旅レポ
「熊野古道」に追加認定された世界遺産をめぐる旅(その3)
湯の峰温泉から赤木越をハイキング、熊野牛のドライカレーに舌鼓
2017年2月20日 00:00
2016年10月に開催された第40回ユネスコ世界遺産委員会で、熊野参詣道中辺路(なかへじ)・大辺路(おおへじ)、高野山参詣道の計22カ所が世界遺産に登録された。これは、2004年に世界遺産に登録された「紀伊山地の霊場と参詣道」に追加したものとなる。
和歌山県田辺市では、新たに世界遺産入りした5カ所を巡るプレスツアーを実施、前回までに「鬪雞神社」「北郡越」を紹介したが、その3では、熊野古道の「赤木越」を歩く。
赤木越
夜明けと同時に温泉を掘ったあとは、ツアー2日目の行程となる。熊野古道中辺路の「赤木越」を実際に歩く。最初に向かったのが、熊野本宮大社からも近い「赤木越(あかぎごえ)」だ。
熊野本宮大社まで直線距離で約5km。かつて熊野本宮大社の神域の入口とされた発心門王子付近の船玉神社より分岐し、湯の峰温泉に至る尾根に沿った道が「赤木越」だ。古代や中世の頃は、発心門王子より谷沿いの道をとおって熊野本宮大社へ至る道(本街道)が一般的で、尾根伝いの赤木越はあまり使われなかったという。しかし近世になり、湯垢離を行なってから参拝することが一般的になり、そのため、裏街道である赤木越をとおって湯の峰温泉を目指し、そののちに熊野本宮大社を目指す人々が増えたそうだ。
今回はその逆のルート、湯の峰温泉側から船玉神社まで歩いた。湯の峰温泉、船玉神社どちらを出発点とした場合でも、最初に登りが20~30分ほど続き、そのあとはなだらかな尾根道になり、最後に下るという道のりは変わらない。道の周囲は、植林された杉木立など現代の景色となっているところもあるが、アカマツやカシなどの雑木林も多く残されており、往年の熊野古道の雰囲気をとどめているところも多い。
また、尾根伝いのため眺望がよいところも多く、歩行距離5.9km(ゆっくり歩いて3時間程度)とハイキングにうってつけだ。沿道には9世紀前半に高野山で真言宗を開宗した弘法大師(空海)や、13世紀に熊野で時宗を開宗した一遍上人にまつわる地蔵や祠などがあり、この道の歴史の古さを物語っている。
船玉神社までの赤木越を歩き、タクシーでいったん熊野本宮大社がある本宮町本宮へ。ここで昼食となった。本宮には数軒のおしゃれなカフェがあるが、今回食事をいただいたのは「ガラス屋・茶房 靖」。熊野本宮館から約200mと至近の距離にある。
ガラス屋・茶房「靖」
熊野本宮館の駐車場でタクシーを降り、国道168号を南に歩くと、すぐに近代的な蔵といったたたずまいの建物、ガラス屋・茶房「靖」が見えてくる。
店名からも分かるように、ガラス工藝品と軽食、ドリンクを楽しめる店だ。店内に入ってすぐのテーブルには小さなガラス工藝品がずらりと並んでいた。ご主人の木下穣二さんはガラス工藝家で、店内でガラス器を販売しているほか、「熊野本宮ガラス」の吹きガラス体験(2500円、所要時間約20分・要予約)もできるとのこと。
食事は、熊野牛ミンチを100%使用したドライカレー(サラダ付)とケーキセット(ドリンク付)。野菜や果物なども、なるべく地元の食材を使っているとのことなので、それならばとドリンクは梅スカッシュを注文した。
ドライカレーを撮るのに夢中でつい失念していたのだが、窓からは熊野本宮大社の旧社地である大斎原の大鳥居が見えていた。プレスツアーではあとの行程があったのでゆっくりする時間はなかったが、田んぼのなかにポツンと建つ大鳥居や一つ一つ形の違うガラス細工を眺めながら、のんびりとした時間を過ごすのもよいだろう。
さて、次回は最終回、熊野古道「長尾坂」「潮見峠越」の情報を紹介する。