旅レポ

夏の高原リゾートのように快適な環境で過ごせるタイ・チェンライへの旅(その2)

伝統が培ってきた魅力から前衛的な魅力まで、市内の寺院とアートを一気に楽しむ

チェンライのワット・プラシン

 かつてタイ北部を統治していたランナー王朝の最初の都があった古都チェンライは、ワット・プラ・ケオをはじめとする歴史ある寺院が数多く存在し、2つの国と接したこの街ならではの歴史も相まって、タイという国の歴史を感じながらの寺院巡りはとても楽しいものだ。

 その一方で、新進気鋭の芸術家がライフワークとして建てた前衛的な純白の寺院など、ほかの地域では見られない新しく斬新なものが共存しているもこの街の大きな特徴で、そんなバリエーション豊かな寺院を拝観しながらこの街を巡るのもチェンライならではの楽しみだ。

古都チェンライの由緒あるワット・プラシン(Wat Phra Sing)

ワット・プラシン

 前回お届けしたチェンライを象徴する寺院ワット・プラ・ケオは、首都バンコクにあるタイで最も美しくきらびやかだと名高い寺院と同じ名前だ。同じように今回紹介するワット・プラシンも、お隣の町チェンマイで最も大きく格式も高いとされる有名な寺院と同名。バンコクのワット・プラ・ケオの宝、エメラルド仏は元々チェンライの同名寺院に安置されていたものだが、同じようにチェンマイのワット・プラシンのプラシン仏像もここチェンライから移されたもの。タイのなかでも名高い2つの寺院の宝のルーツがどちらもチェンライであることは、この街がいかにタイの歴史のなかでも古く、かつ重要であったかを物語っているようだ。

 ちなみにチェンライのワット・プラ・ケオとワット・プラシンは400m程の距離しかなく歩いてもわずか数分程度と近いのでセットで楽しむのがお勧めだ。

Wat Phra Sing

所在地:Wiang, Mueang Chiang Rai District, Chiang Rai 57000, Thailand
入場料:無料

ワット・プラシンは北部タイの伝統的な様式の外観。金色に飾られた正面はきらびやかで、屋根はタイの各地で見られる寺院と同様赤茶色に金色があしらわれている
仏像はその時代によって頭頂部や衣服の形状が異なるとのことだ
細部の造形も興味深い
ワット・プラシンのお賽銭はこのようなスタイル
境内ではロウソクが売られていた

圧倒的な異彩を放つ白亜の寺院、ワット・ロンクン(Wat Rong Khun)

斬新なデザインのワット・ロンクン

 街中に多くの寺院が点在する古都チェンライにおいて、ひときわ異彩を放っている寺院がワット・ロンクンだ。チェンライ出身のアーティスト、チャルムチャイ・コーシピバット氏がデザインした白亜の寺院。乾季の抜けるような青空の下、青と白のコントラストが非常に爽やかだが、そばに寄ってみるとその趣は大きく異なる。地獄をモチーフとしたようなデザインやオブジェが敷地のあちらこちらに見られ、この街のほかの寺院とは相容れないような奇抜なデザインはどちらかといえばテーマパークに近い感じ。

 20世紀後半に建てられた新しい寺院で、現状でもまだ未完成とのことだが、敷地内にはアートギャラリーもあり、見どころも多いのでチェンライ観光においては外すことのできないお勧めスポットだ。なお、このワット・ロンクンは市街地から約14kmと少々離れているが敷地内にお土産物やカフェ、周辺にも飲食店があるので、前衛的な白亜の寺院を眺めながらここらでゆっくり過ごすのもよいだろう。

Wat Rong Khun - White Temple

所在地:San Sai, Mueang Chiang Rai District, Chiang Rai 57000, Thailand
入場料:無料※本堂への入館は50バーツ(約160円、1バーツ=3.2円換算)

別名ホワイトテンプルと呼ばれるワット・ロンクンはすべてが真っ白だ
地獄をモチーフとした寺院の雰囲気は独特
通路の両脇から無数の手が伸びる光景がおどろおどろしい
異様な表情の顔がぶら下がっていた
ベンチに佇む何やら特撮ヒーローっぽいオブジェ
通路の屋根から吊るされた無数の金属片は菩提樹の葉をモチーフにしてるとのこと
トイレだけは派手な黄金の間
人気観光スポットらしく朝から大勢の観光客が来場していた
中央の白い建物が入場券売り場
本堂への入場料は50バーツ(約160円)
敷地内にはカフェがあり、コーヒーやカフェオレ、地元のチャイなどが楽しめるので休憩がてらに寄ってみるのもよいだろう
観光地だけに周辺にも飲食店がある。写真はタイの多くの地域で食べられるカオマンガイ
揚げた麺をカレースープで食べるカオソーイはタイ北部ならではの名物料理

