荒木麻美のパリ生活

セルビアの首都・ベオグラードで過ごした2週間(その2~日常生活編)

和食材も少しはあり、短期間の滞在に不自由はほぼなし

 ベオグラード滞在コラムの2回目です。ベオグラードに着いて3日目にアパートに移り、12日間という短い間でしたが、ベオグラードで日常生活もどきをしました。ホテル生活では気が付かなかったかもしれないことを中心にご報告したいと思います。

ベオグラードの食材はオーガニック以外ならかなり安い

 アパートのまわりには中型スーパーがたくさんありました。ちょっと離れた大型スーパーにも行きましたが、どこにでもオーガニックコーナーが必ずありました。

スーパーのオーガニックコーナー
オーガニックショップは近所にちらほらありました
スーパーにはアジアの食材も少し置いてあります
オーガニックショップで買ったたまり醤油。ひじきなどもありました

 一般的な食材の値段はパリの半分くらいかなという印象なのですが、オーガニック製品はパリと同じか逆に高いものも。これはオーガニックショップでも同様でした。

 ちょっと気になっていることは、確かにほとんどの食品は安いです。でも日用品や衣類の値段は日本やフランスとさほど変わらないと思ったので、セルビアの平均手取り月収約4万7000円(在セルビア日本国大使館、2017年9月の発表より)でどうやって生活しているのかということです。2017年の失業率も16%(IMF:World Economic Outlook Databasesより)くらいなので無職の人も多いはず。首都であるベオグラートの平均収入は地方より高いと想像できますが、生活はなかなか大変なのではないでしょうか?

 ところでうちでは乳製品を食べ過ぎないようにしているのですが、ベオグラードにはケフィアヨーグルトが豊富! コーカサスから近いからでしょうか? 乳製品でもケフィアヨーグルトならよいので、ときどき食べていました。

ベオグラードでは飲むタイプのヨーグルトが多いのですが、これは食べるタイプでお気に入り。パリで食べるケフィアヨーグルトより味がマイルド

 フランスの自然療法では、水は硬度120mg/L以下の軟水を勧めています(関連記事「飲み水を探して試行錯誤中」)。ベオグラードの水道水は飲めるようですが、中硬水ですし、私はスーパーで軟水「Rosa」を買っていました。

Rosaは(私がセルビア語のラベルを読み間違えていなければ)硬度55mg/Lの軟水です

 近所には市場もあり、地産商品が多いと聞いていたのですが、確かにどれも新鮮で美味しそう! 生鮮食品はここで買うことにしました。市場では英語はあまり通じませんが、好きなものを選べば紙などに値段を書いてくれるので大丈夫。1kg単位でしか売ってくれないお店もありましたが、少量で売ってくれるお店も多いです。

ある日に買ったもの。この日はこれだけ買って700ディナール(約700円、1ディナール=約1円換算)くらいでした
市場で買ったパン。左は甘みのないドーナツみたいでした。右はBrek(ブレク)というカッテージチーズらしきものが入ったキッシュみたいな感じ。どちらも油がすごいです。ブレクにはひき肉入りのものなどもあるのですが、セルビア人が歩きながらこのブレクを食べている姿をよく見かけました

レストランよりやっぱり自炊という結論に

 普段はパリでも魚介類メインの和食もどきを食べることが多い私。ベオグラードでも肉料理が中心のセルビア料理には食指がまったく動かず。結局2週間で2回しかセルビア料理を食べませんでしたが、セルビア料理以外のレストランも合わせてご紹介します。なお、ベオグラートでは飲食店内の喫煙が許されているので、タバコの煙が苦手な人にはなかなかしんどいです。

Le Molière

所在地:Zmaj Jovina 11
TEL:+381(0)11 2188161

 アパート近くでセルビア料理を食べてみようと適当に入ったレストランです。某レストラン評価サイトで評価の高いレストランだとあとで分かったのですが、私には「うーん」でした。頼んだのは「Leskovačka mućkalica」という豚肉の煮込み料理にサラダ。豚肉の煮込み料理は味の薄いラタトゥイユに豚肉を入れたような料理で、まずくはないけどまたぜひ食べたいというものではなく、サラダも若干しなびていて残念な感じ。

Amphora

所在地:Bulevar Nikole Tesle bb
TEL:+381(0)63 370157
Webサイト:Amphora(セルビア語)

 せっかくだからもう1度くらいはセルビア料理を食べようと思い、でも今度は魚料理も充実しているレストランに行きました。

 前菜に頼んだのは牛のスープだったのですが、ただのお湯に茹で過ぎたパスタを入れた感じのもので、もはや美味しいかどうか以前の味。メインの魚に私はパイクパーチで夫はシーバスを頼んだのですが、出てきた皿の見た目はほぼ同じ。どちらもスズキ目の魚とはいえ、ここまで同じにするとは! 味付けは塩を振っただけと思われ、まずくはないという程度。デザートは期待できそうもないので食べずに帰りました。ここも某レストラン評価サイトでかなりの高評価なのですが、Le Molièreに続き、ついていませんね。

 ところでレストランの中に入ったときに何となく変な雰囲気が……。きちんとした服装の男性中心の団体でほぼ満席なのです。団体以外の客は私と夫のみ。それでもご飯を食べていると、突然全員が起立をし、奥にいる聖職者らしき人の先導に従って聖歌を歌い出しました。さらに祈りが続き、従業員まで胸の前で十字を描いています。大変な静けさのなか、私たちは完全放置で、音を立てないようにとにかく静かに食べました。神聖な儀式なのだろうとは思いつつも、自分たちのあまりの場違い感に、もう笑いをこらえるのに必死!

