂ハムステーキ ホテルグランヴィア広島オリジナル サルシッチャ」など広島産素材を使った総料理長こだわりのプレート4種を用意。サラダやブレッド類はビュッフェスタイルで提供する。
宿泊した客室はVIPフロア19階スーペリアフロアの「スーペリアセミダブル(18m 2 )」。米国シモンズ製のポケットコイルベッドに、マットレスパッド「エアウィーヴ」を採用。ピローも「エアウィーヴ」とベッドに乗った瞬間に寝落ちするほどの心地よさ。しっかり仕事ができるデスクからドリップ式コーヒー&お茶のサービス、ボトルのお水などを用意。
バスアメニティも歯ブラシからシャワータオルをはじめ、POLAのカラハリシリーズのメイク落としから乳液と一式を用意。女性にもうれしいラインアップになっていた。
なお、次回は広島で絶対に外せない定番観光スポットを訪問。「大和ミュージアム」から呉湾クルーズ、さらに牡蠣小屋や地酒、お好み焼きまで広島の美味しいを食べ尽くすプランを紹介する。