白の次は鮮やかな青色のブルーテンプル(Wat Rong Suea Ten)

ブルーテンプル

 ホワイトテンプル=ワット・ロンクンを建設したアーティスト、チャルムチャイ・コーシピパッドの弟子が作った鮮やかな青色の寺院がブルーテンプル(Wat Rong Suea Ten)だ。こちらはさらに新しく21世紀に入ってから建てられたもので、その外観は屋根こそオーソドックスな赤茶色×金の組み合わせだが、その名のとおり壁面はすべて青く、こちらも金があしらわれて非常に華やかだ。誰でも自由に立ち入れるその内観も青一色で統一されていて美しく、師匠が産み出した白い寺院と、弟子の青い寺院をセットで楽しむのもお勧めだ。

 また、このブルーテンプルはチェンライの空港から市街地に向かう途中にあり、市街地から3kmほどにあるので旅程にも組み込みやすいだろう。

Wat Rong Suea Ten

所在地:Rim Kok, Mueang Chiang Rai District, Chiang Rai 57100, Thailand
入場料:無料

ほかの寺院には見られない青い壁や土台が鮮やかだ
21世紀に入ってから建てられた新しい寺院なので古都チェンライにありながらどこを見ても歴史の重みより華やかな雰囲気が漂う

寺院風の黒い家は東南アジア美術界の巨匠タワン・ダッチャニーの美術館

チェンライが生んだ巨匠タワン・ダッチャニーの美術館、バーン・ダム ミュージアム

 チェンライの市街地から北へ12km、チェンライ空港のわずか北にある黒い寺院風の美術館がある。タイ語で黒い家を意味するバーン・ダム ミュージアムだ。チェンライ出身の世界的アーティスト、タワン・ダッチャニー氏の作品を集めたこのミュージアムは、広い敷地内に40もの建物が点在し、その多くの外観が黒いのも特徴だ。その作風は独創的で、グロテスクな作品も多く好みが分かれるところだが、チェンライが生んだ巨匠の作品群の存在感は圧巻だ。

Baan Dam - Black House Museum

所在地:Nang Lae, Mueang Chiang Rai District, Chiang Rai 57100, Thailand
開館時間:9時~17時(昼休みあり)
入場料:80バーツ(約260円)

敷地内にある建物のほとんどが黒い外観を持つ
メインホールの内部。見学時には民族舞踊が披露されていた
動物の皮や骨を使ったグロテスクな展示も多い
広い敷地を散策するように見学する
例外的に白い建築物とその内部
近隣にはお土産物屋が並んでいる

古い歴史を持つチェンライは多くのアーティストを輩出する芸術の街

 チェンライはその歴史に彩られた伝統的な寺院が数多くある街だが、チャルムチャイ・コーシピバット氏がデザインしたワット・ロンクン(ホワイトテンプル)、その弟子のデザインによるブルーテンプル、世界的なアーティストであるタワン・ダッチャニー氏のバーン・ダム ミュージアム(ブラック ハウス・ミュージアム)など、この街出身のアーティストが産み出した新しい風景も意外なほど多い。ちなみにチェンライ市内のランドマーク的存在である時計塔もチャルムチャイ・コーシピバット氏の手によるものだ。

 バーン・ダム ミュージアムからブルーテンプルへ向かうちょうど中間あたりには、アートブリッジ・チェンライというレストラン併設のアートスペースもあり、地元チェンライの作家の作品なども展示している。空港に近く、レストランも本格的なのでフライトまでの時間調整がてらにチェンライらしい食事をとり、ショップで一味変わったお土産物を物色するのも楽しそうだ。

赤を基調とした伝統的な色遣いのワット・プラ・ケオ
ワット・プラシンも赤を基調としている
白いワット・ロンクン
ブルーテンプル
黒いバーン・ダム ミュージアム
空港そばのアートスペース、アートブリッジ・チェンライ
アートブリッジ・チェンライ内観
アートブリッジ・チェンライのミュージアムショップ
チャルムチャイ・コーシピバット氏の手によるチェンライ市内のランドマーク的存在の時計塔

高橋 学

1966年 北海道生まれ。仕事柄、国内外へ出かける機会が多く、滞在先では空いた時間に街を散歩するのが楽しみ。国内の温泉地から東南アジアの山岳地帯やジャングルまで様々なフィールドで目にした感動をお届けしたいと思っています。