 帰り際に従業員にこれは一体何ごとかと尋ねると、「Slava(スラヴァ)」という、各家庭が持つ守護聖人を祝うセルビア正教会の宗教行事なのだと教えてくれました。このスラヴァが多いのは11月から1月。普通は家庭で祝うものだそうですが、この日はレストランだったというわけです。それにしてもこれだけの団体を受け入れるのに、なぜ貸し切りにしないのか、また入店時に一言教えてくれないのかがとても不思議でした。

Comunale

所在地:Karađorđeva 2
TEL:+381(0)11 3037337
Webサイト:Comunale(英語)

 イタリア料理はどこで食べても大きく外れることはないです。ここもピザはちゃんと窯で焼いており、薄めの生地がほどよく焼けていて美味しかったです。サラダもパリパリで新鮮。サヴァ川岸に並んだおしゃれなレストランの一つで、シックな服装でばっちりメイクをしたきれいな女性が多かったです。

Jazz Bašta

所在地:Male stepenice 1
TEL:+381(0)62 8711475
Webサイト:Jazz Bašta(英語)

 無料ツアーのガイドさんが教えてくれたジャズレストランです。健康によさそうな食べ物を出すレストランを聞いたらここを教えてくれました。私が行った土曜日は「Green Day」といって、ヘルシーメニューの日ですが、普通のメニューもあります。ランチをやっているのは土・日曜のみ。ジャズの生演奏は夜なので、ジャズ好きの人は夜にぜひ。

 たくさん食べる人は前菜を頼んだ方がよいと思いますが、私にはメインだけで十分でした。私が食べたのはサーモンのディップに全粒粉のクラッカー添え、チアシードのプディング、抹茶ソイラテ。食材は100%オーガニックではないけれど、食材の品質には自信があるそうです。牛乳を豆乳にもできますし、グルテンフリーではないけど、穀物は全粒粉にするといった配慮もしています。

サーモンのディップにはいろいろなハーブが入っていて美味。プディングは甘みが少しで私好みでした
こちらがGreen Dayのメニュー。スムージーの種類も豊富
Geen Dayじゃない日の料理はどうなのだろうと、日曜日にデザートだけを食べに行ってみました。食べたのはセルビア風クレープとのことでしたが、普通のクレープにハチミツをかけたものでした。まずくはないけど、私にはGreen Dayのメニューがよさそうです

 Jazz BaštaとCommunaleのあるあたりも含め、この辺一帯はサヴァマラ(Savamala)という地区になります。レストランやカフェのほか、バーやクラブなど、この地区のナイトライフはかなり充実している様子。夜遊びの好きな方はぜひどうぞ。

W-Sushi

所在地:Vuka Karadžića 12
TEL:+381(0)11 3282920
Webサイト:W-Sushi

 ベオグラードには和食レストランが何軒かあるのですが、「セルビアン・ウォーカー」が勧めていたW-Sushiへ。お勧めの本店(所在地はAndre Nikolića 2a)はちょっと遠かったので、2号店に行きました。

 外国人オーナーらしい内装です。三船敏郎が出ている昔の日本映画が無声で上映されるなか、古めのロックが流れていました。刺身の盛り合わせとタコなどの入った巻き寿司みたいなものを注文。お米が硬いとかマヨネーズをたっぷりかけちゃうとかにも「海外で食べる寿司はこんなもんよね」と自分に言い聞かせながら食べましたが、お勧めどおり、本店に行かなかったことを激しく後悔。ちなみに3号店も開店間近らしいので、繁盛はしているようです。

 私の見た限り、ベオグラードのスイーツはあまり美味しくなさそうでした。共和国広場にあるコーヒーショップのスイーツは見た目がまぁまぁだったのでトライしたのですが、ただ甘いだけで口当たりもわるく、やっぱり美味しくなかったです。

見た目はわるくないのですが……

 セルビア料理には辛口になってしまった私ですが、セルビア料理によく出てくるらしいパプリカは大好き。パプリカのお惣菜だけはよく買ってきて食べていました。

グリルしただけと思われるパプリカ(大好物!)と、自分へのお土産用に買ったパプリカのペーストの瓶詰

公共交通機関を乗りこなせたら立派なベルグラードっ子?

