旅レポ
ラスベガスは美食の街! 有名シェフの名店でディナーを堪能してきた
和の鉄人・森本正治シェフにも遭遇
2018年12月12日 00:00
近年、ラスベガスには世界的に有名なシェフのレストランが数多く誕生しています。そのため、美食家からも注目を集める存在となっているのです。
ラスベガス観光局が主催した今回のツアーでも、有名シェフのお店でディナーを楽しんできました。
アメリカのスターシェフ、ウルフギャング・パックの有名店「Spago」
アメリカには数多くのスターシェフがいますが、そのなかでも長年トップシェフとして君臨しているのが、ウルフギャング・パックさんです。アカデミー賞授賞式のディナー総責任者で、日本にも彼のお店がたくさんあるので、ご存じの方も多いでしょう。その、ウルフギャング・パックさんのレストランが、「Bellagio Las Vegas」にある「Spago」です。
ウルフギャング・パックさんがスターシェフに上り詰めるきっかけとなったレストランが、1982年にロサンゼルスにオープンした「Spago」というレストランです。BellagioのSpagoは、その系列店として、シェフの代名詞でもある創作アメリカ料理が楽しめます。
お店は、Bellagioの噴水のある湖の湖畔に位置しています。湖側は大きなガラス窓となっていて、噴水とディナーを同時に楽しめるようになっています。
まず最初にいただいたのが、シェフのレストランで代名詞的な料理となっている、スモークサーモンのピザです。パリッと焼き上げられたピザ生地に、クリーム状のチーズ「ディルクリーム」を塗り、スモークサーモンをどっさりと盛り付け、アクセントとしてキャビアが添えられています。温かいビザ生地と、冷たいディルクリームやスモークサーモンとの対比がとてもおもしろいですし、何よりその優しいながらパンチのあるスモークサーモンの味わいがピザとマッチして非常に美味しいです。
前菜は、ビーツを主体としたヨーグルト風味のサラダ、トマトとフレッシュチーズ「ブッラータ」のサラダ、カンパチのカルパッチョ、豚バラ肉とタコの「a la Plancha(スペイン風焼き料理)」です。アメリカ料理というと、大味な印象が強いですが、これらの前菜はいずれも繊細で、素材を活かしたあっさりとした味わいが非常に印象的でした。アメリカ料理のイメージを、よい意味で崩された感じです。
続いてパスタ料理2品とメイン料理4品です。パスタは、黒トリュフのスライスがこれでもかと添えられたラビオリ風のアグノロッティと、イカスミのガルガネッリです。アメリカでありがちな茹ですぎパスタではなく、絶妙のアルデンテに茹でられたパスタは、いずれも濃厚な味わいで、これまでアメリカで食べたパスタのなかでもトップクラスの美味しさでした。このパスタの味わいなら、アメリカのイタリアンもかなりお勧めできそうです。
メインは、アラスカ産オヒョウの香港風蒸し、地鶏のロースト ゴートチーズとマッシュルーム風味、コロラド産ラムチョップのロースト、ウィーン風シュニッツェルの4品です。もちろんいずれもとても美味しかったのですが、このなかでちょっと雰囲気の異なる料理と感じたのがウィーン風シュニッツェルです。子牛肉を薄くのばしてカツレツ状にした、ウィーン伝統料理です。なぜ正統派ウィーン料理が出されたのでしょう。それは、実はシェフがオーストリア出身だからで、このシュニッツェルも看板メニューの1つになっているのです。見た目どおりにパリパリとした楽しい食感と、塩気の効いたお肉の味わいは、日本人もほっとする美味しさでした。
さらに今回は、デザートもたくさん出していただきました。いずれも特徴的な見た目の、とてもおもしろいものばかりでしたが、そのなかでも特に象徴的だったのが「The Strawberry」です。
苺をモチーフとしたデザートですが、何よりおもしろいのがその見た目です。苺を模したキューブ状の見た目は、非常にインパクトがあります。崩すのがもったいないと感じるほどですが、中には苺ジャムや苺のムースが詰められていて、見た目に反して非常に繊細な味わいです。また、周囲のアーモンドフレークのサクサクとした食感との対比も楽しくて、飽きずに食べられます。ファッション雑誌の表紙にも採用されたことがあるそうですが、Spagoを訪れたら忘れずに注文したい逸品と感じました。
