旅レポ

歴史に残る遺産や名所がいっぱいのバルカン半島3カ国探訪(その1)

欧州へのネットワークが豊富なターキッシュ・エアラインズを利用

ターキッシュ・エアラインズに乗ってイスタンブール経由でセルビアへ。日本路線では現在、エアバス A330-300型機が使用されている

 ギリシャに始まり、第一次世界大戦のきっかけの一つとなったサラエボ事件、旧ユーゴスラビアとその崩壊後の紛争など、世界史において古代から近代まで幾度となく登場する重要な場所、バルカン半島。現在では欧州のなかでも一際多くの国が密集する地域となっている。

 もともと「7つの国境、6つの共和国、5つの民族、4つの言語、3つの宗教、2つの文字、1つの国家」と言われた旧ユーゴスラビアが、民族間の内戦、紛争が頻発するなどの痛ましい出来事を経て、構成国が独立をしたわけだが、2000年代に入ってからは紛争も落ち着き、各国が、それぞれの道で発展を目指している。

 日本のJICA(国際協力機構)はバルカン半島に事務所を設け、この地域に対してさまざまな支援を行なっている。そのなかで、旧ユーゴスラビア構成国のセルビア、モンテネグロ、そしてモンテネグロの南に位置するアルバニアに対して、観光振興の支援を実施。観光資源の磨き上げや、海外からの観光客誘致に協力している。

 その一環としてJICAとターキッシュ・エアラインズが協力して実施した、セルビア、モンテネグロ、アルバニアの3カ国を視察するプレス向けツアーに参加し、各国の名勝地を巡ってきたレポートをお届けする。

 ターキッシュ・エアラインズとの協力という点からもお分かりいただけると思うが、この旅では往復ともにイスタンブール・アタチュルク国際空港(Istanbul Ataturk Airport)を経由。往路はセルビアのベオグラード・ニコラ・テスラ国際空港(Belgrade Nikola Tesla Airport)からバルカン半島へ入り、復路はアルバニアのティラナ国際空港(Tirana International Airport)から出るというルートでの移動となった。

 バルカン半島の国々への直行便はなく、さらにセルビア、モンテネグロ、アルバニアの3カ国ともにEU(欧州連合)に加盟しておらず、シェンゲン圏、ユーロ圏にも加わっていない。このことから心理的にも距離感が遠い場所に思ってしまうのだが、ビザに関しては日本国籍(日本のパスポート)の場合は3カ国とも90日間免除なのがありがたい。セルビアへの到着時には飛行機から降りるときに1度パスポートチェックがあったが、その後は入国審査、預け入れ手荷物の受け取り、税関と進む一般的なルート。入国カードや税関申告書の記入も(免税範囲内であれば)必要なかった。内戦の記憶が新しい国なのだが、パスポートを2度見せた以外、特別厳しい印象は受けなかった。

 また、シェンゲン圏に加わっていないので、欧州のシェンゲン圏内空港での乗り継ぎでも、圏外での乗り継ぎでも、入出国の手続きに違いはない。その意味では、世界的にも5本の指に入る充実したネットワークを持ち、特に欧州だけでも100空港以上というネットワークを持つターキッシュ・エアラインズは、バルカン半島の国へ渡航する場合の有力な候補となるだろう。日本とイスタンブールを結ぶターキッシュ・エアラインズの便は現在、成田~イスタンブール線を運航。イスタンブールでの乗り継ぎを考慮したスケジュールとなっているのが特徴だ。

 成田、イスタンブールともに深夜に出発する時間帯での運航となっており、往路となる成田発は21時台で、イスタンブールには早朝に到着することから、ターキッシュ・エアラインズがハブ空港とするイスタンブール以遠の多数のフライトを利用しやすい。復路のイスタンブール発は、深夜2時台の出発なので、乗り継ぎ先で1日観光したり仕事をこなしたりしたあと、夕方から夜の便でイスタンブールへ向かえば、成田行きの便の乗ることができるスケジュールとなっている。

ターキッシュ・エアラインズの日本路線(2017年冬期スケジュール)

TK053便:成田(21時25分)発~イスタンブール(翌04時05分)着、月・水・木・金・土・日曜運航
TK053便:成田(21時40分)発~イスタンブール(翌04時20分)着、火曜運航

TK052便:イスタンブール(02時10分)発~成田(19時50分)着

 イスタンブール・アタチュルク国際空港も乗り継ぎの利便性が高く、乗り継ぎのための保安検査を通過し、ワンフロア上がった先が出発ロビーへつながっており、乗り継ぎ先の搭乗口への動線も分かりやすい。多数の便が発着する空港のわりに、移動はかなりシンプルな印象が残った。

