旅レポ
おしゃれ新スポット、伝統のワザ、そして歴史遺跡まで。「新しい沖縄」と「古い沖縄」を巡る1日
2017年2月10日 00:00
日本屈指のリゾート地であること以上に、独自に築き上げてきた文化が多くの人を魅了する沖縄。南国らしい極彩色を思わせる景色や品々が目を楽しませてくれる一方で、琉球王朝時代の雰囲気を色濃く残す歴史ある風景もそこかしこに見受けられる。現在は、那覇などで都市化も進むが、古いものは古いまま維持され、それとは別に沖縄の新しい“顔”となるようなスポットも生まれるなど、急激ではないものの常に変化し続けている地域だ。
とりわけ那覇を含む沖縄本島の南側は、そんな新しい沖縄と古い沖縄、両方をコンパクトに巡ることができる場所となっている。地中海を思わせる新スポットに、伝統を継承するものづくりの拠点、琉球王国の象徴とも言える首里城など、1日あればじっくり見て回れる。前回までにリニューアルした「シェラトン沖縄サンマリーナリゾート」や「PANZA Okinawa」を紹介したが、ここで、あらためて沖縄の観光の要所を紹介したいと思う。
地中海の街並みを思わせる“白い”新スポット「瀬長島ウミカジテラス」
那覇空港からクルマでわずか10分、無料シャトルバスも出ている離島「瀬長島」に、2015年8月1日に開業したのが「瀬長島ウミカジテラス」。海岸線の距離がたったの約1.8kmという小さな島の東側で、真っ白な階段状の建物が斜面を覆っているのがそれだ。東シナ海の透き通った海を臨むそのたたずまいは、見た目には地中海沿岸の街並みを再現したようでもある。
斜面に作られている建物とはいえ、上り下りするための階段は意外に緩やかで段数が少ない。ここに33の飲食店、宝飾品店、土産物店などが階層状に軒を連ねるが、通路は広めで休憩場所となるテラス席もあちこちにあり、気軽に散歩や休憩ができる。のんびりウィンドウショッピングしたり、お店の前でスイーツをほおばったりと、優雅なひとときを過ごせるだろう。
瀬長島ウミカジテラスで休んでいると、南の方から飛行機が低空でアプローチしてくるのが頻繁に見える。実はこのウミカジテラスの反対側、島の北西すぐのところに那覇空港があり、南から着陸しようとする旅客機、自衛隊機がひっきりなしに島を横切っていくのだ。瀬長島と沖縄本島とを結ぶ海上道路の真上が航路なので、飛行機の迫力ある大きな腹とエンジン音を間近で感じられる絶好の鑑賞ポイントともなっている。
瀬長島ウミカジテラス
入場料金:無料
営業時間:10時~21時(年中無休。ただし店舗により異なる)
Webサイト:瀬長島ウミカジテラス
巨大登り窯に圧倒される伝統工芸の工房群「やちむんの里」
那覇市内からクルマで1時間のところに位置する読谷村(よみたんそん)は、日本で一番人口の多い村として知られている(2016年12月末現在4万1394人)。都市圏への交通アクセスがよいためか移住者が多いとされているのも人口が増えている理由だそうだが、それでも村ということもあり、のどかな田園風景の広がる静かな場所だ。
そんな読谷村の産業の一角を担っているのが、伝統的な窯業による「読谷山焼」。器や置物などの焼き物の制作を手がける工房は村全体で60以上あり、なかでも「やちむんの里」(焼き物の里)はそのうち19の工房が集まって、伝統工芸作家の一大集落のような工房群を形づくっている。まるで幹から枝分かれするかのように、1本の道路の左右に工房や窯、店舗が点在しており、おおよそ1時間もあれば一通りお店や工房を見て往復することができるだろう。
やちむんの里で見ることのできる作品は、この付近一帯をはじめ沖縄本島各地に存在する赤土を主に用い、ろくろで回すなどして形を整え、彫刻と釉薬で模様や絵柄を施し、いくつもの小部屋が階段状に連なった「登り窯」で焼いたもの。