アメリカ創作料理ということで、最初はおっかなびっくりでしたが、味わってみるといずれの料理も繊細な味わいで、イメージがよい意味で崩されました。ラスベガスでも屈指のお勧めレストランと感じました。
大人気テレビ番組をモチーフとしたレストラン「Hell's Kitchen」
Hell's Kitchenは、2018年にオープンしたばかりながら、連日超満員で予約を取ることも難しいという、今ラスベガスで最も注目されているレストランです。
このレストランは、イギリスのテレビ番組「Hell's Kitchen」をモチーフとしています。番組自体はアメリカでも大人気とのことで、そのため、連日超満員が続いているそうです。
この番組の内容は、20人前後のシェフが赤チームと青チームの2チームに分かれて実際に客に料理を提供をしながら、勝ち抜いて優勝を目指すというものです。そして、その番組の要となっているのが、ゴードン・ラムゼイさんという三つ星シェフです。私はその番組を見たことがないのですが、シェフの歯に衣着せない毒舌が人気の要因となっているそうです。もちろん、三つ星を獲得しているのですから、その腕も確かでしょう。
この番組をモチーフとしたレストランということで、店内は実際の番組をかなり忠実に再現しています。客席から見渡せるオープンスタイルのキッチンは、番組どおり赤と青に色分けされています。また、照明をはじめとした調度品にも番組のモチーフが数多く使われています。その1つが三つ叉の槍で、天井には無数の槍が飾られています。
そして、最大の特徴となるのが、店を切り盛りするメインシェフを、実際の番組の優勝シェフが担当しているという点です。現在は、番組のシーズン17の優勝シェフ、Michelle Tribbleさんが担当しています。もちろん、ゴードン・ラムゼイさんも監修を担当していますし、チェックのために定期的にお店に顔を出しているそうです。
提供されている料理も、実際に番組内に登場したものが多数取り入れられています。実際に番組を見ている人には、おなじみの料理もたくさんあるそうです。それ以外にも運営を任せられている担当シェフが考えた新しい料理も取り入れているので、新鮮さも感じられるようになっています。
番組のファンに向けて、細かな部分までこだわった演出を料理に施している点も特徴の1つです。例えば、カクテルの1つに「notes from gordon」というものがありますが、こちらにはゴードン・ラムゼイさんが番組内で発言した毒舌が書かれた紙が添えられています。その文面を見ると、ファンならクスッと笑えるものとなっているそうで、こういったこだわりもかなかな楽しいところでしょう。
そして、このHell's Kitchenの大きな魅力が、料理の味です。テレビ番組などをモチーフとしたレストランでは、味は二の次といったことが少なからずあります。しかしHell's Kitchenでは、三つ星シェフのゴードン・ラムゼイさんが認めた料理しか提供されていません。つまり、その味わいは折り紙付きということです。
今回、前菜からメニュー、デザートまでいろいろな料理をいただきましたが、確かにどの料理も納得のいく美味しさでした。テレビ番組をモチーフとした色物的なレストランではなく、まさしく本物の美味しさが味わえる、最上級のレストランと感じました。
なかでも、特に気に入ったのが、番組でも登場するというイギリスの肉料理「ビーフウェリントン(beef wellington)」です。レストランの看板メニューの1つで、柔らかい牛のテンダーロインをパテで覆ってパイで包み焼き上げたものですが、ミディアムレアに仕上げられたお肉は焼き加減も最高ですし、口の中で溶けていくかのような柔らかさは、まさに最強の味わいでした。アメリカだと美味しいステーキがたくさんありますが、そのなかでもトップクラスの美味しさと感じました。
こちらは、テレビ番組をモチーフとしたレストランではありますが、番組のファンはもちろん、番組を知らなくても、その料理の美味しさだけで足を運ぶ価値のあるレストランと言ってよいでしょう。またラスベガスを訪れる機会があれば、ぜひ再訪したいと思います。