 一方で、イスタンブール・アタチュルク国際空港というと、一時、テロリストによる爆破などがニュースとなったことに不安を覚える人もいると思うが、その対策としてセキュリティも強化されているそうだ。ターミナルビルに入場する際の手荷物検査はもちろん、クルマ1台を丸ごと検査できるX線検査機を導入し、空港の敷地に入る際に危険物の持ち込みをチェックするなど、水際対策を強めている。ただ、この旅では乗り継ぎのみの利用だったので、一般的な乗り継ぎ時の保安検査があるのみで、他国の空港と比べても厳しさは感じなかった。

 記者が体験していないことではあるが、乗り継ぎメインの利用において強いて影響を挙げるとすれば、イスタンブール・アタチュルク国際空港を一時退出する場合だ。特に復路は深夜2時の出発なので、イスタンブールに早めに到着して観光する時間を作りやすい。この場合は、いったん空港の外へ出ることになるので、再入場時にチェックが生じるだろう。

 ちなみに、ターキッシュ・エアラインズでは、乗り継ぎでイスタンブールを訪れた人のために、主要なスポットを短時間で巡れる「ツアーイスタンブール(TOURISTANBUL)」を提供している。どのようなプランを提供しているかは、同サービスのWebサイト(英文)を参照いただきたいが、日中に6~9時間かけてまわる本格的なデイツアーのほか、8時30分~11時、16時~21時といった早朝、夕方~夜だけでまわれるプランがある。特に後者は日本路線の運航スケジュールに合わせやすそうで興味をそそられる。

トルコのイスタンブール・アタチュルク国際空港(Istanbul Ataturk Airport)。乗り継ぎの保安検査場を通過し、フロアを上がれば出発ロビー階
セルビアのベオグラード・ニコラ・テスラ国際空港(Belgrade Nikola Tesla Airport)。
アルバニアのティラナ国際空港(Tirana International Airport)

 その日本とイスタンブールを結ぶ路線には、エアバス A330-300型機を使用している。座席数はビジネス28席、エコノミー261席で、この渡航時はエコノミークラスに搭乗。2-4-2の8アブレストと、同型機としては標準的な配列だ。

 シートピッチは31~33インチ(約79~84cm)と数字上は国際線エコノミークラスとしては一般的だが、実際に座ってみると数字以上に足下に余裕を感じられ、フットレストを備えているのもうれしいところ。12~13時間の長距離路線でも過ごしやすい印象を受けた。

 機内エンタテイメントシステムやUSB充電ポートも全席に装備。メニューは日本語表示に対応し、コンテンツも充実していた。“当たり外れ”といったほどの差はないが、機材によって採用しているシートが異なっており、シートモニターにも差があった。コンテンツは同等だ。

エアバス A330-300型機のエコノミークラス。2-4-2の標準的なレイアウト
足下はわりと広く感じられた。フットレストも付いている
写真左が往路の機材、写真右が復路の機材のシートモニター

 また、エコノミークラスにもアメニティキットが用意されており、往路はインスティチュート カリテ(INSTITUT KARITE)とコラボしたシアバターのリップバーム入りキット、復路はショパール(Chopard)とコラボした同じくリップバーム入りのキットが提供された。

 そのほかの内容物は、アイマスク、耳栓、靴下、スリッパ、歯磨きセットで、エコノミークラスでもこれらを提供してもらえるのは、長時間フライトだけに余計にありがたみを感じる。

エコノミークラスでもアメニティキットが提供される。往路で提供されたインスティチュート カリテ(INSTITUT KARITE)とコラボしたもの
こちらは復路で提供されたショパール(Chopard)とコラボしたアメニティキット

 機内食は、離陸後すぐと、着陸の少し前の2度。イスラム教徒が大多数を占めるトルコの航空会社という事情があり、豚肉を使用していないのが特徴だ。下記の写真は現在提供しているメニューとは異なるものだが、全体に味付けがしっかりしており食べたあとの満腹感の高い食事だった。

 往路2度目の食事もボリュームがあった。1回目から10時間近く空いての食事となるので空腹感はあるが、特に往路はイスタンブール時間でいうと早朝かつ、到着する直前ということや、降機後の空港や乗り継ぎ後の食事などの楽しみもあるので、お腹に余力を残しておくのも一案だと思った。

