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ハワイ州観光局、「新型コロナウイルスとハワイ州」をテーマにウェビナー開催。7月には集団免疫獲得・収束を目指す

第1回「ハワイ・ツーリズム・フォーラム」

2021年3月16日 開催

新型コロナウイルス感染症対策として、ハワイではワクチン接種の展開が早く、スマートフォンなどで事前予約できれば、商業施設などで簡単に受けることができる

 ハワイ州観光局は3月17日、専門家やハワイの観光関連パートナーが登壇する「ハワイ・ツーリズム・フォーラム」をオンラインで開催した。

 ハワイ・ツーリズム・フォーラムは旅行会社の営業活動・商品造成・情報収集、教育機関による学習素材のための情報収集、次世代の旅行業界を担う学生へ向けたもので、ハワイの観光資源、コロナ禍におけるツーリズム、ハワイで取り組む観光×SDGs、学ぶ宝庫ハワイのテーマで教育ツーリズムのあり方などを月1回のペースで紹介していく。

 3月17日の第1回は「新型コロナウイルスとハワイ州」をテーマに、ハワイ大学 疫病専門家の岡田悠偉人氏が基調講演を行ない、ハワイの感染状況、日米の違い、観光再開に向けた今後の見通しについて説明した。

日本~ハワイの観光リカバリーに向けて万全の準備を

ハワイ州観光局 日本支局長 ミツエ・ヴァーレイ氏

 フォーラムのオープニングでは、ハワイ州観光局 日本支局長のミツエ・ヴァーレイ氏が、ハワイの現状について説明した。

 ハワイでは、2020年3月5日にハワイ州知事が非常事態宣言を発表。アメリカでも早い非常事態宣言で、補助金の支給なども早かった。23日には不要不急の外出禁止令になり、4月10日にはハワイへの旅客フライトが停止となった。

 8月から臨時便が再開し、第2・第3波があったものの、観光再開に向けて事前検査プログラムへの注力が始まった。ハワイ~本土は10月15日にプログラムがスタート、日本とは11月6日にスタートした。このプログラムは、日本国内84の医療機関で事前にPCR検査を受けることで証明書を発行。ハワイ渡航後の自主隔離を免除する取り組みだ。

 そしてハワイ州観光局では、新型コロナウイルス感染症の情報サイトを開設。基本情報・最新情報を毎日更新し発信している。プログラムの情報も紹介されている。局では観光渡航が難しいなか、デジタルマーケティングに力を入れ、観光や文化にオンラインで触れる企画を実施している。

 ハワイ州の3月15日現在の状況は、感染者数が累計で2万8305人・死亡者数451人だが、陽性率が1%まで下がり、オアフ島は「TIER3」(リカバリーフレームワーク。TIER1からスタートし、感染状況に応じて各制限を4段階で緩和していく)にフェーズが移った。レストランなどで人が集まる上限が5人までだったものが、最大10人にまで緩和された。この状況が2週間以上続き、陽性率も下がれば「TIER4」へさらに緩和される見通しだ。ハワイ州は全米でも感染率がバーモント州に続く2番目の低さになっている。マスクの着用率、安全率でも米国で一番安全な州として認識されているという。

 ワクチン接種状況は、現在医療従事者や75歳以上などの高齢者への接種が行なわれ、3月15日からは65歳以上に。5月から16歳以上の成人を対象に接種していく予定だ。

ハワイではマスクの着用率も高い。TIER2からTIER3に移行し、レストランなどで人が集まる上限が5人から10人に緩和された
ハワイでのワクチン接種状況

 ハワイへの渡航者は、2020年全体でマイナス73.77%に。日本人のハワイへの渡航は2020年全体でマイナス81.14%・約30万人弱にまで減ってしまった。2021年1月になると少しずつフライトも増え始め、日本からの渡航者は1165人(マイナス99.1%)、アメリカ本土からは16万28080人(マイナス70.5%)の渡航者がある。

 アメリカ本土からはもちろん、それ以外の国からのハワイ入域者も事前検査プログラムを実施、エレベーターは2人まで、飲食店でのソーシャルディスタンスの確保など、ニューノーマル・安全対策が徹底されている。

 コロナ禍での日本からのアクセスは3月は30便、4月は16便、5月は17便を運航。第二四半期も市場的には厳しい見通しだ。しかし、局としてもその間にリカバリーに向けた取り組みをしていかなければならない。

