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ANA、「STAR WARS ANA JET」2号機を制作中、11月22日の伊丹~羽田線から投入
11月19日にはラッピング作業を見学するFacebookイベントを実施
(2015/11/20 19:44)
- 2015年11月22日 就航
- 2015年11月18日~ ラッピング作業実施
ANA(全日本空輸)は11月18日~19日にかけて、映画「スター・ウォーズ」とタイアップする「STAR WARSプロジェクト」の一環で運航される、「STAR WARS ANA JET」(2号機)のラッピング作業を、大阪国際空港(伊丹空港)に隣接するMROJapanの格納庫で実施した。11月22日に、伊丹(07時30分)発~羽田(08時40分)着のANA14便で運航を開始する。
新たに運航を開始するSTAR WARS ANA JET 2号機は、ボーイング 767-300型機を使用したもので、登録記号「JA604A」の機体にリペイントとラッピング(デカール貼付)を施す。国内線専用の予定で、初便の伊丹~羽田線以降はさまざまな路線で運航する。
この機体は11月8日に整備に入り、12日から全塗装を剥がしての再塗装(リペイント)を開始。18日にはほぼ塗装が完了した。現在、ANAの機体の塗装については、航空機メーカー(ボーイングなど)からの納入時など国外で作業しているものを除いては、このMROJapanが一手に引き受けている。
リペイントの工程としては、まず従来のペイントを剥がすところから始まる。金属ボディの胴体などは溶剤を使って落とすが、主翼など溶剤を使えない箇所もあり、それらは表面を削って塗料を落としていく。その後、表面処理を施して、ペイント作業へ移る。
今回のJA604Aは、従来とは違った方法でペイント作業を行なったのも大きな特徴となっている。従来は色素を含んだ顔料と光沢剤などが混ぜられた塗料を使っていたが、最近の新造機では色素を含んだ顔料塗料の上にクリアコートを重ね塗りする手法が採られており、JA604Aでは、初めてその手法を採用してリペイントを行なったという。顔料の「Base Coat」、クリア剤の「Clear Coat」の頭文字を取って「BCCCペイント」などと呼ばれている。
つまり新造機と同じ色合いに近付くことになるが、そのほかのメリットの1つが、従来の顔料と光沢剤などが混ぜ込まれた塗料に比べて、顔料のみの塗料は乾燥が早いこと。従来は1色の乾燥に15時間ほどかかっていたものが、顔料のみの塗料は3~4時間程度で乾燥することから、次の色の塗装工程へより早く進めることになる。また、クリアコートを上から重ねることで、耐久性も高いという。
今回の新しいSTAR WARS ANA JETは、胴体前部にANAロゴが入るほかは、ほぼ真っ白にペイントされる。垂直尾翼などほかの部分は通常のANA塗装と同じ。ダークブルーを塗り、続いてライトブルーとホワイトを塗る順序で進められた。
18日にデカールの仮貼りをスタート
STAR WARSプロジェクトの特別塗装機は3機あり、1号機となった「R2-D2 ANA JET」はボーイングによって「R2-D2」をペイントしたものだった。2号機となる本機(JA604A)は、胴体右側に12月18日公開の新作「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」に登場する新キャラクターの「BB-8」、胴体左側におなじみのR2-D2が描かれるデザインで、このイラストはデカールを貼って表現する。
デカールの製造は3M(スリーエム)が行なっているが、いわばカラー印刷のようなもので、塗料によるペイントよりも多色で、繊細な表現が可能だ。今回のBB-8やR2-D2などのキャラクターは、細部まで描かれた立体感のあるものとなっており、ペイントでは表現が難しいデザインだ。
作業はまず、貼る位置を決めて仮貼りをし、続いて裏面の剥離紙を取って実際に貼付。そのあとで表面の保護シートを剥がして完成となる。
もちろん大きなのデカールが1枚で提供されているわけではなく、一定の大きさに分けられている。今回見学したバナーの仮貼りの際には、客室窓の中心線を決め、機体とデカールの保護シートの両方にマスキングテープを貼り付け、そのラインを合わせていくことでズレることなく貼れるよう作業していた。
この仮貼りのあとは、裏の剥離紙を取って実際に貼る作業となるが、この際には後ろ側のデカールから順番に貼っていく。これには理由があって、デカールとデカールの繋ぎ目部分は、飛行中の抵抗を抑え、剥がれることを防ぐために、前方向のシールが上になるように貼る。
また、客室の窓など、くり抜く必要がある部分には、あらかじめ「ナイフレステープ」と呼ばれるものを、くり抜く形に合わせて貼っておく。これはカット用の“糸”が仕込まれたテープで、クルマのラッピングなどでは一般的に用いられているものだそうだ。ナイフレステープに仕込まれた糸を引き抜くことで、デカールをきれいにくり抜くことができる。
このメリットは、カッターやナイフを使うことなくデカールを任意の形にくり抜けることだ。機体に傷を付けることは厳禁であるため、従来はシールの裏側に保護シートを当ててカッターで注意深く切り抜いていたそうだが、このテープの使用で、そうした手間はかなり軽減されたという。
19日にはFacebookで募集したイベントを実施
11月19日には、11月5日17時30分~8日23時59分にFacebook上で募集した27名が参加し、ラッピング作業の見学会が実施された。応募総数は約900名に達したという。参加者の年齢層は10~60代と幅広く、関西を中心に全国から集まった。
イベントは12時から実施されたこともあり、参加者にはまず、国内線プレミアムシートで提供されている「premium GOZEN」と「premium SABO」がふるまわれた。この際、STAR WARS ANA JET 2号機の機内で使用される、BB-8とR2-D2が描かれた専用のコップも披露。使わずに持って帰ろうと思う人も多そうだったが、「後ほど別にお土産としてお渡ししますので、ここではお使いください」という気の利いたアナウンスがあり、参加者も安心してお茶やジュースを注ぎ、新デザインの紙コップで味わうドリンクを一足早く楽しんでいた。
お腹を満たしたあとは、今回見学するラッピング作業を理解すべく、クリアファイルにデカールを貼り付ける作業を体験する時間が設けられ、剥離紙を剥がして、気泡などが入らないようにカード類などでこするように貼り付け、最後に表面の保護シートを外すという一連の作業を実際に体験した。
その後、場所をMROJapanの格納庫へ移し、実際の機体へのデカール貼り付け作業を見学。さらに、参加者から無作為に選ばれた3組6名が、機体への貼付が完了しているBB-8のデカールの保護シートを剥がすという大役に任命された。この保護シートは思ったよりも強力に貼り付けられており、かなり力を込めた様子で順々に剥がしていった。そうして完成を見たBB-8のデカールをバックに、ほかの参加者も記念撮影を行なった。
ちなみに、このイベントの最後には“お土産”も配布されたが、この内容も豪華で、メインは「R2-D2 ANA JET」の1/200スケールモデルプレーン(非売品)。さらに、これを収めたトートバッグもANA、STAR WARSのロゴ入り。食事も見学内容もお土産も豪華なイベントに、参加者は皆、笑顔のまま会場を後をした。
このSTAR WARS ANA JET 2号機は21日には整備を終えてドックアウト。22日より日本の空を飛びまわる予定だ。