荒木麻美のパリ生活

セルビアの首都・ベオグラードで過ごした2週間(その3~自然療法編)

セルビア語の壁に阻まれながらも薬草専門薬局と「ホリスティック」マッサージへ

 観光編、日常生活編に続き、私の本業である自然療法目線からのベオグラードレポートです。

薬草専門薬局に行く

 私にとって旅先での一番楽しみは、現地の代替療法について知ることです。

セルビアン・ウォーカー」にDr Josif Pančićというハーブ薬局があるとあったので、ここはベオグラードに着く前から絶対に行こうと思っていました。

Dr Josif Pančić

所在地:Tadeuša Košćuška 1
TEL:+381(0)11 2182112
Webサイト:Dr Josif Pančić(セルビア語)

 ここでは薬草を使ったオリジナルの商品のみを扱っているようです。「え? ここ?」と思うような店構えなのですが、階段を下りるにつれ、私には馴染みのあるすてきな香りがしてきてちょっとウキウキ。

 店内に入ると小さなスペースにお客さんが並んで待っており、その後もひっきりなしに来ていました。私も列に並び、なにが書いてあるのかさっぱり分からないセルビア語で書かれたパッケージたちを見つめながら、「うーん、なにを買おうかなー」と考えていたところ、70歳前後と思われる老婦人に話しかけられました。その方いわく「ここの商品はとてもいいわよ! 最近ではここの精油を使ったら、前歯の歯肉炎がすっかりよくなったの」とのことで、期待がふくらみます。

 私の順番が来たので

「肩の腱炎によい商品はありますか? あとはお勧めのハーブティーをいくつかと、この薬局でよく売れている商品をなんでもよいので一つください」。

と言ったところ出されたのが以下の商品です。

 まずはヒレハリソウのジェル「Gavez gel」で416ディナール(約416円、1ディナール=約1円換算)。ヒレハリソウは炎症にとても効果的な薬草です。弓道(関連記事「パリで弓道! 公共の弓道場も完成してますます盛んに」)が原因で腱炎になり、医者に通いながら自然療法的アプローチもいろいろ試しているところなのですが、このジェルも1日数回、せっせと右肩に塗っています。

 お勧めのハーブティーは、薬局オリジナルの、症状別にブレンドされたものがほしかったのですが、単体の商品のみを3種類出されました。

「Čaj od lista koprive(ネトル)」(124ディナール、約124円)
アレルギー、むくみ、関節炎など、さまざまな症状に有効

「Čaj od lista matičnjaka(レモンバーム)」(131ディナール、約131円)
一番期待されるのはストレスに対する効果

「Čaj od vrijeska(ウィンターセイボリー)」(149ディナール、約149円)
消化を助け、抗菌作用が高い

 ベストセラー商品の一つだというのがセントジョンズワートのハーブチンキ「Ulje od kantariona za unutrašnju upotrebu」(182ディナール、約182円)。チンキは水やハーブティーに数滴たらして飲むとイライラに効果的。切り傷に塗るのもよいです。

 どの商品もとにかくお手頃価格。薬局のオリジナル商品でオーガニック認定をされていないとはいえ、フランスで買う1/3くらいの価格だと思います。これなら医者にかかるほどでもないなぁというときなどに気軽に試せますよね。

「ホリスティックサロン」に行ってみる

 これまでに受けたことのない代替療法をベオグラードで受けてみたいなと思い、映画の現地スタッフに聞いたところ「ホテルのマッサージでいいんじゃない?」とのこと。でもホテルのマッサージは違うかなぁと、自力でネットをさまようことに。

 結果、なんとなくよさそうな感じだけどセルビア語オンリーのサイトは断念。英語のページのあるサイトのなかでは、医者のクリニックにたどり着くことが多かったのですが、クリニックで医者といろいろ話し合う自信のない私は、さらにさまようことに。最終的に「ホリスティックサロン」とうたったWebサイトにたどり着きました。

「ホリスティック」とうたっているところは、私の思うホリスティックとは違うことも多いのですが、ここは施術者が2人だけなので責任をもってやってくれそうなことと、この2人がレイキやバッチフラワーの心得があるというのも、私にはなじみ深い感じ。「探していた施術とはちょっと違うけれど、ここを試してみよう」と決めました。

Holistički salon Detelina

所在地:Gracanicka 9
TEL:+381(0)64 142 8558 、+381(0)63 856 1316
Webサイト:Holistički salon Detelina(英語)

 施術の内容はいろいろあったのですが、電話でなにを求めているのかを話しつつ相談したところ、私の状態には「Global Massage」がよいのではとのこと。「やっぱりマッサージかぁ」と思いつつも、これまで受けたマッサージとは違うなにかがあるかも! と期待して予約を入れました。

 予約を取った日時にサロンに行くと笑顔で迎えてくれたオーナーのアナさん。彼女にとって日本人客は私が初めてだそう。サロン自体は2年前にオープンし、事業拡大に伴い2カ月前に今の場所に移ってきたのだとか。サロンでは生徒さんを集めて講習会もやっているそうです。