2019年~2020年のハワイへの渡航者数
2019年~2020年の日本からハワイへの渡航者数
2021年1月のハワイへの渡航者数
日本からのアクセスは3月は30便、4月は16便、5月は17便を運航

 アウトバウンドのオープンに向けて、さまざまな業界と協議をしながら、管理型パッケージの遂行に向けて調整を続けている。JATA(日本旅行業協会)などと協力して進めており、管理型パッケージが決まれば、旅行業界全体でリカバリープロモーションをしていきたいとの考えだ。

 長期の観光戦略でも、「2025年までのハワイ州観光戦略」を打ち出しており、ハワイの観光デスティネーションとしてのあり方として、サステナブルツーリズム、レスポンシブルツーリズムといった言葉が出ているなか、環境に優しい・地球に優しい旅行、思いやりと責任のある旅行をどう推進していくか。そのために「自然保全」「文化継承」「コミュニティーリレーション」「ブランドマーケティング」の4つの柱で戦略を進めていく。

「自然保全」では、MICEに特化した形でSDGsや教育旅行などのテーマでプロダクトを創出。「文化継承」では、アロハプログラムや文化体験を推奨。「コミュニティーリレーション」では、地元の人とつながる旅を創出。「ブランドマーケティング」では「マラマハワイ ~ハワイから地球に優しい旅を~」と題してブランドキャンペーンを展開していく。

 そして局はハワイ現地政府や地元の人たちと日本をつなぐ橋として、春から秋にかけての管理型パッケージ、その先にある観光再開に向けて、準備をしっかり進めていきたいと語った。

「自然保全」「文化継承」「コミュニティーリレーション」「ブランドマーケティング」の4つの柱で戦略を推進
「マラマハワイ ~ハワイから地球に優しい旅を~」と題してブランドキャンペーンを展開する

7月には集団免疫獲得も

ハワイ大学 教授 岡田悠偉人氏(疫学専門家)

 続いてハワイ大学 教授の岡田悠偉人氏(疫学専門家)が、「新型コロナウイルスの状況と今後の見通し」と題して、基調講演を行なった。岡田氏は、前述の事前検査プログラムでの医療機関選定など、プログラムの実施に向けて尽力した人物の1人でもある。

 まずハワイでのワクチン接種の状況は、高齢者への接種が終わり、65歳以上・持病を有する人を対象に接種が行なわれている。すでに47.5万本の接種が完了しており、これはハワイの人口の20.1%にあたるという。高齢者への接種が完了したこともあり、新規感染者も低い値で推移し、医療資源の逼迫も解消され安定した医療を提供できる状況にまで落ち着いているとのこと。スマートフォンなどで事前予約して、商業施設のなかなどで気軽にワクチン接種を受けられる環境がハワイでは整っている。

 ハワイでのワクチン接種が急ピッチで進む理由の1つに、変異株の存在がある。70%以上という集団免疫獲得を目指しており、それは7月ごろには達成し、7月にはハワイではマスクを外してもよい日常が訪れる可能性があるという。7月以降は大きな感染拡大がなく、医療資源が安定した状態で「持続的感染」という時期に入るという。これはインフルエンザが絶対にゼロにはならないが、医療機関を受診できて治療を受けることができるということと同じ意味で「持続的感染」と表現している。

7月ごろには集団免疫を獲得できる見通し

 そのため新規感染者がゼロにはならないが、規制の緩和とあわせてのモニタリング状況ということであり、3月15日現在でホノルルの新規感染は27例・週平均の陽性率は0.9%だった。

 今後日本とハワイの往来を回復していくためには、まずは渡航前のPCR検査が重要となる。日本では唾液検査が多くなっているが、アメリカのスタンダードは鼻腔検査であり、精度も唾液より鼻腔検査のほうが高いとする論文もあるという。日本の緊急事態宣言で、ハワイ渡航の事前検査プログラム指定医療機関が日本国内84か所のままストップしているが、今後はその数を拡大していくことや、日本帰国後の14日間の自主隔離という制限の緩和などが今後の課題として挙げられた。

岡田氏が挙げる今後の課題
日本~ハワイ間で路線を運航する各航空会社の対策も紹介された