 なお、今回はエコノミークラスへの搭乗だったのだが、同社はビジネスクラスの食事に力を入れており、英SKYTRAXの「ベスト・ビジネスクラス・オンボード・ケータリング」の常連で、2017年も同賞に選ばれている。乗務員とは別に本物のシェフが搭乗していることで、レストラン感覚で食事の時間を過ごせるのが特徴だという。

往路の機内食。鶏むね肉のグリルをメインとした洋食を選択
復路の機内食。トマトソースのペンネを選択
ドリンクとともに出されたスナックは“トルコ産”のヘーゼルナッツ

 イスタンブール以遠は、セルビア・ベオグラード線がボーイング 737-800型機、アルバニア・ティラナ線はエアバス A319型機と、いずれも単通路機を使用。ボーイング 737-800型機は全席シートモニターが付いていたが、エアバス A319型機は付いていなかった。

 イスタンブールからベオグラード、ティラナからイスタンブールへはそれぞれ下記の便が飛んでいる。往路は午前中のTK1081便でもイスタンブールでの乗り継ぎ時間が少し空くが、午前中には現地に到着できる。逆に復路はティラナを夜出発するTK1078便を利用すれば、約2時間で成田行き便へ乗り継げるスケジュールなので、アルバニアでで丸1日過ごしてから帰国の途に就ける。

ターキッシュ・エアラインズのイスタンブール発~ベオグラード着便(2017年冬期スケジュール)

TK1081便:イスタンブール(08時35分)発~ベオグラード(08時15分)着、毎日運航
TK1083便:イスタンブール(19時45分)発~ベオグラード(19時25分)着、毎日運航

ターキッシュ・エアラインズのティラナ発~イスタンブール着便(2017年冬期スケジュール)

TK1074便:ティラナ(08時40分)発~イスタンブール(12時20分)着、毎日運航
TK1078便:ティラナ(20時35分)発~イスタンブール(翌00時20分)着、毎日運航

 フライトはどちらも1時間40分前後と短いが、れっきとした国際線。コールドミールではあるが、機内食が提供される。往路のTK1081便では午前中にはベオグラードに到着できるので、現地到着後の行動に備えた腹ごしらえができる。

 復路はTK1078便を使用。イスタンブールへ移動する場合は、昼夜逆転の生活でもない限り、現地で1日を過ごしたあととなる。イスタンブールから先、日本には夜に到着することになるが、さすがにまったく寝ないで過ごすのもつらいところ。このティラナからイスタンブールへ向かう便での機内食で適度にお腹を満たした状態で日本行きの便に乗り換え、早い段階で適度な睡眠をとって、日本には夜に到着。その後は自宅でぐっすり寝て時差ボケを防ぐことができた。そのため、個人的にはこの復路のティラナ~イスタンブールの機内食はとてもありがたく思えたのであった。

イスタンブールからベオグラードへ向かうTK1081便に搭乗。全席にシートモニターを備えていた。機内食も提供される
こちらは復路で利用したティラナからイスタンブールへ向かうTK1078便と、その機内食

 さて、イスタンブール・アタチュルク国際空港での乗り継ぎの際、ビジネスクラス搭乗者やスターアライアンスのゴールドメンバーであれば、「CIPラウンジ」を利用できる。先にビジネスクラスの機内食の話をしたが、このラウンジは2014年から4年連続で英SKYTRAXの「ベスト・ビジネスクラス・ラウンジ・ダイニング」を受賞するなど、世界有数の豪華さで知られているラウンジだ。

 約1000人を収容可能な広いラウンジで、中にはゲームコーナーなども設置し、搭乗までの待ち時間を快適に過ごせる。また、目的地のインターネット接続環境は出発前にしっかり検討する人が多いと思うが、乗り継ぎ地のことは見落としがちだし、第三国で追加料金が必要になると利用を諦めるケースも多いと思う。CIPラウンジには無料Wi-Fiインターネットサービスが提供されているのもありがたい点だ。

約1000人を収容可能な広大なラウンジ「CIPラウンジ」。食事やドリンクのラインアップも豊富で、ゲームなどもある。無料Wi-Fiインターネットサービスもあり、さまざまなスタイルで待ち時間を過ごせる

 今回は以上のとおり、ターキッシュ・エアラインズを利用した日本とバルカン半島の移動について紹介した。特にシートの足下の広さやアメニティキットが魅力に感じられ、長距離路線のエコノミークラスとしてかなり優れている印象を受けた。

 さて、次回からは、セルビア、モンテネグロ、アルバニアの順に訪問した各国の観光レポートをお届けしていく。

編集部:多和田新也