オーナーのアナさんです
待合室にある雑誌の1つ「sensa」はセルビアで発行されているホリスティックマガジン。アナさんも誌面で紹介されたことがあるそうです

 施術は着替えの時間も含めてきっちり90分。ラベンダー系のオイルを使ったリラックス効果の高いマッサージです。途中でチャクラを確認し、レイキを使っているなと思うときもあったのが普通のマッサージとはちょっと違う感じ。

 マッサージ中は頭の中でいろいろなことを確認していたので、マッサージ中に寝ることはありませんでしたが、アナさんの大きくて暖かい手のひらに包まれて、十分に心地よいマッサージでした。マッサージ後、アナさんが言うには私の右側に身体的・エネルギーの凝り・偏りを感じたので、それをほぐし、もとに戻すように努めたとのこと。完治はしないだろうけど、しばらくは調子がよくなるはずとのことでしたが、実際確かに数日間は肩がかなり軽かったです。

 さらに私がほしければ私から感じた状態・エネルギーをもとに精油などを配合したクリームをすぐに作るからどうかと聞かれました。これが3000ディナール(約3000円)と、マッサージの2700ディナール(約2700円)より高いので一瞬迷いましたが、こういったことは値段があってないようなところがあり、私の趣味なので、試してみることにしました。

出来上がったクリームは結構な量があり、使い出があります。クリームはいらなければ断ってもちろんOK

 なお、アナさんにセルビア産でお勧めの精油とオイルはと聞いたところ、精油は「Bioss」、オイルは「Eterra」というマークだそうです。オンラインまたはオーガニックのお店などで買える模様。

 ついでにDr Josif Pančićで買ったジェルをアナさんに見せたところ、「それ最高! 私の娘も自転車の事故で痛めた部分にそのジェルと私の配合したクリームを塗っているの。あなたもぜひ一緒に合わせて使ってみてね。肩だけじゃなくて、肩甲骨から手首まで塗らないとだめよ」とのことなので、これまたせっせと塗っているところです。

 セルビア語が分かればもっと深くセルビアの伝統療法や代替療法について調べられただろうと思うと、とても残念です。また、セルビア国立観光協会のWebサイトによると「セルビアには1000カ所を超える冷泉、温泉、鉱泉があり、温泉療法に使われているところも多い」とあります。興味津々なのですが、ベオグラート周辺には温泉施設がなさそうなので、これも諦めざるを得ませんでした。

ベオグラードで2週間を過ごしてみて

 セルビアに行く前は「チトーって誰よ?」と言って夫を呆れさせた無知な私ですが、今回セルビアに行く機会を得て、ユーゴスラビア情勢、特にユーゴスラビア紛争について表面的ではありますが、多少は知るよい機会になりました。コラムには書きませんでしたが、ユーゴスラビア博物館に行き、チトー元大統領と夫人の霊廟やNATOの空爆跡も見に行きました。

国会議事堂の前にはNATOの空爆で亡くなった人たちの写真が「犠牲者の家族より」という文字とともに並んでいます

 日本とセルビアの友好関係は歴史があり、明治天皇とセルビア王家との交流にまで遡ることも今回初めて知りました。その後セルビアが特に大変だった1990年代から現在に至るまで、日本はさまざまな形で援助を続けているのですが、世界各国が援助をしているなか、日本の場合はバスや医療機材の提供、学校の修復など、目につきやすいところの援助が多いので、日本の支援はセルビア国民の印象に残りやすいように感じました。

日本の国旗とセルビア・モンテネグロ(当時)の国旗を組み合わせたマークの書かれたバス。2002年に約90台が日本から提供されました。15年が経って少々くたびれたとはいえ、今でも現役で街中を走っています

 そういった歴史的経緯もあり、2011年の東日本大震災の際には、セルビアから一時はヨーロッパ内トップになるほどの義援金が送られたのでしょうね。このこともお恥ずかしい話ですが今回初めて知りました。ありがたいことです。

 以上、ベオグラードには観光資源が少ないという話も聞いていましたが、私は2週間の滞在中に退屈することはまったくありませんでした。ベオグラードは治安もよいと思います。日本にいるときよりは注意していましたが、パリにいるときよりは警戒指数をかなり下げて過ごしていました。旧市街地の主要な観光地は、急ぎ足にはなりますが1日あれば見られます。東欧に来ることがあれば、少しの時間でも寄ってみてはいかがですか?

ライトアップされた夜のベオグラード
クリスマスイルミネーションが街のあちこちで始まっていました
ロシアの風景ということで今回の撮影に使われたエリアの一つ

荒木麻美

東京での出版社勤務などを経て、2003年よりパリ在住。2011年にNaturopathie(自然療法)の専門学校に入学、2015年に卒業。パリでNaturopathe(自然療法士)として働いています。Webサイトはhttp://mami.naturo.free.fr/