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JR東海、2027年リニア開業を断念。丹羽社長「静岡工区トンネルに未だ着工できず6年4か月経過」
新たな開業時期も見通しなし
2024年3月29日 15:06
- 2024年3月29日 発表
JR東海は3月29日、国交省が行なった「第2回リニア中央新幹線静岡工区モニタリング会議」(東京・霞が関)において、2027年開業に向けて進めている品川~名古屋間の開業を断念する方針を明らかにした。
同モニタリング会議は、リニア静岡工区の水資源や環境保全に関して有識者会議でまとめられた対策について、科学的・客観的観点から状況を確認するため継続して行なっているもの(第1回は2月29日に実施)。
南アルプストンネルは全線のなかで最も工事の難易度が高く、工期も厳しい工区のひとつであり、早期に着手する必要がある。山梨工区は2015年の12月、長野工区は2016年11月にすでに着工している一方、静岡工区では未着手。2017年11月に工事契約を締結し、2027年の開業を目指して締結後すみやかに工事に着手する計画であった。
説明責任者として出席したJR東海 代表取締役社長 丹羽俊介氏は静岡工区の状況について、「不確実性を伴うトンネル工事のなかでも極めて難易度が高く、掘削距離が長いにも関わらず、トンネル掘削工事に着手できないまま工事契約の締結からすでに6年4か月が経過している」。
また静岡以外の工区でも難しい工事があり、一部では予定がタイトになってきているエリアもあるが、「未だに着手できていない静岡工区のようなところはなく、静岡工区が品川~名古屋間開業の遅れに直結している」と説明。
「残念ながら2027年名古屋までの開業は実現できる状況にはなく、新たな開業時期についても、静岡工区のトンネル掘削工事に着手の見込みがないため見通しできない」とし、「静岡工区の一日でも早い着手に向けて、静岡県との対話をさらに精力的に進めていく」との考えを示した。
なお工事着手には今後、静岡県知事とJR東海のあいだで「静岡県自然環境保全条例」に基づく締結を行ない、ヤード整備にあたっては盛土を実施するため「静岡県盛土等の規制に関する条例」に基づく静岡県知事の許可が必要となる。また、トンネル掘削の進捗に応じて河川とトンネルが地下で交差する前までには「河川法」に基づく静岡県知事の許可が必要となってくる。
現在は山梨県と静岡県の県境で、「高速長尺先進ボーリング」(地質や湧水の状況を早期に把握するため、トンネルの掘削に先立ち水平方向約1kmにわたって長距離ボーリングを行なうもの)を実施しており、この結果をトンネルの掘削計画に反映していく。またこれを、静岡工区でもトンネル掘削に先行して行なっていく予定としている。