今回取材させていただいた、4世代にわたって焼き物作りを営む「陶芸工房ふじ」と「宮工房」は、この地で45年前から工房を設け、人間国宝(重要無形文化財保持者)としても知られる金城次郎氏の跡を受け継ぐ歴史ある工房の1つ。店舗も兼ねており、大小さまざまな読谷山焼がところ狭しと並ぶなかで、彫刻や塗装をしている様子を見学することもできる。
陶器を焼き上げるのには大変な時間と手間がかかる。工房で形を整えた器類は、店舗から少し離れた場所にある窯に移される。窯は斜面を利用した巨大な「登り窯」で、それぞれ別の工房が使用する6つの小部屋からなる独特の形が特徴だ。最初に最下層にある焚口(たきぐち)で薪を燃やすことで窯全体の湿気を取り、各小部屋にも順番に火入れして3日間かけて陶器を焼く。
その間は工房ごとの職人が持ち回りで窯の火を絶やさずに管理し、その後4日間かけて窯全体をゆっくり冷ましてから焼き物が取り出される。一度に1つの小部屋で最大1000個ほど焼けるとのことだが、その1サイクルにだいたい1週間かかるわけだ。
やちむんの里では、ほかにもいくつかの窯を目にすることができる。より多くの小部屋をもつ登り窯もあり、規模が大きくなるほど焼き上げるのに必要な手間や時間も多くなるのだろうと想像できる。大皿でも意外に軽く、普段使いの食器として扱いやすそうな読谷山焼だが、そこにはたくさんの労力と思いが詰まっている。
やちむんの里
入場料金:無料
営業時間:工房により異なる
Webサイト:やちむんの里
琉球王朝の栄枯盛衰を体感する「首里城」と「座喜味城跡」
沖縄で最も知られている歴史的な建物といえば、「首里城」が真っ先に挙げられるだろう。那覇空港から、ゆいレールを使って30分あまりで到着する首里城公園内にあるという立地で、気軽に訪れることができる観光スポットだ。
15世紀初頭からのおよそ400年間以上に渡って続いた琉球王朝の栄華を今に伝える首里城は、国王と家族が住む王宮としてだけでなく、一部は王国の人々の信仰を支える宗教上の役割も果たしていたと言われる。過去に何度も焼失や再建が繰り返されたほか、戦時中の米軍による攻撃で大部分が失われたあとも復元が行なわれた。その痕跡は石垣や石畳に使われている新旧入り交じった石灰岩や、正殿内1階の床に設けられた“のぞき窓”から確認できる床下の遺構などに見ることができ、当時の趣きを感じ取ることができる。
首里城
入場料金:大人820円
営業時間(無料区域):8時~18時30分(12~3月。季節により最大20時30分まで延長)
営業時間(有料区域):8時30分~18時(12~3月。季節により最大20時まで延長、入館券の販売は閉館30分前まで)
Webサイト:首里城
沖縄には、現存する(復元した)城だけでなく、かつて存在した城の跡も間近で見ることができる。読谷村、やちむんの里から数kmほどの場所にある、世界遺産にも指定された「座喜味城跡」だ。戦乱の15世紀に活躍し、築城家としても名を馳せた護佐丸という人物が築いたとされ、規模としてはさほど大きくはないものの、外敵の侵入に備えて二重の郭を設けた連郭式の構造としているのが特徴。
城自体は、城壁の石垣と最奥部の一の郭で見られる地面の痕跡を残してほかは失われており、当時の要塞としての偉容を想像することは難しい。が、小高い丘の上に築城された座喜味城跡の城壁には階段で登ることができ、周辺の自然あふれる景色から遠くの水平線まで見渡せる。この眺望だけでも座喜味城跡に来たかいがあるというもの。
座喜味城跡
入場料金:無料
営業時間:全日
Webサイト:座喜味城跡