和の鉄人、森本正治さんの和食レストラン「Morimoto」
長くラスベガスに滞在していると、和食が恋しくなることもあります。そんなときに足を運びたいレストランが、大型リゾートホテル「MGM Grand Las Vegas」にあります。その名は「Morimoto」。この名前からピンと来る人もいるかもしれませんが、日本のテレビ番組「料理の鉄人」で和の鉄人として腕を振るった、森本正治さんのレストランです。
料理の鉄人はアメリカでも人気を集め、アメリカ版「Iron Chef America」も制作、現在も放送されています。森本さんはこのIron Chef Americaにも和の鉄人として出演しています。また、現在森本さんはアメリカを拠点に活動されていて、アメリカをはじめ世界中でレストランを経営しています。その1つが、このMorimotoです。
Morimotoでは、寿司から鉄板焼きまで、本格的な和食を楽しめます。店内は、入ってすぐの寿司カウンターも含めて、かなりモダンな雰囲気です。寿司カウンターでは、日本をはじめとして集められた旬の新鮮なネタを使い、日本人の職人さんが握った本物のお寿司が楽しめます。そして、その奥にはテーブル席とともに鉄板焼きのカウンターが用意されていて、今回はそちらで鉄板焼きを中心としたメニューを楽しみました。
しかも、訪れた当日にちょうど森本さんがお店に来られていたため、ラスベガス店のメインシェフと一緒に森本さん自身が料理の腕を振る舞ってくれるという、またとない機会に恵まれました。
アメリカの鉄板焼きというと、ショー的な要素を盛り込んだものを想像する人も多いかもしれません。しかしMorimotoの鉄板焼きには、そのようなショー的な要素は一切ありません。素材と味で勝負する、まさしく日本的な内容です。とはいえ、そこはアメリカで活躍する森本さんですので、独自のアレンジを盛り込んだ、ほかにはない内容です。
まず最初に出されたのが、Morimotoの看板メニューでもある前菜の「トロタルタル」です。森本さんが特注したという透明の器に国産鮪のトロを敷き詰めて、その横には海苔、わさび、サワークリーム、アサツキ、おかきなどの薬味が添えられています。見た目にとても鮮やかで、とても美味しそうです。食べるときには、小さなへらでトロと薬味こそげ取り、口に運びます。トロ単体でもかなり濃厚で美味しいのですが、薬味を変えて味の変化が楽しめるのも、とてもおもしろいと感じました。合わせて、ラスベガスでこれだけ美味しいトロが味わえるというのも驚きです。
また、アッと驚かされた料理が、カニやエビなどの魚介類をたっぷり使った和風ブイヤベースです。ブイヤベースといっても八丁味噌を使っていますので、和風の魚介煮込み料理といった雰囲気です。この料理で驚かされるのが、その調理過程です。まず、深皿に大きな透明フィルムを敷き、そこにカニやエビ、野菜などの具材をおきます。そこに、八丁味噌ベースのスープをたっぷりかけて、フィルムで包み込みます。そして、フィルムごと具材を鉄板の上に。
実はこの透明フィルムは耐熱素材でできていて、鉄板の上でも溶けないのです。そして、中のスープがぐつぐつと煮え、具材に火が入っていきます。料理のできあがる過程が、これまでにない姿で目の前で繰り広げられるのは、とても興味深いものでした。ここまでは奇をてらっているように感じるかもしれませんが、できあがった和風ブイヤベースは、味噌を使っていることもあって、日本人にベストマッチで、感動的な味わいでした。
そのほかにも、汁物、焼き物、お肉、魚、ご飯ものと、次々に料理が運ばれてきました。森本さんに聞くと、素材は日本産にこだわることなく、全世界からそのときに旬で最も美味しいものを取り寄せているとのことですが、確かにどの料理も新鮮な素材の味が活かされた、本格和食らしいものばかりでした。ここまで本格的な和食がラスベガスで楽しめるというのは、かなりの驚きでした。しかも、100ドル未満のコースも用意していますので、本格和食レストランと考えると金額もリーズナブルと言えます。こってりとした料理ばかりが続いて和食が恋しくなったら、ぜひ足を運んでほしいお勧めのレストランです。