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JR東海、リニアL0系改良型試験車の内部を公開。新シートと高速走行時の騒音低減で快適さがアップ!

2020年10月19日 公開

JR東海が試験走行を行なっているリニアモーターカーの最新試験車「L0改良型試験車」

 JR東海(東海旅客鉄道)は、最高時速500kmで走行する「リニア中央新幹線」の最新試験車である「L0改良型試験車」を8月に新しく導入し、現在は山梨県にある実験線で繰り返し走行を行なっている。

 その改良型試験車の内部を、同社の山梨実験センターで報道公開した。

 現在、開業に向けて工事を進めている超電導磁石を用いたリニアモーターカーは、東京(品川)~名古屋を最速40分で結ぶ計画だ。国鉄時代に宮崎県で実験線を敷設して始めたのを皮切りに、1997年には山梨県に場所を移して実験が続いている。

 当初18.4kmだった実験線は、現在では42.8kmまで延伸しており、最高時速500km前後でテスト走行を繰り返している。ちなみに、2015年には1日に4064kmのロングランを走行し、同年に有人走行で最高時速603km(列車の世界最速記録としてギネス認定)も記録している。2014年からは抽選で一般の見学客を乗せた試乗会(有料)も実施しているが、現在は行なわれていない。

山梨リニア実験線の概要。実験線の区間長はフルマラソンより少し長い42.8kmで、トンネル区間は35.1km。最小曲線半径は8kmでほぼ直線だが、最急こう配は40‰(パーミル)になっており、高低差はそれなりにある。累積走行距離は約319万kmで、地球を約80周したことになる

 営業線に必要な技術開発は2017年2月に完了しており、国土交通省実用技術評価委員会からゴーサインが出されている現在もテストを繰り返しているのは、より快適な乗り心地の追求と保守効率を向上させるためだ。

 今回登場した改良型試験車は先頭車と中間車で、先頭車は日立製作所が、中間車は日本車輌製造が担当した。先頭車の外観は従来同様、ロングノーズが特徴だが、先端部に丸みを持たせて先頭形状の凹凸を際立たせることで、空気の流れを最適化。これにより、空気抵抗を約13%下げ、消費電力や車外騒音を低減している。見た目でもよく分かるのが、前照灯とカメラを先端部から運転席のあるべき位置に移動していることだ。上部に変更することで、前方視認性が向上している。

 ちなみにリニアの操縦は指令センターからのリモートコントロールによる自動運転で行なっているので、運転士は乗車していない。現在のテストは7両編成で行なっており、そのうち改良型試験車は6号車と7号車で使われている。西に向かう際に先頭になるのが1号車でL0系、東に向かう際に先頭になるのが7号車の改良型試験車だ。見学スポットである山梨県立のリニア見学センター「わくわくやまなし館」(入場無料)と「どきどきリニア館」(入場有料)で見る際は、右側のトンネルから飛び出してくるのが改良型試験車になる。

写真左が改良型試験車で、写真右が従来のL0系。細部の形状を変更しており、前照灯とカメラは上部に移した。ブルーのラインも流線形をイメージしたデザインに変更している

 車両の内装は、先頭車と中間車で大きく異なる。両方とも快適性の向上を命題として設計しているが、それぞれアプローチの違うデザインになっている。これは、異なるデザインを比較することでよい点を抽出し、それらを参考に快適な営業車を製造するためだ。

 先頭車は温かみのある室内をコンセプトにしており、天井はテントの布地のような膜素材を採用しているのが特徴。照明は膜素材を通した間接照明で、LEDの色温度も少し低めの暖色系で落ち着きのある空間になっている。膜素材は車内の反射音を低減する役割も担う。座席頭上の荷棚は圧迫感を感じさせないよう、コンパクトな設計になっている。

先頭車の内装。天井は膜素材を採用したもので間接照明で落ち着いた雰囲気(写真提供:JR東海)

 中間車は明るい車内がコンセプト。昼白色LEDによる直接照明で、トンネルが多い超電導リニアの車内空間をできるだけ明るく演出したいという意図がある。ガラス素材を用いた吸音材を天井パネルに設置することで車内の反射音を低減し、フレーム状の荷棚を採用することで天井空間を広く見せるような工夫が施されている。

中間車の内装。天井には吸音材を用いたパネルを埋め込んである。昼白色LEDによる直接照明で明るい(写真提供:JR東海)

 座席は両車とも従来のL0系とは大きく異なるデザインに変更している。全体的に丸みを帯びた形状で、ゆったりと座れるように大型化したのが特徴だ。

 座席幅は従来のL0系が455mmだったものを477mmに、奥行きは405mmから445mmに、背もたれの高さは1090mmから1230mmに変更している。背もたれは包み込むようなカーブを付けることで、着席している人にはプライベート感ある空間を演出し、後方の人には圧迫感を感じさせないような形状になっている。

 また、前方座席の背面にあったテーブルは肘掛け収納タイプに変更され、充電用のUSBポートも装備している。実際に座ってみた感想としては、従来のL0系より快適になったのは間違いなく、リクライニングも背もたれと座面が連動するので心地よさが増した感じだ。

座席は頭部が包み込まれるようなラウンド形状が特徴
服やカバンを掛けられるフック
テーブルは肘掛けに収納されている状態から引き出して使う
USB充電ポート。窓側用と通路側用をそれぞれ用意
小物収納スペースとドリンクホルダー
座席下の荷物収納スペース
窓はL0系と同じく、それほど大きくはない

 今回の試乗では時速500km走行を4回行ない、改良型試験車とL0系の乗り心地を比較することができた。改良型試験車の中間車に先に乗せていただいたのだが、内装や座席がガラリと変わったことによって車内の雰囲気がより未来的に感じられた。

 筆者は昨年(2019年)にも試乗しているのだが、そのときの記憶を頼りにすると、騒音や振動に関しては確かによくなったかなというのが第一印象。そのあと、L0系の中間車に乗ってみると違いは明確だった。特に時速350kmを超えたあたりから車内に響き渡る「ゴォー」という騒音は、改良型ではかなり改善されているように感じた。数値的なデータはまだ分析中とのことで、どれだけ騒音が低減されているのかは正確には分からないが、将来登場する営業車両は、より快適になっているであろうと期待が持てる体験だった。

改良型試験車は車載カメラが上部に移されたので、電車の先頭車両から見た景色に近い映像が車内のディスプレイに映し出される
こちらはL0系を先頭にした際の光景。こちらはこちらで体験したことない感覚で景色が流れていく

 山梨リニア実験センター所長である大島浩氏は、「L0系をブラッシュアップすることで、よりよい車両ができたと思います。今後はいろいろなデータを取り、営業車両としてさらに快適な移動空間を提供できるようにして行きたいと考えています」と話した。

東海旅客鉄道株式会社 山梨リニア実験センター所長 大島浩氏