公共交通機関

 ベオグラードはゾーンで分かれており、ほとんどの観光スポットはゾーン1と2で済んでしまいます。私は徒歩か、公共交通機関を利用していました。

 ベオグラードに地下鉄はありません。フランスの援助のもと、建設計画はあるようですがまだ着工もしていないようです。現在の公共交通機関は主にバス、トロリーバス、トラムとなり、同じチケットで乗車できます。

写真左からバス、トロリーバス、トラム

 チケットは1日(290ディナール、約290円)、3日(740ディナール、約740円)、5日(1040ディナール、約1040円)の乗り放題チケットを買うか、仲間とチケットをシェアすることもできるチャージ式カード(250ディナール=約250円のカードを買い、ここに1回90分間乗り放題となる89ディナール=約89円をチャージして使う)を買うか、目的に合わせて使い分けるとよいと思います。これらのチケットは主にキオスクで買います。1回券も車内で運転手から買えますが割高で150ディナール(約150円)です。

私が買っていたのは1日券
扱っていないキオスクもあったので注意

 ところで私はバスの路線図を観光案内所でもらいましたが、こんな大ざっぱな路線図、私にはなんの役にも立ちません!

バスの路線図

 役に立たないと思いますが、この路線図はダウンロードもできます。

 というわけで、私はもっと詳細なマップを探してダウンロードし、念のためルート案内を見てから外出していました。

ベオグラード公共交通マップ

ベオグラード公共交通マップ(英語)

ベオグラード乗り換え案内

ベオグラード乗り換え案内(英語)

 バス停にはあと何分で来るといった表示がないのですが、皆さんどうやら携帯かスマホで確認している様子。私は急いでいないのでぽけーっと待っていましたが、公共交通機関は渋滞に巻き込まれることも結構あり、急ぐ人はイライラしちゃうかもしれませんね。

バス停でバスを待つ多くの人びと

 無事車内に乗り込んだら、チケットを読み取り機械にかざします。問題は降りるとき。降りる停留所を事前に確認してはいたものの、車内アナウンスは聞き取れないし、不安なので「〇〇に着いたら教えてください」とまわりの人に毎回お願いしていました。

これがチケットをかざす機械

動物愛護

 いろいろなところでエサをあげる猫おばさん、猫おじさんを見かけました。ほぼ毎日野良猫に会えてうれしかったです。どの子もほどよい体型で、病気持ちっぽい子をほとんど見かけませんでした。ベオグラートでは野良犬を保護すると、去勢、ワクチン接種などをしてからまた街に戻すため、殺処分はゼロだと「セルビアン・ウォーカー」に書いてありましたが、猫はどうなんでしょう?

市場に行く途中にあって私が「猫ハウス」と勝手に名付けた場所。買い物の行き帰りに猫たちを見に行っていました
野良猫に比べると野良犬はあまり見ませんでした

郵便

 フランスと日本に送るものがあったので訪れたベオグラードの郵便局。私の行った共和国広場近くの郵便局は、局員の愛想がわるかったです。数カ所の窓口をたらい回しにもされましたが、パリの郵便局で鍛えられている私にはこれくらいは許容範囲です。

「nowta」かと思ったら、これはセルビア語で「пошта」、ラテン文字表記だと「pošta」となるようです

セルビア人に対する印象とゴミ出し

 恐ろしいほど方向音痴の私。ベオグラードでもよく迷子になっていました。そのたびに現地の人に道を聞いていたのですが、ほとんどの人が英語を分かってくれたので助かりました。お店で迷っているときなども助けてくれる人が多く、バスで降りるところも嫌な顔一つしないで教えてくれ、親切な人が多い印象。正直にこやかな人は多くないのですが(特に男性)、気になりませんでした。

 そんななか、1人だけ「ん?」となった女性がいたのですが、それは借りていたアパートの階下の人。ホステルになっていたので、英語が通じるだろうと訪ね、出てきたのがこのホステルのオーナーでした。ゴミの出し方が分からなかったので聞きに行ったのですが、「アパートのオーナーに聞きなさいよ。私はアパートの管理人じゃないのよ」ときつく言われてちょっと驚きました。あとで分かったのがこの女性、フランス人でした。まぁ納得です。

 結局ゴミはアパートに集積場がなく、道路にあるゴミ箱に分別なしで捨てればよいようでした。瓶のゴミ箱はときどき見かけましたけど、ベオグラートのリサイクルはあまり進んでいないのでしょうか?

 道を聞いた人のなかに「私たちはシリア難民なので、ここのことはよく分からないの」という人たちもいました。ベオグラートの地理が分からないということは、ベオグラートに来てまだ日が浅いのでしょうか? きれいな身なりだったので、フランスにもありますが、セルビアにも難民支援があるのだとは思いますが……。

荒木麻美

東京での出版社勤務などを経て、2003年よりパリ在住。2011年にNaturopathie(自然療法)の専門学校に入学、2015年に卒業。パリでNaturopathe(自然療法士)として働いています。Webサイトはhttp://mami.naturo.free.fr/